2011年12月18日
スポーツ組織に限らず、どの組織においてもトップの権限はその組織の規律と下で働く権限のない人たちを守るために存在します。しかしある組織が崩壊する時、多くの場合権限を持つ者が個人の権限を守るために権限を悪用し、全体の組織統率機能の崩壊を招くという場面が幾つも見られます。『アメリカ大学組織機能が大学スポーツによってい崩壊する時』で取り上げたPennsylvania State University(以後PSU)で起こっている歴史的スキャンダルに端を発して、大学や高校スポーツでも性的虐待事件がメディアで取り上げられています。今回の投稿は。『アメリカ大学組織機能が大学スポーツによってい崩壊する時』の続編です。
Not my coach. Not my town (ESPN.comより)
NCAA規則違反と犯罪行為
ESPNから流れてくるニュースを毎日読みながら未だに理解できないのは、もしこれらの容疑が事実だとしたら、名門アメリカンフットボール云々よりも、これは人としてやってはいけない犯罪行為です。
「アメリカ大学スポーツで一番権力のある人は誰でしょう?」で取り上げたような、オハヨウ州立大学のスキャンダルや、USCでのスキャンダルは全て学生選手が「記念指輪を売った」とか「エージェントからお金を貰った」などのNCAA規則違反で法的な犯罪行為ではありません。つまり警察に捕まって牢獄に入ることはありません。それ故に規則違反が発覚するのと合わせて、それらの違反学生選手や監督は大学を辞めて、プロなど他で活躍できる場所を探します。
しかし少年への性的虐待又はシャワールームでの不適切な行動は明らかに犯罪行為です。この重罪行為があったかもしれないという認識がありながら、且つ州法では警察に通報することが義務図けられているにもかかわらず、なぜ総監督も学長も何もしなかったのでしょか?しかも大学警察(Campus Police)を監視する副学長も報告を受けていながら何もしなかった(同副学長は偽証罪で逮捕)。これでは隠蔽工作をしたといわれても仕方がありません。
メディアの問題
今回のPSUでの一連の事件に関連して、本来焦点を当てるべき犯罪行為と被害者への対応よりも同大学のFBチームと元監督パターノー氏の今後に話題が集中していたことも問題の一つに挙げられると思います。サンダスキー氏逮捕の数日後、パターノー監督クビのニュースが流れるやいなや学生達は暴徒化し、メディアはパターノー氏の自宅に張り込んで『アメリカンフットボール試合への影響』を語っていました。州知事やオバマ大統領までこの事件に関してのコメントを発表するという事態になりました。
Barack Obama weighs in on Penn State (ESPN.comより)
『アメリカ大学組織機能が大学スポーツによってい崩壊する時』で取り上げたように、アメリカンフットボールというアメリカ大学スポーツ史で特別な地位と権限を築き上げたスポーツはその巨大にまで膨らんだ影響力を自分でさえもコントロールできなくなっています。そしてアメリカンフットボールは人々の視点を狂わせ、本来教育の一部である「大学スポーツを通して学生選手の人間形成と更なる育成を促進する」という目的を失っています。大学利害関係者(Stakeholders)にとってアメリカンフットボール試合での勝利が無くてはならないもになった時、FB総監督の給料は19世紀の後半には既に大学総長の給料と同額かそれ以上までつり上がり、それと同時に監督の権限は増大していきました。
「アメリカ大学スポーツで一番権力のある人は誰でしょう?」で取り上げたように、FB監督とチームが巨大すぎる権限と影響力を持ち、大学総長すらそれを抑えることが出来ない今、大学スポーツとその組織は統制機能を失い、崩壊への道を下り始めています。本来組織の権限は権限のない人を守り、道徳や論理を統制し規律を守らせるためにあるべきものが、FBという巨大な権力を守るためだけに使われ、弱きものを踏みつけるという結果になってしまいました。アメリカ大学が守るべきは億単位の利益を上げる1スポーツか、または人と地域か、教育の一環としての大学スポーツのあり方をもう一度考え直す時期になっていると思います。
State of Shock (ESPN.comより)
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2011年09月24日
