2011年12月11日

そんなあなたはラッキーマン

11/12リーガ・エスパニョーラ 第16節 レアル vs バルサ


スタメン
GK:バルデス
DF:アウベス、プジョル、ピケ、アビダル
MF:ブスケッツ、チャビ、セスク
FW:メッシ、サンチェス、イニエスタ


試合のレビューを書く時は、システムが分かりやすいようにスタメンと一緒にポジションも書くようにしている。例えば上は4-3-3だ。ただここ最近のバルサの試合を見てると、自分でも「意味のないことやってるなぁ」と思う。確かに開始時のバルサのフォーメーションは4-3-3と表現できるけど、試合の中である時はアウベスとアビダルがラインを上げ、ブスケッツが最終ラインにはいり3-4-3、ある時はアウベスが上がり、ブスケッツとイニエスタが下がって4-4-2と、刻一刻と変化するからだ。これを4-1-2-3や4-4-1-1-のように更に詳しく書こうとするともう泥沼。
バルサというチームを表現するのは従来のシステム論ではもはや不可能、というか無意味なんじゃないだろうか、更に言うならバルサはシステムという概念を過去のものにしてしまったんじゃないだろうか、とかなり痛いことを恥ずかしげもなくニヤニヤしながら考える自分は、生粋のバルセロニスタだなぁとつくづく思う。


舌戦が大好きなはずのモウさんの異常な沈黙で始まった今回のクラシコ。選手にも沈黙を強要する徹底ぶり。景気づけにチャビでもいじってやろうかと息巻いていたはずのラモスは思わぬとこから肩すかしを喰らってしまった。そんなモウさんがようやく口を開いたと思ったら「我々は自信に満ちている」とひどく普通の発言。バルサへの煽りはとうとう出てこなかった。
このモウさんの変化の裏にあるもの、それはやはり自らの口で語った通り「自信」だろう。自らの目つぶし&侮辱行為でミソをつけてしまったとはいえ、開幕前のスーペルコパでは互角の戦い、というよりむしろ内容ではバルサを上回ることが出来た。シーズンが始まっても好調で、ここ最近は15連勝、試合数が多いバルサに勝ち点3差をつけて首位でクラシコを迎えることが出来た。「2年目のモウリーニョ」というありがたいのかありがたくないのかよく分からない異名に違わぬ成績。また彼は9年間ホーム無敗という記録を達成した御仁でもある。今回のクラシコはサンチャゴ・ベルナベウ。そら自信にも満ちあふれるわけだ。変にバルサを刺激することはない。このスペシャル・ワンたる私に向かってくるライバルを、約8万のサポーターを湛えるベルナベウで堂々と待ち構えていればいいのだ。
そんなモウさんに願ってもない幸運。試合開始まもなくバルデスが信じられないパスミス。ここから生まれたチャンスをベンゼマがものにして、まさかの開始1分1-0。やっぱり俺だ、俺なんだ。流れは俺に向いてるんだ。さすがスペシャル・ワンの異名は伊達じゃない。


しかし。モウさんの笑顔はここまでだった。試合内容は残酷なまでに正直で事実。2年目のモウリーニョ、9年間ホーム無敗記録、15連勝、どんな実績、データも、目の前で繰り広げらるゲームに何の影響も及ぼさない。ボールを支配するバルサに次第に試合も支配されはじめ、30分にはメッシとサンチェスに中央をぶち抜かれて同点、53分にはチャビにミドルで2点目を決められ、試合開始後のアドバンテージを全く活かせず、あっさりバルサに逆転を許した。
圧倒的にボールを支配してくるはずのバルサ相手に、フットボール界有数の戦術家であるモウさんが講じた策は一体何だったのか。世界一の負けず嫌いでもあるモウさんは、世界一負けたくないバルサ戦を前に、普通の人なら生きるのが嫌になるほどさんざシミュレーションを繰り返してきたはず。なのにそれが試合を通して全く伝わってこない。
お得意のアンチフットボールよろしく11人守備を披露するわけでもなく、バルサのお株を奪うボール回しを見せるでもない。バルサはたやすくボールを回し、カウンターもディ・マリア、ロナウドが簡単にボールを失って決定的なチャンスを作れない。モウさんにしてはあまりにも無策。もしかしてもうモウさんにはバルサ相手に出せる策が思い浮かばないんじゃなかろうか。
そう思えるほど試合はバルサペースで進む。チャビ、イニエスタ、セスク、メッシのカンテラーノスからは全然ボールを奪えないし、アウェイだってのにガンガン中央突破を仕掛けてくる。かといってこの4人にかまけてたら右ではアウベスが張ってボールを待ってるし。マルセロではてんで相手にならないこの人は、またクロスの質が抜群に良いときた。で、そのクロスに合わせてさっきの4人+サンチェスがエリア内に怒濤に突っ込んでくる。一体どう止めりゃいいのよ。
かといって守備がおろそかかと言えばそうでもない。前線中盤の選手はかいがいしく走ってくれるし、典型的な「4番」だったブスケッツも、今や立派なCBに成長した。一時期に比べ批判的な声も聞かれるようになったが、こういう大一番ではプジョルはやっぱり頼りになる。いやぁ、ホント良いチームだわ、バルサ。


なんてマドリディスタの心の声も聞こえて来そうな今回のクラシコ。試合自体は、その後アウベスのクロスをセスクがバチコン決めて3-1で勝負あり。内容でもレアルを軽く上回り、新戦力のサンチェスとセスクがベルナベウでゴールと、毅然な態度でコメントすべき会長も「楽勝だったね♪」と振り返るほど上出来すぎる結果となった。
結局、試合を通してついぞスペシャル・ワンらしさを発揮できなかったモウさん。収穫と言えば、またつつきたい衝動をなんとか抑えきりビラノバと和解の握手を交わしてスーペルコパでの汚名をほんの少し濯ぐことが出来たことぐらいかな?


