2007年04月26日
ロスタイムに悪魔は微笑む~マンチェスター・U vs ミラン~
欧州の頂点を争う戦いも、ついに4チームを残すのみとなった。その内訳は、イングランド勢が3チーム、イタリア勢が1チームという現在の欧州勢力を分かりやすく我々に提示する結果となった。そのうちの1試合、チャンピオンズリーグ(以下CL)準決勝1stleg 「マンチェスター・U対ミラン」の試合が4/24 マンUのホームであるオールド・トラッフォードにて行われた。 唯一生き残ったイタリア勢力「ACミラン」。クラブという枠を越えて、国の意地と誇りを賭けた大事な一戦となった。対するは、3冠の偉業を再現すべく野心に燃える「マンU」。準々決勝では、同じイタリア勢力「ローマ」を木っ端みじんに粉砕したように、ロナウドやルーニーといった若き才能が醸し出す“脅威”と名将ファーガソンの頭脳が構築する“戦略”が見事な調和をもたらしている。 スタジアムの大多数を占拠したマンUサポーターと、一部のミラニスタの期待と祈りを込めた大歓声の中、試合開始のホイッスルが鳴り響いた。 まずは、ホームで手堅い勝利を優先させたいマンUであるが、開始から5分、喉から手がでるほど欲しい先制点を奪取することに成功する。コーナーからのセンタリングをロナウドがヘディングシュート。ジーダが何とか上空に弾いて一瞬難を逃れたかに見えたが、フワリと浮いたボールはそのままポテンポテンとゴール内を弾んで転がった。マンUにしてみれば、拍子抜けするほど呆気なく、ラッキーな先制点だった。ミランにとってはリズムを掴む間もなく、試合開始直後という早い段階での失点だった。まるでサッカーの神様を味方につけたかのようなマンUの得点シーンを目の当たりにした時、「ミランもローマと同じ道を歩むことに…」と不安を覚えた方も多かったのではないかと思う。 だが、そんなミラニスタの不安を払拭するに十分な素晴らしい同点ゴールを決めた男がいた。それは、現在“CL得点王”という肩書きを持ち、セレソンブラジレイラの10番に抜擢された男「カカ」である。セードルフからのスルーパスに素早く反応し、一瞬のスピードで相手DFを振り切り、ファーサイド目掛けて正確なインサイドキック。「見事なゴール」としか言いようがない。 しかし、カカが魅せた華麗なショーはこれだけでは終わらなかった。今度は得意のドリブルでゴール目掛けて単独突破を図った彼は、器用にボールをコントロールしながら、眼前に立ちはだかる相手DFを手玉に取るように翻弄して抜き去り、最後は1対1の勝負を受けざるをえなかったファン・デル・サールも、成す術なくネットに吸い込まれるボールを見送るしかなかった。 これでスコアは1対2となり、ミランは早くも逆転することに成功した。そして、ここで前半終了のホイッスル。まさにカカのショータイムとなった45分間であった。 しかし、精神的に優位な状況に立ったミランであったが、後半59分には、そのアドバンテージははかなく消え失せてしまった。スコールズの技ありパスを受けたルーニーが、値千金の同点ゴールを挙げて再びミランに食らいついたのだ。 だが、敵地で2対2というスコアは、ミランにとって決して悪くないものだった。ここでのアンチェロッティ監督の狙いは、リスクを避けて、追加点よりもこのまま試合をクローズさせること。そのための采配として、ジラルディーノをベンチに下げ、替わりにグルキュフを投入した。これでピッチ上にFW登録選手が不在となったミランは、まるでローマを彷彿させるように、カカをトップにおいた布陣で、マンUの猛攻に耐えながら最後の笛の音を待った。 時計の針が90分をまわり、試合はロスタイムへと突入。ミランはマンUの最後の攻撃を懸命に弾き返し続けた。しかし、この試合終了間際で一方的に攻められる状況は、サンシーロで行われた準々決勝1stlegのバイエルン戦とそっくりであった。当然ながら、底知れぬ不安が私を襲った。あの時はヴァン・ブイテンに“ロスタイム同点弾”を叩き込まれて愕然となったが、私は「まさかそんな悲劇は2回も続くまい」と天に祈るような気持ちで小さく呟いていた。 だが、起こるのである。続くのである。“負の連鎖”、もしくは“神から与えられた試練”とでも表現すればいいのだろうか。今度は“ロスタイム逆転弾”である。審判が表示したロスタイムは、僅か2分。たった2分。されど2分。もはや私には、この2分という時間が短いのか、長いのか、どう表現していいのか判断できない。 “ロスタイム”とは、我々が日常過ごす時間感覚とは別次元のものなのだろうか。もしかしたら、ピッチ上の22人は、このロスタイムの間だけ別次元の空間に存在しているのかもしれない。この得体のしれない時間は、今のところミランにとって悪魔以外の何者でもない。逆に、勝ち越し点を決めたルーニーにとっては、悪魔どころか天使が舞い降りた瞬間だったに違いない。 「ロスタイム」、そして「悪魔と天使」。それはきっと、サッカーの神様が創造した、お茶目な“お遊び”の1つなのかもしれない。
posted by 浦和.COM |20:59 |
UEFAチャンピオンズリーグ |
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