2008年05月13日

スタジアムをファンに売る

20080514-00.jpgスタジアム好きの僕としては、とても興味深い記事がスポーツビジネス専門情報サイト「スポーツビジネスオンライン」に掲載されていた。
このサイトはネットでは数少ないスポーツビジネス情報専門サイトだ。国内だけでなく、アメリカの情報も数多く紹介されており、情報源として重宝している。

アメリカのプロスポーツリーグNFLやMLBで、最近スタジアムの立て替えが相次いでいる。わかりやすい所では、2009年シーズンに向けて、ニューヨーク・ヤンキースと、ニューヨーク・メッツがスタジアムを新しく建設中だ。08シーズンMLBでは、ワシントン・ナショナルズが新しいスタジアムで公式戦を開始させている。毎年1チームから2チームのスタジアムが新設されている状況が1990年代後半から続いている。この状況をスポーツビジネス専門情報サイト「スポーツビジネスオンライン」は、こう分析している。

このブームの引き金となっているひとつの要因として、MLB・NFL両リーグの労使協定に含まれているRevenue Sharing(利益分配)制度が挙げられる。MLBでは全国ネットでの放映権料、リーグスポンサーシップ、グッズ販売、インターネットによる収益はリーグが全て管轄し、各球団に平等に分配する。NFLではインターネットこそ球団裁量であるものの、普通席とクラブシートの入場料収入は34%がプールされてから各球団に分配される。つまり経営努力で他球団と差異を生むことが出来るのは、主にローカル放送局への放映権料、ローカルスポンサーシップ、ネーミングライツそしてスイートボックスの収入ということになる。特にNFLにおいては、新スタジアムを利用した全米最大のスポーツイベントであるスーパーボウル招致によるスポンサーシップやネーミングライツの価値向上という狙いもあるが、MLB・NFL両リーグにおいてRevenue Sharingの対象外となるスイートボックスの増設は、球団がダイレクトに受け取れる収入を増やすことにつながる。この事実が新スタジアム建設ブームのひとつの大きな要因になっていることは間違いない。 

 また1960~70年代に建設されたクッキースタジアム(円形で特徴のない多目的スタジアム)を含む多くのスタジアムが老朽化により建て替えの時期に差し掛かってきたこと、そして各スポーツに適した専用スタジアムやイノベーションが必要になってきたことも要因として挙げられる。 

そんな理由でスタジアムが次々に新設されているだが、現役を引退したスタジアムを解体するのではなく、その部品をファンに販売してしまうビジネスがアメリカで流行っている。

2008-2009シーズンよりペイトン・マニング(Payton Manning)を擁するNFLインディアナポリス・コルツがルーカスオイル・スタジアムを使用することとなり、昨シーズンまでコルツが本拠地として使用していたRCAドームは取り壊されることとなった。2005年の新スタジアム着工以来、コルツではオンラインで建設状況の写真を毎日アップデートするという面白い取り組みをしている。

日本では阪神甲子園球場が3シーズンのオフに渡り改修工事を行っており、リニューアルスペシャルサイトが情報をアップデートしているが、コルツでは注目される新スタジアムだけではなく、古いRCAドームにもスポットライトを当てた取り組みを行っている。Indiana Sports CorporationとThe Colts Foundationは、3月10日よりRCAドームを部分ごとに「記念品」としてオンライン販売を開始した。その主な販売物件は以下の通りである。 

・フィールドターフ       $125~$1,000
・フィールドターフ(額入り)  $60
・シート(指定あり)      $45
・シート(指定なし)            $395
・サイン                        $195
・屋根(額入り)                $60
・ロッカー(選手のネーム入り)  オークション 

 価格はオークション形式のもの、固定価格のものと分かれている。シートはクラブシートを所持していたファンには該当シートが優先的に販売されるが、長年クラブシートを購入し続けたにもかかわらず$450という高めの価格設定に、不満の声をあげるファンもいるようだ。また選手が実際に使用していたネーム入りのロッカーは、希少価値も高くコアなファンにとっては喉から手が出るほど欲しいアイテムであることは間違いない。 
 

トレンドとなったスタジアム販売

The Colts Foundationは、ドーム販売における総売り上げはおよそ70万ドル(約7000万円)に上るだろうと見込んでいる。RCAドームのような取り組みは、実は新スタジアム建設と同時にトレンドとなりつつある。今日のひとネタ!(2007年8月17日)でも紹介したMLBセントルイス・カージナルスの旧ブッシュスタジアムのオークションでは、合計100万ドル(約1億円)ほどが売り上げられた。シートの価格はRCAドームと同じ$450で2万席以上が売れているほか、人気選手アルバート・プホルス(Albert Pujols)のロッカーは、オークションで2万1000ドル(約210万円)もの値段が付いている。またNFLピッツバーグ・スティーラーズとMLBピッツバーグ・パイレーツが兼用していたスリーリバーズ・スタジアムも100万ドル(約1億円)以上を売り上げている。野球場の場合は、ベースやマウンドプレート、またダグアウトやブルペンの備品も商品となり得るから、ラインアップも充実するのではないだろうか。 


スタジアムのパーツをファンに販売することで、チームとしては売り上げも上がるし、廃棄物も減少する。ファンサービスにもなると、いいことだらけだと説明している。
欧州ではマンチェスターシティのスタジアム跡地が、高級マンションになって販売されている。あの名試合が行われたピッチを中庭として、観客席のあった場所を中心にして住宅が建てられた。メインゲートを含むいくつかの施設はそのまま残され、当時の熱戦を彷彿とさせる仕掛けがなかなかニクい。
ヤンキーススタジアムはそこに刻まれた数々の歴史を残す為に完全撤去はせずに可能な限り保存され、ヘリテージ・フィールドに生まれ変わる予定だ。

MLBもNFLもここ数年観客動員数も伸び、ビジネス的には成功を収めている。だからスタジアムの新設が出来るのか、新しいスタジアムが観客を呼び込んでいるのか、その因果関係は明らかにはなっていない。しかし好循環に入っていることは間違いなさそうだ。

今回の記事は「スポーツビジネスオンライン」の、転載、引用許可を頂いています。


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2008年04月29日

ヤンキース1300億円 レッドソックス800億円 MLBチーム企業価値

4月の中旬にForbesから、MLBチームの企業価値が発表された。1998年から行われていて恒例になっている。スポーツビジネスに関心のある人なら見ておいて損は無いデータだ。
ただ注意したいのは、この数字を丸覚えしている人をたまに見かけるということ。データはデータであってそれを読み解く力が無いと意味がない、データを丸覚えしているだけの人は、かえって評価を下げてしまうことがある。
じゃあどう見ればいいのか、っていう話しになるわけで。

今回は他のデータと比べて見てみようと思います。
下の表は、Forbesが算定した企業価値、それとチームの選手年俸、2007年シーズンの勝敗数を表にしました。
つまり強いチームは、値段が高いか。
っていうこと。
強いチームは、沢山年俸を払っているか。
っていうこと。
この疑問は、感覚的には関連性があると考える人が多いんじゃないかな。

スポーツチームの企業価値に、「強さ」が数値化されて金額に換算されているに違いない。
と思うよね。
選手年俸が高ければ、それだけいい選手がいるんだから、例外は少しあっても長い目で見れば、「強さ」と関係あるに違いない。
と思うよね。

こういう感覚的に正しそうに感じる事を、心理学ではヒューリスティクス(Heuristik)とか認知バイアスと呼ぶ。
でもこれって正しそうに感じるだけで、本当かどうかはわからない。
このヒューリスティクスが、さも正しそうに熱弁を振るう人がいるけど、一番手に負えないんだ。まだデータを丸覚えしてくれている人の方が、良心的かな。
20080429-00.gif

