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【読書感想文】「いつも、気づけば神宮に」系譜を背負って駆け行くあなたへ

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いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」 長谷川晶一

いろいろ今のチーム状況に言いたいことは山ほど、山ほどあるのだが特に気がかりな選手が1人いて、彼のことを想っていた。 その中で去る日に読み終えた私の中でどうしても頭から離れないこの本をご紹介させていただきつつ皆さんにも「彼」の苦悩、努力、背負ったものに想いを馳せて戴きたいと思い筆を執った次第である。

本書は大のスワローズファンのフリーライター、長谷川晶一氏が自らのスワローズファンとして歩んできた道、スワローズの歴史を数年にわたる現役選手、OBへの取材を重ね記された「極私的スワローズ史」ノンフィクションである。 誰が言ったか「ヤクルトファンのバイブル」と言っても過言ではないスワローズ愛の結晶であり、すべてのスワローズファン、野球ファンにお勧めしたい一大叙事詩中の今回は1章にフォーカスしたい。

第二章「背番号《1》の系譜」

結論から言うと、「彼」、即ち山田哲人はとんでもない重いものを背負っている、ということだ。文字通り、その背中に。 2015年オフに公約通りトリプルスリーを達成、MVPを達成するなど優勝に最大の貢献をした山田にこれまた約束通り継承することが決まった準永久欠番の「1」の歴史を辿った本章は「初代ミスタースワローズ」にして「小さな大打者」、若松勉氏を尋ねることから始まる。 ちなみに若松氏を「オールタイム・マイヒーロー」と呼ぶ著者の長谷川氏は今回まで依頼はあったものの

「僕はまだ若松さんにお話を聞けるほどの人間ではない」(56P)

との思いから若松氏への直接インタビューを断り続けてきたのだという。その自らへの禁を解くほどの本書への意気込みたるや。

1年しか実績のない選手にポンと与えられるような「ただの番号」でしかなかったスワローズの《1》の物語をバットで記し始めた若松はお荷物球団と揶揄されたチームを牽引し優勝に導き、その後も長年にわたってスワローズを支えユニフォームを脱いだ。

その物語の続きは意外な形で池山隆寛の手に渡る。割と有名な話だが、年俸交渉の一環で駆け引きの材料に《1》を使ったところあっさりと「準永久欠番」はその背を塗り替えた。 職人肌の若松から派手なスターの池山へ。受け継がれたのは背番号だけではなかった。 《1》 は池山の野球観を変えた。チームの中心としての自覚をユニフォームとともに身にまとったのである。

「チームを引っ張っていこうとは常々思っていたので、試合は休めないという意識が強くなりました。あの頃は、試合に出る以上は打って、守って、走って、そのすべてをやらないといけないと思っていましたね」(66P)

この気概は池山の弟分にして若松監督の教え子である岩村明憲へと伝播した。 この節での監督として岩村の起用のために代打要員としての意向を池山へ伝えるシーンは心が揺さぶられる。 背番号を返上し赤いメガホンを持った背番号36は岩村のよき兄貴分であり続けた。 岩村が足首の不調を理由に欠場し、池山がスタメンに名を連ねた試合の後にこう叱責したという。

「たかが足首くらいで、なに試合休んどんねん。レギュラーなら、たかが捻挫くらいで痛いだの何だの言うな、ボケ」(76P)

厳しくも岩村の自覚を促す言葉だ。背番号《1》は、重い。それだけのものがなければチームに示しがつかない。「ミスタースワローズ」とはなおも重い。

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記事カテゴリ:
読書感想文
タグ:
山田哲人

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【読書感想文】「いつも、気づけば神宮に」系譜を背負って駆け行くあなたへ

コメントありがとうございます!
チュート・ハンパー様から頂きましたコメントが励みとなり今回の記事を投稿するに至りました。
お互い厳しいシーズンとなっていますがなんとか応援球団を支えられるよう頑張りたいと思います。

文春野球、ですね。私もとても楽しみに読んでおります。「月刊・伊藤智仁」はスワローズファン必読ですからね!

お褒めに預かり光栄の極みです。今苦しい山田選手をどう後押ししていけるか、ということの表現としては私にはこうするほかありませんでした。ぜひご興味があれば立ち読みでも手に取ってみてください。レジに直行しているかもしれませんが(笑)

葛藤を乗り越えて今は肩の力が少し抜けたと言いますか、自分が自由にスワローズを文の形で応援できるように、と思い直しました。

オフになりましたらチュート・ハンパー様のおすすめの本を是非ご推挙いただければと思います!本当に読書離れがひどく、きっかけを求めている今日この頃です。

コメント失礼いたします

おつかれさまです。東京ヤクルトは、今シーズンの成績が振るわないようですね。私のひいきの千葉ロッテほどではないと思うのですがいかがでしょうか。

最新のエントリーで読書感想文を目にすることができて個人的に大変うれしいです。
著者の長谷川晶一さんは、某大手出版社が発行している週刊誌が運営するサイトの、合計12人の書き手の皆さんが各球団についてコラムを発表するという企画で、ヤクルトについて毎回とても読みやすくて面白い文章を展開されている方ですね。「9つの系譜」も書店で見かけました。
いわゆる「背番号≪1≫の系譜」の内容と、山田哲人選手の活躍や現況とを照らし合わせて書かれているのがよくわかり、またmetropolis-22様の、山田選手への思い入れが強く感じられました。

metropolis-22様の独白にはドキリとさせられましたが、極めて無責任な物言いになってしまいますが、
 「まああの方はプロなんだし、深く考えてもしようがないんじゃないですかね~」
程度の言葉くらいしか思いつかないのが正直なところです。私も、ロッテについてそれだけの本を上梓するような方が現われたら、metropolis-22様と同じようなことを考えるかもしれません。
でも長谷川さんて方もスゴいですね。12球団全部のファンクラブに入ろうなんて普通考えないと思いますよ。
そのほかの系譜もなかなか興味深そうに思いました。
また、機会がありましたら、特にヤクルトに関連したご本の感想を書いていただければ幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。長文になりまして大変失礼しました。

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