スポーツマーケティング探求記

「プロ野球人気低下説」は誤り

このエントリーをはてなブックマークに追加

このところ、スポーツライターやコラムニストの方が、何のためらいも無く「プロ野球人気低下」と断定的に書く記事を目にする機会が多くなった。2008年11月24日の日経新聞にも、関西独立リーグで女性選手を起用して「人気低下に歯止めをかけようとした姿勢にも疑問を感じた」と、なんというか当たり前に書かれている。

何を根拠に「人気低下」と断定的に書いているのだろう。
僕は、この説には異議を唱える。「プロ野球人気低下説」は誤りだ。
「人気低下」と断定している要因を想像してみると、地上波TVでの巨人戦視聴率低下がある。それは事実だ。

但し、従来に比べて地上波TVで巨人戦を見る人が変化しているのだ。地上波での野球中継はPM7:30からPM9:00が中心。プレーボールもゲームセットも放送されない可能性が高い。試合の真ん中だけ中継しているのだ。もしワールドカップでそんな試合中継をやったら、放送局に物凄いクレームが来るだろう。

同様に野球ファンだって、プレーボールからゲームセットまで見たい。そういうファンは、スカパーのプロ野球パックに登録して巨人戦をを見ているのだ。2006年シーズンと比較して2007年シーズンのプロ野球パック契約者は30%も増加している。(2007/11/05日経新聞)スカパーなら、必ずゲームセットが見られる。しかもタレントの解説者が来て、試合の中身に無関係なコメントをする確率も低い。だから、本当にプロ野球が好きで、ビール片手に野球中継を観戦する人は、地上波からスカパーに移動してしまったのだ。

だとしたら、地上波で巨人戦を観ているのは誰なのだろう。
巨人の熱狂的なファンでは無く、ゲームセットが放送されなくてもイライラしない人々だと予想することが出来る。
この地上波視聴者に、プロ野球ファンが減少しているのだ。その結果地上波TVの視聴率が低下してきた、と考えるのが自然だ。

2006年と2007年の球団地域別視聴率平均と視聴者数(概算)
marketing-105752.jpg
巨人だけが視聴率10%を切っているが、巨人の首都圏は人口が多い。 視聴者数を概算で算出してみると、400万人が巨人戦を観戦していることになる。かつて巨人戦の全国中継で20%台を出していた頃(1999年)と比較してもスカパーを含めた視聴者数は大きな遜色は無いのだ。 巨人の一極集中から、福岡、北海道、仙台など各地に元気な球団が誕生しコンテンツが分散した結果、各地の野球ファンが巨人よりも、地元の球団を応援するようになったと考えても差し支えないだろう。 巨人の一極集中よりも、地域分散している方がリスク確立が低下し、プロ野球全体には好都合だとも言える。 巨人戦の地上波TV視聴率低下は、 ・熱狂的ファンがスカパー視聴に切り替わった ・巨人一極集中から地域球団への分散化 によって説明できるのだ。 球場への来場者は増加傾向にある 2009年シーズンは、広島の新球場効果もあり、5月には前年比91%増となった。セ・パ共に7%台の観客数増加を発表している。球場にチケットを購入して観戦しにくる人は増えているのだ。例え新しい球場が魅力的だったとしても、メインディッシュの「野球」に興味が無くては観戦に行かないだろう。 そもそもスポーツ観戦は、映画やゲームセンターの様に「ついで消費」になる確立は極めて低い。「あっ、球場があるから野球でも観て行くか」と通りがかりや、思いつきで観戦する観客は少ない。つまり「野球を見に行くぞ」と強い意思を持っている観客ばかりなのだ。 この観客増加の現象と、プロ野球TV観戦スタイルの変化を認識していれば「プロ野球人気低下」と断定することは難しいハズだ。 確かに、地上波TVの巨人戦視聴率は低下した。 しかしそれだけでプロ野球人気の低下と決めつけるのは、あまりにも短絡的であり軽率だ。特に影響力のあるメディアに記事を発表出来るスポーツライターやコラムニストは、もっと多面的に事象を捉え、エビデンスを確認し、発言に責任を持つべきではないだろうか。その記事を読んだ読者は「プロ野球人気低下」を信じ込んでしまうのだから。 多くのスポーツライターは、競技に関して専門家だがスポーツビジネスについては専門外の事が多く、不十分な知識や情報で「野球人気低下」と断定してしまうのだろう。 しかしどんなに高名なライターでも、「野球人気低下」と断定したコメントを書いただけで、その人の専門である競技に関する洞察まで「うすっぺら」に見えてしまうのは僕だけだろうか。




1ページ中1ページ目を表示中

記事カテゴリ:
プロ野球
タグ:

このブログの最近の記事記事一覧

この記事へのコメントコメント一覧

「プロ野球人気低下説」は誤り

スカパーの関係者のインタビューを見かけたことがありますが、野球セットの力は凄いみたいですね。

また、地方球団はスカパーが主力だと思いますが、巨人の場合は日テレがBSも所有していますのでその力もかなりある様ですね。
だから野球選手の年俸はまったく下がらないんでしょうね。

http://www.j-cast.com/tv/2011/01/03084661.html

「プロ野球人気低下説」は誤り

>スカパーのプロ野球パックに登録して巨人戦を見ているのだ。2006年シーズンと比較して2007年シーズンのプロ野球パック契約者は30%も増加している。(2007/11/05日経新聞)

要するに江頭満正さんは、地上波テレビで巨人戦を見ていた層は、全員スカパーのプロ野球パックに移行し巨人戦を見ているとお考えなのでしょうか?

