2008年05月17日

U.N.G

さてさて。


 マンチェスターのいろんなニュースを探していたら、ちょくちょくおもしろいものに出くわす。そんな中からいくつかの記事をピックアップし、ざっくりさっぱり伝えていく不定期コーナー、U.N,G。何の略かはこんなブログに立ち寄るほどのフットボールファンなら分かってくれるはず。ざっくりさっぱりがこのコーナーのモットーなんで全訳することもなけりゃ、バリバリ意訳するし、個人解釈もモリモリです。


「ギグシー、スーパーサブに目覚める?」
(元記事:I can be Man United's supersub, says Ryan Giggs.)

 ウィガン戦で途中出場し、ユナイテッドの優勝を確実なものにする2点目を挙げたギグシー。どうやらその味が大層格別だったらしく、「オーレの穴は俺が埋めてやんべ?」と思っているとかいないとか。チャンピオンズ決勝でチャールトンの記録を更新することが確実視されているギグシー。スタメンで出るか途中出場するかは分からないが、途中出場した暁には、あのテディとオーレのおいしすぎるゴールを真似してやりたいと思っているかも。以下ギグシーの起用論。ギグシーの記録更新に対する考えとあのゴールを決めた時の心境もあったのでそれも添えて。

「そりゃ俺も歳だし、ナニやパクチーもいるから全試合スタメンで出れるなんて思っちゃいない。仕方のないことなんだ。ベンチを受け入れる覚悟も現代フットボールを生き抜くためにゃ必要なんよ。そういう時はすねてないで、途中から入って、ガツーンとかまして、監督に『あいつをスタメンで起用するべきだった!』と後悔させてやるのが一番なのさ」

「チャールトンの記録に並べたのは嬉しいけど、でもタイトルを獲れたことの方がより嬉しい。まだ記録云々を考える段階じゃないだろ実際」

「長い間ゴールを決めてないんで、どう喜びを表現すりゃいいか忘れちまってた。でもあの日は雨が降ってて滑りやすかったからダイビングすることにした。そしてその先には俺たちのファン。もう最高」



 インタビューを読んでいると、スーパーサブを気に入っているわけではなく、あくまで「スーパーサブの仕事でも文句なくやりまっせ」ということらしい。あくまでも仕方なくベンチ入りを受け入れ、途中出場したときは次はスタメンに選ばれるよう全力を尽くすという姿勢はまだまだギグシーの中で向上心が消えていない証拠。ホント頼れる兄貴だ。チャンピオンズは任せましたよ。




「御大、BBCを未だ許さず」
(元記事:Ferguson will never talk to the BBC again.)

 BBCが作った御大とその息子のドキュメンタリー番組を見てブチぎれたことのある御大。息子が御大の名声と地位をむさぼってる的な内容だったらしい。その番組を見たわけではないから、こちとらどうともいえないけれど。以下"An Audience With...”という番組で御大が語ったBBCに対する感想。

「BBCの記者は傲慢すぎる。そんなにBBCが偉いのか。やつらは謝るってことを知らん。おっきな会社だし、世間的信用もそれなりにあるからそうなってしまうんだろうがね。あまりにおっきいから自分たちが訴えられないとでも思ってるんだよ。もう私は二度とBBCのインタビューに答えてやらん」

 BBCの不遜な態度に切れているのは何も御大だけじゃないそうで。去年選手の移籍金をピンハネしてるか何かの疑いをかけられたサム・アラダイスとハリー・レドナップもBBCのインタビューは拒否しているらしい。



 これは実は前フリで。この番組で御大はかなり饒舌だったらしく、いろんなことを語ってくれている。これがなかなかにおもしろい。一部切り抜き。

ベッカムについて

「結婚がベッカムを変えてしまった。結婚するまでは何の問題もない良い選手だったのに。夜まで練習する好青年だったんだ。それが結婚して一躍メディアの対象となってしまった。いわゆるセレブになってしまったんだな。その時からもう昔には戻れなくなってしまった。彼に対するフットボールの割合が相対的に小さくなってしまったんだよ」

スコールズについて

「スコールズはかなりシャイなんだ。ピッチ外で目立つのを嫌う。そんなポールをからかうのが大好きでね。スコールズに近寄ってこう言ってやるんだ。『おい、スカイがインタビューしたいそうだぞ』。するとスコールズの顔からさーっと血が引いていくんだ(笑)。もしスコールズがもう少し目立ちたがりだったなら、今ほどの選手になっているか疑問だな」

スタムについて

「スタムを放出したときはアキレス腱の怪我から復帰してきたばかりで、もう全盛期の頃の働きは難しいと考えてたんだ。そんな時ラツィオから巨額のオファーが来た。当時断るにはあまりにもったいないオファーだった。でも正直言って当時の考えは間違いだったと思ってる。今でもアヤックスで良いレベルを保ってるのがその証拠だ」

W杯でのルーニーとクリ坊のいざこざについて

「ワールドカップの決勝が終わった後ウェインが私に電話をしてきたんだ。『監督、良いアイデアがあります。クリスティアーノと僕とが会談して、2人の関係は全然良好だとアピールするんです』って。私はそれはやりすぎだと思った。代わりに私と最高責任者のジルとでポルトガルに向かい、ロナウドと話をしたんだ。彼は納得してくれて、別に今後もユナイテッドでプレーすることに不安はないと言っていた。一応イングランドの彼の家に警備は増しておいたけど」

自身が認める監督について

「チャールトンのパーデューは持ってるものがある。若くて良い監督だ。ロイ・キーンには良い時期に良いチャンスが巡ってきた。ロイもまた気力のある監督だ。古株で言えばアラダイスは影響力のある監督だ。アラダイスのマネージングはとても変わっていて、スポーツ科学を多分に取り込んでいる。ボルトン時代、確かあらゆる方面のスタッフを16人も抱えていたはずだ。そうして彼はボルトンを弱小チームから今のようなチームにレベルアップさせてみせた」



 やっぱりまだベッカム、というかビクトリアを許してないんだなぁと再確認。御大からベッカムを奪った女。嫉妬深い性格なのか、やはり歯に衣着せぬ言い方になっている。まあでもあのルックスならビクトリアと出会わなくても、いずれはセレブになっていたとは思うけど。個人的にはベッカムが個人として下した決断なんだから、もうちょっと理解してあげてもいいとは思う。
 そんなベッカムへの当てつけかのように、メディアに出たがらないスコールズをべた褒めする御大。やっぱり指導者としてはこういった選手の方が好きなんだろう。ギグシーもスコールズと同じでメディアに出るのを嫌う男。ファーガソン帝国で長期間地位を維持するには実力の他にも必要なものがある。
 その必要なものを持っていなかったスタム。あの2人の性格を考えれば別れは必然だったような気がするけれども。でも御大にはスタムを放出したせいでセンターバック不足に陥った苦い過去が。その過ちを素直に認めるところに御大の懐の深さも垣間見る。
 御大の認める監督には元教え子マーク・ヒューズやスティーブ・ブルースの名前が出てくるかと思いきや、そんなに甘いお人ではなかったか。そんな御大が認めるのはアラダイス。ユナイテッド以外のチーム事情にはとんと疎いもんで、アラダイスがそんな監督だったとはつゆ知らず。頑固親父っぽい風貌からもっと精神論をかざす監督と勝手なイメージを持ってたが、今時のプレミアはんなもんで生き残れるようなリーグではもうないか。

posted by myrowka | 01:31 | Manchester United | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年05月13日

長い間

プレミアリーグ07/08 第35週 ウィガン vs ユナイテッド


 ユナイテッドの布陣はGKエドさん。DFラインは右からブラウン、リオ、ビダ、エブラと最強。中盤はギグシーが外れて、右からクリ坊、キャリック、スコールズ、パクチー。ギグシーを外してきたのが意外だったが、御大的にも情をとるか、実を取るかかなり難しい判断だったろう。FWはルーニーとテベ公。まあここで手を抜いても意味はなし。当然全力でぶつかっていく。


 勝てば優勝。引き分ければ追い抜かれると思って間違いない。こんな展開はトレブル以来9ぶり。すなわちユナイテッドの選手のほとんどが味わったことのない未知の境地。一番恐れるべきは失点だが、かといって点を入れないと勝つことも出来ない。相手が攻めてきてくれればお得意のイタリアモードで高速カウンターを炸裂させることも出来るのだけれど、ウィガンにそんなことを望むべくもない。攻めるべきか、守るべきか。どっちつかずのユナイテッド。思い切りのいい攻撃が出来ない。崩しの場面でミスが目立つ。それも当然といえば当然。今日は100%勝たなければいけない。どんなことがあっても何があっても絶対に。いつもの試合とは訳が違うのだ。そんなユナイテッドの緊張が画面を通してからでもヒシヒシと伝わる。スタジアムもやけに静かだ。この90分の間に何が起きるのか、それをただただ見守っていた。


 そんなユナイテッドの相手がウィガンだったのは幸運だったと個人的には思う。ウィガンは明らかにユナイテッドを「リスペクト」していた。ユナイテッドにとってこの試合がどれだけ重要な意味を持つかを、ウィガンの選手、そして監督がよくよく理解していてくれてたと個人的には思う。これがもしマグパイズやアストン・ヴィラなどだと話が違っていただろう。ウィガンの監督スティーブ・ブルース。1980年代後期から1990年代中期にかけ王者ユナイテッドを復活させ、現在の王者たるユナイテッドの基盤を築いた男の一人。こんな時に歴史が物を言うのだ。チェルシーにはないユナイテッドの強み。
 そんなブルース率いるウィガンの選手がエリア内でルーニーを倒しPK獲得。出来た話じゃないか。それでもまだ終わったわけじゃない。これを決めて初めて1点。蹴るのはもちろん記録がかかったクリ坊その人。ユナイテッドファンの頭によぎるカンプ・ノウのあの悪夢。ここJJBスタジアムでも恐ろしいほどのブーイングがクリ坊に向かって飛んでくる。だがしかし。「カンプ・ノウはこんなもんじゃなかったぜ」と言わんばかり、右隅へドン。決まった。マジで決まった。ホントに決まった。ユナイテッド待ちに待った先制点。崩れ落ちた人も少なくなかっただろう。かくいう私もその一人。もうこういう時は声が出ないね。
 それにしてもクリ坊は本当にすごい男だ。ここで決めるとは本当に伊達じゃない。すごい。本当にすごい。すごいとしか言い様がない。すごい。クリ坊は本当にすごい。この試合ではただただクリ坊のすごさを痛感した。