そんなモウさんが試合後「バルサは我々より強かった」と発言したという。んなもん試合を見りゃ分かる、というのは簡単。しかしこの発言主があの世界一の負けず嫌いのモウさんだってんだからただ事じゃない。そうとうショックは大きいようだ。
ただモウさんはそうは認めつつも、一言余計なものを足さずにはいられない人。スポナビさんの記事を借りると、こんなことを言ったそうだ。

「サッカーの試合では、時にささいな事柄が勝敗を分けるものだ。運が味方することは重要な要素でもある。われわれが1-0でリードしていた時に迎えたチャ ンスでは、通常ならばクリスティアーノ・ロナウドが決めて2-0となっていたはずだ。だが、規格外の選手である彼のシュートが珍しく決まらず、その後われ われは1-1に追い付かれた。あそこでゴールが決まっていれば、試合はまったく異なる結果になっていたはずだ。前半は拮抗(きっこう)していたが、後半に 入り、こちらのミスでも相手の技術とも呼べない単なる幸運によりゴールを奪われてしまった。一方、2-2になるためのゴールが決まったかに見えたが、 シュートは枠をそれていた。確かに、その後は心理的に優位に立ったバルセロナに好きなようにボールを回されて1-3とされてしまった。とはいえ、こちらが 2-3にするチャンスでの相手GKのセーブは技術ではなく偶然にすぎない。単なる幸運が試合の流れを分けたのだ」

スペシャル・ワンが単なるラッキーマンと成り下がった瞬間。その幸運を知略で己に引き寄せ勝利を掴み取ってきたからこそ、あなたは今の地位があったんでしょうに。
ただまあ当然本気で言ったわけでもないだろう。さんざ言ってるように世界一の負けず嫌いだ。今回は審判のせいに出来そうもない、じゃあもう今回は運のせいにしちゃえと。そうだ、運が悪かったんだと、運が悪いから負けたんだと、運が良ければ勝ってたと、やっぱり俺はスペシャル・ワンなんだと、そう自分に言い聞かせているのだろう。これまでの勝利の価値を危ういものにしてまでも。
それを会見でやっちゃうのはとても恥ずかしいことで、とても情けのないことだけれど、でもそんな判断がつかないほど3-1の結果はモウさんに重くのしかかっているということの裏返し。


冒頭で書いたように、絶対の自信を持って今回のクラシコに臨んだだけに、比例してショックも計り知れない。やっぱりバルサには真っ向勝負では適わないと、8万人のサポーターの前で示してしまった。
この絶望的な現実を前にモウさんが次に取る手段はどのようなものだろう。記憶に新しいのは去年の11月バルサがホームでレアルを5-0で破ったクラシコ。普通のやり方ではこのバルサには勝てないと悟ったモウさんがその後しきりに「バルサの対戦相手にはレッドカードが良く出るねぇ!」と大声で叫び始めただけに、バルセロニスタとして悪い意味で良い予感がしない。

posted by myrowka |13:20 | FCバルセロナ | コメント(0) | トラックバック(0)
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2011年08月25日

幸せいっぱいオールド・トラフォード

11/12プレミアリーグ 第2週 ユナイテッド vs スパーズ


スタメン
GK:デ・ヘア
DF:スモーリング、ジョーンズ、エヴァ、エヴラ
MF:ナニ、クレヴァリー、アンデルソン、ヤング
FW:ウェルベック、ルーニー


 プレミアリーグも第2週。やってまいりました、プレミアでのオールド・トラフォード初戦。お別れしてから3ヶ月ほどしか経ってないけど、画面からもじんわりと伝わってくる懐かしさ。御大の笑顔もいつもよりか5割増しだ。オールド・トラフォードでフットボールをすると「あぁ、始まったんだなぁ」って実感する。
 そんなOT開幕戦をユナイテッドは多少の不安を抱えたまま迎えることに。前の試合でリオとビダを怪我で欠き、第3、第4DFで戦わなければならなくなった御大。ディフェンスラインは右から21歳のスモーリング、19歳のジョーンズ、23歳のエヴァ、30歳のエヴラと並ぶ。守備リーダーはまさかのエヴァ。そして彼らの後ろでど~んと構えるのが20歳のデ・ヘアってんだから、ユナイテッドもガナーズのことを笑ってられる状況じゃない。
 様変わりした守備陣とは対照的に、攻撃陣は開幕戦と同じ布陣。クレヴァリーとウェルベックはまたしてもチャンス。フレッチは来週にでも復帰との噂が。脳しんとうから回復したチチャリートもベンチで今か今かと出番を待っている。ライバルの足音が後ろからヒタヒタと近づいてくる中「若手ですから・・・」なんて甘いこと言ってたら、あっという間にポジションはなくなってしまう。ディフェンスのやりくりで御大が四苦八苦してる今こそ、活躍すべき時。


 開始早々、ユナイテッドのディフェンス陣にプレッシャーをかけだしたスパーズ。狙い所はもちろんデ・ヘアだ。GKにボールを戻した所をすかさず寄せてくる。まだチームになじめてないGKがいると知って放っておくほど老将レドナップは甘くない、ということか。ただ当のデ・ヘアが少しひやっとさせるものの、大したミスもなく落ち着いてやり過ごせたのは、ユナイテッドにとって悪いニュースではないだろう。
 細かい所でらしさを見せるレドナップだが、しかし戦術面では良くも悪くもオールドタイプの監督だ。最近流行のハイプレスやコレクティブ・カウンターをを武器に持ってるわけでもなく、攻撃も守備も特別組織的な動きはなくて、基本的には個人の能力任せ。欧州の並々ならぬ強豪を相手にしてきたユナイテッドにとって迫力不足の感は否めない。ユナイテッドの若造DF達も1対1なら自信はある。だからこそユナイテッドにいるわけだから。攻撃の方でも、敵さんが特別な守備をしているわけじゃないから、ボールと選手を動かしながら前に進めば、崩すのはそう難しいことじゃない。ユナイテッドの得意技だ。
 試合自体は両者ともに決め手を欠いて、スコアは0-0のまま折り返し。ただ、ユナイテッドに焦りの色はない。懸念の守備陣も大きな綻びはなし。これはもういけるんじゃないか、となかなかに楽観的な雰囲気で臨む後半戦。

