2008年06月27日

【収入4500億円】行き過ぎたオリンピック商業主義

20080627-00.jpgもうすぐ北京オリンピックが始まる。
1896年に近代オリンピックが始まった時、かのクーベルタン男爵が唱えた
「スポーツを通して心身を向上させ、さらには文化・国籍など様々な差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」
という「オリンピズム」は、帝国主義全盛の時代にあって画期的なものだった。
100年以上が経過し、29回目を迎える北京オリンピックで、IOC(国際オリンピック委員会)の総収入は4500億円を超えると予想されている。そんなに巨額の費用がオリンピック開催には必要なのだろうか。
私たちがかたずを呑んで見つめる、TV放送画面の中には、スポンサーのロゴが踊り、選手が身に付けられるユニフォームなどにも、契約スポンサーと言う「大人の都合」が存在する。

1984年に行われた第23回ロサンゼルスオリンピックが、商業主義オリンピックの始まりだった。これを否定するつもりは全く無い。ロス五輪は、オリンピック大会を1歩進化させた記念すべき大会だった。
それまでの大会は、スタジアムの建設や環境整備などで開催都市が多額の費用を負担し、赤字続きで大きなダメージを残していた。ロス五輪大会委員長のピーター・ユベロス氏が、税金を1セントも使わないオリンピック開催に向けて、スポーツ・マーケティングの基礎を作った。ユベロス氏が考案したオリンピックの収入は、
1,TV放映権料金
2,スポンサー収入
3,入場料収入
4,記念グッズの販売収入
この考え方が、2008年の北京オリンピックでも継承されている。

IOCのWEBで公開されている"OLYMPIC MARKETING FACT FILE"から紹介しよう。

◆オリンピックのマーケティングの基本的な目的
1、オリンピック活動の独立した財政的な安定を確実にして、それによってオリンピック精神の世界的なプロモーションに貢献すること。
2、オリンピック活動とオリンピックゲームの将来を安定させるために、長期的マーケティングプログラムを作成し維持させること。
3、オリンピックゲームを支えている、いくつかの組織委員会の活動を成功に導くために、一括してマーケティング活動を行うこと。
4、全てのオリンピック活動を通して公正な収益配布行う。
Organising Committees  for the Olympic Games (OCOGs)
National Olympic Committees (NOCs)や新興国への競技組織への経済支援
5、テレビを通して世界中のあらゆる地域で多くの人が、オリンピックゲームを観られるようにすること。
6、オリンピックの商業化をコントロールして、制限すること。
7、オリンピックのイメージと理念という固有資産を保護すること。
8、オリンピックのマーケティングパートナーを、オリンピックの理念のプロモーションに参加させること。

と書かれている。
この8項目がオリンピックで、商業活動を活発に行うための大義名分というわけだ。
5番目の、世界中の地域でオリンピックTV中継を見られるようにしたいのなら、何故あんなに高額なTV放映権料金を、各国の放送局から取るのだろう。先進国が高い金額を負担し、新興国の負担を減らすという理屈はわかる。それにしても値上がりが激し過ぎる。少し矛盾を感じるのは僕だけだろうか。

IOCのレポートに戻ろう

◆オリンピックのマーケティング収益生成策
現在のオリンピックのマーケティングでは、6つの主要プログラムで収益を生んでいる。
1、放映権(インターネットも含む)
2、国際公式スポンサー
3、IOCオフィシャルサプライヤー
4、各国の国内スポンサー
5、チケット収入
6、ライセンスプログラム(記念グッズ)
オリンピックのスポンサーは、最短4年単位でしか契約が出来ない。また大会も4年単位で行われるので、収支の単位も4年で考えられている。1993年から2004年までの収入内訳を表にまとめた。
20080627-02.gif
なんともスゴイ伸び率だ。160%も成長している。
もし国家経済が、こんな短期間で、こんなに経済成長したら、激しいインフレに見舞われて破綻してしまうだろう。それくらい異常な伸び率だ。

オリンピックの商業主義は賛否両論色々ある。1984年のロス五輪以降、オリンピックを開催すると経済効果があり、その上利益が自国に残るので激しい招致合戦が繰り広げられるようになった。それはきっといい事だろう。オリンピックを開催したい国が無かったら、続かなかったかも知れない。

でも行き過ぎなんじゃないかとも思う。
4500億円以上のお金が無いと、本当にオリンピックは開催出来ないのだろうか。
アトランタ大会2800億円で出来たのだから、それで充分じゃないのか。
こんなに巨額のお金が動くと、きっとどこかで「ぼろ儲け」している人たちもいるハズだ。
クーベルタンがオリンピズムを唱えた帝国主義の時代と、商業主義の現在を同じテーブルで議論するのはいささか乱暴だ。
それでも、オリンピックの商業主義は行き過ぎだと思うのは僕だけだろうか。


posted by marketing |10:20 | オリンピック | コメント(0) | トラックバック(0)
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2008年06月18日