この表を見てみると、
企業価値、選手年俸、強さ の3つは関連性がありそうに見える。
特にヤンキースの数字を見ると全部高い。でもレッドソックスは勝利数が96でヤンキースより多いけど、年俸も企業価値も低い。企業価値を比較すると、ヤンキース100に対してレッドソックス62だ。
一番企業価値が安い、フロリダ・マリーンズ、NYY100-FLA19と、ヤンキースの1/5しか無い、勝利数は71と、ディビジョン最下位レベルだが、企業価値ほどの開きは無い。
20080429-01.gif



グラフにするとこんな感じになる。
勝利試合数の青い線が、選手年俸の赤い線を下回っているチームは、
「お金を掛けている割には強くない」
ってことだ。
投資対効果では、インディアンスロッキーズ、ダイヤモンドバックスはよくて、ヤンキースは投資対効果は30チームで最も低いということが解る。
20080429-02.gif





このグラフは、縦軸に勝利試合数、横軸に企業価値を入れてその分布を見てみた。
「強い」チームと言えるヤンキース(NYY)レッドソックス(BOS)、インディアンス(SLE)、エンジェルズ(LAA)の企業価値は決して高額に偏っていない。85勝以上に固まっている第2集団も明確な肩よりは見られない。




ただ、この分布を最小二乗法という統計手法を使うと、企業価値と勝利数には正の相関がある。という結果に出来ちゃう。そこが統計のスゴイところで、ズルイところでもあるわけ。

そんなわけで、数値を丸飲みにしないで、色々なデータと比べてみる。
正しそうに感じている思い込みで、データを評価しない。
研究者じゃなくても、スポーツビジネスのウンチクを語るのが好きな人も、大事なことだと思うなあ。


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2008年04月23日

シカゴ・カブス売却中

20080423-00.jpg今年から福留が行った事で日本でも認知度があがった、シカゴ・カブス。アメリカの大都市シカゴにある伝統あるチームということで、古くからのファンが沢山いる人気チームだ。
シカゴカブスのホームグランド「リグレー・フィールド」はMLBで2番目に古いスタジアムだ。外野フェンスに蔦でびっし覆われており、手動のスコアボードや、観客席のあちこちにある柱など、雰囲気は抜群で僕自身も大好きな球場のひとつ。
この球場は古いだけに、逸話も沢山あり話題には事欠かない。今回のテーマはリグレー・フィールドでは無いので、その辺の話題はまた次の機会にするとして。

シカゴ・カブスと、リグレー・フィールドが売に出ているのだ。2007年のシーズン中から入札の話しが出ているが、まだ売却先が決まっていないようだ。現在のオーナーは、シカゴトリビュート(新聞社)で1981年に2050万ドルで購入している。

そんでもって、シカゴ・トリビュートのオナーはサミュエル・ジルという億万長者。1941年シカゴ生まれで、新聞社だけで、ニューヨーク、ロサンジェルス、フロリダ、ボルチモアに持っている。
本業は不動産の売買らしく、そのえげつない商売のスタイルから、あまり評判のよくない人物みたいだ。カブスの売却希望価格は10億ドル。1981年に2000万ドルで買っているから、なんと50倍で売ろうとしている。25年以上球団を保有していたとは言え50倍はスゴイ。日本円でに換算すると、20億で買ったものを1000億で売ろうとしているってこと。まあそれでけMLBチームの価格が急騰したのはホントだけど、サミュエル・ジルのビジネスがえげつないのは本当のようだ。

そんな中、シカゴ市民の心配は、次のオーナーが誰かっていうこと。
次に心配なのは、リグレー・フィールドの名前が変わる事らしい。そんなに高額でチームと球場を買ったら、少しでも早く投資金額を回収しようと、ネーミングライツを売却するに違いない。
とすると、リグレー・フィールドの名前が無くなってしまう。それが耐えられない市民が沢山いるのだ。現在メジャーリーグの球場の中でネーミングライツを取り入れていないところは、随分と少なくなってきた。
ヤンキースタジアム
フェンウエイ・パーク
ドジャー・スタジアム
そしてリグレー・フィールド。