俄かに信じがたい論理なので自分で計算してみます。1980年代の巨人戦の平均視聴率を25%とし、ブログ記事中の2006年と2007年の球団地域別視聴率平均と視聴者数(概算)の表を活用すると、関東圏では4200万×25%=1050万人が1980年代に巨人戦を見ていた視聴者人口になります。そこから現在の視聴者人口を引くと1050万人-411万人=639万人が巨人戦から離れた人たちになりますね。江頭さんの論理ではスカパーのプロ野球パックに登録して巨人戦を見るようになった人数ですね。

で、全国のスカパー契約数を調べると・・・259万人しかいないんですが?。実際そんなことは有りえませんが、スカパーに登録している全ての人がプロ野球パックに加入し毎日欠かさず野球を見ても、失われた(関東圏だけで)639万人のプロ野球視聴者数には到達しません。

その他にも巨人戦は全国で中継されていましたが、ソフトバンクの試合は系列の違いがあり九州全域の地上派では放送されてないなど、記事中の誤りが多々あり、また639万人というのは関東圏だけの数字で、全国規模で巨人戦を見なくなった視聴者数を計算すると(野球の試合が地上波で放送されなくなったなどの理由で)ざっとですが3000万人以上はいるでしょう。まあ、あまりに細かいことを突っ込みすぎてもしょうがないのでここらでやめておきます。

以前から、なぜ野球関係者は野球が底の見えない人気凋落傾向にあり、このままでは日本から野球が消えるかもしれないほどの不人気スポーツになりつつある現実を認めないの不思議です。本当に野球を愛しているなら、現実を受け止め健全な批判精神を発揮する心の強さを身に付けましょう。それが野球の人気回復に繋がるのです。

「プロ野球人気低下説」は誤り

地上波のテレビ放送(主に巨人戦)が減ったことはこれから数年後に影響が出てくることだとは思います。
BS放送ではかなり良い視聴率を得ているという話もありますし、これから視聴者はBS、CSへと完全にシフトしていくことでしょう。

完全にバブルであったJリーグ創設期のサッカーと比べるのもおかしな話ですが、地上波放送から姿を消すということのライト層減に大きく関わってくることだと思っています。
他のスポーツに比べて毎日興行しなければならないプロ野球にとって週末だけ固定層をつかんでおけばある程度はやっていけるスポーツと比べてライト層の充実は死活問題でしょう。
WBC優勝、巨人優勝(?)にも関わらず地上波放送減少の流れはもう今更歯止めが掛からないでしょうが、テレビ視聴者そのものが減少し、ネット利用者が急増する現在、ライト層を確保するためにもこれまで以上に先を見据えた対策をドンドン打ち出していったほしいと願っています

「プロ野球人気低下説」は誤り

現状では人気低下説は誤りですよね。
WBC効果はあったとはいえ、不況の中で観客動員が増えているのはいい傾向だと思いますよ。
将来のことに関してはどうなるかはわかりません。そもそもこの国の景気自体よくありませんからね。ただ、野球の場合は甲子園ブランドなども手伝って裾野が広いですし、人材難になることはないかなとは思いますね。

こんな記事も読みたい

対ロッテ戦 今季四度目の田中VS渡辺俊【悲観的楽天主義】

《巨4-7神》【しろたろうのトラいあんぐる】

序盤の大量点で圧勝、吉見12勝目【スポーツブログNORISPO】

ブロガープロフィール

profile-iconmarketing

江頭満正/Mitumasa ETOH
東京都出身。1988年リクルートを退職後起業。2001年ダイエーホークスの公式携帯サイトをオープン し、その後ベイスターズ、近鉄、千葉ロッテ、オリックス、日本ハム、ジャイアンツ、清水エスパルス、J SPORTSと公式携帯サイト運営を契約。チームの内側からITによる観客動員を模索、3度の日本シリーズと1度の天皇杯決勝を経験。2004年アテネ五輪では、Yahoo! JAPANのオリンピック結果データを全て担当。現在大学でスポーツビジネス研究者として 教壇に立っている。
【現職】尚美学園大学准教授・一橋大学スポーツビジネス研究会研究員・特定非営利活動法人スポーツマンシップ指導者育成会 理事
  • 昨日のページビュー:0
  • 累計のページビュー:1092866

(01月16日現在)

関連サイト:尚美学園大学 江頭ゼミ

ブログトップへ

このブログの記事ランキング

  1. 星稜高校「必笑」で9回8点を逆転
  2. 浅田真央 現役時代の経済効果
  3. 【収入4500億円】行き過ぎたオリンピック商業主義
  4. Jリーグ経営難3 アルビレックス新潟
  5. プロサッカー選手年俸 過半数はJリーグ以下
  6. 高校野球のビジネス
  7. 清水エスパルスへ新卒入社
  8. 「プロ野球人気低下説」は誤り
  9. シーズンシートの価格と観客動員
  10. 経済効果と東京マラソン

月別アーカイブ

2017
06
05
04
02
01
2016
08
04
02
2015
08
07
04
03
02
2014
12
11
09
08
07
05
04
02
2013
09
08
07
05
02
01
2012
11
07
04
03
02
01
2011
12
10
08
07
06
04
03
02
01
2010
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2009
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2008
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2007
12
11
10
09
08
07
06
05
04
03
02
01
2006
12
11
10
09
08
07
06

このブログを検索

スポーツナビ+

アクセスランキング2018年01月16日更新

アクセスランキング一覧を見る

お知らせ

rss