2008年01月29日
蹴球ついでに文化も学ぶ その2 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
第2回、ボスニア・ヘルツェゴヴィナは思い入れが強すぎて「歴史」が相当長くなりました。 サッカーのみ知りたい方は、一気に下の方まで飛ばして頂ければと思います。 東欧のブラジルとして高い評価を受けていた旧ユーゴスラヴィア連邦ですが、 分裂後のサッカー代表で見るとクロアチアやセルビアの知名度が高い一方で なかなか国際舞台に出ないマケドニア、モンテネグロ等は少々マイナーな感があります。 オシムの祖国であるボスニア・ヘルツェゴヴィナもまた然り。![]()
上記の旗はボスニア国旗。分断された青と黄色が印象的です。 この旗のように国内も民族によってほぼ真二つに分断されています。 ボスニャック人(ムスリム人とも)およびクロアチア人のボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦。 そして東側に、セルビア人のスルプスカ(=セルビア人の)共和国。![]()
簡単な歴史: オシムが著書やインタビューで繰り返し語っているように、 かつてボスニアはユーゴ連邦内で最も民族融和の進んだ地域であったようです。 しかし91年のクロアチア独立に続き、92年ボスニアもユーゴ連邦からの独立を宣言した際 ユーゴの中心を為していたセルビアと切り離されることに反対したセルビア人が独立に反対。 セルビアの後ろ盾を得てスルプスカ共和国の樹立を宣言し、西への侵攻を開始しました。 押され始めたボスニア側はアメリカで 「セルビアの侵攻した地域ではボスニア人が民族浄化されている!」 という衝撃的な言葉を広めることに成功し、米国世論をボスニア寄りにさせます。 さらにクロアチアも「同胞を助ける」べく介入し、戦況は泥沼化していきます。 95年10月、アメリカと国連の仲介でボスニアを2分する合意が為され現状に至りますが セルビア人共和国側でボスニャック人・クロアチア人が追放=民族浄化される一方で ボスニア側でも少数派となったセルビア人が追い出されています。 「民族浄化」を行っているのはセルビア、セルビア=悪、という シンプルな構図ではいかないようです。 「理想的多民族都市であった」とオシムが懐かしんだサラエヴォも例外ではないようで。 第一次世界大戦の引き金「オーストリア皇太子暗殺事件」が起こったこの都市では、 犯人のプリンシボフがセルビア人青年であるという理由から 犯行現場に築かれた石碑や彼の足型が残らず撤去されてしまったとか。 相当簡単に書きましたが、より詳しいことはオシムの通訳である千田善氏や 「オシムの言葉」などで知られる木村元彦氏の著書に恐ろしい迫力で書かれてます。 読む人によっては彼らの強すぎるユーゴ愛にちょっと引くかもしれませんが 個人的には熱い文章で結構好きです。 千田氏の関連著書 「なぜ戦争は終わらないか」 木村氏の関連著書 「誇り ドラガン・ストイコビッチの伝記」 「悪者見参 ユーゴスラビアサッカー戦記」 「オシムの言葉 フィールドから人生が見える」 「終わらぬ民族浄化 セルビア・モンテネグロ」 他にオススメとしては、 ボスニアがアメリカを味方につけ、セルビア相手の情報戦を制するまでの流れを冷静に描いた 高木徹「戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争」が面白いです。 主要選手: ハイ、長くなりましたがここからサッカーの話です。 前述したように3民族が混在するため、ボスニア代表としてではなく セルビア及びクロアチア代表としてプレイする選手も多いそうです。 当初はボスニャック人で占められていた代表も次第にクロアチア、セルビア系が増え バルバレスのように名を馳せるセルビア系プレイヤーも存在します。 主要リーグでプレイするボスニア代表選手としては 高原の元同僚セルゲイ・バルバレスやユヴェントスのサリハミジッチ、 ブンデスで名を馳せるバイラモビッチやムシッチなどが挙げられますね。 またスウェーデン代表のイブラヒモビッチもボスニア移民だとか。 主要選手は来日しなかったようですが MFフルゴビッチはガンバ大阪でのプレイ経験があり、今季ジェフ千葉移籍の噂があります。 他にJリーグに在籍したのはペラック(C大阪)ペツェル(清水)ムイチン(市原)など。 ちなみにオシム御大は民族分類で言えばクロアチア人になるそうですが、 民族区別を好みません。 恐らく民族申告を「ユーゴスラヴィア人」と率先して答えていたのではないでしょうか。 まあ、民族問題に悩まず安穏としている日本人の邪推ですが。 文化作品: ボスニア映画は高評価作品の宝庫です。 悲劇を笑い飛ばし、内戦の悲劇を不思議な笑いで包み込む。 考えさせられながら、悲しいのにクスリと吹き出してしまう、 まるでオシムのような東欧的な皮肉とウィットに富んだものばかりです。 「アンダーグラウンド」 監督エミール・クストリッツァ。 恐らくユーゴ映画で一番有名な作品。 ソ連との戦いからユーゴ分裂までを、2人の男を中心に描く。 「ノー・マンズ・ランド」 監督ダニス・タノヴィッチ。 内戦における西側諸国の役立たずぶりをアイロニカルに描く爆笑作品。 最後はアレですが管理人オススメの作品です。 「ウェルカム・トゥ・サラエボ」 監督マイケル・ウィンターボトム。イギリス人ですが、社会派映画に定評あり。 特に上2つは 「日本人はシステム好きですが私の祖国にそんなものはない。 なにせ政治システムからして崩壊してますからね」などなど無数の名言に満ちた オシム語録の土壌を知るには格好の作品だと思います。 書いてて自分も血の気が多くなりすぎた感はありますので、ツッコミをお待ちしています。 ―長くなりましたが、了―
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posted by モトヒロ |19:42 |
海外データ:ヨーロッパ編 |
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