2009年01月07日
箱根駅伝-人気の理由
今年の箱根駅伝の視聴率は、2日の往路の視聴率が26.5%(関東地区)、3日の復路が27.5%。往路と復路の平均視聴率は27.0%で歴代8位を記録した。瞬間最高視聴率は33.3%だった。 ちなみに2008年は、平均世帯視聴率が1月2日の往路25.4%、1月3日の復路が27.7%だった。ここ10年間で25%を下回ったのは2回だけ、2005年1月2日の往路23.7%と、2001年の往路24.5%だけだ。 箱根駅伝以外のお正月スポーツと言えば、サッカー天皇杯、と、高校サッカーが思い浮かぶ。 1月1日の午後2時キックオフのサッカー天皇杯は、視聴率10%を超える事は少ない。 2008年 広島VS鹿島 6.1% 2007年 浦和VSG大阪 7.8% 2006年 浦和VS清水 6.0% 高校サッカーは、 2008年1月14日決勝 8.6% 2007年1月8日決勝 9.0% 2006年1月9日決勝 12.6% といったところだ。 どうして箱根駅伝の一人勝ちなのだろう。 では最も一般的なマーケティング手法のSWOT分析で「箱根駅伝」を見てみよう。 Strength(強み) ・大学対抗戦なので選手、出場校の代謝がある ・阪神や巨人のように大学にアンチファンが存在しない ・競技ルールがTV視聴向けに工夫されている ・芸能人の出演が無く、特番ばかりのお正月TV番組の中で特徴的 Weakness(弱み) ・試合時間(放送時間)が長い ・知名度の高い選手の出場が少ない ・試合の進展に関して演出が出来ない Opportunity(機会) ・正月の視聴者はバラエティー疲れしている ・正月の午前中はTVの前に家族が集まる機会が多い ・集中していなくても楽しめる Threat(脅威) ・正月を家で過ごさない家庭の増加 ・1人テレビ1台時代(PCのTV受信機能などにより) ・より魅力的な番組の出現(他局) といったところだろうか。 世界的な金融危機に襲われている2009年は、箱根駅伝の視聴率がイイ。 なんて事を言い出す、シンクタンクの研究員がそのうち出現するんじゃないかな。 統計の手法を駆使して、都合のいいデータを加工すれば、大抵のことは立証出来てしまうからね。 あんまりこういう情報は鵜呑みにしないほうがいい。 さてさて、本題。 箱根駅伝のルールがTV視聴向けに工夫されている という項目に疑問を持った読者の方もいるだろう。 2日間を掛けて10区間あり、それぞれに特徴と物語性を持たせたコース設計がされていること。 区間新記録や、「金栗杯」(MVP)、翌年のシード権、繰上げスタートなどのルール設定。 この2点については、特筆すべきものがある。 1区/レースの流れを大きく左右する区間、この区間の順位によって後の戦略を変更する必要が出てくる。 2区/長い上り坂のコースで各校エースを投入する花の2区、駅伝名物「ごぼう抜き」が出やすいコース設計がされている。 3区/海沿いを走り富士山もきれいに見える景観区、強い向かい風が吹く事もあり予想外の展開も期待出来る。 4区/最も距離が短い高速区、長距離トレーニングだけでは対応し切れないコース設計がされている。 5区/高低差800mを登る山登区、選手間の能力差が歴然と現れ、順位の入れ替わりが多い、箱根駅伝の名物区間。 6区/長い下り坂でペース配分が重要な下山区、早朝の箱根は防寒対策が必要。 7区/平坦で挽回を狙うことが可能な調整区、戦略的な選手起用で順位を上げる校もある 8区/シード件争いが本格化する10位争区、優勝の可能性が無くなった10位以下にも注目させ、複線としての物語を作り視聴者を飽きさせない 9区/涙の繰り上げスタート区、トップから20分以上遅れると、8区のランナーが中継所にゴールする前に9区走者がスタートするという「繰り上げスタート」というルールがある。繰り上げスタートは選手には屈辱的で、毎年泣き崩れる選手の姿が、お茶の間を感動させてきた。 10区/クライマックス最終区、都内に入り大歓声の中アンカーとしてのプレッシャーも多い最終区、そして大手町でゴール。 この各区間での、物語性。 1日目5区までは「優勝」に対する順位争いと区間新記録、ごぼう抜き、山越えなどを中心に構成され、2日目は10位以下のシード権争いや、15位以下の繰り上げスタートなど、下位の大学にも話題を作り視聴者を飽きさせない「見せ場」を作り出している。 繰り上げスタートは本当に「見せ場」で、おせちとおとそでボケ気味の雰囲気のお茶の間に、タスキを渡す事が出来ずに泣き崩れる大学生の姿は、新鮮で胸を打つものがある。実況のアナウンサーや、カメラアングルも嫌味の無い範囲でしっかりと泣かせる映像を送っているのだ。 バラエティー特番ばかりのお正月テレビに共通の「作り物」の感じが一切排除されたテレビ演出をしていて、ドキュメンタリー的に見えるように作られている。プロ野球やサッカー中継でよく見かける人気芸能人による解説や、司会進行も無い。 THEスポーツ中継! と言える演出と構成をしていて、本当によく出来ている。 各区間を走る選手のプロフィールや、入念な取材もあり、走っている大学生を1時間近く見ているだけで、「がんばれ」と自然と応援してしまう実況を、日本テレビはしているのだ。 TV中継のために、競技のルールを変更するスポーツはいくつか存在する。 バスケットの24秒ルールは、NBAが低迷を続けていた頃、NBAが直営のTV制作会社を作り中継を開始したのと同時に取り入れられたルール。 バレーボールはかつてはサーブ権があるチームにだけ得点が入っていたものを、ラリーポイント制に変更したのもTV局からの提案がキッカケだった。 NFLやMLBにも些細な変更だが、TV中継を前提にして行われたルール改正が存在する。 なんともアメリカ的なドラスティックさだ。 プロスポーツが観戦者のニーズに合わせてルール変更することの是非を議論するつもりは無い。 だってプロスポーツは、観戦者に見せるためのエンタテインメントであって、競技者だけのものでは無いのだ。 見る人がいるから、プロスポーツが成り立っているのだから、スタジアムにいる観客だろうと、TVの向こうにいる視聴者だろうと、もっと楽しんで貰えるようにルール変更するのが当然だと、僕は考えている。 そういう点で、箱根駅伝は素晴らしい。 現在のコース設計やルールは、どういう経緯で決められたかは確認出来ていないが、TV視聴者にとって楽しめるポイントがしっかり出来ている。しかもアマチュアスポーツとしての厳格さを維持している。スゴイ。 箱根駅伝から学ぶ事は、まだまだたくさんありそうだ。
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