メジャーリーグの中でも名門と呼ばれるチームが、名前を商品にして売るなんてことをせずに、ファンに支えられてしっかりとした経営をしている。
と受け取るシカゴ市民も少ないないようだ。

サインフランシスコ・ジャイアンツは名門でスタジアムはいつでもいっぱいだけど、スタジアムを新設する時に建築費を調達するためにネーミングライツを導入。スポンサー企業が合併や買収を繰り返したために、
パシフィック・ベル・パーク
SBCパーク
AT&Tパーク
と数年の間に3度も名前が変わった。

日本でも、楽天のスタジアムや西武のスタジアムなど、コロコロ名前が変わって解りにくくてしょうがない。

そんなハメにシカゴの市民はなりたくないと言うわけだ。
メジャーはオーナーが変わっても、チーム名称は変わらない。福留には直接の関係は少ないと思う。

スタジアムってやっぱり建築物の中では特別なんだな。


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2008年04月09日

【メジャー】オープン戦観客動員過去最高

20080409-00.jpgメジャーリーグのオープン戦観客動員数が過去最高であることが発表された。1試合当たり平均の観客動員数は8,026人で、過去最高の7,709人を上回った。合計動員数でも2007年の342万1055人を超え、369万2125人だった。

メジャーのオープン戦は、スプリングトレーニングの一部で、日本のオープン戦とは少し趣が異なる。メジャー30チームのキャンプ地はフロリダと、アリゾナに分かれている。気候が温暖で、キャンプを行うのに充分な設備があり、自治体の協力がある、など様々な理由でこの2つの地域に集中している。
フロリダはグレープフルーツリーグ
アリゾナはカクタス(サボテン)リーグ
という愛称で呼ばれている。

グレープフルーツリーグには、
ヤンキース、レッドソックス、メッツ、ドジャーズ、Sカージナルスなど馴染のあるチーム名が並ぶ。

スポーツ・マネージメントを研究する立場としては、SPRING TRAININGの紹介ばかりではなく、どうしてメジャーのSPRING TRAININGに、そんなに多くの観客が見に来るのか。という疑問を考察してみないといけないよね。

いくつかの要素に分けて情報を収集してみた。

TICKET
SPRING TRAININGでは、日本のオープン戦と異なりチケットは有料。
例えば、NYメッツ

Bleacher / Berm	   $6 /$10*
Upper Reserved	   $12 /$25*
Lower Reserved	   $18 /$30*
Field Level Terrace	$20 /$30*
Premium Box		$25 /$35*

という値段になっている。同じ席でも対戦カードによって値段が違う。NYメッツの場合は、レッドソックス戦がプレミアムゲーム指定だった。
メッツのスタジアムTradition Field は新しいし、席数もたっぷりある。普段はメッツのマイナーチームが使っているスタジアムだ。

MLBの公式サイトには掲載されていないけど、ほとんどの球場にはスイートルームがあって、スイートルーム観戦券も販売されている。格差社会を容認しているアメリカでは、富裕層の為のチケットは、マイナーリーグにも、独立リーグにも存在している。
SPRING TRAININGだって同じこと。
シカゴや、ワシントン、ニューヨークにはまだ雪が残っている時期に、20度を越すフロリダでMLBの一流選手のゲームをゆっくり楽しむ富裕層は確実に存在するわけ。だからスイートルームのチケットがちゃんと売られているのです。
中には、SPRING TRAINING期間の試合15ゲームをセットにしたシーズンチケットを売っているチームもある。日本じゃ考えられないよね、オープン戦のシーズンチケットなんて。