 前半は左サイドからの攻撃が目立ったユナイテッド。エヴラとヤングのコンビはおそらくプレミア一だ。一方、右サイドのバックを務めるのは「あくまで俺の本職はCBですから」と主張するスモーリング。前半は守備を重視しあまり上がることがなかった。しかしそんな甘ったれたことを許してくれる御大じゃない。後半からはナニをちょい中に入れ、無理矢理上がるスペースを作り出す。御大にケツを叩かれてはスモーリングも攻めざるを得ない。運動量も劇的に増えて大変だが、それでもクレヴァリーら同輩の助けを得ながら、積極的な攻撃参加を見せはじめた。
 これがチーム全体の流れも良くする結果に。左右バランス良く攻撃を仕掛けるユナイテッド。押し込む時間帯が続く。そして生まれる先制点。右サイドのエリア近く、スモーリングからのパスを受けたクレヴァリーがダイレクトクロスを放つ。見事な放物線を描いたボールの先にいたのはウェルベック。後ろからのボールに合わせる難しい形となったが、冷静にコースを狙ってヘディングシュート。スパーズゴールを守るのは超反応が武器の超ベテラン・フリーデルだったが、あそこまでキレイにレンジ外にシュートを決められては動きようがなかった。ユナイテッド先制、1-0。
 それにしても本当にキレイなクロスだった。角度良し、スピード良し、落差良し。あのクロスが定期的に放れるなら、定位置確保も夢じゃない。ベッカム、フレッチャー等々、成功する右利きのベイブスにはクロスが上手いやつが多いのだ。

 勢いに乗るユナイテッドはその後も試合の主導権を握る。先制点を奪われて志気が下がったか、同時に運動量も落ちはじめるスパーズ。中盤には広大なスペースが。となると躍動するのがアンデルソン。元々はロナウジーニョ2世と言われた男。御大の手で随分と丸められはしたけれど、当時のテクニックが劣ったわけではありません。中央で果敢にドリブル突破を仕掛け始める。このアンデルソンの積極差が追加点を呼び込んだ。エリア前でパスを受けたアンデルソンがエリア内で構えるウェルベックに縦パス。直後ワンツーをもらうためガガガッと前に突っ込めば、スパーズディフェンスはついて来れない。そしてウェルベックが技ありのヒールパスで折り返し、アンデルソンがまたもや超反応・フリーデルのレンジ外へと流し込み、2-0。
 開幕戦ではインパクトを与えられなかったウェルベックが、この試合では1ゴール1アシストの大活躍。前回は変にゴールを狙いすぎて浮いていたが、今回はシンプルなプレーに徹していたご様子。特に何が秀でているわけでもないが、味方がいてほしい所にはキチンといて、良いクロスにはキチンと合わせ、フリーの味方にはキチンとパスを出す。周りはどえらい武器を持ったスターばかりなんだから、その中で自分も輝こうと無理をしなくても、基本的なプレーを着実にこなしさえすれば、点を取らせてもらえるし、点を取らせてあげられる。ミスター・オーソドックス、ウェルベック。激烈なポジション争いに少し光明が見え出した。

 点差を2に広げ、余裕の出てきた御大はクレヴァリー、ウェルベック、ヤングに代えチチャ、パク、ギグシーを投入と一気に3枚カードを切る。「ポールのやつは退いちまったが、俺はまだまだ終わっちゃいねぇ」と21年目のオールド・トラフォードに足を踏み入れるギグシ-。年をとることに厳しさを増すパス。ギグスぐらいの年になればやたらと走らなくったって、ベストベストのポジショニングをキープできる。フットボールをするのに一番必要なのはセンス。それを体現してみせる御年37歳。87分にはためいきもんのクロスでルーニーのゴールを演出。まだまだ若いもんには主役の座を譲るつもりはないらしい。

 話は変わるけど。スパーズは今年も大したことないかもね。戦術的に強くないってのもあるけど、精神的主柱がいないってのが一番痛い。ビハインドを負ったとき、しおれる背中をバーン!と叩いて引っ張ってくれる選手は誰なのか。トップ4入りを目指すスパーズ。そういう展開も少なくないはず。その精神的な闘いに勝てなければ、目標達成は難しいだろう。
 あと少し悲しかったのが、フリーデルが年を取っていたこと。プレミア一の反射神経で来るボール来るボールにいちいち反応してはじき返し続けた超人フリーデル。「こんな化け物からどうやってゴールを奪えばいいんだよ・・・」と絶望を感じたのは一度や二度の話じゃない。そんな超人も今年で40を迎え、未だに素晴らしいプレーを見せてはいるけど、しかしあの全盛期の威圧感はなくなっていたなぁ。悲しいけれど、これもやむなし。


 ということで。
 リオとビダを怪我で欠き、一時はどうなることかと思ったが、終わってみればクリーン・シートで完全勝利。実はリオの怪我の回復が予想以上に早いらしく、ガナーズ戦で復帰できるかもしれないというニュースが数日前耳にしたが、そんなに無理をする必要はないのかもしれない。特にジョーンズが良かった。スピードもあるし、粘り強いし、何より闘志が素晴らしい。勝つための意志、これを強く持つというのは実は案外難しい。先輩のエヴァに少し欠けているものだ。足下も上手いし、おそらくジョーンズも右サイドバックをやらせれば、難なくフィットするに違いない。御大は本当に良い買い物をしてくれた。
 ウェルベックとクレヴァリーも見事チャンスを活かしてみせた。この日のようなプレーが出来れば、冬にレンタルアウトなんて悲しい羽目にはならないだろう。今後、怪我の選手が続々と帰ってくるが、チャンピオンズにFAカップと試合数も激増する。巡ってくるチャンスは少なくない、どころか御大が若きベイブス達に頼る機会も多いはず。ベッカム、スコールジー、フレッチャーら連綿と続くベイブスの歴史をしっかり自分たちが紡ぐことが出来るのか。見込みはあるよ。楽しくなってきた。

 今季最初のオールド・トラフォードは、開幕2連勝だし、不安不安と囁かれていたデ・ヘアはなんだかんだで2試合連続完封だし、ルーニーは2試合連続ゴールだし、クレヴァリー、ジョーンズら若手はチャンスをキッチリものにするし、ギグシーは相変わらず健在だし、チチャは怪我から復帰するし、と良いことだらけの90分間でございました。いやはや、ごちそうさまです。

posted by myrowka |17:08 | マンチェスター・ユナイテッド | コメント(0) | トラックバック(0)
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2011年08月23日

ベンゲルという人を理解する

 さてさて。

 プレミアリーグが始まって早2週間。各ビッグクラブともまずまずのスタートを切る中、一人こけているのがベンゲルんとこのガナーズさん。シーズン開始早々、いきなり各方面から色々叩かれているご様子だ。
 ただ、ぶっちゃけまだ2試合終わって1分1敗。確かに褒められた成績ではないが、かといってそこまで叩かれる程の成績とも思わない。しかも1敗は強豪リバポー相手なんだし。なのにベンゲルはこの敗戦直後、「お先真っ暗なわけではない」とか「逃げるつもりはない」なんて、えらい大げさなことを言い出した。たった2試合しか行われていないのに、一体ガナーズに何が起きているのだろう。


