2009年12月13日

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

アルビレックス新潟が2007年から2年連続赤字になり、2009年も黒字化するのは難しそうだ。
アルビレックスと言えば、それまでサッカー不毛の地だった新潟で、3万人を超す観客を集め、「満員の会場が持つ魅力」を新潟県民に体験させることに成功した例として、スポーツマーケティングやスポーツマネジメントの研究者の間では、定評があったクラブだ。
成功事例として多くのクラブが参考にし、経済誌の取材も多かっただけに、アルビレックスのここに来ての赤字化は、様々な議論を呼んでいる。
僕自身もアルビレックスの成功事例を見に新潟に足を運んだ事がある。満員のスタジアムは魅力的で、様々な年齢層の観客が笑顔で観戦する姿をみて、地域に根ざしたサッカークラブの理想形だと感じた。

アルビレックスが集客に成功したのは、「無料招待券」の存在が大きい。2001年に完成したスタジアム、ビックスワンでアルビが初めて公式戦を行った、2001年5月19日。
当時まだJ2だったアルビレックスは、大きなスタジアムで少ない観客しか入らない危険性を回避するために、「無料招待券」を大量に発行。それまで4000人程度だった観客を3万2000人にして見せた。「新スタジアムを見に来たという人が多かったが、興奮を味わってもらえたと思う」とアルビレックス新潟の田村貢社長は語る。その後も新潟市を中心に老若男女を問わず招待し続け、サッカーに無関心だった来場者が熱烈なサポーターに変身していった。(2009/1/5 日経MJ)
アルビレックスの「無料招待券」は乱発したのではなく、戦略的に発行され、来場者の個人情報も獲得。その後のマーケティングで確実にサポーターへと変身させていった。
来場者が減少した理由は定かでは無い。しかしとあるサポーターは「大きなイベントもなく、マンネリ化しつつある」との意見をよせるなど、今まで通りの興行では観客は「面白み」を感じなくなってしまったようだ。
marketing-130083.gif
当時、「非日常」だった「満員のスタジアム」も、8年を経過し「日常」となってしまったのかも知れない。その8年の間にアルビレックスのサッカーを浸透させ、イングランドがそうであるように、家族の話題の中心になることは出来なかったようだ。 同時に「無料招待券」からの脱却に時間が掛かったこともある。アルビレックス以前にもいくつかのプロスポーツチームが「無料招待券」戦略を行っていた。だが成功例と言われるものは少ない。 近鉄バファローズは1997年に大阪ドームが完成するまで、藤井寺球場を本拠地にしていた。藤井寺時代は試合開催日の1週間前になると、球場周辺を中心に「無料招待券」が発行されていた。ファンはその事を熟知しており、事前に前売り券を購入しなくなっていった。試合日近くまでチケットが売れ残れば、タダで野球が観られる。ならば前売り券を購入したほうがバカを見る。からだ。大阪の商人文化もあいまって、前売り買い控えは多くのファンに知れ渡り、球団経営に大きなダメージを与えた。大阪ドームへ本拠地を移転すると同時に「無料招待券」の発行を全面的に中止。有料入場者への転換を図るが、なかなかうまくいかなかった。 「無料招待券」には集客の力がある。しかし一方で「観戦」の価値を下げる効果もある。なにしろタダなのだから、行っても行かなくてもムダになった。という意識は少ない。その結果、配布した招待券の5割近くが使用されずにムダになり、スタジアムを満員にしたい球団側はムダになる枚数まで計算に入れて、もっと多くの「無料招待券」を発行することになる。4万人入るスタジアムであるにも関わらず5万枚「無料招待券」が出回れば、「観戦」価値は著しく低くなり。お金を出して観戦に行く「価値」を感じなくなるのは当然だ。 アルビレックスは当然、このような失敗事例を充分理解していたので、その様な轍に陥る事は無かった。4000人を4万人にし、現在3万3000人近くに落ち着いてきている。といった表現の方が適切なのではないだろうか。「無料招待券」による成功事例であることには変わりはない。 だが隣り合わせで観戦している友人が「無料」で熱心なサポーターが2000円を払っていたら、なんだか損した気分になるのは避けられない。せっかくのサッカー観戦が楽しく感じられなくなる可能性だって秘めている。 Jリーグの公式サイトで公開されている、クラブ別の経営情報を2005年から比較してみよう。
marketing-130207.gif
問題の入場料収入は2005年と2008年を比較すると3億5400万円も減少している。その他の項目に大きな変化が無いことを考えれば、入場料収入減少が最も大きな問題であることは明白だ。 客単価は、2005年1737円だったものが2008年には1417円になり19%も低価格化してしまっている。 シーズンパスの売上が落ちたのがひびいている。と池田会長は日経新聞の取材に答えている。 ピークの4万人に比較すれば、観客が減少しているが、新潟のマーケットサイズを考えれば4万人「超大成功」であり3万3000人でも「大成功」だろう。だとすれば3万3000人で収支が釣り合う経営を行う必要がありそうだ。 2008年のデータだが、Jリーグ33チームで「観客動員数」「入場料収入」「客単価」を計算してみた。
marketing-130084.gif
新潟は、観客動員数で2位。入場料収入の金額でも3位。だが客単価では20位となっている。客単価の20位はJ1チームで最下位。なんだかとっても不思議な結果となった。客単価以外は素晴らしい数字なのだ。 これらのデータを数学的に計算してみると、「無料招待券」の発行枚数が多いのが問題であることが解る。またその枚数も増えている可能性が伺える。観客が減少している中、それを食い止めようと「無料招待券」を増発しているとしたら問題は大きい。 どこかで大きく梶を切って、「無料招待券」戦略から脱却しなくてはいけない時期になってきている様だ。 スタジアムが満員にならなくても魅力的なアルビレックス。 来場者に提供する「商品」を変えて行く必要がありそうだ。


