2008年12月19日
盛りだくさんの90分
クラブ・ワールドカップ08/09 準決勝 ガンバ大阪 vs ユナイテッド GKはエドウィン・ファン・デルサール(以下エドさん)。ディフェンスは右からギャリー・ネビル(以下兄ちゃん)、リオ、ヴィディッチ(以下ビダ)、エブラ。センターハーフはアンデルソン&スコールズ。アタッカーはクリスティアーノ・ロナウド(以下クリ坊)、テベス(以下テベ公)、ナニ、ギグス(以下ギグシー)。 このスタメンを見て抱く懸念は一つ。ゴールゲッターのルーニーがいないということ。 今シーズンユナイテッドは例えばファン・ニステルローイやエトーのような明確なトップを置かない「4-6-0」、「4-2-4-0」とでもいうべき新スタイルの攻撃を編み出した。ルーニー、クリ坊、テベス、ベルバトフ(以下ベルビー)、パクチー、ナニらアタッカーに配置された選手たちが時にエリア内に入ってゴールを狙い、時にサイドに流れてドリブルでディフェンスを崩し、時にトップ下に入ってラストパスを供給する。相手ディフェンスに的を絞らせない変幻自在な攻撃が狙いだ。 しかしサー・アレックス・ファーガソン(以下御大)の目論見は外れることになる。「誰でもゴールが奪える」攻撃を目指したのだが、実際は「誰がゴールを奪うべきかハッキリしない」状況に陥ったのだ。 これは各選手のプレースタイルに起因する。ゴールを量産すべきフォワードとして加入したベルビーは実はフォワードというよりも司令塔のような選手(「司令塔」ベルビー参照)で、エリア内でゴールを狙うよりも、トップ下のポジションでラストパスを出したがる。 テベ公は加入当初はゴールを貪欲に狙う野獣という面も見られたが、組織力の高いユナイテッドの水に慣れ始めると、次第にチームプレーの気持ちよさを覚え、前線から積極的にプレスをかけるプレミア屈指の献身的な選手へと変身し、次第にプレースタイルもトップでガンガンゴールを狙うストライカー型から、トップより一歩下がった位置からドリブルやパスで味方にゴールを演出するセカンド・ストライカー型に変化していった。 クリ坊もトップでボールをもらってゴールを狙うというタイプではなく、一歩引いた位置からドリブルで相手を崩しゴールを狙いに行くタイプだし、パクチー、ナニもサイドでアクションを起こしディフェンスを崩していくタイプのプレーヤー。唯一トップでのプレーも得意とするルーニーだが、彼も今や昔と違って貪欲に「俺が俺が」とゴールを狙いに行く小僧じゃなくなり、「チームのためならゴールよりも勝利の方が大事なんだ」とさわやかな顔で語れる大人に成ったわけである。 ということで、前線に配置された4人のアタッカーが臨機応変にトップに入りゴールを狙わなくてはいけないのに、みながみなゴールよりもチャンスメイクを好んだことで「4-2-4-0」は文字通り点を取るべきフォワードがいないゼロトップの状態になってしまった。10月25日のエヴァートン戦あたりからユナイテッドらしからぬ1点や0点というロースコアが目立ち始めたのもそのためだ。 この状況を憂えた御大は早速策を講じる。なんてことはない、トップがいないならトップを固定してやればいいだけだ。ということで11月25日に行われたビジャレアル戦あたりからルーニーをトップに固定し、その下に3人のアタッカーを並べた4-2-3-1システムを採用し始める。するとユナイテッドの攻撃はルーニーという焦点を得たことで圧力が集中されて、破壊力が増大した。きっかけとなったビジャレアル戦ではビジャレアルの堅守もありゴールを奪うことは出来なかったものの、マンチェスター・シティ戦ではルーニーのゴールで1-0と勝利をあげ、ユナイテッドは上昇の兆しを見せたわけである。このガンバ大阪戦の直前、ルーニーが怪我で出られなかったスパーズ戦が0-0のスコアレスドローで終わったということも、この文脈で考えれば説明がつく。 ということでほぼA4用紙一枚分を前フリに使ってしまったが、ルーニーがいないことが懸念になるのはこういった事情があるからなのだ。またこれを踏まえてガンバ戦を見ていけば試合の流れも良く分かる。 前半ルーニーを温存したユナイテッドは「4-2-4-0」で戦っていた。クリ坊、テベ公、ナニらの個人技で決定的なチャンスは作り、ヨーロッパ最強のクラブの力を目の前で見た日本のファン(うらやましい!)を沸かせはするものの、一向にゴールが奪えない展開に少し疑問を覚えていた人も少なくはなかったんじゃないだろうか。前半ユナイテッドが奪ったゴールはどちらもコーナーキックから。流れの中からゴールを奪うところは見せてもらってないのに、あっさりとセットプレーで2ゴールを奪って前半だけで勝負がほとんど決まってしまった展開に自分も失望を覚えたうちの一人。 また悔しくもあった。ユナイテッドはこんなもんじゃないんだぞ、と。やろうと思えばもっと出来るんだぞ、と。セットプレーでつまらなくゴールを奪ってあとは残り時間を上手くつかって飄々とした顔で勝利を持ち去る、そんなせこいチームじゃないんだぞ、と。そんな自分の前に颯爽と現れた一人の男、ウェイン・ルーニー。 ユナイテッドのミスをついてゴールを奪ってくれたガンバの山崎という選手には返す返すありがとうといいたい。投入された直後にゴールを決められ、ルーニー中で燃え上がった炎は小さくなかっただろう。本気を出す大義名分がこれで出来た。山崎のゴールの直後、放送クルーが大会で日本クラブ初のゴールを大いに盛り上げようとしていたその矢先フレッチャー(以下フレッチェル)のスルーパスに抜け出したルーニーがひょいとガンバ大阪DF中澤をかわし、キーパーの横を抜いて確実にゴールを奪った。