NFLの10年

20080618-03.jpg1998年シーズンから2007年シーズンまでの10年間でNFLは大きな成長を遂げた。スポーツマーケティング業界で、最も注目されたのは放映権料ではないだろうか。1998年に契約した金額は1年間で176億ドル。1兆9000億円($1=¥108)と、途方も無い金額だった。この金額がその後、MLBやNBAオリンピックなどの放映権料金の基準となっていった。2006年に放映権料の契約は更新されたが、年間で10億ドル上昇しただけだった。NFLとTV局は、既に妥当な金額であり、これ以上値上げを続けて行く事が、NFLにとってTV局にとって、そして視聴者にとって喜ばしい事では無いと判断した。2006年の放映権料契約を更新した後、放映権を購入したNBCのディック社長は「NFLがこの契約で放映権の膨大な値上げを要求しなかったことは、全てのTV関係者を幸福にした珍しい出来事だ」とコメントを残している。このNFLの行動に、他のスポーツが牽引され大幅な値上げを要求しなくなるかどうか、楽しみだ。

NFLのインターネット事業活動は、あまり目立つものでは無い。とは言え、日本のスポーツリーグとは比較にならないくらい活発に行っている。AOLとSportsLine.comと提携して様々な施策を行ってきた。そしてNFL Networkを構築。本格的にeマーケティングへの参入が考えられる。かつては夫々のチームサイトは、デザインもバラバラだったが、テンプレートが統一され、ユーザーにとっては情報に到達しやすくなった。各チームの個性が消えるという議論もあるようだが、人種や文化が多彩なアメリカにおいては、ユニバーサルデザイン化されていることの方が重要なのだろう。

アメリカ国内において大きな成功を収めたNFLだが、世界戦略となるとトーンダウンせざるをえない。NFLヨーロッパを設置し、欧州市場の開拓に躍起だった。2002年にFCバルセロナとアライアンスを組み、スペインでのNFL活性化に一役買い、NFLはアメリカに於けるサッカー市場開拓を行った。それぞれの思惑がマッチし、各自の商圏でパートナーの商材の宣伝広告や普及に手を貸した格好だ。しかしながら、成功したとは言えない。日本でも毎年NFLのプレシーズンゲームが行われている。超一流の選手が来日して華々しいプレーを見せてくれるのだが、チケットが高額なことや、知名度の低さが手伝ってなかなか満員にはならない。2005年にメキシコシティーで公式戦を行ったのが、初の海外進出と言えるかもしれない。

スタジアムの新設も相次いだ。
10年間で13の新しいスタジアムが誕生し、収容人数を拡大し、快適な観戦環境を生み出した。すでに殆どの試合でスタジアムをいっぱいにするNFL。新しいスタジアムが動員促進に直結はしないが、華やかなNFLを形作る大事な舞台装置のひとつであることは間違い無い。スタジアムの中に高級レストランが出来たり、ショッピングモールを見間違えるような衣料品の店があったり、子どもたちが遊ぶスペースが出来たり、無味乾燥な競技場から、夢のあるテーマパーク的なスタジアムにすることで、チケット以外の消費を促進する意味合いもある。
日本では馴染がないが、アメリカにはスタジアムそのものが好きなファンも少なくない。スタジアムフィギュアやスタジアムのグッズは定番商品として人気がある。

さてさて、
日本のスポーツリーグに視点を戻すと、なんともはや目を覆いたくなるのは僕だけだろうか。プロ野球全体の放映権料収入は、この5年間で値下がりしているんじゃないかな。巨人の全国中継は視聴率10%を取れなくなり、放映権料も半減したそうだ。eマーケティング戦略だって、各チームが必死にやっているが、一番気になる試合結果は、結局Yahooで見てる。どういうわけかチームの公式サイトでは見ない。スタジアムの新設と言えば、日韓W杯でいくつも大型サッカースタジアムが誕生したが、NFLのそれとは似ても似つかない。いまだにサッカースタジアムで、美味しいものにありつける可能性は低いままだ。
世界には成功事例がたくさんあって、今この瞬間もスタジアムはいっぱいになっている。日本のスポーツをもっと元気にするために、出来る事はまだまだたくさんありそうだ。

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posted by marketing |17:10 | その他のスポーツ | コメント(1) | トラックバック(0)
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2008年06月02日

リプケンスタジアムは商売上手

20080530-00.jpgリプケンと言えば、メジャーリーグで2632試合連続出場記録を持つ、Cal Ripen Jrのこと。世界中の野球選手が尊敬する偉大な人だ。このリプケンの名前がついたスタジアムがメインランド州アバディーンという街にある。アメリカ東部ボルチモアとフィラデルフィアの間に位置する人口13,000人程度のこぢんまりした街だ。この街はリプケンの生まれ育った街で、現在もここに住んでいる。