STADIUM
メジャーはSPRING TRAININGに観客を呼び、ビジネスにすることを前提にしている。それを証明するのが、アトランタ・ブレーブスだ。
ブレーブスは毎年、フロリダ州オーランドのディズニー・ワイド・ワールド・スポーツコンプレックスでキャンプを行っている。
このキャンプ地セレクト。チーム側にもディズニー・ワールドにもファンにとっても、メリットがあると言われている。

ファンにとっては、ブレーブスとディズニーの両方が楽しめる。今日はディズニー、明日はSPRING TRAININGと目的別にスケジュールすることで、子供も母も父も楽しめる休暇を過ごす事が出来る。昼はSPRING TRAININGでエキサイトして、夜はダウンタウン・ディズニーでファンタージーなショウとディナーを楽しむことだって出来る。読者の中にも海外旅行の女性の「買い物」につき合わされて辟易した経験がある方もいるだろう。そんな事が起りにくいというわけだ。

春のキャンプ地を訪れるのは、野球のひとつの楽しみ方だ。しかしキャンプの練習やオープン戦は、丸一日かかるものではない。夕方5時頃から時間をもてあましてまうことになるものだが、ブレーブスファンには「時間をもてあます」なんで言葉は無縁なのだろう。


3つめは地域との共生
フロリダもアリゾナも、仕事を定年した高齢者たちの移住先として人気が高い。このリタイア族を、SPRING TRAININGのスタジアムでとても大勢見かける。駐車場から、席の案内、などスタジアムボランティアをこの人たちが楽しそうにやっているのだ。カンカン帽にチームのロゴ入りのポロシャツ。コットンの短パンを履いて元気に楽しそうにやっている。
「チームの調子はどうですか」
「ベテランはまだまだだけど、若手に面白いのがいるよ、ジム・パーカーっていうピッチャーがいてね・・・・・」
うっかり話しかけると、5分は話しが止まらない。
ニコニコしながら、孫の話でもするように、その駐車場にいたリタイア族は僕に色々話してくれた。
リタイア族は、ボランティアをする人もいれば、毎日毎日スタジアムに通い詰める人もいる。スコアブックをつけながら、時々ヤジを飛ばして、心から野球を楽しんでいる人がスタジアムには本当に多い。
僕は、リタイア族のボランティアはとても好感が持てた。学生アルバイトよりもずっと上品で、ずっとスマートだった。


4つめは、フロリダとアリゾナの気候
例えば、シカゴ・ホワイトソックス。この季節シカゴはまだ0度近い気温なのに対して、アリゾナは20度近いポカポカ陽気だ。SPRING TRAININGで試合が始まる前に、シカゴの天気と気温が場内にアナウンスされる。
すると、大きな歓声があがる。それだけ多くの人がシカゴからこの地に来ているのかもしれない。

ホワイトソックスに限らず、フォランチャイズの都市からやってくるファンは、短くて2週間。長ければ1ヶ月以上をキャンプ地で過ごす。
キャンプ目的で訪れた人たちが、そこで活き活きと暮らしているリタイヤ族の姿を見て触れてみて、アリゾナの良さに触れて、移住してくるようになった人も多いそうだ。

ともあれ、日本のオープン戦、キャンプと異なり、練習と興行の両立を前提に考えているということだ。
MLBは2006年シーズンから、順調に観客動員を伸ばしている。eマーケティングでも成功し、webを核にした物販やチケットセールスも順調だ。
日本プロ野球にも、まだまだ伸びしろはあるってことだ。


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2007年12月19日

ミッチェル・レポートって?

