2011年06月02日
アメリカ大学学生選手の文武両道を最重要課題に上げるNCAAが今年も各大学チームの学業成績を示すAPR(Academic Progress Report) を発表しました。残念ながらモーガン大学の男子バスケットボールチームは去年に引き続き基準以下のスコアを取り来年のシーズンは練習時間減少などの罰則を受けることになりそうです。
毎年このスコアが発表されると、話題になるのがHBCU (Historically Black College Universities、モーガン大学もその一つ) と呼ばれる大学が下位のグループに目立つことです。多くのHBCUは大学規模が小さく、又、所属しているコンファレンスも有名ではないので、結果として財源がとても限られていることが共通しています。財源が限られると、自然と提供できる学業サポートも限られHBCUに所属する学生選手の成績も、財源が豊かな有名スポーツ大学などに比べると低くなってしまいます。特にこのAPRには各大学体育局の予算が考慮に入っていないので予算100億円を超えるテキサス州立大学と予算が6億円ちょいのモーガン大学が同じ物差しで図られるという矛盾が出てきます。
その他の理由として、HBUC大学学長(University President)の最重要リストに大学スポーツが入っていないことが上げられます。アメリカ大学の経営方針はアメリカの政治に代表される様に、トップが変わると経営方針も180度変わります。それほど強力な決定権を有しています。そして現在HBCUの多くの学長は学業の充実を重要事項としていて、大学スポーツを大学経営の中心においていません。大学は学生が学ぶところなので、当然の経営方針ではあると思うのですが、「予算内で問題を起こさなければいいよ」的な扱いでぼぼほったらかしにされているのが現状です。これでは働いている人のモチベーションが上がる訳はありません。自然とチームの目標が「上を目指す」から問題を起こさないように「現状維持」に変わっていきます。
(「勉強をがんばった」だけでは駄目なようで)で取り上げましたが、監督にとって学業の安定がその監督の能力として認められることは余りありません。しかし、財源が限られていて、大学からのサポートも期待できない、でも負けシーズンになるとクビにされるかもしれない。この状況でチームと学業の成績を同時に上げる事は困難の極みです。それならこの際ぶっちゃけ、(NCAAの基準ギリギリで)学業を安定させて、クビにならない程度の成績(5割よりちょっと上)を目指してチームの方針を決めて見るのも手かもしれません。まさに「現状維持」を目的とすることです。「そんなんで監督が務まるかい」と思われるかもしれませんが、実際にはモーガン大学ではその「現状維持」すらとても難しい課題なのです。
APRとは?(Wikipediaより)
Academic scorecards keep improving(NCAAより。)
posted by maxsgoodies |02:38 |
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2010年05月25日
大学スポーツの抱える永遠の難問として文武両道が挙げられると思います。ちょっと前ではオリンピック選手が某大学で授業を取りながらスポーツを続けるという話題もありましたが、事実上プロ生活を送っているこのような選手が海外遠征などの合間を縫って大学で授業をとり続けることは困難を極めのが現実です。
NCAA(アメリカ大学体育協会)がアメリカ大学学生選手2万人に対して行なった研究では、多くの学生選手が自分たちを学生ではなく選手として認識しており、年間平均で週に1~2回は試合・遠征等の理由により授業に出れないことがあるそうです。特に野球、ゴルフ、スキー、女子バレーボール、女子バスケットボールとサッカー(DIVISION Iのみ)の種目は遠征等によって大学を離れることが最も多いそうです。
そんな中、ノースイースタン大学 (Northeastern University) は遠征中でも授業を逃さない方法としてインターネットとテクノロジーを活用した方法を取り入れました。と言っても基本的には録画された授業をインターネットでアクセスできると言う簡単な物ですが、これを大学全体で教授50人、445の授業に導入したところが画期的です。大学側は、「これは授業の代わりではない」と前置きしながらも、「学生選手のみならず、大学全体にとってもこの新しいテクノロジーは大きな価値を持つ。」と言っています。昨年の秋から試験的に導入されたこのシステムは今年の秋には更に多くのクラスでアクセスが可能になるそうです。
