2010年01月13日

「勉強をがんばった」だけでは駄目なようで。

全米でも有名な学業的に名門校であるディポール大学 (DePaul University)の男子バスケットボール総監督であるジェリー (Jerry Wainwright)氏が先日チームの試合成績低迷を理由に解雇されました。この記事を読んでいて思い浮かんだのが、以前うちの大学のアメリカンフットボール監督と話をしていた時に監督の一人が文武両立に関してこう言いました。「大学は口では(文武両立を)重視するといっているが自分達の契約に成績を上げたことによるインセンティブは含まれていない。それどころか実際学業成績が上がっても、チーム成績が悪ければ自分は必ずクビになる。」

ディポール大学での出来事はこの典型的な例で、ディポール大学体育局長 (Director of Athletics) であるジーン (Jean Lenti Ponsetto)氏はコメントで、「私はジェリー氏が男子バスケットボールプログラムを学業的に発展させたことに満足している、しかし5勝1敗で始まったこのシーズンが現在7勝8敗なのは良くない。」とチームのパフォーマンス面の成績が振るわないことを解雇の理由に挙げています。

ジェリー氏の在籍中の5年間でチームの総合成績は59勝(80敗)と勝率は5割以下です。しかし、男子バスケットボール選手の学業成績を示す APR (Academic Progress Rate) は940、NCAA DIVISION I 全体では 934 なので平均を上回っています(1000 が満点)。彼の在籍中、選手の学業成績は上がったけど、チーム成績が悪かったのでクビ。うちの監督の言い草ではありませんが、「選手の学業成績が悪くても、チームのパフォーマンス成績がよければ大学はなんとも言わないし、ボーナスもくれるかもしれない。」これじゃ選手の学業成績が上がるわけないですよね。

参考記事
Thornton Grad Webster Replacing Wainwright at DePaul

posted by maxsgoodies |09:41 | 文武両道 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年11月23日

プロへの道と貧困からの脱出

モーガン大学体育局でアメリカンフットボールに打ち込む学生選手の99.9%はモーガン大学で今まで一生続けてきたフットボール選手としての人生にピリオドを打ちます。約90人の選手中、大学でのプロデーを経て、NFL の正式トライアウトに行けるのが5~6人で、そこから先に進めるのがよい年で2人というのが現実です。

そうすると、その他の99%の学生選手は他の道を歩むことを選択しなくてはいけません。そこで重要になるのが大学の卒業証書を持っているかと言う点です。「でも、奨学金で大学で勉強できるんじゃないの?」と思われる方も多いと思いますが、学生選手が直面する文武両立への困難は過去に数回取り上げたように、簡単な物ではありません。

一に学業、二に卒業、三四が無くて、5にスポーツ
メディア化するアメリカ大学スポーツが引き起こす大学教育の変化
メディア化するアメリカ大学スポーツが齎す大学教育の変化~其の2~

特にそれを困難にする二つの現状を上げると、1)彼らを指導する監督の評価基準と、2)彼らが育ってきた環境からの脱出が挙げられます。

1)監督の評価基準:多くの大学体育局の使命の宣言 (Mission Statement) として「大学教育の目標を達成する為の一機関として」や「学生選手 (Student-Athlete) は第一に学生であり~」など学業に従事することを謳っていますが、その学生選手を直接指導する監督の評価には学生選手の学業での進歩が参考にされない現実があります。つまりは、学生選手の成績を上げて卒業率を100%にしても、試合に一試合も勝つことが出来なければその監督は仕事を失います。逆に卒業率や学業成績が悪くても、試合に勝つことが出来れば、クビどころかボーナスまでもらえます。それゆえ監督は、「授業よりも練習に出ろ」と学生選手を怒鳴ります。

2)育ってきた環境からの脱出:スポーツで成功し、大金を手にすることは貧しい環境で育った多くの学生選手のまさにアメリカンドリームそのものです。メディアは常にスポーツで成功し、よい家に住み、高級車を乗り回すプロ選手のストーリーを流し、それがごく当たり前に起こるのような錯覚すら起こします。そしてそれは、学生選手だけに留まらず、その家族も現在の貧困から脱出するために、息子をNFLに進むように急かすという悪循環を引き起こしています。以前にも本人の意思とは反してNFL のトライアウトを受けた学生選手がいました。彼は「科学者になりたいけど、家族が(NFL に行くことを)望んでいるから」と言ってNFLに進みました。去年はロースター入りを果たしていた彼も今年はウェブサイトで名前を見つけることが出来ません。

