2007年07月22日
オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
オシム監督は、120分間戦い抜いた選手たちに全てを託した。そして、その巨体を揺らしながらゆっくりとピッチを後にした。 「私が(PK戦を)見ていると勝てないというジンクスがある」と試合後の記者会見で彼は語った。 彼のジンクスの発端は、90年イタリアワールドカップの準々決勝から始まった。当時ユーゴスラビア代表を指揮していたオシム監督は、マラドーナ率いるアルゼンチンと戦い、PK戦の末に敗れた。 時は流れて、2005年11月5日の国立競技場。彼が当時指揮していたジェフ千葉は、ナビスコカップ決勝戦でガンバ大阪をPK戦の末下し、見事優勝に輝いた。その時も彼は、ワールドカップの苦い経験を繰り返すまいと思ったのだろうか、「ジンクスが…」と発してロッカールームへと消えていった。 私は、彼の口から「ジンクス」という言葉が発せられることを、その時からずっと滑稽に思っていた。 オシム監督といえば、「論理的」というイメージが私の中にはある。それは、今までの記者会見での彼の独特の言い回しが、私にそう感じさせているのかもしれない。曖昧な質問をした記者が、逆に彼から理詰めの質問をされ、答えに窮する場面も何度かテレビで見たことがある。 また、彼は大学時代に数学を専攻しており、自らを描いた著書の中でこのように語っている。「(数学を専攻したことは)サッカーの役に立っていると思う。ロジカルに考える習慣がついた」。 彼の発言の意味を、私なりに時間をかけてゆっくりと紐解いてゆくと、「なるほど」と納得させられることがある。それはまさしく難解な数式を解いているかのような気分にさせられる。 しかし、論理的なオシム監督も崖っぷちに立たされた時は、神に祈りを捧げ、ジンクスに従うことをいとわないようだ。 彼の論理的な発言の中には、ユーモアがちらりと顔を覗かせる瞬間がある。例えば今回の試合後の記者会見での1場面。 「PK戦を見ていなかったのか?」という記者の質問に対して、「私はここでは死にたくない。故郷のサラエボで死にたいので、発作を起こしたくない。だから見なかった」と語った。 対話する人物との心理的な“かけひき”とでもいうのだろうか、とても巧みに相手の心中を察して、まるで手品師のように気がつけば彼の話術にはまってしまう。 彼は「ジンクス」という言葉を使って、論理的な思考回路をもつ人間の中にも、実は人間くさい一面があることを、意図的に我々に表現して見せているのかもしれない。 そんなことを考える私も、どうやら彼の術中にはまってしまったようだ。
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posted by 浦和.com |09:52 |
日本代表 |
コメント(9) |
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Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
そうですね。
まさにオシム監督は、難解でチャーミングな人物で惹き付けられるものをお持ちのようですね。
自分には、『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター教授のように、禁断の美学を持っているように見えます。
それと、彼のフィロソフィーは彼の厳しい生活体験からつくられた物だとすると、なぜか日本の古き良き親父とダブってきて、郷愁すら感じてしまいます。
あのぎょろ目で赤鬼のような闘将が、肩をすぼめ目じりを下げているところを何度でも見てみたいと思いますね。
とにかく、昨日は良く頑張った。頑張れ日本!
posted by ボンバー | 2007-07-22 10:32
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
もうひとつジンクスを。
高原がゴールを決めた試合は無敗!
25ゴール。12勝5分(PK戦勝利1)
だそうです。
きちんとエースの活躍ですね。
posted by leonto | 2007-07-22 10:42
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
完全に論理的な人間は
論理的思考を突き詰めて、突き詰めきって
その果てに行き着いたとき、
その先に存在しているものの影を垣間見る。
論理が全てだと考える人間は
まだその淵まで行ききれていないだけのこと。その点で「論理が全て」だと言いながら、その「全て」を尽くしていない不徹底さが残っている。それはその人間の論理的思考能力の限界の故か、それともそこまで考えつくさずに済んでいる彼の人生の幸福の故か。
考えに考え抜いて、もう考えられない、というところに行き着いたとき
ようやく人生が始まるのだ。
posted by 小オシム | 2007-07-22 10:46
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
ユーモアは
彼が人間というものに対して抱いている愛情が
こらえきれず漏れ出してきている
美しい瞬間である。
posted by 小オシム | 2007-07-22 10:48
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
私もオシムに魅せられている一人です。
彼がPK戦を見ないのは当時のユーゴスラビアの情勢から
選手は一部を除いてだれもPKを蹴りたがらなかった。
(オシムも蹴らせたがらなかったでしょう)
その選手達にPKなんて運次第だから気楽に蹴ればいいんだよ
という事を示す為にPK戦を見なかった…
つまり選手個人にプレッシャーや責任を負わせない為の
ポーズだと言う話を聞いています。
一見人間くさいと思われる事の中に論理的な理由もある
奥深い人物だと思います。
それでいて引き上げたロッカールームでは頭を抱えている…
チャーミングな人物です(笑)
posted by デーヨ | 2007-07-22 10:51
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
人事を尽くして天命を待つ。
全力で考えて、考え尽くしてその先が見えてくる、まさにその通りだと思います。
科学的(論理的)思考は万能ではなく、限界があり、その向こうを「宗教」と呼ぶ人もいる。昨日は「川口大明神」がいた、ということでしょうか(笑)。
posted by StagB | 2007-07-22 11:52
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
すばらしい皆さんの奥深いコメントにも感動しました。
posted by egpon | 2007-07-22 13:30
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
>神に祈りを捧げ、ジンクスに従うことをいとわないようだ。
でも、無神論者のオシムには信じるべき「神」が存在しない。そのかわりに「運」という言葉をよく使う。また、サッカー自体がオシムにとっての宗教だともいわれてます。
そーいや、2005年のナビ決勝にスーツでガンバに勝ったからって、その直後の万博にスーツ着ていって勝ったこともあったな~(笑)。とぼけてたけど。
posted by ことわざ | 2007-07-22 18:09
Re:オシムのジンクス~日本vsオーストラリア~
コメント投稿者ID :
そのジンクスを、
発端から大学時代の専攻まで解説し読み解くいい記事ですね。
次回も期待しています。
posted by おれだ | 2007-07-22 22:54
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