20080530-01.jpgリプケンが選手を引退した後、その資金で作ったこのスタジアムは、ボルチモア・オリオールズ傘下のシングルAクラスのマイナーチーム「アバディーン・アイアンバーズ」のホームタウンだ。客整数は6000席でスカイボックスと呼ばれるスイートルームもある。

2007年シーズンの1試合平均観客動員数は6,519人、2006年シーズンは6,375人で固定席数を超えている、つまり満員ってことだ。チームは特別強いわけじゃないけど、リプケン人気も手伝って毎試合満員だ。

ここまでなら、普通のマイナーチームのスタジアムだ。リプケンスタジアムの凄いところは、バンケット施設として何にでも対応出来ることだ。

20080530-02.jpg◆結婚式
リプケンスタジアムには、立食で最大500人収容可能なスペースをはじめとして、屋内で宴会の出来るスペースが3つある。メインの会場は、バックネット裏の2階テラス席奥。会場から窓越しにフィールドが見えるし、テラス席に移動して大型ビジョンを使った演出も出来る。
ここを使って、ウエディングパーティーを行うわけ。フィールドのホームベース上に仮設のチャペルを作り、2人の姿を大型ビジョンに映し出す。
その後は、室内に入ってホテル顔負けの料理でパーティーが出来る。


20080530-10.jpg◆ファミリー小旅行
1日ファミリー小旅行料金があって、リプケンスタジアムを遊園地みたいにして楽しめる。少し離れた湖に家族で出かけるのをイメージすると解りやすい。もしくは、整備されたピクニックランドに行く感じだ。食事はケータリングビュッフェがあって、キッズエリアにはシートクッションの遊具があって、BING大会や、手芸教室、花飾りを作るワークショップなんてのもある。フィールドを使ったソフトボール大会にも参加出来る。



20080530-04.jpg◆カンパニーピクニック
家族がOKなら、会社だって問題ない。最近のアメリカは社員への福利厚生を充実させるのがトレンドになっている。そんな風潮をいち早く掴んで、スタジアムで社員の慰安会をしようってことだ。ミーティングスペースもあるので、創立記念日に社員全員でスタジアムに行って、社長の訓示とか、経営報告とかやった後で、ケータリングビュッフェを食べて、全社ソフトボール大会。なんてことが出来るわけ。
オプションとして、
・バンド生演奏 DJ
・大道芸人
・マッサージセラピスト
・ミステリーツアー
・カーニバルダンサー
・マジックショウ
キッズゾーンには移動遊園地みたいな遊具が揃っていて、社員だけじゃなくて家族まで呼んでパーティすることだって出来る。

20080530-05.jpg◆ホリディ・パーティ
クリスマスや復活祭など、パーティをみんなで行う風習のある時期にも対応する。リプケンスタジアムは、屋内の施設も充実していて、300人くらいなら入れる宴会場がある。だから夜間や冬場でも、全然OKなわけ。チームのマスコットがサンタクロースの衣装で出迎えてくることも。お料理はビュッフェだけじゃなくて、フルサービスのコース料理を、気の利いたウエイターが運んでくれる。

◆卒業パーティー
◆誕生パーティー
◆(結婚)記念日パーティー
◆同窓会
とったパーティー系は基本的に何でもOK。

◆展示会
会社の新製品発表会や、顧客を招いての製品紹介会、なんていうのも出来ちゃう。必要があればフィールドにだって商品を並べるそうだ。東京ビックサイトみたいなことまでやっちゃうらしい。

20080530-08.jpg◆プロム
プロムナード(米:promenade、大学の舞踏会)の略称で、アメリカやカナダの高校で学年の最後に開かれるフォーマルなダンスパーティのこと。飾り付けられた学校の体育館で開催するのが普通だが、アバディーンの高校ではリプケンに敬意を表してスタジアムで開催するらしい。高校最後の想い出の舞台がスタジアムっていうのもなかなかオツでいい。

なんというか、ちょっと気の利いたホテルの宴会場と全く同じ機能があるってことだ。ホテルとの違いは宿泊出来るかどうか。だけどスタジアムには、6000席の客席と、フィールドがある。アリーナ席を作れば1万人規模のコンサートだって出来る。
福岡のヤフードームや、東京ドームは、ホテルと隣接していて、色々なコンベンションが出来る。リプケンスタジアムは、会陰会場の機能をスタジアム内部に持たせ、追加の設備投資を抑えたいい例だ。

20080530-06.jpg6月の中旬から9月上旬までの3ヶ月間しか公式戦を行わないマイナーリーグの球場としては、スタジアムと言う特殊施設の有効活用を積極的にしていかなくてはならないわけだ。300人まで収容可能な施設という手ごろな大きさと、スタジアムという特殊性。利用者にとってはなかなk魅力的だ。市街地の中級ホテルでパーティするなら、リプケンスタジアムの方が気が利いているし、想い出にも残りそうだ。

日本のスタジアムはもっとこういう使い方をされてもいいんじゃないかな。


posted by marketing |10:15 | マイナーリーグ | コメント(0) | トラックバック(0)
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