 批判の一番の矛先はベンゲルの補強策にあるようだ。セスクがバルサに移籍し、ナスリのシティ加入も秒読みと言われる中、ベンゲルが獲ってくるのは例年通り、プレミアリーグ経験のない若い選手達ばかり。この間もアーセナルがFW獲得というニュースが流れ、一体誰だと名前を見てみればコスタリカリーグでプレーしていたジョエル・キャンベル君というまだ19才というピッチピチの若造だった。窮地なはずなのに、発揮されるのは相も変わらずのベンゲル節。そんな大将を見て「大黒柱が2人も抜けたってのに、そりゃないですよ…、ベンゲルさん」というのがガナーズ・サポーターや評論家の意見らしい。
 ただ客観的な立場からガナーズとベンゲルを観察してきた立場から言えば、ぶっちゃけ「今更、何言ってるの?」という思いは正直言ってある。


 先日、元ガナーズのマクリントックがこんなことを言ったそうだ。
 「ガナーズには芸術家ばかりで戦士が一人もいない」
 ってベンゲルがテクニックのないフィジカルやスタミナが武器の選手を獲るわけないじゃん!

 元ガナーズの選手で監督のジョージ・グラハムはこんな注文をつけたらしい。
 「若手の成長を促すためにも経験豊富な選手が必要だ」
 ってベンゲルがもうピークが過ぎて伸びしろのなくなった選手を獲るわけないじゃん!


 彼らはおそらく自分なんかよりよっぽどベンゲルのことを熟知しているだろう。ならもうちょっとベンゲルの変態的な独特な嗜好を把握出来ててよさそうなもんだけど。ベンゲルに戦士型の選手やベテラン選手の獲得を進言するなんて、こんな無駄なことはない。ぬかに釘、のれんに腕押し。
 ベンゲルが率いるガナーズはテクニックやスピードに秀でた若い選手だけでプレミアリーグを戦い抜こうとしている特殊なクラブである。この大前提を忘れてしまってはベンゲル・ガナーズを一向に理解することは出来ないし、先の2人のような解決しようのない憤りを抱いてしまうことにもなる。
 もちろん全くそうした選手を獲らないわけじゃない。数日前は中盤の潰し役・エムビラにオファーを出したそうだし、昔ユナイテッドからシルベストルを獲得したこともあった。ただそれはあくまで最小限。出来ることならあまり使いたくない。見ていてもっとうっとりさせてくれる、もっと成長を期待させてくれる選手だけで戦いたい。そんな選手たちにずっとずっと囲まれて暮らしたい。そうした特殊な性癖を隠すことなく堂々とさらけだし、世界一過酷なプレミアリーグで戦っている。ベンゲルとはそういう人なのだ。そんな変人物好きを一般のものさしで計ろうとするなんて、ある意味失礼というもんだ。


 ベンゲルに責めるべきところがあるとするならば、最後の最後、移籍が決まるギリギリのところまでセスクやナスリを引き留められると本気で考えていた節があるところだろう。2人の気持ちはとっくにベンゲルの下を離れ、バルサやシティの提示額も十分、お金が欲しいガナーズも出す気満々と、誰がどう見たって移籍するのは避けられない状況なのに、まるで2人の離脱を考慮してなかったようなベンゲルの対応には、確かに辟易するかもしれない。騒動の最中、セスクらの後継者となるべき選手を獲得しようという積極的な動きは見られなかった。よほど手塩にかけて育て上げた2人に抜けられるのが嫌だったんだろう。
 で、出て行った途端、ハッとして我に返ったかのようにルチョやエムビラに急にオファーを出す始末。普通こうした準備は時間をかけてじっくり行うもの。もう8月も中旬、彼らを軸にしたチーム作りをずっとしてきたクラブとしては、いきなりコンコンとドアを叩かれ「あんたんとこの中心選手を売って下さい。今すぐに」と言われたって、そりゃ「無理です」と答えざるを得ない。シティ等とは違ってその無理を可能にしたくなるような金を積めるわけでもない。案の定、むげに断られた。現実から逃げるとこうした痛い目に遭うという教訓。
 そうこうしている間に時間はどんどん過ぎてゆき、移籍市場の締め切り日が迫ってくる。日本のメディアの中には「本田にもチャンスか!?」なんて一見ご都合主義な記事を書く新聞社があるが、これは実は筋の通った見方だ。時間もないし、金もない。これまでの無策のツケをどうにかして払わなければならなくなった窮鼠ベンゲルにとって、テクニックがあって値段もそこそこの本田は、掴みたくなるようなワラの内の1本であることは確かだろう。


 ただ一方で「これもベンゲルの計算の内かも」という考えも捨てきれない。周りはセスクやナスリの代わりが必要だと執拗に主張するが、果たしてベンゲルにとってそれは本当に必要なのだろうか。繰り返すがベンゲル・ガナーズは他のクラブと同じものさしでは測れない。
 ごく一般的に考えればチームを支える2人の選手がいなくなったのだから、彼らを売ったお金で代替選手を獲るのが当然だと思う。
 しかし、相手はベンゲルだ。サッカーセンスのあるピッチピチの若者が大大大好きなベンゲルさん。セスクらの代わりとなると既に完成され経験を十分積んだ選手でなければ務まらない。しかしそれは見方を変えれば、誰か別の監督の手垢がついた選手だということ。まだ何色にも染まってない無垢な青年に、自分のヨダレをべちゃべちゃツケながら自分好みの選手に仕立て上げるのが生き甲斐の変態奇特なお人だ。何が悲しゅうて誰とも知らない人間の匂いの染みついた選手を俺が育てなければならん。それならウィルシャーやラムジーみたいな俺色の選手だけで戦いたい、というのが本音かもしれない。
 これまでもそうだった。プレミアリーグの雄、コロ、ギャラスの穴を埋めたのはまだ無名だったフェルメーレンやコシールニー。アデバヨルが抜けても既存の選手でなんとか対応した。よくよく考えれば中心選手が抜けたからといって、他のビッグクラブの中心選手を連れてくる、なんてことは数えるほどしかない。投資するのはいつだって中小クラブの若手選手だった。
 と言う風に今回、特別にベンゲルが動いてないわけじゃない。ベンゲルさんはいつも通り通常営業しているだけなのだ。
 いくらサポーターがセスクの代わりを獲れ!と叫んだって、残念ながら馬の耳に念仏。ベンゲルはそんな真摯な願いを右から左へ受け流しながら、今頃チェンバレン君や宮市君をどう料理してやろうか、と舌なめずりをしているかもしれないのだ。ってか多分そうだ。急遽補強に動き出した姿勢も、批判を和らげるためのただのポーズ、なんてことも十分あり得る。あれだけの移籍金があればもっと獲りたいダイヤの原石があるはずだもの。でも即戦力を獲らなきゃ周りの不満は解消されないし...というジレンマに悩まされるベンゲル。長年連れ添ったサポーターもサポーターなら、ベンゲルの性癖ぐらい理解してあげてもいいように思うんだけれど、そうもいかないもんなのかな。


