2009年05月17日
世界で最も高額な「野球カード」
世界で最も高額な「野球カード」が4月の下旬に、アメリカのビジネス誌Forbesで紹介された。それはベイブ・ルースのもので、2500万円から5000万円だ。 そもそも、「野球カード」は19世紀にアメリカで誕生している。最初は球団が選手のプロモーションを行うためのブロマイド的なものだった。ファンサービスの一環として配布され、スタジアムで活躍する選手をもっと覚えてもらうのが主な目的だったようだ。そのうちファンはカードを収集し楽しむようになる。そして他の人とカードを交換するようになっていった。それは通貨が誕生する前の物々交換と同じで、人気選手のカード1枚と、ルーキーの選手数枚といったように、交換レートが自然と発生してきた。 最初に「野球カード」を発売したのは、ニューヨークのスポーツ用品店「ベック&スナイダー」で1868年のことだった。 1870年代に入ると、産業としての「野球カード」が誕生する。ファンがカードをコレクションするようになり、交換も活発に行われている事から商売として成り立つと考えた企業が、この時代いっせいに商業「野球カード」を売り出した。この時代は写真ではなく「イラスト」によるカードが多く見られる。写真の印刷技術が不十分だったことと、写真印刷コストが高額だったからみたいだ。 ところが「野球カード」を単体で購入するファンはマニアに限定されており、大きなマーケットを獲得することは出来なかった。「野球カード」が市民権を獲得したのは、タバコの景品として箱に同梱されたことがキッカケだった。 タバコ会社はプロモーションの一環として「野球カード」に目をつけた。現在でもペットボトルの飲み物に景品がつく事があるけど、構造的にはそれと全く同じ。 コンビニに行って飲み物が陳列されている冷蔵庫の前に立って、どの商品にしようか選ぶ時に、通常自分が愛用しているものではなく、景品につられて飲んだ事が無い商品を買ってしまうことがある。 その第一印象的なプロモーションと、景品を手にした後、景品をコレクションする目的で、同じ飲み物を買い続ける、継続的なプロモーションの2面性を「野球カード」は持っていた。しかも制作コストは高くない。ハードボックスタイプの包装がされていなかった当時のタバコにカードを同梱することで、タバコそのものが折れにくくなるというオマケまで付いていた。 こういった特徴がタバコメーカーに高く評価されて、1900年代の「野球カード」のほとんどがタバコの景品とされて生産されてものになった。 日本の「野球カード」の事情は、アメリカとは少し異なる。 1973年にカルビー社が「プロ野球スナック」を発売しているが、その2年前1971年に発売された「仮面ライダースナック」の大成功を受けて商品化されたと考えられる。 1970年代のこども達の間で「5円引きブロマイド」が人気を博していた。 駄菓子屋で5円を払って人気TV番組のキャラクターが印刷されたカードを購入する。しかしカードは中身が見えないように1枚1枚封筒に入れられていた。こども達は5円を駄菓子屋のおばちゃんに支払うと、封筒の中から選ぶことが出来て、自分のお目当てのカードを引き当てる楽しみもあった。「クジ」の要素もそこにはあったわけだ。 カルビー社は、「5円引きブロマイド」の人気を自社製品のプロモーションに活用できないかと考えた。そこでアメリカで成功している「プロ野球カード」の要素を取り入れ、こども達の心をわしづかみにしようと試みたわけだ。 ・カードの裏にキャラクターのデータを書き図鑑要素を取り入れた。 ・ラッキーカードを引き当てると、カードを収集するアルバムが貰えた。 ・カードに番号を入れ、全てを収集したくなるキッカケを作った。 この3つの要素を加える事によって、こども達をコレクターへの道へ誘導した。カードの裏に書かれたキャラクターのデータは、身長や体重、生まれ故郷などが書かれ、番組を見ているだけでは解らない事がわかり、さらに番組への興味を強くした。ラッキーカードの景品が、コレクション・アルバムでることも効果的だった。ラッキーカードを当てたこどもは、その事実を友達に自慢する。僕も友達のラッキーカードを何度も羨望のまなざしで見ていたものだ。そしてラッキーカードがいつしか、コレクション・アルバムになる。アルバムなんだから中身にカードがぎっしり詰まっていないと格好がつかない。こども達は再び、駄菓子屋に走り「仮面ライダースナック」を買う。その循環を作りだすための景品だった。 このカルビー社の戦略は当たった。 1971年の発売から数ヶ月は、日本中で売り切れが続出した。 1973年に発売された「プロ野球カード」も、「仮面ライダースナック」で成功した要素を取り入れ、選手の紹介文、カード番号、ラッキーカード(ホームランカード)が用意されていた。この頃はスナック菓子に同胞されるのではなく、「5円引きブロマイド」同様に、カードは1枚1枚封筒に入れられて、店員が選んでこども渡す店と、こどもに選ばせる店とあった。当然こどもが自分で選ぶ事が出来る店が人気で、 「2丁目の岡田菓子店は、袋を触って選べるららしい」 という情報が当時のこども達の間で飛び交っていた。 第一号のカードは「長島茂夫」で、カルビーのライバル会社だったロッテオリオンズの選手は、当初カード化されていなかった。 2009年5月現在も、カルビー者は ・サッカー日本代表チップス ・仮面ライダーチップスR ・Jリーグチップス ・プロ野球チップス を発売しているが、中身の菓子は全てポテトチップスでカード2枚付きになっている。 スポーツビジネスというと、スポーツクラブを思い浮かべる人や、プロスポーツチームのことしか考えない人がいるけど。「野球カード」だって立派な、スポーツビジネスだ。少し広い視野でスポーツビジネスを見てみると、色々なものがあって、色々なスポーツの仕事が存在するものなのだ。
posted by marketing |12:00 |
プロ野球 |
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