posted by marketing |14:45 | サッカー | コメント(23) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/marketing/tb_ping/156
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

一度無料に馴れるともうお金払う気なくすんじゃないんでしょうかね

posted by m。m | 2009-12-13 17:44

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

新潟ファンですが、乱暴なものいいだと思います。
今年は例年以上にホームで勝ち点を伸ばせなかった。にもかかわらず、微減で済んだわけですし。
観客動員について説明するとしたら複数の要因を考えなければならないでしょう。はじめから新潟の経営難を強調しようとする結論ありきで、新潟の評価を貶めるような証拠を並べて、読者に印象づけようとするやり口には気分を害しました。

posted by アルビレックスサポーター | 2009-12-17 21:16

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

そもそも、大分の3倍以上の累積債務がある京都などを取り上げずに、新潟を取り上げるのは、論者としては、あまりほめられた態度ではないのではないですか。

posted by アルビレックスサポーター | 2009-12-17 21:21

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

京都は後ろに京セラやら任天堂やら大企業がバックに控えてますが、新潟にそんな後ろ盾ありましたっけ?
ちなみに無料招待券の弊害については、どこぞの大学の先生の研究レポートでも指摘されてましたよ

posted by 事実は認めるべき | 2009-12-18 02:23

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

ウチよりひどいものがあるんだからそっち扱えよってのはどうかと思いますね。
テレビで見るたびに雨が降ってるビッグスワン、というイメージがあったので別に観客動員が減ってることに驚きはありませんが、マンネリ化を受け入れられるほどまだまだ浸透しきってないということは現実として認めないといけないのではないでしょうか?

posted by アルビサポさんへ | 2009-12-18 15:37

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

数値が具体的で、好感がもてた。

posted by 名無しさん | 2009-12-18 15:38

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

京セラのおじいさんがいなくなったら、スポンサーへの依存度が高いだけに、いきなりピンチがやってきそうだよね。どこも安心できないってのが実情では。

posted by 京都は京都で | 2009-12-18 16:07

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

趣旨が伝わりにくかったようです。

そもそも、周知のことを、いまさら取り上げるのは2番煎じで、あまり興味が持てないし、皮相的なものの見方なのではないかな、と考えたのです。

あと、最後のコメントにもあったように、もちろん新潟もその一つですが、どこも経営が苦しい面があるわけで、Jクラブの経営難を分析するなら、もっと適当な事例があるのではないか、また、ただ券だけに問題の原因を求めるのは、自分からすると不真面目だと思ったのです。

京都のことは知りませんでした。
ただ、比較的詳しく知っているクラブについて、荒い説明をされたのが、不誠実な態度のように感じられたのでした。

感情的なコメントが過ぎました。失礼しました。

posted by アルビレックスサポーター | 2009-12-18 22:38

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

一言でいえば、もう少し丁寧に事例を扱って、説明してください、ということでした。

クラブに愛着を持つサポーターに対する、配慮をお願いしたいです。

posted by アルビレックス | 2009-12-18 22:44

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

京都のことは知らなかったし、なるほど、と思いました。

ただ、経営難の現状について迫るなら、債務額が大きなクラブのほうが、おもしろく、価値のある説明が可能になるのではないでしょうか。

最終的に助かるかどうかは別として。

そうした意図をもって何げなく京都を挙げたのですが、もし京都サポーターの方、気分を害してしまったら、すみませんでした。

posted by アルビレックスサポーター | 2009-12-18 23:06

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

スポンサーが、借金をすべて返済することができる限りで、いくらでも借金してもかまわないという発想は危険ではないでしょうか。

モラルの低下しているクラブで、よいサッカーができるものなのでしょうか?

人ごとですが、心配になってきました。

posted by モラルハザードでは | 2009-12-19 00:25

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

客単価に関しては最下位である事実は確かなわけで、親会社をもたない系統のクラブとしては根幹である入場料収入を徐々に蝕まれていることを指摘したかったのでは。

親会社をもつ系統のクラブとしてはヴェルディの危機について触れておられますよ。

posted by 無料招待券によるモラルハザード | 2009-12-19 02:48

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

累積債務については札幌や仙台はかつて大分の倍かそれ以上ありました。しかし資本金があったのでそれを使って解消した。
京都も資本金が大きいので債務超過には至っておらず、(むしろ少しずつ債務額が減ってきている)さほど面白いものにならないのでは。

posted by >債務額が大きなクラブのほうが、おもしろく、価値のある説明が可能になるのではないでしょうか | 2009-12-19 03:51

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

なるほど、よく見てみると、そうみたいですね。

感情的な反発から書き込みしてしまったところがあるのですが、みなさん、親切な反応を返してくださってありがとうございました。

posted by アルビレックスサポーター | 2009-12-19 04:16

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

コメントを寄せていただきましてありがとうございます。アルビレックスに対する愛情が足りなく、上から目線の表現だったようです。本文を修正すると共にファンの皆様にお詫びいたします。

posted by えとう | 2009-12-20 10:19

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

アルビレックスサポーターが感情的すぎて、blog主の本文よりもずっとみっともないと思います。アルビレックスの問題点を指摘しても、その問題は問題として事実なのですから、そこに反発するのは、子供のわがままじゃないですか?

J1で、地方で、大人数を集客し、一見順風満帆でも実はこのような問題を抱えている、そういう事例としてアルビレックスを取り上げても、それは論者の自由であって、誠実さとは違うと思います。

posted by アルビレックスサポのモラルハザード? | 2009-12-29 06:16

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

江藤さん

初めてコメントさせていただきます。
私は恥ずかしながら無料招待券で観戦していたアルビサポです。
ただ、その魅力に取りつかれ昨シーズンからシーパスを購入して継続しています。私にとってはこの「お試しでスタジアムでスポーツを観戦する」という機会が無ければ絶対にシーズンパスまで購入して観たいと思うことは無かったと断言できます。

私は多分クラブにとって「思惑どおり」な感じの客だと思いますが、それでも私は私のような人が増えてくれれば良いなと思っています。

あ、私が言いたかったのはこっちだった。

今年の招待券は昨シーズンの半数しか発券しなかったそうです。
(公式モバイルサイト「モバイルアルビレックス」より)

>どこかで大きく梶を切って、「無料招待券」戦略から脱却しなくてはいけない時期になってきている様だ

と、ホンキで思っているのは第三者じゃないと思いますよ。

posted by 招待券の数 | 2010-01-06 10:25

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

藤井寺を「大阪の商人文化」と括るのは無理があるのでは・・・。
この記事にあるように無料チケット云々と大阪は無関係のようですし。

posted by ななし | 2010-01-07 10:30

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

タダ券あったら有料チケット買わないって
そんなの大阪に限った話じゃない

当時の近鉄バッファローズの客足が伸びなかったのは
「大阪の商人文化」のせいって?
無茶苦茶だよ。分析があきれるぐらい雑すぎる。



posted by    | 2010-01-08 04:46

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

アルビレックスのデータを見ると広告料収入も入場者数に引っ張られるように伸びてますね。
そして、逆に入場者数が下がってくるとその影響なのか広告料収入も下がり始めている?
(入場者数ピークが2005年で広告料収入ピークが2007年)

戦略の転換は言うよりもはるかに難しいことなのかもしれませんね…。

posted by 9087 | 2010-01-09 13:08

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID :

アルビレックス新潟サポーターです。
シーズンパスで観戦しています。
2008年単価が20位というのはわかりました。
年々、入場者数が減少しているのもわかります。

ただし観戦価値と平均単価は関係ないと思います。
自分は試合内容と観戦の喜びに価値を感じます。
そういう意味では新潟はなかなか良い試合をしました。
無料招待券で入れるのはピッチに遠い席です。
個人の時間をさいて来てくれるのは
観戦の価値を感じているからと思います。
それはそれでありがたいと思います。

(「商品」を変えていく必要がありそうだ。)
はかなり強引な結論に思えます。

Jリーグの試合内容とスタジアムだったら、
鹿島の2000円くらいが妥当ではないでしょうか。


posted by G | 2010-01-31 08:32

Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟

コメント投稿者ID : OOH00007568

当時、どうしても主張したくなったのは、ネット上で、根拠となる情報のソースを示すことができなかったものの、大幅に無料招待券を減らしたり、数年ぶりに黒字化を達成した、との情報を耳にしていたからでした。

経営陣が、当事者意識を持って、記事にされる1年以上前から取り組んでいて、すでに結果を出し、記事にされるような状態から脱しつつあったにも関わらず、いまさら赤字がどうのこうの、といわれるのが、クラブの努力を侮辱されるように感じられたからでした。

posted by アルビレックスサポーター | 2010-04-19 23:48

興味深く拝読しました

コメント投稿者ID : OOH00009958

 大阪近鉄バファローズの話は、私はわからないのでなんとも言えませんが、アルビレックス新潟の部分は、「なるほど」と思いました。数字の持つ重みは十分認識する必要があると思います。

posted by アルビ元Nサポ | 2010-05-26 11:39

コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」