 一つ忘れちゃいけないのは、この特殊なベンゲル流はクラブ公認だということ。ベンゲルの若者好きという性癖と若者だけでプレミアリーグで上位争い出来ちゃう手腕は決して裕福でないガナーズにとってはなかなかにありがたいものだ。移籍金もそんなにかからないし、選手の年俸も安くなる。ある程度育てば別のビッグクラブが大金出して買ってくれるし、そういう選手が抜けてもなんとかCLには出場出来るレベルを保ってくれるなんて、こんなお財布に優しい監督さんはおそらく世界中探してもベンゲルぐらいなもんだろう。
 それは言い換えればクラブがガナーズの現状をも容認しているということ。確かにベンゲルは毎年上位4チームに入るという好成績を残してはいるが、タイトルは6年間で一つも取れていない。6年前のタイトルもFAカップで、プレミアからは7年間も遠ざかっている。ファーガソンとプレミアを取りつ取られつしていたのはもう昔の話、今やその位置にはチェルシーが座って、自分はその2人の争いを少し下から見上げるようになってしまった。
 ガナーズにとって代わったのがチェルシーというのは偶然ではない。金に物を言わせぶ厚くした選手層が、ガナーズの位置を相対的に低くした。ベンゲルがタイトルを獲れていた時期とは時代が変わった。プレミアリーグを制するにはそれに見合ったお金が必要となった。結果は如実にそれを示している。
 もちろんガナーズにそんなお金はない。クラブもベンゲルもそれを重々承知している。だからこそクラブは、他のビッグクラブだったら更迭もんの6年間無冠という成績を前にしても、ベンゲルに責任を追及したりはしないし、ベンゲルもそこそこの成績さえ出せれば己の特異な性癖も放置してくれるクラブに留まり続ける。持ちつ持たれつの関係なわけだ。
 ただガナーズにとって不幸なのが、おくびにもそんなこと口に出せないってこと。ガナーズはビッグクラブ、狙うは優勝です、とガワだけでも繕わなきゃいけない。敬虔なサポーターや選手の中にはその言葉を信じる人も大勢いる。だからこそベンゲルの補強が下手なんじゃないかとマクリントックやグラハムみたいに実直にアドバイスする人も出てくるし、ウォルコットみたいにベンゲルがセスクに変わるスターを絶対に補強してくれると信じる人も出てくるし、ラムジーみたいにガナーズなら全てを勝ち取れると心の底から思い込む人も出てくる。
 でも。でも。そういう人を見る度、ベンゲル・ガナーズってそんなクラブじゃないよって、とってもとっても特殊なクラブなんだよって言いたくなって仕方がなくなる。そのビッグクラブごっこに嫌気が差し、セスクとナスリはガナーズを去ったわけだし。


 ということで。
 ベンゲルはさぞかしシティが恨めしいに違いない。かつてチェルシーにお金の力でトップ2の地位から引きずり下ろされた。そして今シティが同じくお金の力で自分をトップ4からも引きずり下ろそうとしている。しかも我がとこの愛する選手を強奪してまで。本当にここ数年でプレミアリーグはみるみるうちに変わってしまった。しかしガナーズは何年たっても昔のまま。
 チャンピオンズリーグにも出場出来なくなったなら、さすがにベンゲルもクラブから解雇させられてしまうのかな。ただ少ない資金でこれだけの結果を残せる監督が他にいなさそうなのも事実。なんでプレミアリーグはこんなにレベルが上がってしまったんだ…なんてガナーズとベンゲルの恨み言が今にも聞こえて来そう。
 数年後、少ない資金でより良い結果を求めたガナーズが、ベンゲルのクビを切り今からは想像もつかないようなスペクタクル度外視のガッチガチに守って固めるカウンターサッカーをやっているなんて未来は、そう荒唐無稽なもんでもないかもな、と思ったりする今日この頃。

posted by myrowka |12:59 | ひとり言 | コメント(5) | トラックバック(0)
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2011年08月19日

Under Pressure

 BGMにでもどうぞ。
 つhttp://www.youtube.com/watch?v=xtrEN-YKLBM


 さてさて。


 先日行われたスーペルコパクラシコ。1stレグは2-2、2ndレグは3-2と大接戦で内容も白熱した闘いだった。それでも「両チームとも素晴らしい試合を見せてくれてありがとう!」ってカンジにならないのは、やっぱり最後に起こった大乱闘が原因だろう。あれのせいで何とも後味の悪い結末を迎えてしまった。
 そんな中、今メディアを騒がせているのが乱闘時のモウさんの言動。これは語るより見てもらった方が早いので、Youtubeのリンクを貼っておく。

 バルサアシスタントコーチ、ティト・ビラノバへの目つぶし行為
 http://www.youtube.com/watch?v=pEBsdC2viOs

 メッシ・アウベスへの「くっさ!お前らくっさ!」ジェスチャー
 http://www.youtube.com/watch?v=tCYqIwmVI1g

 海外ではとっくにいろんなところで取り上げられてるこの行為。日本でも今日になってようやく我らがスポナビさんが記事にしてくれた。が、記事にするにあたりスポナビさんは苦悩したはずだ。というのも、この記事の下の方、