NFL 選手の平均選手寿命は2年半と言われています。多くの人が2年と待たずにその道を閉ざされてしまいます。その道が閉ざされた後、彼らを待ち受けるのは過去100年に一度と言われる就職難です。「その時後悔してからでは遅い、だから大学在学中の今こそ学業に~」、聞こえていても NFL への夢を断ち切れない学生選手たちがまた、卒業を待たずしてNFL のトライアウトに向けフロリダでのトレーニングに旅立っていきます。

posted by maxsgoodies |22:24 | 文武両道 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年11月15日

メディア化するアメリカ大学スポーツが齎す大学教育の変化~其の2~

先日の「一に学業、二に卒業。。」で取り上げたように、文武両道を目指すNCAA の対策は一様の成功を見ました。それにより、対策の焦点はアメリカ大学学生選手の卒業率から大学在籍期間中の教育内容の充実に近年移行しています。

しかしこの問題を解決するのは、「卒業率」を上げるよりもはるかに大変なものと想像します。それは「大学スポーツは教育の一環」という建て前と、「勝つためにはどんな犠牲もいとわない」と言う本音の差が大きい現実が存在する為です。

一例としてスケジュールの問題があります。例えば、アメリカンフットボールは年11試合から12試合に増やす為にシーズンの開始を7月下旬から遅くても8月の一週目にしてシーズンを約半月長くしました。フィールドホッケーは開幕戦を10月に行うために、シーズン開始を9月にして、シーズンの長さは四月までの実に8ヶ月に及びます。バスケットボールのスケジュールは 全国中継の露出を得る為にESPNの思うがままになり、夜の9時、10時に始まる試合などはざらになりました。

このような傾向は今に始まったことではなく、幾つかの要因が重なっています。1)前回取り上げた各大学による「体育局」へ経済的サポート、2)NCAA によるスポーツ活性化への働き、3)放送権料などによる NCAA や各大学への収入源の増加、4)トレーニングの効率化、5)オリンピックスポーツ種目への配慮、6)学生選手のプロへの進路の拡大。

以上の要因と年に数百万円以上の奨学金を貰いたい学生の両親、成功して億単位の給料を貰うべく躍起になる監督陣、大学スポーツを広告塔として利用したい大学上層部、さらなるベレルの向上を模索する学生選手とが組み合わさり現在のアメリカ大学スポーツ産業を作り上げています。それが故に「大学スポーツは教育の一環」という建て前を実現するには時間が掛かると思います。

現在のアメリカ大学スポーツを象徴する有名なビデオクリップが Youtube でご覧になれます。アメリカンフットボールの名門、コロラド大学の総監督であるホウキンズ (Hawkins) 氏が学生選手に休みがないという苦情に対して、「休みがほしいなら(NCAA Division I-Aの)アメリカンフットボール をやるな」と言っています。ぜひご覧ください。

Dan Hawkins – Go Play Intramurals brother

posted by maxsgoodies |09:37 | 文武両道 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年11月12日

メディア化するアメリカ大学スポーツが引き起こす大学教育の変化

近年の経済低迷と入学者低下に影響されアメリカ大学各学部の予算は削られるばかりです。本来大学は「学ぶ」場所なのに対して、教育の質と設備への投資は低下し、半比例して大学スポーツの予算と設備は充実していきました。肥大するアメリカ大学スポーツ産業は現在幾つかの体育局で年間予算100億円を越えるものになっています。しかしその内容は「不景気を乗り切ろう~大学体育会編~」でも取り上げたように93%の大学体育局が赤字経営をしています。その帳尻をあわせる為に体育局の外で学部の閉鎖や教授のレイオフ、設備投資への延期などが起こっています。

しかしこの傾向は単に体育局によるものだけでは無いと最近の全米大学の総長 (President) を対象にした調査で明らかになっています。近年の大学では「卒業率」や「教授対生徒比率」など数字で見ても分かりにくい物よりも、新入生を勧誘する道具として、新しいレクリエーション施設や、最新設備の整った寮、メニューの豊富なカフェテリアなど「目」に見えるものに投資をする傾向があるそうです。そしてその筆頭がテレビなどを通じて全米に流れる「大学スポーツ」なのです。キャンパスライフのスポーツエンターテイメントを通しての充実と、大学広告塔としての役割を果たす「大学スポーツ」への投資は拡大し続け、「学部」の充実から「スポーツ」の充実への転換が始まりました。

posted by maxsgoodies |00:02 | 文武両道 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2009年11月11日

一に学業、二に卒業、三四が無くて、5にスポーツ

NCAA が文武両道に力を注いでいることは過去にも何度か取り上げましたが、その傾向が強まったのが90年代の初めでした。一般の学生に比べ学生選手(Student-Athletes) の卒業率、しかも常にメディアの注目を浴びる男子バスケットボール学生選手の卒業率が特に低迷していることを受け結果による物でした。

1989年卒業率
一般大学生:57%
男子バスケットボール学生選手 (NCAA Division I) :44%
アメリカンフットボール学生選手 (NCAA Division I) :56%
NCAA 学生選手全体:58%
(NCAA Graduation Rate より引用)

以上の傾向を受けて NCAA 理事会は「No Grade, No Play」をスローガンに上げ文武両道を強く推し進めました。その代表的な対策としてつい先日亡くなられた NCAA 会長であったマイル(Myles)氏が導入した APR (Academic Progress Rating) や Eligibility Requirement など挙げられます。その結果、2008年には卒業率は上昇し、学生選手全体で64%にまで上がりました。

2008年卒業率
一般大学生:62%
男子バスケットボール学生選手 (NCAA Division I) :49%
アメリカンフットボール学生選手 (NCAA Division I) :56%
NCAA 学生選手全体:64%

しかしまだまだ問題は山積みです。それは、卒業しても内容を伴っていないのではないかと言う懸念があるからです。自分の周りを見渡すと、特にアメリカンフットボール学生選手に多いのですが、社会学 (Sociology) を専攻している学生選手が大勢います。それは授業に出なくても単位が取りやすい為、学業を補佐する監督も学生選手に社会学を専攻することを勧めるためです。つまりは、「大学にはスポーツをする為だけに来て、卒業すればなんとかなるだろう。」で毎日練習に励む学生が大勢いる現実があります。

ニューヨークタイムズに最近掲載された UC Berkeley に関する記事でも「(大学)スポーツ」が極端に強調されすぎて、本来の大学に学びに来る意義を見失っていると掲載されています。

The New York Times 11月6日号より: Should Berkeley Stop Subsidizing Sports?

スポーツにも学業にも長けている学生選手が脚光を浴びる一方、現実としてその他多くの学生選手が目的も無いまま卒業していきます。「学生選手は選手である前に、まず学生である」との NCAA の信念への行動は始まったばかりです。

posted by maxsgoodies |00:00 | 文武両道 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2007年08月29日

文武両道ー高校野球の「公立」と「私立」の論争へ一言

今年の高校野球優勝高、佐賀北が「公立」であるためにいろいろと話題になっています。アメリカでは「公立だから」は話題にすらならないのですがなぜ何でしょうか?

ブログを読んでいて多いのが、あたかも佐賀北、「公立」高校が学問を優先させスポーツを優先させてはいけないようなコメント、または学問とスポーツが両方長けていてはいけないようなコメントをがいくつかありました。そこで質問、文武両道で何がいけないのでしょうか?

アメリカの高校スポーツ(部活動)では高校と所属するリーグによって指定するGPA(Grade Point Average、成績評価平均値)を部活に所属する生徒がクリアをしなければ、その生徒は部活動が出来きない規定になっています。特にスポーツが大学進学への大きなチャンスとなるアメリカでは、大学へ入るのにNCAA(National Collegiate Athletic Association)が定める平均値と大学入学への平均値の条件などがあり、文武両道が高校のスポーツの世界において常識とされています。

この「常識」の基盤になっているのにはいくつかの理由があります。一つ目は生徒の成績を維持しているのはリーグでも、NCAAでもなく、一つ一つの高校なのだということです。大学に入ってもスポーツに順次する生徒は一定の平均値を満たしていなければいけません。満たさなければその生徒自身が奨学金を失うだけでなく、大学も奨学金を与えられる数(特待生の数)をNCAAの規定により減らされてしまいます。特待生の数が減れば強いチーム作りが難しくなり、それによる収入の減少は簡単に予想が出来ます。

大学は生徒に対し家庭教師、放課後補修、勉強部屋などの提供によって何とか平均値のアップを図ります。学校だけに限らず生徒の平均値の維持はコーチや監督の仕事の一つであり、学校とコーチが一体となって生徒の学力向上に努めています。

二つ目の理由にNCAAや高校が所属するリーグや協会の影響力の強さがあります。大学スポーツにおいてNCAAが定めるルールは絶対です。これに反すればいかに有名校であろうとも処断されます。その罰則は厳しいものでルールに反した大学の将来のスポーツの存続すら危うくなることもあります。しかしこの厳しい罰則とルールによって、アメリカ大学のスポーツは(ある程度)ルールに対する従順を保つことが出来ます。スポーツに長けているだけではなく学問も重視するという基本とも言える信念を執行できる機関があるからこそ、文武両道が成り立つのではないでしょうか。

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posted by maxsgoodies |10:17 | 文武両道 | コメント(0) | トラックバック(0)
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