2010年02月25日

オリンピックとビジネス(ウエア)

バンクーバーオリンピックも後半戦になり、メダルには届かなくても、一生懸命がんばる日本人選手の姿に心を動かされる日々が続いている。4年に一度のオリンピック。バンクーバーで納得出来る成績が残せなかったら、2014年のソチ大会でリベンジ出来る保証はどこにも無い。4年間もの間世界で戦える実力を維持し続けるのは並大抵では無い。
それだけに選手の、掛ける情熱の大きさが伝わってきて、メダルがとれなくても心動かされてしまうのだろう。

スポーツマネジメントの視点で観ると、ウインタースポーツがこれだけ毎日メディアに登場し、新聞の一面を飾り、人々の話題になる時期はオリンピックを除いて他に無い。それだけにビジネスをする人たちは、この機会に様々な仕掛けをしてくる。
競技団体も同様だ。冬季オリンピックの競技は、基本的にアマチュアだ。そうなるとオリンピックの時期に、広く多くの人に競技を知ってもらって、競技者となってもらうこと、観戦に来てもらうことへのキッカケ作りをしなくてはならない。トリノオリンピックでカーリングが注目され、その面白さが認識されたように、競技としてブレークする千載一遇のチャンスなのだ。

ウインタースポーツグッズを扱っているメーカーも躍起になっている。メダルを獲得した選手が使っているギアやウエアは売上がグンと伸びるからだ。
「あの選手が着ていてカッコよかった」という憧れからくるものと、
「あの選手が使っているのだから性能的に信用できる」という機能的な面からくる要素があると言われている。

さてさて、そこで気になるのが、スキー・スノーボード競技のリブス%size(2)}だ。ゼッケンを付けるために上半身に身に付けているものだ。あのリブスのおかげでスキーウエアは自社の製品であることをアピールするのが難しい。袖のところにデザインの一部として社名を入れている企業もあるが、基本的にはリブスのおかげで、さっぱりどこのメーカーか解らなくなっている。

このスポーツウエアスポンサード問題は、賛否両論色々ある。

【賛成派】
オリンピック競技のほとんどはアマチュアで、選手の練習に必要な費用や、海外遠征、世界大会への出場など、それらの費用をまかなうのも選手自身が行わなくてはならない。スポーツマーケティング会社や、選手マネジメントを行う会社が、色々なことを代行する例が多くなってきているが、それでも選手自身が頭を悩ませなくてはならない。
選手自身がスポーツメーカーと契約をして、
「TVやメディアに露出する時には、必ず指定メーカーのウエアを着る事、出来るだけ社名ロゴが見えるように着用する事」
といった契約を交わし、その代表として金銭を受け取る。このお金で世界で戦えるように練習や遠征に使うわけだ。
選手にとっては、競技を極めて行く上で何の障害も無い。時間も拘束されないで、お金を受け取る事が出来る。このスポンサード契約を否定されると、競技生活が続けられなくなる可能性だってある。

【反対派】
2008年の北京オリンピック直前に話題になった、スピード社の新素材水着レーザーレーサー事件が記憶に新しい。
日本水泳連盟は、ミズノ、アシックス、デサントの3社からスポンサードを受けていた。そのためオリンピックには3社の水着を着て出場することが義務づけられていたのだ。
ところが、スピード社の新しい水着を着るとタイムが伸びる事が判明したにも関わらず、3社との契約があったため、スピード社のレーザーレーサーを着る事が出来ない。という事態が起きた。結局いろいろあって、選手はスピード社の水着を着てオリンピックに出場し、3社は契約違約金を請求しなかった。ミズノ、アシックス、デサントは懐の深さを見せた結果になった。
北京オリンピックの時には、選手も協会もダメージを受けなかったが、もし3社が寛大で無かったら。。
と考えると問題はそんなに簡単じゃない。

【ドリームチーム】
1992年に行われたバルセロナオリンピックで、競技協会が契約したスポーツウエアメーカーと。選手が個別契約したメーカーが異なったために、水面下で様々な調整が行われた。
問題の選手は、アメリカバスケットボールチームのマイケル・ジョーダンマイケル・ジョーダンと言えば「ナイキ」と契約をしていて、ジョーダンモデルなどの靴が爆発的な人気を博し、マニアの間で高値で取引されていたこともあり、ナイキとの関係は深く長い。マイケル・ジョーダンはNBAのプロ選手だったことはご存知の通り。NBAのユニフォームにはメーカーのロゴは入っていなかった。しかしオリンピックのユニフォームには、「チャンピオン社」のロゴマークが入っていた。
アメリカのバスケットボール協会がチャンピオン社と契約していたもので、代表選手はこのユニフォームを着る事が義務づけられていた。このことにマイケル・ジョーダンは納得しなかった。ドリームチームの一員としてオリンピックに出場したいが、ナイキのライバル会社のロゴを身に付ける事にはしたくなかったのだ。
試合もそうだが、メディア露出はさらに神経質だった。結局マジック・ジョンソンやラリー・バードなどの説得を受けて、チャンピオンのロゴを見につけてオリンピックに出場する。