 試合後の記者会見でこのことについて聞かれたモリーニョ監督は、「ビラノバだか誰だか知らないが、隠さねばならないことなど何もない」とうそぶいた。 
 
 の部分は実はある細工が施されている。実際のモウさんのコメントには「ビラノバだか誰だか知らないが」の前に「ピト」が入っている。正確には「ピト・ビラノバだか誰だか知らないが」と言ったのだ(参照)。ではなぜスポナビさんはこのピトを省略したのか。
 ビラノバの正しい上の名前はリンクのとこにも書いているように、ティト・ビラノバ。「モウリーニョが間違えてただけじゃないの?」なんて思うかも知れないが、現地の人なら絶対にそんな間違え方はしない。なぜならピトはスペイン語でちんこを意味するのだから。そりゃスポナビさんだって呆れて省きたくもなる。


 その行為の是非をここでとやかく語るつもりはない。見てもらえれば、知ってもらえればモウさんが何をしたかは分かる。自分が言いたいのはそんな分かりきったことじゃない。これらの行為を見てまず純粋に思ったは「モウさんの心は“持つ”のか?」ということ。


 世界に数多いるサッカー監督の中で、モウさんほど敗北をを恐怖している人間はいない。勝てば相手の上に立てる。みんなからももてはやされる。スペシャル・ワンなんて異名はモウの一番のお気に入り。そんな賞賛の言葉を浴びながら敗者を見下ろすことを何よりの至福にしているのがモウさんという人間。
 ただ勝負の世界は常に勝ち続けれるほど甘いものじゃあない。負けるときだって当然ある。しかしそれはモウさんにとって地獄でしかない。負けるということはすなわち相手から見下ろされるということ。褒められることもない。負ければいつだって飛んでくるのは批判や罵声、聞き心地の悪いものばかり。スペシャル・ワンたる俺様が何だってそんなもん聞かなきゃならんのか。
 ゆえにモウさんは敗北を頑なに拒絶する。志向するサッカーもより負けにくいものにこだわった。ポルト、チェルシー、インテルとステップアップするごとにその傾向を強めていく。09/10シーズンのCLでは「ポゼッション?何それ、食えるの?」とバルサに75%の支配率をプレゼントして勝利した。シャビの「アンチフットボールで勝って何が嬉しい」という負け惜しみも、モウにとっては絶品のごちそう。そしてその後ヨーロッパを制覇したモウさんはイタリアでの勝利の味は堪能しつくしたと舞台をスペインに移した。

 なんてったってスペシャル・ワンだ。当然、俺の歩く道には輝かしい未来が待っている、と思ってスペインまでやってきた。が、しかし。待ち受けていたのは厳しい現実。初のクラシコ、5-0、惨敗。世界一の負けず嫌いモウさんも、さすがにこの結果の前では素直に敗北を認めるしかなかった。
 ここでモウさんは頭を抱える。「あれ?バルサってこんなに強かったっけ?」前のシーズンではちゃんと倒せたし、レアルでも何とか出来るはずだった。でもちょって待て。あの強さは反則じゃない?事実、化け物レベルのサッカーを実践していたバルサ。あれだけ完成されたパスサッカーを実現できたチームは長いフットボールの歴史でもあるまい。そんな史上最高のチームとライバル関係になってしまうなんて、ある意味モウさんもツキがなかった。
 せいぜいCLで数年に一度しか当たらないイタリアやイングランド時代はまだよかった。しかしここスペインでは1年で最低2回も試合をしなきゃいけない。しかもコパ・デル・レイやCLで勝ち進めば進むほど対戦数は増えていく。何が悲しいって周りのレベルが低いばかりにその可能性が少なくないってこと。
 もちろん全力は尽くす。これまで負けないサッカーで数々のタイトル、名誉を手にしてきたんだ。自信もある。ただ、それでもあのバルサを目の前にしたら自分が惨めに敗れ去るイメージしか浮かんでこないんだ。5-0の悪夢が何度も脳裏に甦る。

 嫌だ。そんなの絶対に嫌だ。負けたくない。絶対に負けたくはない。あのバルサにも。でもどうあがいても勝てる可能性は低そうだ。どうすればいい?俺はどうすればいい?こうしてモウさんの心は何かに押しつぶされ、ひん曲がっていった。そしてモウさんが出した結論はみなさんご存じ、例のアレ。「そうだ、バルサに八百長疑惑をふっかけよう!」
 バルサの特長はその高いボール支配率。当然ファールされる回数も多くなり、自然と敵チームに退場者が増える。これをバルサが審判が買収しているおかげ、ってことにすればいいじゃないか。
 最初は徐々に「あれ、またバルサの相手に退場者出たの?」と遠回しににおわせていく。ゴシップ好きのスペインメディアはすぐに食いついた。これを繰り返し、じわじわとバルサを追い詰めていくモウさん。
 仕上げは当然モウさんが自ら行う。「バルサの対戦相手には退場者が出る」という自説を証明するのは至って簡単。選手にラフプレーを指示すればいいだけだから。実際にメッシやシャビらバルサのテクニシャンを止める有効手段でもある。監督の指示通り、ガンガン体を蹴りに行くバカ正直なレアルの選手達。当然の報いとして出されるレッドカード。そして我がとこの選手が退場になったのにモウさんはなぜか喜々としてこう語るのだ。「ほら見ろ!やっぱりだ!バルサは審判を買収してるんだ!ズルしてるんだ!だから俺は負けちゃいない!負けちゃいないんだ!」


 絶対に負けたくない。その姿勢はプロとして、監督として必要不可欠なもの。誰よりも強くその意志を持つというのはそれだけで立派な才能で、その点でモウさんは間違いなく世界有数の監督だと思う。でも強すぎるエネルギーに押しつぶされ、それを間違った方向に向けてしまった。負けたくないという一心でモウさんがたどり着いた境地。それは勝つことではなく、負けを認めないことだった。
 しかし結果は残酷に目の前に横たわる。モウさんがいくら「バルサはズルをした。だから俺は負けてない」と叫んでも、昨季レアルの優勝カップ陳列棚に飾られたのは国王杯の一つのみという事実に変わりはない。本当に欲しかったリーガとCLのカップはバルサのそれに並んでいる。確かに昨季はモウさんにとって負けてないシーズンだったのかもしれない。だってバルサはズルして勝ったんだから。でもそんなの、誰も認めちゃくれない。まるで子どもの屁理屈を聞いてるようだ。
 激しいプレッシャーから解放されたオフ。落ち着いた頭でモウさんは冷静に自分が置かれた状況を把握することが出来たのだろうか。今シーズンのリーガを占うスーペルコパクラシコ。モウさんの見せたサッカーはこれまでのような自陣を11人で固める消極的なものではなく、バルサと真っ向からぶつかりあうサッカーだった。引いてダメなら押してみろ。「守備的なサッカーをアンチフットボールと言い張るなら、お前らのお望み通り“正当な”フットボールで正面からぶっつぶしてやんよ!」と言わんばかりのレアルのサッカーは、敵ながら見ていてあっぱれと舌を巻いた。バルサが本調子でなかったものの、このままいけば今シーズンは良いライバル関係を築けるのかもしれない、なんて淡い期待をこのときは本気で抱いてしまった。
 そしてその3日後に見せられたが冒頭のアレである。


 マシになって帰ってきたかと思ったら、暴力に侮辱のオンパレードなんて、こんなに悲しい話はない。
 バルサを押し込み続けた2ndレグ前半終了間際までのモウさんの恍惚な思いは想像に難くない。あのバルサを俺が抑え続けている。勝てる。このまま行けば確実に勝てる。
 しかし、バルサは強かった。メッシの勝ち越し弾を前にふつふつとふくれあがっていく憎悪。その発露が冒頭の2番目に紹介したあの行為である。
 しかし、頼もしい我が選手達はその後も攻勢を続け、やがてベンゼマのゴールで同点に追いついた。昨シーズンから堪えて使い続けたベンゼマがここぞで活躍という監督冥利に尽きる展開。チームも勢いに乗る。ベルナベウでは2点取られたが、カンプノウでも2点取ってやった。あとはこのまま逆転するのみ。昨季やつらに見下ろされた位置で今季は俺がお前らを見下ろしてやる!絶対に見下ろしてやるんだ!
 しかし、バルサはバルサだった。メッシがまたもや終了間際に勝ち越し弾。モウさんの夢は、にっくきメッシの鬼のような活躍により、またしても儚く脆く崩れ去った。
 攻撃的に出ても、これだけ有利に試合を進めても、バルサには勝てないのか。屈辱感がモウさんを包み込む。こうなりゃ昨季と同じ手段で...と思ったがそういやこの試合は真っ向から勝つ気でいたため、まだ退場者を出していない。バルサの対戦相手からは必ず退場者が出るはずなのに!バルサは審判を買収してるはずなのに!と錯乱していくモウさん。ということでマルセロがすかさずセスクに後ろからカニバサミ。
 しかし、あまりにも露骨にやり過ぎた。あれじゃ誰だって退場させられるだろ。もうちょっと分かりにくくやれよ、と思っても時既に遅し。あまりにひどすぎるファールに気がつけば両軍もみ合いに。あーあ、このままじゃまた負けちまう。またバルサに負けちまう。周囲の混沌にも促され、自らの中で蠢く黒いものを抑えきれなくなったモウさんが取った行動。それが冒頭1発目の目つぶしだ。
 こうなってはもうどうしようもない。この世のいったいどこに他人の目をつぶしておきながら「俺は正しいことをしたんだ」と納得させられる人間がいるだろう。いかに口達者なモウさんでも流石にそれは無理だ。じゃあもう開き直るしかない。もうどうなったっていいや、とやけばちになった結果、口走ったのがあのちんこ発言である。


 ということで。
 負けたくない。その余りに強すぎる気持ちをモウさんは抑えきれていない。今後彼がどんな行動に出るか、もう予想がつかない域に達してしまっている。
 そのプレッシャーが心身に及ぼす影響も少なくはないだろう。元リバポー監督のウリエをはじめ監督の重責に押しつぶされて体を壊した人もいる。普通に監督やってくだけでも大変なのに、モウさんはわざわざ舌戦をあちこちで展開して人並み以上に精神に負担をかけているんだし。口論時における興奮はSEXのそれを軽く上回るという。そんな過度な興奮状態に常に身を置いているってんだからその消耗度合いは想像もつかない。元々負けた悔しさを他人にぶちまけることでしか御すことの出来ない人だ、心が強い方でもなかろうに。
 モウさんはおそらくレアルの監督を担うことの重みを軽く考えすぎていたのだ。レアルの監督をするということはすなわちバルサとライバル関係で居続けるということ。でもバルサを相手に常に勝ち続ける、または負けても審判のせいにしつづける、なんてのはいくらなんでも無茶な話。
 ファンも当然厳しい。「審判が悪かったです。だから僕は、レアルは負けてないのです」なんて与太話を惚けて聞き入れてくれるような生やさしい人たちではない。他の誰よりも負けたくない人間が仕事を続けるには、レアル・マドリードはあまりに過酷すぎるクラブだ。
 理性で抑えきれなくなった蛮行のせいで職を追いやられるのが先か。それともプレッシャーに押しつぶされ体が壊れるのが先か。それとも危ういバランスのままレアルの監督であり続けるのか。試合後モウさんを批判したピケがこう話している。
 「最近はファンも異常な反応をするようになってしまった。リミットを超えているよ。なんらかの対応をしなければならない」 
 あの乱闘を見れば誰だっておかしいことぐらい分かる。超えてはいけない一線を超えてしまっている。昔のクラシコはこれぐらい激しかった、という見方も一部ではある。それは確かにその通りで、昔はロベカルやルイス・エンリケらがピッチ内外で激しい争いを繰り返していた。しかし、それでもくさいくさいと相手を侮蔑する人間なんていなかった。試合中に横からこそこそと近づいて不意に目つぶしをする人間なんていなかった。目つぶしした相手に試合後謝罪どころかちんこ呼ばわりする人間なんていなかった。
 何かが壊れている。誰かが対処しなければならない。それは果たして誰なのだろう。全く検討もつかない現実が、悲しい。

posted by myrowka |18:06 | ひとり言 | コメント(5) | トラックバック(0)
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2011年08月19日

