スポーツマーケティング探求記

冬季五輪メダルと経済成長??

このエントリーをはてなブックマークに追加

冬季オリンピックのメダル獲得数と、その国の経済状況には密接な関係がある。とニューヨークの投資顧問業BNYコンバーグループのアナリスト、ニック・コーラス氏が研究ノートを発表した。
この研究ノートによると、1924年のフランスのシャモニーで開催された初回冬季オリンピックから、国別にメダルの数と経済発展の状況を分析している。

 冬季オリンピックというところがポイントの様だ。なぜなら発展途上国のほとんどは亜熱帯地域に位置し、ウインタースポーツは特別な行為であり、日常生活の中で鍛えられる可能性が低い。陸上競技やマラソンの様に、潜在的な身体能力でメダルを取れる競技は存在しない。その上、競技を本格的に行うために、環境や用具に費用が掛かるケースが多い。この2点は、コーラス氏の分析結果を大いに加担する要因であると推測出来る。

コーラス氏の分析結果は、
・国の経済が成長過程を終え安定期に入っていないと、冬季オリンピックでメダルを取ることは難しい。
・国家のGDP成長とメダル獲得数には相関関係があるが、GDP成長から数年遅れてメダル数が増加している。

という2点だ。

コーラス氏は日本を事例として挙げ、彼の説を立証している。

 日本の冬季オリンピックのメダル獲得数の推移は、戦後復旧物語とリンクしている。1945年第二次世界大戦の終戦後、日本は1972年までメダルを獲得していない。1980年以降日本選手が冬季オリンピックで表彰台に上がるようになった。それは戦後の新興経済穀として離陸し、日本の高度経済成長期とピッタリマッチしており、1980年からの日本経済が世界を席巻した事に、冬季オリンピックのメダル獲得数は大きな影響を受けていると考えられる。としている。

 日本だけではなく韓国の経済成長とメダルの関係も事例としてコーラス氏は挙げている。

 marketing-464057.gif韓国は1992年に初めて冬季オリンピックでメダルを獲得しているが、それまで10大会冬季オリンピックに出場しながらメダルを取っていない。日本より20-30年遅れではあるものの、朝鮮戦争の影から開放され、資本主義経済が機能し始めるのとタイミングは会っている。
 中国も同様で、1992年に初めて冬季オリンピックでメダルを獲得するが、それ以前3大会に出場している。1980年代の経済改革への取り組みによって、急速な経済成長を遂げたことがメダルに影響している。
とコーラス氏は述べている。

 なんというか、あんまり説得力が無いし、「そりゃそうだね」という感想しか出てこない。こういう「論文」は、
「なんとなく解っている」ことをデータや事件で科学的にハッキリ、疑いの余地がないくらい立証するとカッコイイ。
 もしくは、今までの常識や予想を覆す新説をぶち上げるものカッコイイ。

 コーラス氏の「冬季オリンピックと経済成長の関係」は、「なんとなく解っていること」を、かなり精度の低い分析方法で立証している。大学4年生の卒論でも出来そうなレベルなのだ。だから、あんまりかっこよくない。

 彼の説が真理ならば、GDP世界一のアメリカの金メダル数と、ノルウェーの金メダルの数が同じなのはオカシイ。

 それだけではない。1989年に革命が起き民主化されたチェコや、1995年まで内戦で国が分断だれていたクロアチアなどに関してはコーラス氏は何も触れていない。これでは冬季オリンピックメダルと、経済発展の関連性を立証したとは言えない。日本・韓国・中国の3つの事例は、コーラス氏の言う通りだとしても、彼のモデルにマッチしない事例が数多く存在する時点で、コーラス氏の主張は学術的に価値は無い。

 そもそもこの主張は、スポーツの結果は「金次第」という結論になること自体が夢も希望も無い。軍事力とも経済力とも、関係無いところがスポーツの、特にオリンピックのイイところだ。
国家ではなく個人単位に置き換えてみるともっとわかる。世界で通用する「スポーツで結果を出すためには経済力が欠かせない」結局、経済的に恵まれた環境の青少年しかトップ選手になれない、となったら全然面白くなくなる。
 
 高等教育を受けていなくても、経済的にカツカツでも、スポーツで人生を大きく変えられる。世界をアッと言わせられる。スポーツはそういうものであり続ける必要があるのだ。
コーラス氏のレポートは興味深く無いが、反面教師として私は刺激を受けた。これからソチオリンピックで、GDPが低い国の選手が活躍するのを応援しようと思う。
marketing-464058.gif




1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
オリンピック
タグ:

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

‘ソチにジャンプの神様は いた’葛西の銀メダル【スポーツ えっせい】

ソチ五輪第9日:レジェンド葛西 遂に念願の個人戦初メダル【スポーツ えっせい】

地域チームの応援~②~【青森からスポーツ応援】

ブロガープロフィール

profile-iconmarketing

江頭満正/Mitumasa ETOH
東京都出身。1988年リクルートを退職後起業。2001年ダイエーホークスの公式携帯サイトをオープン し、その後ベイスターズ、近鉄、千葉ロッテ、オリックス、日本ハム、ジャイアンツ、清水エスパルス、J SPORTSと公式携帯サイト運営を契約。チームの内側からITによる観客動員を模索、3度の日本シリーズと1度の天皇杯決勝を経験。2004年アテネ五輪では、Yahoo! JAPANのオリンピック結果データを全て担当。現在大学でスポーツビジネス研究者として 教壇に立っている。
【現職】尚美学園大学准教授・一橋大学スポーツビジネス研究会研究員・特定非営利活動法人スポーツマンシップ指導者育成会 理事
  • 昨日のページビュー:163
  • 累計のページビュー:1093194

(01月17日現在)

関連サイト:尚美学園大学 江頭ゼミ

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 星稜高校「必笑」で9回8点を逆転
  2. 浅田真央 現役時代の経済効果
  3. 【収入4500億円】行き過ぎたオリンピック商業主義
  4. Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟
  5. プロサッカー選手年俸 過半数はJリーグ以下
  6. 高校野球のビジネス
  7. 清水エスパルスへ新卒入社
  8. 「プロ野球人気低下説」は誤り
  9. シーズンシートの価格と観客動員
  10. 経済効果と東京マラソン

月別アーカイブ

2017
06
05
04
02
01
2016
08
04
02
2015
08
07
04
03
02
2014
12
11
09
08
07
05
04
02
2013
09
08
07
05
02
01
2012
11
07
04
03
02
01
2011
12
10
08
07
06
04
03
02
01
2010
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2008
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2007
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2006
12
11
10
09
08
07
06

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2018年01月17日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss