2008年12月11日

犬飼会長に言葉シュートを突き刺した西部氏は大丈夫か -季刊「サッカー批評」読感-

12月10日に発売した「サッカー批評」は、一見の価値があります。

忘れ去られやすい、季刊(3・6・9・12月の、だいたい10日発売)。
他のサッカー雑誌に比べて分厚く、圧倒的に多い文字の割合恐ろしくストイックな表紙のデザイン。
時に読みたくなくなるほど、生々しい日本サッカーの分析。

とあって、相当のサッカー読み物好きでないと手に取らない雑誌ですが
スポナビでは「犬の生活」等のコラムでおなじみ西部謙司さんが
犬飼会長への直接インタビューを6ページにわたって展開しています。

発売されたばかりの本の内容を詳しく語ることは避けますが、
実に質問内容がキャノンシュート。
ロベカル、リーセ…とまでは行きませんが、
中村憲剛の鬼ミドルで顔面を狙うような和製キャノンぶり。
ブログやコラムで指摘されてきた犬飼さんの矛盾点を、
一見ソフトな表現で、しかし面と向かってドカンと突き刺している。

さらに「秋春制になると日程に余裕ができる」という話の議論用に、
秋春制の日程表まで自作し、しかもそれで
「無理やり秋春制にしてみた!」って独立コーナーを作るほどの気合の入れようです。
(相当細かい分析の下で作られている)
過労のモデルになった、クラブと代表のエース・某E選手が悲惨すぎる。

いいのかこんなにやって。
言いたいことを沢山言ってて爽快なのですが、西部さんの今後が心配です。

インタビューは11月12日時点のものだそうですが、
その中でも発言が色々矛盾している上に
最近掲載された朝日新聞・中鉢信一記者のインタビュー(下記リンク)では
180度反対のことを言ってる部分(ベストメンバー規定)もあり、
会長に秋春制という言葉以外、信念はないのだろうかと大変不安になりました。

参照:
「犬飼改革」の真意 4つの質問に語る
↑ベストメンバー規定について軟化したのは進歩ともいえる。

ただ、個人的には非常に気になった部分がひとつありまして。

サッカー批評のインタビューで初めて見た意見のひとつが、
「秋春制には、メディアの強い要望もある」という点。
メディアといっても色々ありますが、
かつて三菱欧州の社長としてビジネスに関わってきた彼が
「これは儲けられる」と思うメディアとなると、相当規模が大きいはず。

現在ちょっと閉塞気味の日本サッカー会において、
日本代表に続くような新しい儲け話をほしいのは
何も協会だけではない、という話なのかもしれませんね。
彼の意見がヒトの借り物のようにワンパターンなのも、
西部さんにツッコミ入れられても同じ回答しかしないのも
その媒体の差し金か…?

と、陰謀論を煽りたいのはやまやまですが
それより本人が頭を使わなさすぎだし根拠もなさすぎるのが
一番の問題ではないかと思います。
読んでもらわないと分かりにくいのですが、肝心なところで
「~と思います(裏付けなし)」ってのが非常に多いのです、この人の回答は。

ただし、単なる犬飼会長バッシングでは終わらず
・現実的に、秋春制を実現する障害は何か?
・Jリーグのメディア戦略とは何か?
・女子サッカークラブ増加は、本当にJを豊かにするか?
・ドーピング問題は、終わったのか?
・日本は本当に強くなってきたのか?
こういったテーマと併せて、まさに今現在の日本サッカーを考えさせてくれる。

そしてオシムのロングインタビューの一節。
「ドラゴンボール、知ってますか?
あの時、日本のみんながオシムさんに元気を分けて、元気玉を送ろうとしてたんですよ」
「ああ、それは感じました。助かったよ」
本日、日本との契約を終えたじい様の言葉に、また考えさせられました。

1000円とえらく高いですが、3ヶ月分と考えれば333円。サカダイより安い。
なんか書店の回し者っぽくなってきましたが
興味ある部分の立ち読みだけでもいいから、読む価値はあると老います。

しかし、停滞気味のJリーグでこういう議論を燃焼させたという意味では
犬飼会長の暴走も案外意味はあるかも…あるのだろうか。

posted by モトヒロ |23:46 | サッカー書籍 | コメント(5) | トラックバック(0)
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2008年11月26日

選手じゃなくても海外組 -元千葉GM・祖母井氏の連載コラム-

今更ながら、日刊スポーツに
元ジェフ千葉GMである祖母井秀隆氏の連載コラムを発見。
コチラ↓
祖母井秀隆「日本人代表奮闘記」

更新ペースは月1回(毎月末)と少なめですが、
自伝「祖母力(うばぢから)」同様の率直な文体で好感が持てます。

ただ、このあっさりした文体で
素人から高校サッカーの県代表FWになったりドイツ人の美人の奥さんをゲットしたり欧州のパーティの真ん中で踊って名将たちの注目を集めたりベルデニックやオシムといった名将を体当たりで口説いてるんだから
行動力と思い切りの良さはタダモノじゃありません。

市原・千葉時代に「ウバ害辞めろ」と批判をくらったり、
グルノーブルでも前監督を切って非難された時期もあるそうなので
やったこと全てが大当たりしたわけじゃないようですが、
それでも自分を信じて行動できるふてぶてしさがスゴイ。
前任者を切った結果、クラブを昇格させてるしなあ。

ただ、度胸だけの人ではなさそう。
著書で自分の指導員だったオジェックの
人格的な問題部分(多分に差別的だったとのこと)を
冷静に分析・指摘したら、すぐ後にFWワシントンが
オジェックとの人格的な確執でチームを離れることになるなど
(まあ、コレはあくまで結果論ですが)
彼の度胸は洞察力と分析に裏打ちされたものなんだと思います。

そもそもGMというのは仕事ぶりや人柄が見えにくく、
概して注目されるのは補強失敗や成績不振で叩かれるときという
因果な職業です。
その中でこれだけ奮戦し、実績を出して
日本と風土の違うところでもガッチリ目に見える成果を出して
「ウバガイ」コールまで送られてるのはスゴイと思う。

祖母井GMに限らず、
今年度シンガポールリーグ最優秀監督に選ばれた
アルビレックス新潟シンガポールの平岡宏章監督など
海外に出てチャレンジし、成果を出す姿勢は、
たとえ選手でなくても
立派な「海外組」と言えるんじゃないでしょうか。
その経験をいずれ日本で生かして、リーグや代表を活性化させてほしいもの。

まあオシム強奪事件の際に
「川淵さんと仕事はしたくないのです」
と断言した祖母井さんだから、代表には行かないと思いますが…。

月1回ずつ更新されていく祖母井自伝の続き、楽しみにしています。

posted by モトヒロ |23:45 | サッカー書籍 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年03月22日

布陣話だけでは… 書評:「4-2-3-1」杉山茂樹

杉山茂樹氏の「4-2-3-1 サッカーを戦術から理解する」(光文社新書)を購入。
結構多くの書店で平積みされてるところを見ると、人気あるんでしょうか。

読んでみると、さすが一流ライターだけあって資料例はハンパない。
ビエルサやヒディンクのインタビューから導き出される戦術論も面白い。
特にイルレタの「3バックに対する1トップ有効論」に関しては、
別の本でヒディンクが語っていた
「3バックに日本が2トップで来ると聞いて安心した。1トップだったらイヤだったよ」
と完全にかぶるところがあり、これが名将同士の戦術の一致かと驚く。

「EURO2004で優勝したギリシアや、03年CLでマドリーを破ったモナコ。
日本は「なぜ大物食いが成功したか」を研究すべきであって、
「ギリシアつまらない」と欧州目線で語るべきではない」

「日本の決定力不足の要因はポジションの固定観念にありFWは点取る人、DFは守備の人、ボランチは守備の人でトップ下は攻撃…
責任を特定ポジションに押し付けているようでは得点力不足の原因は見つからない。
FWが決められないという弱点を中盤が埋めるという発想ではいけないのか」

このあたりは大変身につまされるところですし、本人も啓蒙したい意識が強いのでしょう。

が。
日本代表はともかく、Jリーグに関する部分では微妙に疑問がわいてくる。
最初に書いてあるさまざまな布陣+解説で、トップバッターは中盤がフラットな4-4-2。
いわく、

「日本ではお目にかかれない布陣」

…?
中央にディビッドソン純マーカスや金澤、左右に久永と藤本主税を置いた
2005年大宮の布陣はダメですかそうですか。
三浦監督は大宮でも札幌でもこの布陣で巧みな守備を展開しています。
確かにアーセナルと比べればレベルの差は歴然ですが、言い方悪くね?

「3-4-1-2は98年セリエAのように守備的。
Jリーグはトルシエの悪影響で時代に取り残された3バックを次々採択した」

3バックでリーグ1位の84得点をたたき出した2006年フロンターレはどうなんでしょう。
だいたい1試合中で布陣が変わる部分は多いし
同じ3バックでも全チームがトルシエイズムやりたいわけじゃないだろうに。
日本の「3バック=3-4-1-2」的な発想にうんざりするお気持ちは分かりますが、
時折3バック、そして日本に対する妙な敵意を感じることがあります。


またシステム論の本なので仕方ないのですが、あまりに数字や足し引きを重視しすぎる。
「サッカーは布陣でするものだ!と叫びたくなる試合だった」
本文中の一節。こう言いたくなる試合は確かにあります。
が、杉山氏の「陣形至上主義」ばかりでは食傷気味になってくる。
戦術もさることながら、選手、応援、雰囲気、
そして時折生じるミス。これがサッカーの大きな要素のはず。
自分が最終的に思い出したのは、この言葉でした。

「無数にあるシステムそれ自体を語ることに、いったいどんな意味があるというのか。大切なことは、まずどういう選手がいるか把握すること。個性を生かすシステムでなければ意味がない。システムが人間の上に君臨することは許されないのだ。」
イヴィツァ・オシム

なお杉山氏は文中で応援や選手に関しても書いており、
完全軽視と言うわけではありません。
でも布陣に関する本である以上、必然的に戦術と布陣が大方を占めます。
そしてシステム論は勉強になるけど、それだけでは楽しいサッカー話になりようがない。
そんな当たり前のことを感じた1冊でした。
日常的にサッカーを見る人なら、あまり読まなくてもいい気がします。


さて、微妙に気になったのが海外選手の独特な発音表記。
上が一般的な、下が本書の選手名。

ウィーファルシ(UJFALUSI)
 →ユーファルジ
フェネホールオフヘッセリンク(Vennegoor Of HESSELINK)
 →フェネゴーオフヘッセリンク

このへんはいいです。ソルスキアかスールシャールかみたいなもんだし、
そりゃ欧州最長の苗字を何度も呼んでたらrの発音くらい省略したくなります。
でも、だ。

ソン・ジョングッ(SONG Chung-gug)
 →ソジョング
ファン・ソンホン(Hwang Sun-Hong)
 →ファンソンフォン
イ・ウンジェ(LEE WOON JAE)
 →イウォンジュ
ヴリーザス(VRYZAS)
 →ベリーザス
カニサレス(CANIZARES)
 →カンサレス

ヒディンクコリアを絶賛しときながら、GKウォンジュって誰。
さすがに韓国人の発音が気の毒になってきます。
カニサレスの例を見ると、字が汚くて編集の人が間違えた可能性も浮上しますが
まあサッカーは正しい発音でするもんじゃないから、これまたどうでもいい話です。

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posted by モトヒロ |05:07 | サッカー書籍 | コメント(9) | トラックバック(1)
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