しかし、マイケル・ジョーダンは最後まで抵抗をした。アメリカがクロアチアを破って優勝を決めた後の表彰式。ジョーダンは肩から星条旗を掛けて出席する。最も多くメディアで紹介される可能性の高い金メダルを肩にかける瞬間にチャンピオンのロゴが映らないように、星条旗で隠したのだ。ジョーダン以外にも星条旗を肩に掛けている選手がいるが、全てナイキと契約のある選手だった。
これはナイキの指示があったのでは無く、あくまでも選手の意思で行った行動だったそうだ。
(ジャスト・ドゥ・イット—ナイキ物語、ドナルド カッツ/著-1996)
ドリームチームの表彰式の写真はとても印象的だっただけに、この裏話にはガッカリさせられた。ジョーダンの肩に掛けていた星条旗はナイキ以外の会社のロゴを隠す目的もあったなんて。
スポーツの純粋さや、すばらしさを汚された気分になるのは、僕だけなんだろうか。

スポーツがプロ化することによって、職業としてスポーツをして生計を立てる人が登場した。同時に、ずっとアマチュアでスポーツをしている選手との格差が生まれた。その格差を埋めるために選手自身がスポンサーを取ってくるという、行動の連鎖が起きてしまったのだ。
スポーツビジネスとか、スポーツマネジメントとか、そんな講義を大学で行っている身としては、偉そうな事を言えた義理では無いが、スポーツとお金の関係はとても難しく、かつとても重要なのだ。

posted by marketing |22:30 | オリンピック | コメント(1) | トラックバック(0)
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2010年02月10日

J1経営損益分岐点は35億円

J1でチームを運営する上で、チームとしていい成績を残して、その上赤字にならないためには、年間でいくら予算が必要なのだろう。
Jリーグが公表している、2008年度の各クラブの収支報告では、18チーム中7チームが赤字。J1全チームの平均でも営業利益は1100万円の赤字になっている。つまりJ1チームは赤字での経営になる危険性が高く、優秀な経営陣と明確な経営上の差別化が無いとうまくいかないことを示している。
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チーム成績 プロサッカーチームなのだから、成績の善し悪しは重要だ。サポーターだってあまりに弱いチームでは愛想を尽かしてファンを辞めてしまう可能性だってある。スポンサーだって離れて行ってしまうかもしれない。やはり成績はチームを評価する上で最も重要視される項目だ。 Jリーグが公開している最新のデータは2008年度までなので、2008年の情報をもとに考察することとする。 チーム成績のひとつの目やすを「勝ち越す」こととしよう。 試合の勝率で5割以上となると、10位のヴィッセル神戸まで。11位の柏レイソルは敗戦数が勝利数より少ないので「負け越し」と言えるだろう。 勝点を基準に考えるてみよう。 J1は1年間に34試合ある。その全試合に勝利したら勝点は102点になる。この102点の過半数51点以上で「勝ち越した」と解釈することが出来る。 勝点を基軸にすると7位の浦和レッズまでで、8位のカンバ大阪からは「負越した」という解釈をすることが出来る。 勝ち越すための選手年俸 2008年シーズンのJ1全18チームの勝点と選手人件費をグラフにプロットして最小二乗法で回帰直線を引いた。その式は y=14.651x+965.28となった。 この式に勝ち越しの勝点数51を代入してみると、171.481という答えが出た。計算上は勝点を基軸にして勝ち越すためには17億1248万円の年俸が必要になると考えられる。
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ちなみに、 勝点1を獲得するために平均で3639万円の選手年俸が支払われており、 1試合勝利するために1億3364万円1得点するために3862万円となっている。 Jリークの1点には、3862万円もの原価が掛かっていることになる。これはかなり乱暴な計算なので、学術的には意味は無いが、ウンチクとしては面白い数字だと思う。 勝ち越すための年間予算 17億1248万円の選手人件費を支払って黒字になるための年間予算を計算してみた。2008年シーズンのJ1全18チームの営業費用、営業収入などの平均値を基準にして、もし選手年俸が17億1248万円のチームがあったら、どうなるかを計算すると、35億7400万円1100万円の赤字になる。赤字になったのでは意味が無いので、その分を営業収入に加算すると、35億8500万円ということになる。 この35億8500万円が、大ざっぱに計算してJ1チームの損益分岐点(赤字と黒字の境目)となるだろう。 marketing-141735.gifmarketing-141736.gif 表3、表4、表5を見ても、年間35億円がほぼ妥当であることが読み取れる。 表3は、チームの収入が多い順番で並べてみた。千葉までが35億円なので、そのポイントで色を変えてみた。年間収入35億円以上には赤字クラブが無いことが一目瞭然だ。 表4は、チームの利益が多い順番で並べてみた。黒字のクラブの色を変えてみた。赤字のチームに年間収入35億円を下回るクラブは存在しないことが読み取れる。 marketing-141737.gif表5は、勝点の多い順番で並べてみた。今回「勝ち越し」と定義づけた51以上に色をつけてみた。営業収入を見ると大分が21億円だが、それ以外は33億以上で、35億円と言う計算結果が、ほぼ妥当であると言える結果だと思う。 今回の計算は、学術的には不十分な箇所が数多く残るが、スポーツマニアとして公開されている数字を色々計算してみた。 35億円以上の営業収入が確保出来ないクラブは、1日も早く35億円を獲得出来る様に営業活動をすることをお奨めしたい。チケットの値上げ等もあるかも知れないが、サポーターとしては強いチームを作るため、理解して値上げに賛成してあげるのが得策ではないだろうか。


posted by marketing |18:30 | サッカー | コメント(0) | トラックバック(1)
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