コンファレンスの移籍話で持ちきりのアメリカ大学スポーツ、コンファレンスが果たすべき役割の一つ、審判員制度について考えて見たいと思います。このことを思った切っ掛けは、昨日モーガン大学が所属するコンファレンス、MEACに所属するBethune-Cookmanと、同じくMEAC所属のHampton のアメリカンフットボール試合がESPNで放送されていたことでした。MEACはコンファレンスとしてはとても小さく、「テレビとスポーツ」で取り上げたようにテレビ放映される数がとても限られています。しかも、試合内容はHamptonが残り4秒で奪ったタッチダウンが、ビデオ判定によってIncomplete Passと判定されBethuneが逃げ切るという劇的なものでした(ゲームハイライトは下のリンクより)。
今回のように試合を左右する決定的な場面でビデオ判定などのテクノロジーが利用できる事は審判員を含めた、試合関係者にとってとても有意義なことです。しかし、上に述べたようにMEACのアメリカンフットボール全試合中、テレビ放送されるのはたったの10試合だけです。当然その他の試合ではビデオ判定の選択肢は有りません。自分も今まで何度となくホームチームにひいき(と取れなくもない)審判の判定を目の当たりにしてきました。モーガンのホームゲームでそれを目撃した時、横に居た同僚が、”That’s love.”と言っていたのを今でも覚えています。つまり、「あれは愛だ=ひいきをしてくれた。」という意味です。
実際にひいきが行なわれていたかは分りませんが、アメリカ大学フットボール審判員が大学が所属するコンファレンス(モーガンの場合はMEAC)によって雇われているというシステム上、シーズンの前半に行なわれるNon-Conferenceゲームと呼ばれる試合でアウェーチームに厳しい判定が行なわれた時、このシステムに関する議論が常に挙がります。実際に2006年に行なわれたオクラホマ大学対オレゴン大学の試合はビデオ判定されたのにもかかわらず、審判が誤った判定を下しオレゴンが逆転勝ちをしました。この出来事はコンファレンス、大学や大学総長までも巻き込んだ一大事件へと発展しました。その後NCAAと11のコンファレンスは2007年から2012年まで共同で管理団体を設置してビデオ判定の技術と審判員の技術向上に勤めています。ちなみに経費は年間約1億円ほどだそうです。
NCAA, football powers seek better officiating(USATodayより)
Bethune-Cookman Wins After Review (ゲームハイライト、ESPNより)
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2011年09月15日
20世紀前半まで、黒人は黒人大学にしか進めませんでした。黒人は黒人大学でアメリカンフットボールチームを作り、43年前の9月28日、栄光あるヤンキースタジアムで始めての黒人大学アメリカンフットボールチーム同士の試合がモーガン大学(Morgan State University)とグランブリング(Grambling State University)の間で6万人以上の観客(黒人)を集めて行なわれました。当時選手だった一人は、「いままであれほど大勢の黒人が一斉に歓喜を上げた光景を見たことがない」と言うほど、その光景と興奮は、アメリカ大学アメリカンフットボールの歴史上他に類を見ないものだと思います。その歴史的試合のドキュメンタリーがCBSテレビで放送されるそうです。残念ながら日本からはご覧になれないかもしれませんが、下にあるリンクから放送ダイジェストがご覧になれるので、雰囲気だけでも感じ取っていただければ幸いです。
プレビューをご覧になるには下のモーガン大学のページに行っていただいて、ページの真ん中あたりにある
A clip from the documentary can be viewed via:
と書いてある横のリンクをクリックしてください。(ファイルを開ける時に「開けますか?」というメッセージが出ると思うので、そこであけると選択すればご覧になれます。)
CBS SPORTS NETWORK TO AIR DOCUMENTARY ABOUT FIRST HISTORICALLY BLACK COLLEGE FOOTBALL GAME PLAYED IN NEW YORK CITY (モーガン大学体育局のウェブページより)
「スポーツと政治の共通点」人種差別に関する過去の投稿より
posted by maxsgoodies |09:20 |
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2011年09月07日
アメリカ大学アメリカンフットボールの名門、ルイジアナ州立大学(以後LSU)はQBを初めとするレギュラー4人がシーズン初戦の数日前に暴力事件に絡む(うち二人は逮捕)というピンチを迎えていました。全米で3位のオレゴン大学(LSUはこの時点で4位)を相手に苦戦が予想されていましたが、蓋を開ければ40-27で全米トップと言われるオレゴンディフェンスを相手に完璧な試合運びをしました。暴力事件に関する雑音が試合直前まである中、チームを指揮したマイルズ(Miles)氏の手腕は高く評価されました。