U.N.G 11/12 vol.2

 さてさて。


 日本ではあまり報道されてないユナイテッドに関するニュースを紹介するこのコーナー。スーパー不定期連載なのはご愛敬、ということでご勘弁。


クレヴァリーをかばうリオ兄貴

 今季、偉大なるポール・スコールズを失った御大。17年間もチームに貢献してくれたレジェンドを失った喪失感は計り知れない。どうやってこの穴を埋めようか。スナイデル?モドリッチ?はたまたナスリ?国内外をいろいろ眺めてみるけど、イマイチピンとくる選手がいない。お金の問題もある。新しいサイドアタッカーとエドさんの後継者、そして若手DFに早々にお金を使ってしまって、財布の中はお寒い状況。
 うーんうーんと頭を抱えている中、ふと頭を上げるとキラキラと輝く素材が一人。掘り出し物は意外や身近な所に潜んでいた。ということで急遽スコールズの後継者候補として白羽の矢が立った新たなベイブス、トム・クレヴァリー。コミュニティー・シールドでは先発出場、そこでの活躍が認められイングランド代表にも選出と、まるで絵に描いたようなシンデレラ・ストーリーを歩む彼。さらには開幕戦でもスタメンを張るなど、御大が彼に寄せる期待は確かなものだろう。
 瞬く間にその名が英国中に知れ渡ることになったクレヴァリーだが、この状況を心配そうに見つめる人が一人。ユース時代から見てきたという、頼れる兄貴リオ・ファーディナンドだ。

 「トムは今いろんな選手と比較されてますけど、トムにはトムの良さがありますから。誰でもない選手になってくれると思います。冷静に状況を判断できて、縦にボールを入れるのも上手い。そういう意味でニュー・スコールズみたいに言われることがありますけど、それが変なプレッシャーにならなければいいですね」

 「トムのことはアカデミーの頃から知ってますけど、当時はとても細い選手で、こんなんでやってけるのかと心配でした。でもそれからものすごいトレーニング積んで今は立派な体になりましたよね。レンタルでいくつかのクラブで経験も積んで、頼もしくなって帰ってきました。才能は誰もが知るところです。日曜日の試合もユナイテッドでのプレミアデビュー戦ではありましたけど、去年ウィガンでもプレミアは経験してましたからね。ロベルト・マルティンスさん(ウィガンの監督)もインタビューとかでトムは良い選手だって何度も話してましたし、ユナイテッドでも素晴らしい活躍をしてくれるんじゃないでしょうか」

 スコールズが引退した後に表れた新たな生え抜き選手。もうそれだけでみんなはスコールズの後継者って期待してしまう。プレッシャーになるからやめたげてってリオの気持ちも十分分かるけど、それは避けられない話。
 ただプレッシャーに飲まれている暇はないと思う。勝負の世界は残酷なまでに厳しい。「みんなから期待されすぎ焦って、自分本来のプレーが出来ませんでした。テヘッ♪」なんて甘ったれたこと言ってたら、その間に他の選手が活躍して、プレー時間はみるみる減ってって、さらに次のシーズンにはとんでもないビッグネームがやってきて、気がつけば居場所がどこにもない・・・なんてことがザラすぎる業界。ギブソンが何年そんな泥沼にはまったままか、チームメイトのクレヴァリーが知らないわけはないだろう。
 一個一個目の前のチャンスにがっついて結果残していくしか道はなし。開幕戦のような出来では厳しいかもよ。




デ・ヘアにチームに馴染むコツを伝授したかったチチャ先輩


 昨シーズン、メキシコのクラブ・グアダラハラから鳴り物入りでユナイテッドにやって来たチチャリートことハビエル・エルナンデス・バルカサル。プレミアリーグのプの字も知らない若造が、世界で一番厳しいと言われるリーグで1年目からバカスカゴールを奪っていく様は誰もが驚いた。そんなチチャが新しい環境にすぐさま順応できた秘訣を語る。

 「全く知らない国で生活を始めるというのは本当に大変でした。自分の場合は父さんと姉妹が一緒に移り住んでくれたおかげで大分楽でしたけど。食事や習慣が違うっていうのもありますけど、一番堪えるのはやっぱり一緒に思う存分しゃべりあえる仲間がいなくなることです。自分は英語が普通にしゃべれたんで、生活するうちにすぐに慣れてこっちの人ともコミニュケーションが取れるようになりましたけどね。だから英語を覚えるのがチームに馴染む上で一番大事だと思います。ロッカールームで一人ぼっちになることもないし、チームメイトのこともすぐに分かることが出来るんで。その点ではユナイテッドのスタッフや選手はホント自分に良くしてくれました。早く恩返しがしたいですね」

 おそらくは、今年スペインからやってきて入団早々、各方面からいろいろ叩かれているデ・ヘア君に向けられたであろうこのコメント。ただ先輩からのありがたいお言葉だと思って聞いてみたら、デ・ヘアはかなり辟易するに違いない。「新しい生活に慣れるのは大変ですけど、僕は家族も一緒に来てくれて、英語もかなりペラペラだったんで大丈夫でした」って、えらい自慢話に聞こえるのは自分だけかしら。ああ見えてチチャは実は結構イタイやつなのかも知れない。
 アドバイスはあまり役に立たなかったかも知れないけど、年齢も近くスペイン語をしゃべれるという意味ではチチャはデ・ヘアにとってかなり頼れる存在に違いない。あと母国語がスペイン語なのは試合に出れるレベルではバレンシアぐらいか。通常会話ぐらいなら困らないというポルトガル語をしゃべれる選手となるとダ・シウバズ、アンデルソン、ナニと、そこそこ数は増える。これだけいれば何とかなる、かな?それにしてもいつの間にやらユナイテッドにもラテン系の選手が多くなった。
 何はともあれ英語を一日も早くマスターすることに超したことはない。この点ではチチャ先輩は非常に正しい。ユナイテッドも移籍が決まってから毎日英語のレッスンを受けさせているというし、言語の問題はは御大も重々承知でデ・ヘアを獲得しただろうから、何も心配する必要はないんだろう。
 これは長友を見て強く思ったことだけど、選手として成功するには実力ももちろん大事だけど、俗に言う“コミュ力”も同じぐらい大事。いくらすげー選手でも「プロは結果だけ出せばいいんだから、別に無理して仲良くする必要はないし」なんてすねたこと言ってたらフィールド上でもチームメイトのサポートは受けられないだろうし、逆に実力は微妙でも「あざーっす!」って無理してでも先輩達の中に入っていく方が、色々と世話も焼いてもらえてドンドン伸びるっていう。これは別にサッカーだけじゃなくて、どの世界でも同じ事が言えるんだろうけど。
 果たしてデ・ヘアはどちらのタイプか。長友曰く、万国共通でウケるのは「下ネタ」だそうです。ユナイテッドで生き残るためだ。頑張れ、デ・ヘア。負けるな、デ・ヘア。

posted by myrowka |00:36 | マンチェスター・ユナイテッド | コメント(0) | トラックバック(0)
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