アメリカ大学のオンライン授業でポピュラーなところではブラックボードと言われるシステムが有名ですが、これはあくまで教師一人一人に任されるため、ノースイースタンのようなことをすることは、その教師一人に負担が掛かります。現在一般的に生徒の数に対して教師の数が少ない分、負担が増え便利な機能でも使いこなせなかったり、勉強する時間が無いのが現実です(自分もその一人です)。ノースイースタンのように大学が率先して資金を投入し、教授陣を協力させることが成功の鍵であり、多くの大学が抱える一番の壁ではないでしょうか。
参考記事:
ブラックボード(モーガン大学より)
Northeastern uses technology to address missed classes for athletes(NCAA.orgより)
Student-Athlete Experiences (NCAA.orgより)
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2010年01月13日
全米でも有名な学業的に名門校であるディポール大学 (DePaul University)の男子バスケットボール総監督であるジェリー (Jerry Wainwright)氏が先日チームの試合成績低迷を理由に解雇されました。この記事を読んでいて思い浮かんだのが、以前うちの大学のアメリカンフットボール監督と話をしていた時に監督の一人が文武両立に関してこう言いました。「大学は口では(文武両立を)重視するといっているが自分達の契約に成績を上げたことによるインセンティブは含まれていない。それどころか実際学業成績が上がっても、チーム成績が悪ければ自分は必ずクビになる。」
ディポール大学での出来事はこの典型的な例で、ディポール大学体育局長 (Director of Athletics) であるジーン (Jean Lenti Ponsetto)氏はコメントで、「私はジェリー氏が男子バスケットボールプログラムを学業的に発展させたことに満足している、しかし5勝1敗で始まったこのシーズンが現在7勝8敗なのは良くない。」とチームのパフォーマンス面の成績が振るわないことを解雇の理由に挙げています。
ジェリー氏の在籍中の5年間でチームの総合成績は59勝(80敗)と勝率は5割以下です。しかし、男子バスケットボール選手の学業成績を示す APR (Academic Progress Rate) は940、NCAA DIVISION I 全体では 934 なので平均を上回っています(1000 が満点)。彼の在籍中、選手の学業成績は上がったけど、チーム成績が悪かったのでクビ。うちの監督の言い草ではありませんが、「選手の学業成績が悪くても、チームのパフォーマンス成績がよければ大学はなんとも言わないし、ボーナスもくれるかもしれない。」これじゃ選手の学業成績が上がるわけないですよね。
参考記事
Thornton Grad Webster Replacing Wainwright at DePaul
posted by maxsgoodies |09:41 |
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2009年11月23日
モーガン大学体育局でアメリカンフットボールに打ち込む学生選手の99.9%はモーガン大学で今まで一生続けてきたフットボール選手としての人生にピリオドを打ちます。約90人の選手中、大学でのプロデーを経て、NFL の正式トライアウトに行けるのが5~6人で、そこから先に進めるのがよい年で2人というのが現実です。
そうすると、その他の99%の学生選手は他の道を歩むことを選択しなくてはいけません。そこで重要になるのが大学の卒業証書を持っているかと言う点です。「でも、奨学金で大学で勉強できるんじゃないの?」と思われる方も多いと思いますが、学生選手が直面する文武両立への困難は過去に数回取り上げたように、簡単な物ではありません。
一に学業、二に卒業、三四が無くて、5にスポーツ
メディア化するアメリカ大学スポーツが引き起こす大学教育の変化
メディア化するアメリカ大学スポーツが齎す大学教育の変化~其の2~
特にそれを困難にする二つの現状を上げると、1)彼らを指導する監督の評価基準と、2)彼らが育ってきた環境からの脱出が挙げられます。