しかし、自分が注目するのはこの試合直後から暴力事件のことに関してのニュースがぴったり途絶えたことです。試合に勝ったLSUは現在全米で2位にランクインされています。試合前の雑音は勝利を喜ぶ写真と多くの歓声に変わりました。しかし、暴力事件に関しての調査は続いており、逮捕された二人以外にもチームの中から逮捕者が出る可能性もあるといわれています。「勝てば官軍」ではありませんが、まるで誰もがこの事件を過去のものとしているような雰囲気すらあります。個人的には重要な事は起こった事実から目をそらすことではなく、地域と社会に責任のある大学が最初の情報源として常に状況を伝えるべきだと思います。そして、結果に対して社会の納得できる処分を学生選手に科すべきだと思います。LSUの今後の対応に注目したいと思います。
参考文献
LSU football team tries to move on after arrests of Jefferson, Johns(試合直前のインタビュー、USATODAYより)
Hot and Not in the SEC: Week 1(試合後マイル氏が選手と喜ぶ写真、espnより)
posted by maxsgoodies |21:47 |
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2011年09月05日
シーズンの最初に行われる大学アメリカンフットボールの試合は各大学体育局に億単位の収入を齎す大事な試合です。これらの試合はNon-Conference試合と呼ばれ、収入で見ると大きく分けて3つあります。
- Guarantee Game:これに関しては、「Guarantee Games」と「八百長」の違い、「アメリカ大学体育局の歳入歳出分析」、「Guaranteed Games」などの過去の投稿で取り上げているので、そちらを参考にしていただきたいのですが、このシステムが始まったのは1978年。大学アメリカンフットボールチームの中で最も歴史が古い大学の一つミシガン大学(University of Michigan) の当時のAthletic Director, Don Camham氏が今までチケットの収入を半分に分けていたやり方から、相手校に一定の金額を払って自分のホームで試合を行う方法を採用しました。これには払った金額よりも当日のチケット収入の方がより大きいものであった理由があり、現在ではこのやり方が主流となっています。
- Home-and-Away:これは試合会場を交互に変えて試合を行うやり方でホームになった大学がその年のチケット収入の全てを得ることができます。ちなみにNon-Conference試合ではないのですが、フロリダ大学(University of Florida)とジョージア大学(University of Georgia)のライバル試合、Georgia Florida Football Classicでは各大学ホームの試合で1億8000万円以上の収入が上げられると予想されています。
- Neutral Site:近年ポピュラーになってきたこのシステムは、両大学の中間の場所(そうでない場合も多いのですが)、又は両者が同意した会場においてその試合を行うことです。各大学は総収入を半分に分けて受け取ります。上に挙げたGeorgia Florida Football Classicはこのシステムを使っていて、現在試合はフロリダ州のJacksonvilleで行われています。この方法を取る理由は勿論収入にあって、各大学とも一年間に約1億4000万近くの収入を得ています。Home-and-Awayでやると二年間に一度1.8億円が入るだけなので、二年間で2.8億円の入るNeutral Siteのシステムを取るのは当然の選択と言えます。
以上のように各大学がどのシステムを取るかは、どのシステムが両校にとってより多くの収入を得ることができるかに掛かっています。その収入を得る為に一日掛けてアメリカを横断する大学すらあります。しかしその負担に耐えなくてはいけないのは試合を行う学生選手自身です。多くの大学で秋の学期が始まっています。長距離遠征のために最初の週から授業を休まなければならない彼らは既に学業の部分で遅れを取っているのは言うまでもありません。
posted by maxsgoodies |02:52 |
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