12月17日にジョージ・J・ミッシェル氏がMLB選手の運動能力向上剤(ステロイド、ヒト成長ホルモンなど)について400ページを超える報告書を提出。このレポートには現役選手を含む80名以上の薬物使用選手名が記載されていることや、薬物使用の現状を詳細に記述していることから、大きな話題を呼んでいる。

■報告書に記載された主な選手名
ロジャー・クレメンス
バリー・ボンズ
ケビン・ブラウン
ベニート・サンティアゴ
トロイ・グラウス
ラファエル・パルメイロ
ゲイリー・シェフィールド
ホセ・カンセコ
ジェイソン・ジアンビー
ミゲル・テハダ
デービッド・ジャスティス
エリック・ガニエ
ウォーリー・ジョイナー
モー・ボーン
ジェフ・ウィリアムス(阪神)
アレックス・カブレラ(元西武)
アダム・リグス(ヤクルト)

全選手リスト
ミッチェル・レポート-WEB版-英語
ミッチェル・レポート-PDF版-英語

このレポートで選手の実名を公表したことで、薬物使用がより身近に感じられたのか、各界からの反応も大きい。ブッシュ大統領は、
「名前が挙がった選手について、結論を急ぐべきではない。しかし、ステロイドによって野球が汚されてしまったということは結論付けられる」
とコメントしたと報道されている。

このレポート発表当日に、MLBコミッショナー、バド・セグリ氏が記者会見。
「報告書は実施要請であり、現役選手で名簿に名前が挙がった選手に対して何らかの対処もしていく。選手への規律やその他の案件は今後の状況に応じて検討していく」
と語り報告書に記載されている選手への規律や、その他の案件は今後の状況に応じて検討していくと述べた。

報道では色々書かれているので、MLBにあまり詳しくない方に、用語や人物、背景などを解説しよう。

【ミッチェル・レポート】
コミッショナーが2006年3月30日ジョージ・J・ミッシェル氏(元上院議員、検察官)に依頼して、MLB選手の薬物調査を報告したもの。
薬物使用選手を特定する「犯人探し」が目的ではなく、MLBの内部で起きている事実を明白にすること。選手への面接による調査の多くは、選手側に断られ実現しなかった。
報告書は監督やゼネラルマネージャー(GM)、元選手、フィジカルトレーナーなどからの証言に頼るしかなかった。
そんな周辺情報だけで80人以上の選手名を公表出来たのは、元ニューヨーク・メッツ(New York Mets)の球団職員だった、カーク・ラドムスキーの存在が大きい。
ラドムスキーは2007年4月に選手にステロイドなどを販売していたことで有罪判決を受けていた。アメリカ司法省との司法取引(ステロイドを販売した選手リストを提出することで刑期を短くしてもらう)を行い、選手のサインの入った領収書など多くの物的証拠を入手した。
会見の席上でミッチェル氏は「MLBでは10年以上前から法律や競技規定に違反したステロイドや、筋肉増強剤が公然と使用されていた」と惨状を報告した。
同時に、
「この問題は、ごく少数の選手とかごく少数のチームだけが関わった孤立したものではない。過去20年以上に渡り、野球に携わるすべての人々が関連している。コミッショナー、球団関係者、選手会、選手──すべての人たちがステロイド時代にある程度の責任を負っている。球界全体が、問題が表面化した際にその深刻さを理解せず、早期に取り組もうとしなかった」と、レポートの中で証拠として列挙した選手を「犯人扱い」することよりも球界全体の問題として解決すべきだとも訴えている。

【MLBの薬物使用規制】
2002年以前 薬物使用規制なし
2003年 薬物検査開始(検査実施の24時間前に本人への告知あり)
2004年 罰則適用開始
2005年 罰則の厳格化 1度目の違反で50試合出場停止、2度目100試合、3度目追放

ミッチェル・レポート(英語、PDF)

400ページを越す報告書を読んでみると、日米における報道がいかに記者の解釈によるものかがわかる。報告書はどちらかというと事務的に、淡々と記述されており、調査によってわかった事実(と思われる)が書かれている。興味のある方は是非読んで欲しい。

今年日本でも起きた「西武裏金事件」では、関係者の実名を公表しなかったが、このレポートでは実名を公表した。この点についての議論もあるようだが、そこにフォーカスを合わせるより、このレポートの真意を理解して論じるべきではないだろうか。

posted by marketing |19:20 | メジャーリーグ | コメント(6) | トラックバック(1)
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