1)監督の評価基準:多くの大学体育局の使命の宣言 (Mission Statement) として「大学教育の目標を達成する為の一機関として」や「学生選手 (Student-Athlete) は第一に学生であり~」など学業に従事することを謳っていますが、その学生選手を直接指導する監督の評価には学生選手の学業での進歩が参考にされない現実があります。つまりは、学生選手の成績を上げて卒業率を100%にしても、試合に一試合も勝つことが出来なければその監督は仕事を失います。逆に卒業率や学業成績が悪くても、試合に勝つことが出来れば、クビどころかボーナスまでもらえます。それゆえ監督は、「授業よりも練習に出ろ」と学生選手を怒鳴ります。
2)育ってきた環境からの脱出:スポーツで成功し、大金を手にすることは貧しい環境で育った多くの学生選手のまさにアメリカンドリームそのものです。メディアは常にスポーツで成功し、よい家に住み、高級車を乗り回すプロ選手のストーリーを流し、それがごく当たり前に起こるのような錯覚すら起こします。そしてそれは、学生選手だけに留まらず、その家族も現在の貧困から脱出するために、息子をNFLに進むように急かすという悪循環を引き起こしています。以前にも本人の意思とは反してNFL のトライアウトを受けた学生選手がいました。彼は「科学者になりたいけど、家族が(NFL に行くことを)望んでいるから」と言ってNFLに進みました。去年はロースター入りを果たしていた彼も今年はウェブサイトで名前を見つけることが出来ません。
NFL 選手の平均選手寿命は2年半と言われています。多くの人が2年と待たずにその道を閉ざされてしまいます。その道が閉ざされた後、彼らを待ち受けるのは過去100年に一度と言われる就職難です。「その時後悔してからでは遅い、だから大学在学中の今こそ学業に~」、聞こえていても NFL への夢を断ち切れない学生選手たちがまた、卒業を待たずしてNFL のトライアウトに向けフロリダでのトレーニングに旅立っていきます。
posted by maxsgoodies |22:24 |
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2009年11月15日
先日の「一に学業、二に卒業。。」で取り上げたように、文武両道を目指すNCAA の対策は一様の成功を見ました。それにより、対策の焦点はアメリカ大学学生選手の卒業率から大学在籍期間中の教育内容の充実に近年移行しています。
しかしこの問題を解決するのは、「卒業率」を上げるよりもはるかに大変なものと想像します。それは「大学スポーツは教育の一環」という建て前と、「勝つためにはどんな犠牲もいとわない」と言う本音の差が大きい現実が存在する為です。
一例としてスケジュールの問題があります。例えば、アメリカンフットボールは年11試合から12試合に増やす為にシーズンの開始を7月下旬から遅くても8月の一週目にしてシーズンを約半月長くしました。フィールドホッケーは開幕戦を10月に行うために、シーズン開始を9月にして、シーズンの長さは四月までの実に8ヶ月に及びます。バスケットボールのスケジュールは 全国中継の露出を得る為にESPNの思うがままになり、夜の9時、10時に始まる試合などはざらになりました。
このような傾向は今に始まったことではなく、幾つかの要因が重なっています。1)前回取り上げた各大学による「体育局」へ経済的サポート、2)NCAA によるスポーツ活性化への働き、3)放送権料などによる NCAA や各大学への収入源の増加、4)トレーニングの効率化、5)オリンピックスポーツ種目への配慮、6)学生選手のプロへの進路の拡大。
以上の要因と年に数百万円以上の奨学金を貰いたい学生の両親、成功して億単位の給料を貰うべく躍起になる監督陣、大学スポーツを広告塔として利用したい大学上層部、さらなるベレルの向上を模索する学生選手とが組み合わさり現在のアメリカ大学スポーツ産業を作り上げています。それが故に「大学スポーツは教育の一環」という建て前を実現するには時間が掛かると思います。
現在のアメリカ大学スポーツを象徴する有名なビデオクリップが Youtube でご覧になれます。アメリカンフットボールの名門、コロラド大学の総監督であるホウキンズ (Hawkins) 氏が学生選手に休みがないという苦情に対して、「休みがほしいなら(NCAA Division I-Aの)アメリカンフットボール をやるな」と言っています。ぜひご覧ください。
Dan Hawkins – Go Play Intramurals brother
posted by maxsgoodies |09:37 |
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