アナウンサーがつい口にしてしまったが、ガンバファン並びに日本代表のチームを応援していた人たちに浴びせかけられたホント冷や水のようなゴールだった。すんでの所でカメラをピッチ上に切り替えルーニーのゴールの瞬間を逃さなかったカメラマンはホッと胸をなでおろしたことだろう。 このゴールでルーニーとはどういう男か、日本の人に少なからず分かってもらえたと思う。それが一番嬉しかった。だから俺たちはルーニーにしびれつくす。ルーニーがプレーするユナイテッドにしびれつくす。どうですか、あなたも一緒に、ユナイテッド。 日本の人たちに見てもらえてよかったと思うのは何もルーニーだけじゃない。そのルーニーのアシストをしたフレッチェル。自分が2年後にはジェラードやランパードと肩を並べると信じて疑わない男フレッチェルは後半33分には自ら攻めあがってゴールも決めてみせた。あぁ、ルーニーのゴールも、フレッチェルのゴールも見れただなんてこの日横浜に足を運んだ人たちはなんて幸せなんだろう。彼らは今年ルーニーのゴールを見たと自慢し、2年後には自分はそういえばフレッチェルのゴールも見たことがあるんだぞ、と自慢することだろう。 その後はギグシー様のグレイトビューティフォーダイレクトスルーパスからルーニーがこの日2点目のゴールを決めれば、遠藤は世界のエドサル相手にPKを決めて本当に盛りだくさんの90分。エドさんの届かないところにガッチリ決めていった遠藤のPKは世界レベルだと胸張っていい。というか遠藤自身証明しなくてもそれは自覚していることだと思うけど。それほど遠藤のPKスキルがえげつないと感じた。 ということで。「4-2-4-0」では焦点が上手く定まらず、チャンスは作るものの流れの中でゴールを奪えない相変わらずの展開。しかしトップにルーニーを固定してからは破壊力が抜群に増しゴール、とこれまでのユナイテッドを象徴する内容になった。ディフェンス陣は時差ボケや疲れ、油断から凡ミスでピンチを招く場面が目立ったが、なんとか決勝までには修正しておいてほしいところ。 それにしても決勝か。決勝ではパスの王子様ことキャリックも出てくるだろうし、フレッチェルも先発だといいな。右サイドバックは兄ちゃんを休ませてラファエルと言われているのががっかりだ。ぜひともこの目でザ・スキッパーのプレーを拝んでみたかっただけに、ちょっとというかかなり残念。ルーニーは先発してくるだろう。だから最初からユナイテッドもフルスロットルだ。今日のようなゴールラッシュが拝めますように。2年前のバルサのような1-0みたいなざんない結果だけはぜひともご勘弁。
posted by myrowka |06:55 |
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まことに同意です。
コメント投稿者ID :
お久しぶりです。昨年ちょこちょこコメントさせていいただいた、パスの王子様ことキャリック好きのcalpassです。
このブログでやっと同じ感情の人に出会えた気がします笑
マスコミ含めみなさん、ユナイテッドを本気にさせただの、世界と差だのに騒いでいて、正直辟易しておりました。
ユナイテッドの昨日の布陣は、アタッカーがいない「4-6-0」(私もnumber読んでました)で、ここ最近の流れのままで、みんなエリア付近でボールを持ちすぎてましたね。
相変わらず、爆発力はすさまじいですが、ルーニー1人しかアタッカーじゃないというのは、徐々に変えないとまずいですよね。
管理人さんの描写や視点、とても興味深く、面白いです。今後もお願いいたします!
posted by calpass | 2008-12-19 16:17
盛りだくさんの90分
コメント投稿者ID :
calpassさん
お久しぶりです。calpassさんのことは覚えてますよ。更新が不定期で本当に申し訳ないです。お言葉本当に励みになります。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。
世界との差を感じたとか世界との差が縮まったとかは、実はただそれが言いたいだけというか、マスコミはそういう結論ありきの見方や語り方をするので、それが見え透いていて萎えてしまう部分はありますね。
ただユナイテッドはJのチームや日本人にとってはやっぱり雲の上のような存在であって、そういう人たちと対峙してはしゃいじゃう気持ちは分からなくもないです。
ただこれはあくまでFIFA主催の公式戦であって、日本人は半ばこの大会をお祭り的な感覚で迎えている感がありますが、クシュチャクやウェルベック、ギブソン、マヌチョなどあからさまな2軍選手使わずほぼ本気のメンバーで挑んできたユナイテッドに対して、ただ盛り上げるだけじゃなくもう少し真摯というか真剣に一つの真剣試合として試合を伝える姿勢を見せて欲しかったとは思います。
ホントおっしゃるとおりエリア近くまではボール持てるのに、そこからゴールに繋げるアイデアがルーニー抜きでは足らないというのは今後修正して行かなくてはいけませんね。どの選手もゴール奪えるスキルはあるので、あとはちょっとした意識の問題だと思うんですが、ここはぜひとも百戦錬磨の御大の腕前を見せてもらいたいですね。
posted by myrowka | 2008-12-19 19:44
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