スポーツマーケティング探求記

高校野球のビジネス

このエントリーをはてなブックマークに追加

marketing-107655.jpgアマチュアスポーツの代表的存在の、高校野球。スポーツ・ビジネスには関係なさそうだが、なかなかどうしてしっかり商売している人たちが存在する。
高校野球でビジネスすることを非難するつもりは無い。これだけ大きな大会を維持して行くためには、お金も必要だし、それに従事する人の給与も捻出しなくてはならない。民間企業からのスポンサードや支援も必要だ。ここでは大会に関わるビジネスの代表的なことを紹介してみようと思う。

スポーツをとりまく人々を、大雑把に分類すると、
・スポーツをする人
・スポーツを観る人
・スポーツを支える人
に分けられる。アマチュアスポーツの高校野球では、「する人」と「観る人」が消費者になり、「支える人」がビジネスを行っている傾向がある。

高校野球選手は年間60万円必要
野球はお金が掛かるスポーツだ。スパイクやバット、グローブは硬式仕様だと数万円の出費が必要になる。野球部の部費は平均で年間8万円。高校側で部費として選手1人に費やす費用は6万円から10万円。そのほとんどは遠征の交通費や宿泊費。ボールやネットなど練習に必要な消耗品で消えてゆく。(2009/7/4 朝日新聞)
もちろん、それだけの費用を投資しても充分な、経験と教育の機会が高校野球には存在する。春や夏の甲子園に出場が決まると、さらに多くの費用が必要となる。グランドに立つ選手ばかりではなく、野球部全員が甲子園球場で応援するのが一般的で、1校でバス数台になることも少なくない。
高野連の資料によると、平成21年度の高野連登録部員数は過去最高の16万9000人となった。単純計算すると、高校球児が生み出す年間の消費は1000億円程度になる。
高校野球の公式球を提供するミズノや、野球用品を手掛けるSSKなどが、このマーケットでビジネスをしているのだ。

高校野球を観る人
プロ野球に比較して、高校野球観戦に必要な出費は少ない。TV放送はNHKで、受信料は必要だがスカパーほど高額ではないし、特別なアンテナや受像機も必要ない。チェンネルを合わせれば気軽に観る事が出来る。
甲子園の観戦チケットは、中央特別自由席(バックネット裏)で大人1600円。アルプス席なら500円、外野席なら無料で楽しむ事が出来る。しかしこの費用に、甲子園までの交通費は含まれていないのだ。
JR九州は、甲子園応援ツアーに積極的に取り組んでおり、熊本工の甲子園応援ツアーは中学生以上が2万8600円。試合当日の朝に熊本を出て午後4時からの試合を観戦。翌日の午前2時ごろ熊本に戻る、いわゆる「弾丸ツアー」だ。
大分代表の明豊応援ツアーは、大人2万3000円弾丸スタイル日本旅行も宮崎からの2泊3日(2泊とも車中泊)の弾丸ツアーで、大人2万円。野球部OBや同窓会員への割引も設定し定員300人で発売した。
選手の父兄や親戚はもちろん。母校が甲子園出場を決めたOB達は、その晴れ舞台を見に甲子園へと詰めかける。スタンドを埋める応援団は「選手のがんばりで甲子園に連れてきてもらった」と、出費はそっちのけで甲子園体験をありがたがっているのだ。
出場校49校の応援団が、真夏の甲子園を目指して集まってくるのだ。その経済効果は決して小さくは無いだろう。

昨年の入場者数は89万人。この人たちが飲み物やお弁当など様々な消費活動を展開してくれている。1日最大7万3000人の入場者を記録するのだから、入場料はプロ野球の半額だっていいわけだ。

高校野球ファン
代表校のOBや父兄ではないけど、高校野球が好きで見ている人達が存在する。プロ野球とは違った「初々しさ」や「敗けたら最後」といった部分を楽しんでいる人達だ。このマーケットを対象にビジネスをしているのが、出版業界だ。「甲子園特別号」といった雑誌が8月初旬に書店に並ぶ。近ごろでは大会時期で無くても、報知新聞社が「高校野球」という月刊誌を発行している。