 ユナイテッドが恵まれたのは対戦相手だけではなかった。この日の主審、スティーブ・バネット。彼もまたユナイテッドをリスペクトしていた男の一人だと個人的には思う。35分のウィガンのカウンターを止めたスコールズのファウル。誰もが2枚目のイエローカードを覚悟したはずだ。あそこでイエローカードを出さなかった理由。それは個人個人が勝手に考えればいい話だと思う。俺は素直にバネットさんにありがとうと言いたい。あそこでスコールズが抜けていたらきっと違った結末が待っていたに違いない。それがユナイテッドにとってポジティブなものか、ネガティブなものかは別として。
 一応バネット氏という審判を理解するための判断材料として2つの事実を置いておこう。1つめはあのニュー・ウェンブリーで行われた2006-07シーズンのFAカップ決勝、ユナイテッド対チェルシー戦で笛を吹いているという事実。その試合での1シーン。ルーニーのクロスに飛び込んだギグシーのシュートをチェフがゴールラインギリギリのところでキャッチしている。これをバネット氏はノーゴールとした。その後ドログバがゴールを決め、チェルシーがFAカップで優勝している。2つめの事実は今シーズンの3月23日に行われたユナイテッド対リバポー戦で笛を吹いたという事実。ここでピンと来た人は素晴らしい。そう、33分にマスチェラーノに2枚目のイエローカードを提示し、退場させたのはこのバネット氏なのだ。
 こういうことを考え出すとキリがないが、ハッキリしているのはバネット氏はユナイテッドの優勝がかかったこの大事な試合を、決して自らの力でドラマティックなものにしようとはせず、終始ユナイテッドに対し敬意を払った態度で試合をコントロールし、ユナイテッドの栄冠に華を添えてくれたということ。


 先制点をとれたことで最初の壁を越えれたユナイテッドだったが、それでもまだ試合終了までには60分ほどあった。一番怖いのは失点という事実に変わりはない。決して無理はせず、背が高い選手がいるわけでもないのに、サイドからのクロス中心で攻める展開が続く。しかし後半に入り、時間が進むにつれボールをキープ出来なくなっていった。スコールズ、キャリックの支配力が薄れつつある。クリ坊もサイドに張りっぱなしで違いを見せることが出来ない。ユナイテッドのラインも下がっていたし、何より前にスペースがないとやっぱりクリ坊はキツイか。バルサ戦、チェルシー戦と同じクリ坊だ。
 ここいらがカードの切り時と御大が動く。イエローカードのせいで守備面で腰が引け気味だったスコールズに変え、ハーグリーブスを投入。そして運動量のパクチーを下げ、ここでギグシー投入だ。偉大なるレジェンド、チャールトンの記録に並ぶ758試合出場。そういうご祝儀的な面が強い采配だと個人的には思っていたのだが。もしかすると御大はこの後起きるあのドラマも予期していたのだろうか。


 フットボールでは何が起こるか分からない。んなもん誰だって分かってる。だから大事なのは2点目だった。1点リードなんて何の足しにもなんなかった。2点目!2点目!!2点目がほしい!!!
 と思ってたら入った!!!最初は何が起きたか分からなくてとまどう。ギグシー、ゴール前でなぜかどフリー。持った。蹴った。入った。入った。入った!!!ギグシーも最初ちょっと何か分かってなかったんじゃないかな。お?入ったよな?入ったよな?入ったーーー!!!って感じでスピードを上げるギグシー。おちゃめなんだから。
 もうね。こういうシーンに分析を入れるのは自分は野暮だと思う。感覚感覚。もう反射に近いプレーだったと思う。それに加えるなら神様がくれたプレゼントとでも付け足しときゃいいんじゃないかな。優勝をほぼ確実にするゴールを決めたのがクラブ記録となる758試合出場を果たし、この優勝を持って18冠と優勝最多記録を更新する張本人だなんてそんな出来すぎた話、こういう言葉でしか説明できないじゃない。
 なぜあそこでギグシーをフリーにしてしまったのか。その理由をウィガンの選手に問いただしても無意味だろう。なぜかあそこでフリーになって、ルーニーがナイスパスして、ギグシーがナイスシュートをしたのだ。それで十分じゃないか。


 JJBスタジアムに響き渡るユナイテッドのチャント。もう決まりだ。もう決まった。もう優勝だ。もうユナイテッドの優勝だ。そして鳴り響く試合終了の笛。長かった。本当に長かった。本当に長かった長かった長かった90分、1シーズンが終わった。ユナイテッド17回目の優勝。2連覇。そうだ。そうなんだ。リバポーの、アーセナルの、チェルシーの上に立ち、ユナイテッドがプレミアの王者になった。なんと、なんと誇らしい。
 スタンフォードブリッジで完敗したときは正直どうかと思ったけど。うん、やっぱりユナイテッドが王者だよ。なんかこの試合を見てそう思った。チェルシーもチェルシーでボルトンに追いつかれてちゃいかん。勝ち点が同じということを拠り所にするべきだった。それだけでプライドは保てたと思う。勝ち点同じだし、普通に倒してるしって。あそこで入れられてたら正真正銘ユナイテッドが王者ですよ。




 あー、長かった。ホント長かった。それが今の率直な感想。でも良かった。長かったからこそ感動も一入というもので。この誇りを胸にまた1年間戦える。それが何より嬉しい。王者にしか味わえない特権だ。

posted by myrowka | 00:30 | Manchester United | コメント(3) | トラックバック(0)
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2008年05月12日

感謝の正拳突き100万回

やった!!!

ありがとう!!!

すんげえありがとう!!!

濃かった1シーズン本当にありがとう!!!

俺ユナイテッドファンで良かった!!!

本当にありがとう!!!



おめでとう、ファギー!!!

おめでとう、ギグシー!!!

おめでとう、クリスティアーノ!!!

おめでとう、みんな!!!

おめでとう、俺たち!!!



本当にありがとう!!!

本当におめでとう!!!




冷静にレビューを書ける気が毛頭しないので、それは後ほど。

今はこのただ単に俺の今の気持ちを書き殴った文章だけで。

posted by myrowka | 00:59 | Manchester United | トラックバック(0)
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2008年05月06日

行く人来る人

さてさて。

 
 気がつけば明日に迫っているクラシコ。タイトル争いも何もないクラシコ。レアルにとっちゃバルサに優勝を祝わせるため(優勝チームを迎えるチームはパシージョという花道を作らなければいけないという今のバルサに取っちゃ屈辱的でしかない慣例があるそうだ)、バルサに取っちゃクラシコ翌日に更迭が承認される予定のライカールトの最後の思い出作りぐらいしか意味のないクラシコ。
 今バルセロナではバルサがパシージョを作るかどうかが話題になっているようだが、個人的にはするんじゃないかな、と思ってる。というかした方が今のバルサ、ライカールト・バルサらしいと思う。ライカールトはどんな時でも相手に敬意を払う素晴らしい人だった。このパシージョを拒否するということは、そんなライカールト・デル・バルサの晩節を汚しそうで。ここ5年間バルサを築き上げてきたのはライカールトだ。今シーズンが終わるまではライカールトがバルサの監督なんだから、最後までライカールトの好きにさせてやってほしいと思う。そりゃ悔しいよ。反吐が出るほど悔しいよ。でもその屈辱は来季反撃するためのエネルギー、なんてのがライカールト最後の置き土産って何だか素敵。ただそれだけのこと。
 ライカールト最後のクラシコ。これを俺は全力で戦ってほしい。5年間ライカールトはバルサで何をしてきたのかを最後にもう一度見せてほしい。カンプ・ノウでのユナイテッド戦で見せたあのバルサ。相手を圧倒するあのバルサ。あんなフットボールが今でも出来るんだから。浮かれ気分の王者相手に本当の魅せるフットボールとはこれなんだぞ、と。シュスターにこんなフットボールが出来るのか、と。終始ボールをキープし、今や昔ベルナベウに大喝采を起こさせたあのフットボールをもう一度。今のバルサにはそれが出来るとまだ思ってる。その点ではエトーやデコがいなくて良かったとなんとなく思う。最後の最後、首都のチームにえも言われぬ屈辱感を味あわせ、最後を飾ろうじゃないの。
 

 このクラシコの後にライカールトの更迭が理事会によって承認されるようだ。そしてそこでペップの監督就任が決定されるらしい。これまではバルセロナ2大紙でよりラポルタに近い新聞スポルトのみがペップ新監督を執拗に報道していたが、もう片方のエル・ムンド・デポルティーボもそれに追随した。内容を読んでみてもおそらく間違いないだろうと思う。新監督は99%ペップだ。
 ペップ。安易で尚早な決断だと個人的には思う。監督デビューは今季。3部リーグ(実質4部リーグ相当)に落ちたバルサBを救うため自ら育ったカンテラのトップチームの監督に就任した。そのバルサBは2試合を残した時点で1位。この成績一つでペップは世界最高峰のクラブの監督を指揮することになる。うーん、あらゆる意味でとんでもない。
 ペップの強み。それはやはりバルサを知り尽くしていることだろう。バルサはクライフ監督就任以降丸っきり性質が変わった。そのクライフ監督以降のバルサを深く知る人物。その点でペップを上回る人材が見当たらないことも確かだ。クライフ、レシャック、ロブソン、ファン・ハール、セラ・フェレールの下でプレーし、その後イタリアに渡りセリエAも肌で体感し、数ヶ月ではあるがカペッロの下でプレーしたこともある男ペップ。そんなペップはバルサBでバルサらしさを継ぎ、ポゼッション・フットボールをしてくれているようだ。バルサは勝利するだけじゃダメ。スペクタクルあふれた勝ち方をしなければいけない。それをペップはよく知っている。それだけで少しは安堵できる。これはモウリーニョには真似できない芸当だ。モウリーニョもそれが出来ないことを自らが一番よく分かってるからこそバルサのオファーを蹴ったのではなかろうか。
 ペップの弱み。それは絶対的な経験不足。選手として数多く大舞台を経験し、数々の名監督の下プレーしてきたペップ。しかしその経験を監督業に還元できるかは未知数だ。早い話が大博打。一世一代の大博打。それだけラポルタら首脳陣に余裕がないということでもある。ただ、そういう窮地に立たされて選んだ道が、勝利を第一にアンチスペクタクルに走る監督でなく、バルサらしさを継承してくれるであろう監督であったことは評価したいし、さすがはラポルタなのかなとも思う。
 思えばライカールトもバルサを指揮する前はオランダ代表とスパルタ・ロッテルダムしか指揮したことがなかったわけだし、その両者で何か大きなことを成し遂げたわけでもなかった。ペップと同じく選手として活躍した時の経験、選手との身近さが最大の武器。そういう意味では2人は似ているのかもしれない。
 ペップ監督就任で何とかバルセロニスタの怒りを鎮めたいバルサ首脳陣だが、しかしバルセロニスタはそんなに甘くはないようだ。エル・ムンド・デポルティーボのアンケートでは「ペップにバルサを率いるための準備が出来ていると思うか」という質問に対しYESと答えた人は18%、「ペップにバルサの新監督になってほしいか」という質問に対しYESと答えた人は32%と厳しい反応になっている。


 それにしてもペップは37歳か。テュラムと1歳しか違わないとは。それが武器となるかネックとなるか。ペップの手腕次第としか言い様がないか。個人的に期待する点はやはりカンテラ選手の起用。カンテラの意味を重々承知している監督が1年丸まるそのカンテラトップチームを見てきた上でどんな選択をしてくれるのか。ベタではあるがガイが見たいよ、ガイが。

posted by myrowka | 17:49 | FC Barcelona | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年05月06日

ユーロ08出場国親善試合結果・予定 本命編(5月6日現在)

さてさて。

 リーガ・エスパニョーラの王者も決まり、プレミアの王者も今週決まり、セリエAの王者もそろそろ決まり、チャンピオンズリーグの王者も5月21日で決まりと、長いような短いようなシーズンが終わろうとしている。そんな中徐々に関心をユーロに向け始めている人も少なくないだろう。かくいう私もその一人。
 当方こういう大会をより楽しむためには予習が必要不可欠だと考える人。そりゃ欧州の強豪の闘いを見ているだけでも普通に面白いだろうけれど。でもそこに至るまでには監督の苦悩なり、代表に選ばれるための選手の努力、戦いがあるわけで、そういうものを知ると代表に対する理解も深まるはず。
 また結果を予想する上でも、ただ単にメンバー表眺めて、国のイメージなどから推測するより、これまでの戦いぶり、これからの戦いぶりを知った方がそりゃそれらしい予想が出来るというもんで。まあ早い話、色んな情報を元にああだこうだと考えるのが好きだということ。祭りは準備している時が一番楽しいとはよく言ったもんだ。
 ということで、まずは手始めに本命国のここ最近の2試合の結果、これからの試合予定、ユーロ予選での成績を並べてみる。リーグ戦の影響でユーロ予選終了後はどの国も2試合しか親善試合をしてないってのはいささか物足りない気もするが、足りない情報はユーロ直前の親善試合を見て考えていくことにしよう。


イタリア

 予定  vsベルギー 5/31

 結果  vsポルトガル 2/6   勝利:3-1(トーニ、ピルロ、クアリレッラ)
      vsスペイン 3/26   敗北:0-1 

 ユーロ予選成績  12試合9勝2分1敗  22得点9失点  1位勝ち抜け


オランダ
 
 予定  vsウクライナ 5/24
      vsデンマーク 5/29  
      vsウェールズ 6/1     

 結果  vsクロアチア 2/6  勝利:3-0(ハイティンガ、フンテラール、ヘッセリンク)  
      vsオーストリア 3/26  勝利:4-3(フンテラール、ハイティンガ、ヘッセリンク×2) 

 ユーロ予選成績  12試合8勝2分2敗  15得点5失点  2位勝ち抜け


スペイン 

 予定  vsペルー 5/24  
      vsアメリカ 6/4  
 
 結果  vsフランス 2/6  勝利:1-0(ビジャ)  
      vsイタリア 3/26  勝利:1-0(カプテビジャ) 

 ユーロ予選成績  12試合9勝1分2敗   23得点8失点  1位勝ち抜け


ドイツ
 
  予定  vsベラルーシ 5/27
       vsセルビア 5/31
 
 結果  vsオーストリア 2/6  勝利:3-0(ヒツルスベルガー、クローゼ、ゴメス) 
      vsスイス 3/26  勝利:4-0(クローゼ、ゴメス×2、ポドルスキー) 

 ユーロ予選成績  12試合8勝3分1敗  35得点7失点  2位勝ち抜け


フランス
 
 予定  vsエクアドル 5/27
      vsパラグアイ 5/31
      vsコロンビア 6/3
 
 結果  vsイングランド 2/6  勝利:1-0(リベリー) 
      vsスペイン 3/26  敗北:0-1 

 ユーロ予選成績  12試合8勝2分2敗  25得点5失点  2位勝ち抜け


ポルトガル
 
 予定  vsグルジア 5/31
 
 結果  vsイタリア 2/6  敗北:1-3(カレスマ)
      vsギリシャ 3/26  敗北:1-2(ヌーノ・ゴメス) 

 ユーロ予選成績  14試合7勝6分1敗  24得点10失点  2位勝ち抜け


 意外と2位勝ちぬけのチームが多くて驚く。これから行う予定の親善試合の数が各国バラバラだが、現時点での情報だし、これから増えていく国もあるだろう。
 ざっと見た感じ調子が良さそうなのがドイツか。開催国のどちらにも大勝するってのは只事じゃない。また監督がクリンスマンからレーブに変わったことで守備力も戻っているようだ。ゴメスの出来もいいようだし、色んな意味で硬そうなチームだ。
 スペインはイタリア、フランスを倒して一見良さそうだが、イタリアはかなり手を抜いていたみたいだし、予選での戦いも実は一時期イングランド並にヒヤヒヤもんだったので楽観視は出来ないどころか、「本番前までは強い」というこれまでの悪しきスペインを地で行ってる感モリモリ。まだアラゴネスなんだもんなぁ。
 ファースト・インプレッションではクリ坊もいるしポルトガルが結構いいんじゃないの?と思ってたが、こう調べてみると結構ボロボロなのが分かる。イタリア、ギリシャと守備の良いチームにめいっぱい寄り切られているし、予選でも半分しか勝てていないし、まだ布陣も安定していないようだ。バルサ、チェルシー戦を見ても分かるようにクリ坊を抑える術がないわけでもないし、厳しいのかなぁ。
 フランス、イタリアはこれまでどおりすんごい固い印象。親善試合ではスペインに敗れてるとはいえ1失点しか許してないし、ユーロ予選でも2失点以上を許したのはイタリアはフランス、フランスはウクライナにのみ。大崩れしないチームはそりゃ良いところまでいく可能性は高い。予想としてはなんの面白みもないんだけど、予想はあくまで現実だけを見て希望を入れちゃいけないから仕方ない。唯一不安な点は死のグループに入ってることか。ただでさえ両チームの選手は所属チームで疲労たまりまくりなのに、1次リーグでは鼻から死闘を強いられる。質の良いフットボールは望めないのかもしれない。
 オランダはユーロ予選では守備良かったのに、オーストリア戦で崩れているのが気になる。崩れた分を攻撃力でカバーしているのは如何にもオランダってカンジだが、それがただでさえ守備が堅い強豪に通用するかはまた別の話か。
 

posted by myrowka | 12:28 | ユーロ08 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年05月04日

曲者足らざる曲者

プレミアリーグ07/08 第34週 ユナイテッド vs ハマーズ


 ユナイテッドの布陣はGKエドさん。DFが右からビダが大事を取ってお休みして、右からハーグリーブス、ブラウン、リオ、エブラ。中盤は右からナニ、キャリック、ハーグリーブス、パクチー。トップがビダと同様大事を取ってクリ坊とテベス。今シーズンも残り3試合。怪我人を除いては一切手抜きなしだ。


 スタンフォード・ブリッジでの敗戦のショックをオールド・トラッフォードで決めた9年ぶりのチャンピオンズ決勝進出で振り払って気分一新、プレミア優勝に向け残り2戦ぶっ放すユナイテッド。しかしその相手がハマーズとは。優勝争いとは面白くなるように出来てるんだろう。ユナイテッドとしては実に顔をしかめたくなる相手。自慢じゃないが、ここ2シーズンプレミアで勝ったことがない。何が嫌って、ユナイテッドが好調な時でも、ハマーズ戦ではなぜかころっと躓いてしまうのだ。不調な時にたまたまハマーズにぶつかっているわけじゃない。どんなチームも調子が良い時になぜかしらこけるということはままあることで、不思議なことにここ2シーズンに限って言えば、ユナイテッドがこける時は決まってハマーズという、まあ早い話がすんごい嫌な相手なわけだ。そんなどうしようもなく嫌な感じを抱いて迎えたこの1戦。
 なのにまあホントフットボールとはよく分からないもので。ハマーズ戦過去3試合で1点しか入ってないゴールが開始2分で入るんだから。ここ3試合イタリアモードだったため、見せ場がほとんどなかったクリ坊が、その鬱憤を晴らすがごとく初っ端からメガトンパンチ。チェルシーと違って前にスペースがあるし、バルサと違ってプレスが弱い。ニールをさくっとかわせば、前には引くことしか知らないDFが一人だけ。んなもんで抑えられるタマじゃない。メチャクソ欲しかったゴールがこうも簡単に入るとは、少し拍子抜けではあるが、もらえるもんはもらっとこう。


 最近右サイドバックが板についてきたハーグリーブス。サイドバックでプレーした際はイタリアモードの場合が多く、あまり上がる機会を与えてもらえなかったのだが、ノーマルモードでは普通に攻撃参加してくる。するとハーグリーブスのクロスが活きる。そういやハーグリーブス普通にクロス上手いんだ。早いのや山なりの、ファーからニアまでクロスのタイプもスピードも思いのままで、正確性もあると来たらクロス好きの自分としては胸をときめかせざるを得ない。綺麗なクロスはゴールに繋がらなくても、見ているだけで幸せな気分になれる。
 そんな幸福感に浸っていると一本のクロスがハマーズDFの頭を超えて普通にクリ坊の前へ渡り、そのままゴール。うわ、何これ。あっけなく勝利をほぼ確実にする2点目ゲット。試合前あれだけ不安だったから、そのあっけなさもより際立つ。何だったんだよ、ここ2シーズンのハマーズ戦は。
 その数分後テベスが30m付近からプレスの合間を縫って右足一閃、スーパーゴールで3点目。笑うしかないハマーズファン。わざわざロンドンから足を運んだ人もいるだろう。笑うしかないのはこちらも同じ。こうも上手く事が運んで良いものか。2点差なら「まだ何が起こってもおかしくない」っつうモチベーションの保ち方も一応出来るが、さすがに3点入ってしまえばもうお終いだ。優勝のためには絶対に勝たなければいけない試合、しかも相手は曲者ハマーズとどう転んでも面白くなりそうな試合は、ものの26分で終了です。
 

 かと思いきや。やっぱりフットボールって何が起こるかわからない。テベスのスーパーゴラッソのわずか2分後、サモラがあげたなんてことないクロスをブラウンがぼんやりクリア、それをリオがぼんやり追いかけ、アシュトンがスーパースペシャルバイシクルシュート。今シーズンベストゴールの一つにも数えられそうなテベスを超えるウルトラゴールでハマーズまさかの追い上げ。一度気持ちが緩んだユナイテッドはさすがにキュッと引き締める。
 しかしピンチは終わらない。前半36分アシュトンに負けじとオーバーヘッドをかましてやろうとしたナニが失敗して倒れこむ。そのナニにつまづいたニール。他意があったかどうかは分からないが、ナニはあったと思ったんだろう。オーバーヘッドならぬヘッドバットを決めて、オールド・トラッフォード中の呆れた視線を浴びながらピッチを去った。
 ハマーズの思わぬ追い上げを喰らったユナイテッドが試合半分以上を残し10人の闘いを強いられる。まあでもタイトルがかかった残り3試合、集中力を持続するためにも、前半早い時間帯で試合をほぼ終わらせるよりも、こうした気の抜けない状況にいた方が良いのかも、と無理やりプラス思考。
 当然のごとく残り少ない前半を嵩に懸かって攻めたてるハマーズ。急遽イタリアモードに移行するユナイテッド。イタリアモードに必要不可欠なダイナモ、パクチーかテベスを失わなかったのが不幸中の幸いとでも言うべきか。普通に守りきり前半は終了。


 後半ハマーズが逆転狙って攻勢をかけてくる。かと思いきや。特に人をかけるわけでなし、一人少ないユナイテッドにボール回しを譲り、何事もなかったかのように残り時間を潰してくる。何だ?ゴールが欲しくはないのか?勝ち点が欲しくはないのか?数的優位に立ち、勝ち点を得るためにはどうしてもゴールが必要。得失点差が重要な争いをしているわけでもない。なのに「追いつこう」「いてこましてやろう」という気概が微塵も感じられない。おいおいどうした。そんなんでフットボールやってて楽しいか?
 そんなハマーズの無気力を放ったらかしておくほどユナイテッドは優しくない。中盤に空いた恐ろしいほど広大なスペースでボールを持ったキャリックはそのまま上がり、特にプレスをかけられることもないままミドルシュート。ボーっとしてるからニールもそのシュートを足に当ててコース変えちゃうんだよ。ということでユナイテッドがさらっと4点目。今度こそ本当に試合が終わった。




 優勝に向けた大事な1戦をこうも軽々勝利したユナイテッド。まあこんなあっけない展開もそれはそれでいいんだろう。そうだよそうだよ。敵地でライバル相手にあんな敗戦を喫しても、残り2戦勝てばそれでいいんだよ。チェルシーがホームで完璧に王者を倒しても優勝できないのはこれまで怠慢してたからなんだよ、と何とか気持ちの整理をつける。
 お次はアウェーでウィガン戦。過去5戦5勝。ウィガンも降格争いをほぼ抜けているため、窮鼠というわけでもない。本当ならホームで優勝したかったが、前述のようにそれは自業自得か。チェルシーがマグパイズに負けるようなことがあろうものなら、事実上ユナイテッドの優勝は決まるんだけれど、FAはお固く、シーズンも終わりに近い週は優勝争いしているチームは同じ日、同じ時間帯に試合を開始するぐらいの気遣いを見せてくれればいいものなのに、チェルシー戦は月曜日。まあここで何を言っても栓は無し。マグパイズにはバット、スミスと仄かにユナイテッドの香り。オーウェンもリバポーっ子なら仇を己の力で取ってやれ。

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2008年04月30日

複雑>期待

UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 2ndレグ ユナイテッド vs バルサ


※この記事は個人の主観によってのみ書かれているのであしからず。


 ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはビダが膝蹴りの負傷から回復しきれず、右からハーグリーブス、ブラウン、リオ、エブラの並び。中盤はルーニーがこれまたチェルシー戦で負った負傷のため出られず、クリ坊が代わりにトップに入ったためナニが入り、右からナニ、スコールズ、キャリック、パクチー。トップはクリ坊とテベスだ。
 バルサはGKバルテス。DFは右からザンブ、プジョル、ミリート、アビダル。MFはヤヤ、デコ、シャビ。FWはエトー、メッシー、イニエスタ。つまりベスト。


 自分はフットボール界には大別して2種類のフットボールがあると思っている。勝利することを第一に考えた現実的なフットボールと、勝利と同時に観衆を楽しませることにも重点を置いた理想的なフットボール。
 フットボール界では現実的なフットボールを選択しているチームがほとんどだ。それは当たり前のこと。勝ってなんぼのこの世界。勝利より重視すべきものなぞあるはずがない。勝つことに精一杯。他のことには構ってられないという実情。
 だが世の中どこにでもはぐれものはいるもので。ただ勝つなんてつまんないじゃん。どうせなら美しく勝とうと、勝利と同時にスペクタクルを追い求める人たちがたまにいる。バルサであったり、ベンゲルであったり、かつてのクライフであったり。勝利するだけでも恐ろしく大変なこの世界。彼らは信念を貫くため、更なる重荷を自らに課しているのだ。自分はこういう人たちにとても感謝すると同時に尊敬する。
 ユナイテッドというチームは自分はこの両方を兼ね備えたクラブだと認識している。王者として、ただ勝つだけのフットボールからはとうに脱却している。ゲームを支配し、そして勝つ。それは第一。しかし時と場合によって相手に攻めさせ裏をつくという、狡猾さも持ちあわせている。理想と現実が上手く同居しているチーム。それがユナイテッドだ。


 ユナイテッドとバルサが対戦すると分かった時、自分は理想と理想の対決を期待した。ただでさえ理想的なフットボールを体現するチームが少ない現在、両者が対決する試合なんてそうはお目にかかれない。それがトーナメント戦ならなおのこと。
 しかし第1戦ではユナイテッドは現実を選んだ。勝利を確実に掴むため、スペクタクルは二の次に置き、まずは守りきるフットボールを選択したユナイテッド。眼前ではバルサが面白いようにボールをつなげ、面白いように攻撃の芽を摘んでいく。期待は大きく裏切られた。しかしそうは言っても、2ndレグも残っている。まだこれで終わったわけではない。ユナイテッドもやられっぱなしではあるまい。バルサがホームで見せた理想的なフットボールを2ndレグのホームで今度はユナイテッドが顕示してくれるだろう、とそう期待した。
 しかしその期待も裏切られた。


 序盤は両者様子見でお互いの頬を撫で合う展開。深いところまでは踏み込まず、まずは何かが起きるのを待っていた。そしてその何かは起きた。ザンブロッタがボールを奪うものの、安易なパス。これをスコールズがかっさらう。スコールズフリー。これまで幾度も決めてきたお得意のレンジ。右足を振りぬく。刺さった。刺さってしまった。
 面白い試合になるために、どうしても先取点はバルサに入って欲しかった。バルサが入れればユナイテッドは2ゴール決めなければいけない。ユナイテッドに現実を捨てさせるためにはバルサのゴールが絶対必要。しかし先取点はユナイテッドに入ってしまった。完全に相手を崩した素晴らしい攻撃からではなく、チェルシー戦同様相手のミスを上手くついて。
 今シーズンのユナイテッドを何度となく見ている今、今後の展開は手に取るように分かる。ただでさえユナイテッドは1点をやれない状況なのだ。ガチッと守ってクリ坊、ナニの高速カウンターで追加点を狙う、チェルシーやリバポーが得意とするあのフットボール。期待からは程遠いあのフットボール。


 予感は見事に的中した。ただでさえバルサはエスパニョール戦、1stレグのユナイテッド戦、デポル戦とゴールを決めれていない。それを今季のユナイテッドから奪えだと?無茶な話だ。メッシーが果敢に突破を挑む。その姿勢自身は特筆すべき素晴らしいものだが、いかんせん周りの選手と連動しておらず、それゆえ独りよがりのプレーとして終わってしまう。今後の課題だな。その他にもデコのミドルなどそれらしいチャンスはちらほらするが、しかし完璧にユナイテッドを崩すまでにはいかない。ユナイテッドは完全にどっしりと自陣に構え、1点もやらせない算段だ。バルセロニスタならすぐに察する。これは数え切れないほど見てきている負けパターンだ。ただそれでも「フットボールには何が起こるか分からない」という使い古された真理を信じ続けたのだが、この試合では結局何も起きぬまま。万に一つの可能性をもねじ伏せるユナイテッドの「強さ」の前にバルサは散った。

 
 そう、罪なのはバルサの「弱さ」。それは分かってる。だから悔しい。現実の前に理想が負けた。この試合は理想より現実が強いと、そう示しているのだ。だから悔しい。めちゃくそ悔しい。だが、ここで引いちゃいかんのだ。3年前バルサは今回と同じように徹底的リアリズム・チェルシーの前に敗れた。しかし翌シーズンの対決では1年かけて成長し、そのリアリズムを倒している。やられたらやり返せばいいのだ。時間をかけて。借りは必ず返す。UEFA、来シーズンの組み合わせでもちょこちょこっと頼みますよ。


 一方ユナイテッドの決勝進出に関しては複雑な思い。どうせなら理想サイドのユナイテッドで勝ち進んでほしかった。理想的なフットボールは誰にだって出来る代物ではない。選ばれた人にのみ許されるフットボールなのだから、その力を擁しながら発揮しないのをすごくもったいなく思う。でも現場の人達はそんなこと言ってらんないんだろうね。勝たなきゃ意味はない。そんなことは十分理解しているんだけど。今思えばスパレッティは恐ろしく見事にユナイテッドを表現してた。「ユナイテッドは私がみたことのないくらい最もイタリアらしいクラブである」。当時は半分冗談、半分負け惜しみと取っていたが、実はそうではなかった。
 決勝はチェルシーかリバポー。現実的フットボールを代表する2チームだ。ユナイテッドも決勝では現実的なフットボールを選んでくるだろう。どちらが来ても点を与えないフットボールの戦いになるはずだ。ちぇっ。

posted by myrowka | 15:53 | Manchester United | コメント(6) | トラックバック(0)
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2008年04月27日

暇つぶし

リーガ・エスパニョーラ07/08 第34節 デポル vs バルサ


 バルサのフォーメーションはGKピント。DFラインは右からザンブ、プジョル、テュラム、シウビーニョ。MFはマルケス、トゥーレ、グディ。FWはジョバニ、アンリ、ボージャン。まあ早い話が消化試合。そりゃビジャレアルとの2位争いが残っちゃいるが、ユナイテッド戦を控えた今それはひとまず置いといて。せっかくビデオも録ったので一応視聴。


 まあそれにしてもよそよそしいバルサだ。バルサ色のある選手がほとんどいない。バルサのフォーメーションに従って新人さんらが配置されてプレーしている感覚。要するに二軍。まあそれならそれで一軍目指して頑張る二軍を眺める楽しみもある。
 アンリはまだ9番やってんのか。どう考えたってアンリは左ウイングなのに。ライカールトも早く気付いてやってほしい。まあ途中から監督の指示なのか、それとも指示無視してなのか、左サイドに寄ってたから、それでいいんだけど。あのチームの中で唯一格が一つ上だと考えられるのがアンリなんだから、ボールがめったに行かない9番の位置じゃなく、よりボールに触る機会の多いサイドでプレーさせるって意味でも有効。
 そんな時に9番のポジションに入ってほしいのがボージャンだったのが、この日のボージャンも少し下がり目でチャンスメークしたがるボージャン。9番タイプでより輝くという話なので、そろそろ点取り屋としての姿を見てみたいのだが、どうも最近のボージャンはゴールよりチャンスメークがお気に入りのご様子。イニエスタ顔負けのフライングスルーパスも決めちゃって。ボージャンの幅が広がることは好ましいことなのだけれど、9番の位置に誰もいなけりゃゴールが入るはずもない。ジョバニは相変わらず。バルサの選手としてプレーするにはもう1,2年修行が必要だろう。


 バルサよりも興味深かったのがデポルだ。解説の仰るとおり、シーズン序盤は降格争いをしていて「スーペルデポルはどこへやら」と思っていたが、今ではスーペルとは言わぬまでもエウロデポルに手が届きそうな位置にいる。秘訣はやはりあのフットボールだろう。監督はロティーナ。ロティーナと言えば思い出すのがセルタ。ビクトル・フェルナンデスの生み出したスペクタクル・セルタを一転させ、守備的なフットボールで手堅い路線へ変更。フットボールファンをがっかりさせたが、しかし結果はついていき、なんとセルタ初のチャンピオンズリーグ出場を成し遂げちゃった。かと思いきや次のシーズンはセルタをセグンダに降格させる。その後はエスパニョールで国王杯を獲得して復活かと思いきや、06-07シーズンにはソシエダで再び降格を味わうなど、まあ波の激しい監督だ。そしてこのデポルでは凋落デポルを復活させて上昇中。ということはつまり次にロティーナと契約するチームは少し考えてみた方がいいのかもしれない。
 記憶が確かならば、ロティーナはセルタでもエスパニョールでも4バックを使っていたはずだが、デポルでは3バック。3-4-3と現代フットボールではかなり珍しいフォーメーション。だが上手く使いこなせているようだ。サイドバックのマヌエル・パブロとフィリペ・ルイスの上がりが攻撃の基点。中央のデ・グズマンやフアン・ロドリゲスとパス交換しつつサイドを徐々に上がっていき、前線の選手と絡んで基本クロス、スキあらば突破、とサイドアタックを中心とした実にシンプルな攻撃。
 守備の時はデ・グズマンが良い。中央を縦横無尽に駆け回り、パスを遅らせ、その間にセンターバック3人とサイドバック2人がゴール前にドン!と据われば、そう簡単にゴールを割ることは出来ない。それにしてもデ・グズマンは良かった。あんなに走れてスピード、プレーのリズムが良い選手はそうお目にかかったことがない。1試合しか見てないのであれだが、今のバルサに欠けている動きが出来ている選手だと思う。安ければ狙ってもいいかもしれない。


 気になったのでデ・グズマンの経歴。本名ジュリアン・デ・グズマン。27歳。国籍はカナダ。代表では24試合でプレー。父親はフィリピン人。母親がジャマイカ人。弟もフットボーラーで、フェイエノールトでプレーしている。弟さんはカナダ史上最高の選手とまで評価されているらしい。カナダにあるトロントのクラブで育ち、1997年にマルセイユに才能を認められ渡仏。2000年に当時ドイツ2部のザールブリュッケンとプロ契約。2002年にハノーファーへ移籍。2005年にデポルティーボへやってきたということだ。デポルへの移籍金は1500万ユーロ。当時のレート考えても20億は軽く超える。決して安くはないぞ。地味にスペイン1部でプレーした初のカナダ人であるそう。今年の3月レアル戦を前にしたコメントで「レアル戦はラ・コルーニャで最も楽しみにされている試合の一つ。もしそんな試合でゴール決められるなら1年間セックスを我慢してもいい」と言っちゃう選手。あぁ、なんか軽そうだ。今のバルサに来たら色々と問題も多いだろうなとちょっとガッカリ。でもやっぱりタフさはすごく、今季デポルで3番目に長くプレーしている選手だそうだ。1位はマヌエル・パブロ(あの歳で!)、2位はコロッチーニなそうな。


 なんかデ・グズマン紹介の記事みたくなってしまったが、そんなデ・グズマンの運動量がロティーナのフットボールを支えていたと思う。あのフットボールが安定したなら、そりゃ中位は堅いだろう。
 ただ昔のようなスーペルデポル復活はないだろうな、とも思う。スーペルデポルを支えたものに資金力があったことは否めない。ベベトに始まり、リバウド、ジャウミーニャ、マカーイ、トリスタン、バレロンなどなど華のある選手がいたからこそ、中位から一つ抜け出せてたのだと思う。そういう華はあのチームからは感じられなかったから。まあでも中位を狙い戦っている方が1980年代後半までは1部リーグでプレーすることもままならなかったデポルにとっては厳しい言い方になるかもしれないが身の丈にあっているのかもしれない。


 そんなこんなで敗北と引き換えに、選手の休息を勝ち取ったバルサ。この意味のないように思われた90分を意義あるものにするために、なんとかオールド・トラッフォードではユナイテッドに一泡吹かせてやりたいもんだ。1点取れればグっと近づく。堅いディフェンスを崩すには奇襲が有効。久々にヤヤがガツンとかましてみてはどうだろう。

posted by myrowka | 16:52 | FC Barcelona | コメント(2) | トラックバック(0)
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2008年04月26日

ユナイテッドの境界線

プレミアリーグ07/08 第33週 チェルシー vs ユナイテッド 

 ユナイテッドのフォーメーションはGKエドさん。DFラインはエブラを休ませ、右からブラウン、ビダ、リオ、シル。中盤はスコールズ休ませキャリック、フレッチ、アンデルソン。トップはクリ坊とテベス休ませ、右からナニ、ルーニー、ギグスの並び。ふー。そう来ましたか、御大。


 やっちゃったなぁ。今日の試合を見て出てくる言葉はこれだけだ。ユナイテッドにこれだけはしてほしくなかった。主力選手を休ませ、受けに回るフットボール。そりゃ中小クラブ相手になら厳しいシーズン考えて、ある程度流してもらって構わない。だが。だが。天王山において、ぶっ潰すべき相手を前に受けるなんて。アウェーとはいえ。違う。それは絶対に違う。
 受けのフットボールは弱者のするフットボール。弱者が強者相手に力の差を感じながら、それでも何とか勝利の可能性を増やしたい。そんな時にするのが受けのフットボールだ。そうなんだ。そうなんだよ。だから受けのフットボールをしてしまうと、その時点で自ら相手に劣っていることを認めてしまうことになる。2ndレグが残ってるバルサ相手ならまだいい。しかし90分で勝負が決まるこの試合でやっちゃいけない。
 チェルシーやリバポーならこんなやり方しても別に構わないと思ってる。でも。でも。王者として、イングランドに残る僅かな良心として、絶対にユナイテッドにだけはこんなフットボールしてほしくなかった。なんかこのフットボールは見ているだけで敗北感に満ちる。


 御大も色々考えてのことだったのは分かる。試合前に過密日程について不満を述べていた。チェルシーの方が休息が多い。しかしビジネス化してしまった今、それは不可避ではあることだと。バルサ、チェルシー、バルサの3連戦。どこかで手を抜けるなら抜いた方がそりゃいい。バルサには勝たなきゃ後がない。チェルシーには負けてもまだ後がある。勝ち点差で並んだ時は得失点差で優劣を決定する。試合前の時点でユナイテッドは54。チェルシーは36。3試合で詰まる差ではない。それならば手を抜くべきはチェルシー戦か、と。その判断は十二分に理解できる。御大は「過密日程のせいでこんな面白そうな試合で手抜かなければいけなくなったんだぞ」というメッセージも込めていたのかもしれない。
 そんな時に受けのフットボールは有効だ。それはチェルシーやリバポーがプレミアやチャンピオンズでさんざ示してくれたこと。ユナイテッド自身も引いて守る相手に苦戦することもしばしばだ。なら今度はこちらがそれをやってやればいい、とその気持ちも十二分に理解しよう。
 

 でも。でも。受けのフットボールが意味するものは前述した。胸に満ちる惨めさ、怒り、悔しさ、失望。いくら理屈で説明しても、この気持ちはごまかせない。例え勝てていたとして、例え引き分けていたとして、この気持ちが晴れることはなかっただろう。例えこの後2連勝をし、プレミア優勝を成し遂げたとして、傷ついたプライドが完全に回復することはないだろう。
 例え試合後ボロボロになってもいいから、例えそのせいでバルサに負けることになってもいいから、例えそのせいでプレミア優勝を逃すことになってもいいから、ユナイテッドには、御大にはどつきあいをして欲しかった。それでこそ。それでこそ・・・。

posted by myrowka | 23:30 | Manchester United | コメント(4) | トラックバック(0)
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2008年04月24日

バルサタイム

UEFAチャンピオンズリーグ07/08 準決勝 1stレグ バルサ vs ユナイテッド


 バルサのフォーメーションはGKにバルテス。DFラインはもうホント悔しいことにプジョルが欠場で代わりにマルケスが入り、右からザンブロッタ、マルケス、ミリート、アビダル。中盤はデコが復帰し、トゥーレを底にシャビ、デコの逆三角形。トリデンテはイニエスタ、エトー、メッシーだ。このプジョルを中盤から上は自分が考える現時点でのバルサ最強布陣。エトーとメッシーは不動。問題はジーニョなき後の左ウイングなのだが、個人的にはイニエスタがベストチョイスだと考える。突破力とその意思が何よりあるし、もちろんパスも出来れば守備も当然献身的。イニエスタをウイングに置いた時の中盤の穴を埋めることさえ出来れば、これほど理想的なウイングは他にゃいない。
 ユナイテッドのフォーメーションは4-4-2。GKエドさん。ディフェンスはビダが残念ながら胃の不調から間に合わず、代わりはピケではなくブラウン。空いた右サイドにはなんとハーグリーブスを持ってきた。ということで並びは右からハーグリーブス、リオ、ブラウン、エブラ。中盤は右からクリ坊、キャリック、スコールズ、パクチー。トップはルーニーとテベスという並び。左にパクを持ってきたところにチェルスキー戦のためにナニ、ギグシーを温存させておきたいという御大の意思が見え隠れするが、かといってバルサ相手に思い切り手を抜くことは出来ず、その他はベストの布陣。


 もうこの試合はバルサの一言につきる。バルサ!バルサ!バルサ!前半3分から試合終了までずっとずっとバルサタイムだった。今シーズン、というか昨シーズンから割と多くがっかりバルサを見させられてきた。全盛期の輝きは徐々に失せ、クライフにはサイクルの終わりと決め付けられて、実際そう感じざるを得ない試合が続く。もうあの頃のバルサを拝む日は来ないのか、と不安が募る日々。だが、どうだ。この日のバルサは。
 始まりは前半2分、ミリートのハンドから与えられたユナイテッドのPKだった。審判がPKを指示した瞬間「つまんねぇ!」と叫んでしまった。まあもちろんフットボールにGK以外手を使ってはいけないというルールがある以上、どう考えたってあの審判が正しいのだが、こんな楽しみな1戦で開始早々から不運による1点献上はバルサファン的にもユナイテッドファン的にも残念。
 しかし。クリ坊がボールをスポットに置いた時から、このPKがなんら容易いものではないと気づき始めた。四方八方からクリ坊へ襲い掛かる9万超のブーイング。カンプ・ノウはでかい。イングランドにあるどのクラブのスタジアムよりも一回り大きい広さ高さから降り注ぐプレッシャー。そしてカンプ・ノウ独特の異様な雰囲気。そうだ、ここはただのフットボールスタジアムではない。カタルーニャ人がスポーツ上の敵のみならず、様々な敵と戦ってきた歴史と誇りが詰まっている。その全てをクリ坊一人で相手にしなければいけなかった。ハッキリ言おう。勝てるはずがない。バルセロニスタが一丸となってピンチを切り抜けてみせた。開始早々得たPKでその強さを示したのはユナイテッドではなく、バルサ。もうこの時点でシビレ倒し。そしてここからバルサ・タイムが始まる。
 この日見たバルサはあの日見た胸躍らせるバルサ。まるで2年前にタイムスリップしたかのよう。当時中盤をコントロールしたデコが色々な意味で復帰。昔を髣髴とさせる狡猾かつ献身的なプレーでユナイテッドの攻撃の芽を摘みまくった。シャビは相変わらず絶好調。左ウイングにイニエスタが入ることで前線の運動量が増え、周りの良いリズムに乗りエトーも昔のプレッシングを思い出す。帰ってきた。あの攻撃的な守備が帰ってきた。もう上から眺める全体的なポジショニングの形からして綺麗。みながみな己の仕事をしっかり把握出来ている証拠だ。あのユナイテッドがパスをつなげない。個人技での突破もことごとく跳ね返す。2年前のバルサの強さの源はこの守備にあった。故障の原因が解決すれば、かつての調子が戻ってくるのは必然。
 ボールを奪えばシャビ、デコが難なく散らす。勝負を仕掛けるはイニエスタとメッシー。この記事で書いているようにこの2人は勝負を仕掛けれる技術とそれ以上にその勇気を持っている。カンプ・ノウの声援に押され、赤い悪魔なぞ微塵も恐れずガンガン勝負。背景には、ボールを奪われても他の皆がすぐ取り返してくれるという信頼がある。だからこんなにも突っかけられる。そしてその信頼どおりボールを奪われてもすぐ奪い返すバルサ。セカンドボールはことごとくバルサの選手の下に転がり、たまにユナイテッドの選手が保持したときもすばやいプレッシャーでボールをかっさらう。グッドリズム!!グーーッドウィドゥム!!バルサが披露する素晴らしい攻撃と守備の数々。もうおりゃ幸せだ。何もいらない。このバルサが見られるんならもう何もいらない至福の時。
 

 だがその幸福に少し水が差された。メッシー交代。そりゃおかしい!絶対おかしい!!この至福の時をもう少し!!!などと考えたが、幸せに浸りすぎて周りが見えなくなっていたか、よく考えればそういやメッシーは怪我から復帰して間もない。こんなハイテンションで90分はプレーさせられなかったということか。時間は60分。もうそんな時間!!!今回のバルサに満足しすぎていたからこれまた気付かなかったが、そういやゴールもまだ入っていない。かといってそれでもこの幸せの大きな源であるメッシーを奪われたことには不服だったが、それはわかままというものなんだろう。交代するメッシーが悔しそうな顔をしている。抱きついて慰めるライカールト。メッシーは頭の良い選手だ。まだプレーし続けたい気持ちと怪我のことを考えるとここで下がるのも已む無しという、気持ちとは相反する事実を自らの内に収め、咀嚼できる力を持っている。ありがとう、メッシー。交代して入るのがしっかりバルサイズム継いでるボージャンというのがせめてもの救いだ。
 だがやはりスケール不足は否めなかった。つられてバルサの攻撃も少しトーンダウン。だがそれでも根源である攻撃的な守備が崩れたわけではなかった。その後も試合を支配し続けるバルサ。77分にデコに代わり、アンリが入る。入ってそうそう見事なシュートを放ち「こりゃ今日のアンリは調子がいいかも」と思うが、まだ味方の信頼が薄いのかボールがアンリ自体にあまり渡らない。それでもバルサ・タイムはずっと続き、気がつけば試合が終わってた。もう終わり!?そりゃないぜ!!!


 今日の試合は恐ろしいほど満足だった。幸せだった。終始にやけ顔。冷静に考えればホームでノーゴールに終わったわけだが、あのショウを見せられて文句は出ない。あれだけ良いフットボールをしてくれたんだから、ノーゴールに終わった責任をライカールト一人に負わせるのは無粋というものだろう。不運だ。うん、不運だ。そういうことにしておこう。クライフはかつて「つまらない1-0の勝利より、2-3で負けた方がいい」と言ったそうだが、今ではその気持ちが分かる。引き分けに終わった今でも不満はまるでなく、感謝の気持ちでいっぱいだ。まあそれはセカンド・レグがあり、まだ負けたわけじゃないからかもしれないけれど。
 自分がライカールトをまだ更迭すべきでないと考える理由はこの試合にある。上手くいけばこんな試合も出来るんだよなぁ、ライカールトは。ライカールトを失うことはこのフットボールを失いかねないってことを意味し、それが自分はものすごく恐ろしい。ライカールトが辞めた先にもっと輝かしい未来がある可能性があることも重々承知してはいるんだけれど。良いフットボールをするためには良い選手が必要だ。これまで良いフットボールを出来なかったのはデコやメッシーという良い選手を怪我で欠き、またジーニョという選手に固執しなければいけなかった環境にあると、自分はそう思いたい。あくまでそう思いたいという個人的希望。だからもう1シーズンライカールトにやらせてやってくれないかなぁ。今度ダメなら本当に諦めるから。


 

 一方ユナイテッドは真剣と書いてマジバルサの前に全くといっていいほどフットボールをさせてもらえなかった。自分より一段階高みからフットボールをしてくるチームを相手にするユナイテッドは初めて見た気がする。ルーニー、クリ坊、テベスは若さからかあっさりとボールを失った。クリ坊に至っては勝負する意思さえ、ユナイテッドの選手として初めて格上の敵を相手にする混乱の中でどこかにおいてきてしまった。キャリックはある程度のゆとりがないと持ち味を発揮できないが、バルサはそんなゆとりを与えてくれなかった。百戦錬磨のスコールズでさえ軽々ボールを失う始末。チェルスキー戦を前にある程度手を抜いたなんて言えば格好はいいが、実際に試合を見ればそんな余裕がなかったことは明白だった。
 かといってユナイテッドの全てを殺されたかと言えばそうではない。あの無限に続くかと思われたバルサ・タイム。そのバルサ・タイムを90分間守りきった守備陣の奮闘を忘れてはいけないだろう。プレミアリーグで35試合19失点を誇るユナイテッドの守備力一番の武器は安定力というよりも、どれだけ崩されても最後足一本伸ばしてボールを防ぐ粘り強さ。それは出てた。あれだけ良かったバルサがノーゴールに終わったのにも不運以外にある程度理由がある。
 いや、ホントビックリした。世界は広いということを実感した。予想だにしないような強敵が実際にいるんだもん。これこそ国境を超えて強豪クラブが戦いあうチャンピオンズリーグ真の醍醐味。




 0-0で終わった第1戦。正直言った話バルサ一歩リードだと感じる。バルサにとってはアウェーゴールを与えなかったことが大きい。ユナイテッドにとってはアウェーゴールを奪えなかったことが大きい。アウェーゴールを活かすチャンスが残っているのはバルサだけ。そういう意味でバルサリード。
 9年前に並々ならぬ奇跡を起こした並々ならぬスタジアムで、今度はその住人に並々ならぬフットボールをされ、並々ならぬほどボールを追い掛け回させられ、並々ならぬ屈辱を味わったユナイテッド。だが、このまますんなり引くユナイテッドでもない。次はオールド・トラッフォード。今回はバルセロニスタがその力を顕示した。お次はユナイテッドのターン。ユナイテッドファンは今からメラメラ燃えているに違いない。やられたらやり返す。それが俺達のやり方。次戦は6日後。




追記:テベスを仔ゴリラと表現してきたことについて

 正直な話をすると失礼な表現であることは自覚しています。しかし個人的にはテベスは大好き。その失礼な表現を出来るだけ文章内容でカバーしてきたわけでしたが、今回の記事においてはユナイテッドにあまり良いところがなかったため、カバー出来なかったのは不徳の致すところ。ダウンタウンの松っちゃんが浜ちゃんを仔ゴリラと時に呼んだりするように、これも自分なりのテベスに対する愛情表現だったりするわけですが。そうして愛情を表現することのメリットよりもデメリットが多くなってくる可能性があると判断。今限りで封印することにいたしましょう。ある程度読んでくれる人なら分かってくれてたと思うんですが、やはり初見の人にはインパクトが強すぎたか・・・。

posted by myrowka | 18:40 | FC Barcelona | コメント(9) | トラックバック(2)
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2008年04月24日

期待>複雑

さてさて。


 今日は待ちに待ったバルサ対ユナイテッドの日だ。ブログの説明にも書いてある通り、私バルサとユナイテッドが好きである。厳密に言えば1999年頃から海外フットボールにはまった。その翌年には既にこの2チームのファンになっていたと思う。その日からいつか実現しないものかと心の片隅で願い続けた1戦。
 意外とどちらにも負けてほしくないという複雑な気持ちはなく、期待感の方が遥かに大きい。どちらのチームもボール支配を重視する。引いて受けるやり方は性に合わない。そんなものは弱者のやることだ。両者とも世界を背負って立つフットボールクラブだという自負がある。その自負が引いて守ることを許さない。その気概に惚れた。混じりっけなし正々堂々と正面からガチンコでぶつかりあう試合が楽しめるはずだ。あぁ、もう考えただけでゾクゾクする。

 
 フォーメーションを想像しただけでワクワクする。初戦はカンプ・ノウ。ユナイテッドは最初は守備力重視でセンターハーフを3人置いた4-3-3で来るだろうか、それとも初っ端からハイテンションの4-4-2で飛ばしてくるか。守備的ハーフは誰が務めるだろう。豊富な運動力のハーグリーブスか、展開力のキャリックか。
 個人的には守備的ハーフにキャリックを置いた4-3-3で挑んでほしい。自分は昨季からキャリックのプレーを見ていて、どこかペップの匂いを感じさせる男だと常々感じていた。パス能力はもちろん、ミドルシュート、ドリブル突破、守備力、スタミナなどなど、特にビッグクラブでは万能が求められる現代フットボールにおいて、キャリックは珍しくパス能力に特化したスペシャリスト。無理に上がることはない。出来る限り中盤の底に位置し、パスで攻撃を作りたがる。パスのレンジは自由自在。ショートのグラウンダーパスから、ロングのフライングスルーと何から何までお手の物。またパスのどれもが嫌というほど正確で、フォームもまた優雅なんだ、これが。そんなキャリックがカンプ・ノウで4-3-3のフォーメーションの下、4番の位置でゲームメイク。おつじゃあないの。
 ただ戦術的に言えばハーグリーブスの方が効果的だとぶっちゃけ思う。バルサの生命線のシャビとイニエスタ。ここの動きを鈍らせるためにはまず運動量だ。ハードなマークで2人を狂わす。先にも書いたようにパスの専門家キャリックにはこの仕事は少々厳しいものがある。そこでハーグリーブスの出番だ。ハーグリーブスは絵に描いたような万能ハーフ。やはり使い勝手はこちらの方が良い。でもキャリックは捨てがたいというジレンマ。スコールズ、ハーグリーブス、キャリックの逆三角形が個人的に理想だと思うが、御大は果たして。


 バルサ対ユナイテッド。世間で注目されているのはやはりメッシーとクリ坊の対決だ。この対決、個人的にはクリ坊の方が一枚上手だと考えている。加入当初から様々な思いでクリ坊を眺めてきた。正直にいって去年の冬までクリ坊には批判的な意見を持っていた。正直嫌いだった。そのスピードとテクニックは既に世界最高ではあったが、それが結果に結びついていなかった。無駄無駄シザースは文字のごとく不発に終わるばかり。放つシュートはことごとく枠をそれ続けた。しょっぱいプレーばかりが目立ち、結果を出せずにいたのが昨季前半までのクリ坊。シュートが枠を逸れるたびに大きなため息を吐いたもんだ。しまいにはクリ坊がシュートを撃っても「どうせ入んないんだろ」と期待さえできなくなっていた始末。それが昨季の中盤戦から変化が見え始めた。珍しくシュートがゴールに入っていく。これが1試合ならまだしも、次の試合もその次の試合も入るんだから、いくらなんでも事情がおかしいと気づきはじめる。気がつけばニステルローイばりにゴールを取っていた。もう既にこの時点でクリ坊に対する不信感は払拭されている。そして今季、そのクリ坊の得点力に磨きがかかった。大事な場面で点を決めてくるのは決まってクリ坊。この決定力はただもんじゃない。決めれる時に決めてくれればそれはもうヒーローで怪物だ。実はしょっぱいプレーは健在で、何も変わっちゃいないのだが、それでもゴールが入るようになり、持ち味はそのまま残しつつ、するべき仕事もキチンと出来るようになったクリ坊。
 長々と書いてきたが、このクリ坊が手に入れたただもんじゃない決定力がメッシーには残念ながらない。メッシーにクリ坊のようなしょっぱいプレーはない。プレーはどれも効果的で、全体的なプレーの貢献度で言えばメッシーの方が上なのだが。だがいかんせんメッシーには決定力がもう一つ足りない。決めてほしい!ここで決めてくれ!という場面で決めれないことが多いメッシーはやはり努めて客観的な立場で見れば、クリ坊に一歩及んでいないといわざるを得ないだろう。この前のエスパニョール戦でも決定的なチャンスは複数あった。でも最終的にはゴールに至ることはなかった。ここに差を感じる。
 とはいってもあくまでそれは総合的に見た上で総合的に比較をすればの話で、メッシーはクラシコでハットトリック出来るような奴なわけだ。メッシーの凄さを語るにはこの事実一つで事足りる。どちらもどちらで規格外のスーパー選手。何をしでかしても何らおかしくはない。ぶっちゃけた話をすれば、この試合でどちらが上回るか、自分には全く検討もつきませんよ、とそういう情けない話。


 こんな俺的世紀の一戦を前に残念な話もちらほら。アンリが発熱で出場が微妙になっているらしい。アンリからすればユナイテッドは勝手知ったる相手なわけで、実際ロスタイムにヘディングゴール決めちゃってくれてたりするのだけれど、かといってユナイテッド的には歴史的に見てアンリにそう大きな仕事をさせた記憶はない。しかもまだあまり馴染めていないバルサでのプレーということで、正直ユナイテッドから見ればあまり重要なニュースではないような気はするが、一方バルサ的にはやはり痛い。アンリが抜けた場合フォーメーションはどうなるか。普通に考えればボージャン、エトー、メッシーだが、個人的にはデコの仕上がり具合だが、イニエスタ、エトー、メッシーで行って欲しい。これがおそらくバルサ最強のトリデンテだから。
 一方ユナイテッドもビダが胃を壊したらしく、なんと病院に搬送されたそうで。病状は悪いわけではなく、すぐにでも復帰が可能だそうだが、なんといっても試合前日の出来事。時間的に間に合うかどうか非常に微妙な状況らしい。ビダがプレー出来なくなったら?そりゃピケが出場する公算が大きいだろう。御大だからこんな時こそためらいなくピケを使ってきそう。ピケはユナイテッドがバルサカンテラから(敢えて言おう)強奪した選手。あぁ、神様は残酷だ。同期はメッシー。同じ釜の飯を食べた仲だが、かといってメッシーも昔のメッシーではまるでない。ピケ自体は殊勝に「僕はバルセロニスタ。だが今はユナイテッドのユニフォームを着ている。勝ちたいよ」と語っている。その勝利を自らバルサを下して掴み取れるか。うーむ、おもしろい。


 そんなこんなでもうあと数時間で試合が始まる。ユナイテッドが9年ぶりにカンプ・ノウに凱旋するわけだ。奇跡をピッチ上で体験した選手は今やもう2人のみ。スコールズにとっては無念にも立てなかったピッチにようやく立つことになる。当時の相手はバイエルンだった。しかし今回の相手はその住人。周りは敵だらけ。バスビーの誕生日もまだ先だ。どうなるか。もう楽しみで仕方ない。

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2008年04月21日

myrowka的バルサイズム

 リーガ・エスパニョーラ07/08 第33節 バルサ vs エスパニョール


 バルサのフォーメーションはGKバルテス。DFはアビダルが何やら心を病んでるらしく休憩で、右からザンブロッタ、ミリート、プジョル、シウビーニョ。中盤はイニエスタを休ませ、トゥーレ、シャビ、グディのウェルバ戦と同じ逆三角。トップはメッシー、アンリを休ませエトーを先頭にボージャン、ジョバニのトリデンテと、週末ローヴァーズ戦をベストの布陣で臨んだユナイテッドとは対照的に、バルサは明らかにミッドウィークのユナイテッド戦に焦点を絞った。まだ可能性が消えたわけではないリーガや倒すべき相手エスパニョールとのダービーよりもチャンピオンズのタイトルを選ぶところに時代の流れを感じるが、まあそれもいいだろう。


 先週のウェルバ戦もそうだったが、グディが予想外の働きをしてくれて驚く。もちろんイニエスタのような突破やゲームメイクは望むべくもないが、パス回し中に急にアクセルを入れて少ないタッチパスで中央突破を果敢に狙ったりする攻撃が新鮮でいい。フォワードでの経験を活かしたプレーはイニエスタ、シャビ、デコといった良くも悪くもパサータイプ(厳密に言えばイニエスタは違うが)しかいないバルサが重用すべきオプションだろう。言い方を変えればライカールトがワンパターンなMFしか起用してこなかったってことになるわけだが。まあこうやって幅を広げた選手起用は今後ライカールトに望まれることだろう。万が一ライカールトがチームに残ればの話だけれど。
 だがしかし、グディが予想外の活躍をしたとしても、イニエスタがいないバルサは全然違う。パスが遅い。オフ・ザ・ボールの動きも少ない。パス回しからアタッキングへの切返しポイントもハッキリしない。だからスピード感がない。早い話バルサじゃない。
 自分はバルサはメッシーとイニエスタだと思っている。バルサが持つべきバルサイズムをこの2人は持っている。2人がいればバルサはバルサ足りうる。どちらかがいればバルサはバルサとしての体裁を何とか整えることは可能なのだが、やっぱり2人抜けるとダメだ。どうしてもバルサを見ているという感じがしない。それならそうとこのバルサは俺の知ってるバルサとは違う別のバルサだと踏ん切りつければ、まあこういう形もあるのだろう、とある意味納得して観戦出来る。案外2人がいなくてもボールはつながって一応なりともバルサっぽいフットボールが出来たりするもんだ。


 そんな明らかに良い意味ではないニュー・バルサの中にも光明はある。ボージャン。ボージャンはイニエスタ、メッシーの後を着実に追えている。ボージャンのプレーは見てて楽しい。何で見てて楽しいのか。答えは簡単。勝負をしてくれるからだ。
 「バルサとは何か?」と聞かれれば、自分は「ウイングだ」と答える。自分が知った頃のバルサはちょうどクライファート、リバウド、フィーゴのトリデンテ。フィーゴが右から、リバウドが左からサイドを切り裂きまくってた。そんなバルサに恋をした。だからバルサはウイングなのだ。
 なぜああもウイングに惹かれたのか。クライフを知って理解できた気がする。何の本で読んだか覚えていないが、クライフはウイングにフットボールが1番上手い選手を置いたらしい。ウイングがサイドで勝負を仕掛け、その勝負に勝ってようやくチャンスは生まれる。だからウイングは1番上手い奴じゃなければいけない、と。
 だからウイングは勝負を挑まなければいけない。その勝負に勝たなければいけない。華麗なるパス回しはそのためのお膳立てでしかない。バルサイズムとはそういうものだと自分は理解している。だからメッシーは挑む。イニエスタは挑む。ボージャンも挑む。分かっているからだ。ここで抜かなきゃ始まらないと。幸いボージャンには既にそのための技術は備わっているようだ(そもそも技術がないと挑むための自信は生まれないけれど)。だからボージャンのプレーは見てて楽しい、というか誇らしい。そして安堵する。この3人がいればバルサは安泰だ。ボージャンがいれば無理してロナウジーニョの抜けた穴を補強で埋める必要はないのかもしれない。
 

 そんなボージャンとは対照的に目を覆いたくなるのがジョバニだ。ジョバニには前述の3人のような挑む気概を持ってない。それだけならまだしも、自分のビジョンも持っていないように思える。ウイングなのか、フォワードなのか、それすらハッキリしない。何をしていいか分からない。だから何も出来ない。エトーがブチ切れている。何で俺がガキの世話をせにゃならんのだ。信用がない。だからパスも来ない。そもそも下向きながらプレーしてんじゃねえよ。そこはプロとして顔の上げ方ぐらい覚えとけ。ひどい。これは重症だ。
 だが一番不安なのはこのジョバニを復活させるためのアイデア、支えれるだけの余裕が今のバルサにあるのかということ。ジョバニはまだ若い。こういう状況だからこそクラブが率先して道を指し示してやらなければいけないのだが、会長は白いハンカチをしまわせるのに必死、監督は自分の座を守るために必死。一体誰がジョバニを守ってやれるのだろう。ジョバニを狙ってくる悪いやつらも当然いる。悲しい別れ方だけは何とか避けなければいけない。クラブとして。人として。
 何も出来ないジョバニ、ジョバニの子守りにキレてプレーが雑なエトー。イニエスタもメッシーもいない。ボージャン、シャビ、グディの健闘だけでは限界があった。スコアレスドローのまま前半終了。味気ないカタルーニャ・ダービー。このままでは試合後どえらいことになる。ライカールトはそんなことも分からないほどのバカではなかった。


 後半開始からジョバニに代えてメッシー、グディに代えてイニエスタが入る。バルサイズムが注入されたバルサは本来の姿を見る見るうちに取り戻す。メッシーが開始直後に見せたシャビとの連携でエリア内に切り込んだプレー。あれが全てだ。DFが何人いようと関係ない。ウイングが勝負を挑み、そして勝つ。それでこそバルサだ。イニエスタの投入でボールの流れもスムーズかつスピーディーに。子守りから解放されたエトーも徐々に本来の姿を取り戻す。
 メッシーは本当に凄かった。復帰後数分しかプレーしてないはず。これだから天才は恐ろしい。メッシーは決して引かない。ボールをもらっても絶対に後ろを向かない。そのままパスは考えない。ボールをもらえば勝負を挑む。バルサのウイングであるという矜持がメッシーを戦わせているのだ。退かぬ。媚びぬ。省みぬ。メッシーのプレーはどこか聖帝を髣髴させるものがある。
 イニエスタも負けてはいない。イニエスタはそのポジションからパサーとしての役割に注目されがち。現にイニエスタが入ってからはボールの流れが明らかに変わった。だがしかし、イニエスタが特別な理由はウイングにもなれるとこ。イニエスタはパサーでありながら、機を見てはウイングのように勝負を仕掛け、そして勝てる。前座であるパス回しに参加しながら、本番であるアタッキングにも参加できたら、それ以上のことはない。まさにミスター・パーフェクト。




 この2人の活躍はあのボージャンの輝きまでも霞ませてしまうほど。やっぱり本物は一味違った。結局ゴールは奪えず、スコアレスドローという形でダービーは終えたが、不思議と悲壮感は薄かったりする。メッシーとイニエスタのおかげであのキラキラしたバルサの片鱗が垣間見れた。この2人がいればユナイテッド相手にも恥ずかしくないプレーが出来るという期待。メッシーが帰ってきてくれてホント良かった。
 リーガはまあほとんどなくなったと言っていいんだろう。っつっても自分はまだ希望を捨てたわけじゃない。そりゃ上にいるのがユナイテッドだったら諦めもつくが、お白さんだってんだからもったいない気がして。今季健闘しているラシン相手に、天敵バスク魂相手に2連敗しないなんて誰が断言できよう。対するバルサはメッシーが戻ってきた。うん、まだ希望を捨てるのはまだ早い。

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2008年04月20日

矛盾

 プレミアリーグ07/08 第32週 ローヴァーズ vs ユナイテッド。


 ユナイテッドのフォーメーションはGKがクシュチャク。DFはビダがめでたく復帰して、右からブラウン、ビダ、リオ、エブラの黄金ライン。MFは右からクリ坊、キャリック、スコールズ、ギグス、FWはルーニーと仔ゴリラの2トップとエドさんを除いては鉄板の並び。ミッドウィークにバルサ戦があるにも関わらず本気モード。そりゃそうだ。プレミアが一番大事。
 それはそうと今週は赤いシャツに黒パンツと自分が一番好きな組み合わせのユニフォーム。レッドデビルズという異名からだろうか、白よりも黒のパンツの方がユナイテッドの持つ畏怖がよく引き立って見えて好きだ。


'フリーデルッ!フリーデルッッ!!フリーデルーーーッッッ!!!


 この試合はこの一言に尽きるだろう。ルーニー、クリ坊、仔ゴリラ、スコールズ、ギグス、リオ諸々スーパースターがひしめく試合で、最も輝きを放ち、彼らを押しのけ主役の座を奪ったのは今年5月37歳になるというアメリカ人ゴールキーパーだった。
 この試合、ユナイテッドに不備はなかった。アーセナル戦のような緊張もなくいつも通りのプレー。ディフェンス陣がよく守り、スコールズとキャリックのパスで試合を組み立てながら、トップ4の個人技&連携プレーで相手ゴールをこじ開ける。ローヴァーズもプレミア8位とヨーロッパを目指すでなく、残留を目指すでなく、モチベーションがないのでボロのようなエネルギーに欠けている。勝てる。これなら勝てる。
 ただふと心をよぎるペデルセンとフリーデル。ユナイテッドキラーとも言うべきこの2人に良い思い出は微塵もない。だがそんな嫌なジンクスも今のユナイテッドの勢いなら吹き飛ばしてくれるだろう。そう信じる他なかった。


 だが時間が経つにつれ、その嫌な思い出が徐々に徐々にせりあがってくる。攻めども攻めどもゴールが入らない。そんな時に限ってDFの不運なミスからゴールを奪われるからフットボールは嫌いだ。なぜか木曜日に試合を終わらせ、勝利しているチェルスキー。負けは絶対に許されないユナイテッドがまさかのビハインド。
 それまでは余裕をもってボールを散らしていたユナイテッドだが、王者も人間。当然焦りはある。知ってか知らずかペースがドンドン上がっていく。スピードが上がればミスも自然と多くなるのだが、前述したようにローヴァーズ自体に勢いがないのであまり怖がる必要はなかった。「心配ないさ、すぐに追いつける」と気を取り直してベタに引いてくる相手に文字通り攻撃を畳み掛けるユナイテッド。だが、それでもゴールは入らない。コーナーキックからフリーで撃ったクリ坊のヘディングもフリーデルに阻まれた。思えばユナイテッドの悪夢はこの時から始まったのかもしれない。1-0のままで前半は終わった。


 嫌な予感を御大も察していたのだろう。後半開始直後からギグシーを下げ、より若く運動量に長けるナニを入れる。うーん、ここまできたらギグシーは久々の長期スランプと断じてもいいのかもしれない。味方の限界を求める厳しいパスと言えば聞こえはいいが、少し視点を変えて眺めれば雑なプレーとなる。余裕がある試合ではそれでもいいが、今は優勝争いの真っ只中。御大は許しちゃくれなかった。実際ナニが入ったことで左サイドが活性化する。ナニが突破してクロスと、やるべきことがハッキリして良い。あそこで勝負を仕掛けて勝てるとゴールの匂いもより濃くなる。その闘志と技術を持ったナニ。ユナイテッドの新しい波はドンドン勢いを増していく。
 だがナニ投入もフリーデルにとってはささいな出来事だったのかも知れない。誰が来ようと止めればいいのだ。時間と共にユナイテッドの悪夢はより現実味を増していく。63分、クリ坊が左足振り切って放ったシュートはポストに嫌われ、64分、センタリングからゴールへこぼれたボールはフリーデルが超反応でセービング。78分、相手DFがクリアし損ねたボールを上手く処理した仔ゴリラのシュートはフリーデルが左腕一本、82分、キャリックのヘディングはエマートンが左腕1本。84分、ナニのナイススルーから抜け出したルーニーが放ったシュートはフリーデルが今度は右腕、86分、スコールズのナイスパスをダイレクトで撃ったオシェイのシュートは再びフリーデルの右腕に阻まれた。
 どんなシュートもフリーデルの腕が反応して止めてしまう。まるで腕が意思を持っているかのように。もしかしたら。もしかしたらフリーデルの両腕はフリーデルとは別の生き物かも知れない。フリーデルは幼少の頃両腕を失って、で、宇宙人が力を貸してやろうとかなんとか言ってくっついたとか。そんな寄生獣的バカげた発想も今回のフリーデルの超反応を見たらあながち間違ってもないかも知れないと思えてくる不思議。生物学者の方は一度フリーデルの腕を調べてみてはどうだろう。
 そんなある意味新種の生物とでも言うべき敵を相