高校球児 萌え
女子の高校野球の見方は、いわゆる野球オヤジのそれとは全く異なる。イケメンの選手を中心とした見方で、古くは定岡正二、荒木大輔。最近ではダルビッシュや、斎藤佑樹くんもそうだ。少し前のティーンズ雑誌には、高校球児名鑑がついていたものだ。現在はその数が激減しているとは言え、まだ存在していると、とある出版者から聞いたことがある。

高校野球を支える人
高野連の収支予算書を見ると、夏の大会の収入は4億3700万円、支出は3億8400万円となり、5300万円のプラスとなっている。当然このプラス分は他の事業で使用され、高野連の利益にはならない。
夏の大会の主催は、朝日新聞と高野連の連盟になっており、NHKの放映権や、ライセンスグッズなどの収入も2者で分けあっていると考えていいだろう(分配率は不明)。
昨年まではビクターが甲子園応援ポスターを駅に張り出して、僕たちを楽しませてくれていたが、2009年は中止になってしまった。ビクターは高野連に公認を受けてキャンペーンを行っていた。高校球児の肖像権を使用することは無かったが、高校野球ビジネスであることに間違いは無いだろう。
かつては、カルピスキャノンも高校野球ブランドを使った販売促進を行っていたのだ。キャノンは代表校の父兄が高額な一眼レフを購入する市場に目をつけ、「高校野球フォトコンテスト」を実施していた。

スポーツの大会には、地方経済を活性化させる力がある。前々回に紹介した、愛媛県の女子野球や、ツール・ド・沖縄、各地で開催されているマラソン大会などもそうだ。
スポーツ大会は、参加者が本当に楽しんでお金を使ってくれるところもビジネスを超えた魅力を感じるポイントだ。
甲子園だけでなく、国体や、ユニバシアードなど、スポーツ大会でのお金の流れをつかみ、経済効果や、ソーシャルキャピタルなどへの展開ももっと研究してみると、もっと面白いかも知れない。
スポーツが不況から脱出するキッカケを作る事だって、不可能ではないのだ。





1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
プロ野球
タグ:

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

この記事にはまだコメントがありません

こんな記事も読みたい

届かなかった1点。届かなかった優勝旗。~決勝戦~【素人のざれごと ~思いつくまま~】

ア・リーグMVPレース【ヤンキース~“帝国”復活への道~】

イチローを返して。【イチローとシアトル・マリナーズを応援するブログ!】

ブロガープロフィール

profile-iconmarketing

江頭満正/Mitumasa ETOH
東京都出身。1988年リクルートを退職後起業。2001年ダイエーホークスの公式携帯サイトをオープン し、その後ベイスターズ、近鉄、千葉ロッテ、オリックス、日本ハム、ジャイアンツ、清水エスパルス、J SPORTSと公式携帯サイト運営を契約。チームの内側からITによる観客動員を模索、3度の日本シリーズと1度の天皇杯決勝を経験。2004年アテネ五輪では、Yahoo! JAPANのオリンピック結果データを全て担当。現在大学でスポーツビジネス研究者として 教壇に立っている。
【現職】尚美学園大学准教授・一橋大学スポーツビジネス研究会研究員・特定非営利活動法人スポーツマンシップ指導者育成会 理事
  • 昨日のページビュー:42
  • 累計のページビュー:1092866

(01月15日現在)

関連サイト:尚美学園大学 江頭ゼミ

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 星稜高校「必笑」で9回8点を逆転
  2. 浅田真央 現役時代の経済効果
  3. 【収入4500億円】行き過ぎたオリンピック商業主義
  4. Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟
  5. プロサッカー選手年俸 過半数はJリーグ以下
  6. 高校野球のビジネス
  7. 清水エスパルスへ新卒入社
  8. 「プロ野球人気低下説」は誤り
  9. シーズンシートの価格と観客動員
  10. 経済効果と東京マラソン

月別アーカイブ

2017
06
05
04
02
01
2016
08
04
02
2015
08
07
04
03
02
2014
12
11
09
08
07
05
04
02
2013
09
08
07
05
02
01
2012
11
07
04
03
02
01
2011
12
10
08
07
06
04
03
02
01
2010
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2008
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2007
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2006
12
11
10
09
08
07
06

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2018年01月15日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss