2008年12月06日
ホンダF1撤退と経済的影響
ホンダが自動車レースの最高峰フォーミュラ・ワン(F1)から撤退することが明らかになった。世界的な自動車需要の急減でホンダの業績も急速に悪化している。年間で約500億円かかるとされるチームの運営・維持費が重荷になっていた。自動車各社は軒並み販売不振に苦しんでいるため、ホンダの撤退はトヨタ自動車など他社のF1への取り組みにも影響を与えそうだ。 <日経新聞 2008/12/05> なんとも衝撃的なニュースだ。 確かにアメリカ発金融危機が原因となって、自動車産業は世界的にダメージを受けている。アメリカのビック3も、救済措置としてアメリカ政府に11兆円を超える経済支援を申し出ている。 「救済が実施されないとGMは今月末にも、なくなってしまう可能性がある」とCEOのワゴナー氏は12月4日ワシントンで行われた公聴会で発言。もしGMが破綻すれば250万人から300万人が失業し、年金や医療制度にもダメージを与えかねない。 それほど自動車産業はどこも経営危機に瀕している。 ホンダだけでは無いが、「ものづくり日本」を代表するホンダだけにインパクトは大きい。 ホンダとレースの関係はとても深い。 1961年6月 英国マン島で世界最高峰のオートバイレースが行われた。このレースでホンダは1位から5位までを独占する。この勝利が、ホンダの名前をヨーロッパをはじめとする世界へその名前を轟かせた。倒産の危機に瀕していたホンダは息を吹き返し、海外市場へ拡大してゆく。 1963年3月通商産業省は外国製自動車の輸入自由化を前に、ある法律を閣議決定。「特振法」特定産業振興法案。日本の自動車メーカーを3社に限定し、外国製自動車への競争力を高めようという政策だ。国内メーカーの提携・合併を促進し、海外メーカーとの競合に集中させようという考え方だ。 この時、日本国内の自動車メーカーは7社、トヨタと日産はその実績から当選確実だった。残り1つの椅子を巡って残りの5社が生き残りをかけた戦いが始まった。 まだ自動車を1台も作っていないホンダは絶望的だった。この混戦を抜け出すためにホンダが取った戦略は「F1参戦」。ホンダはそれまでレースで勝つ事でブランド力をつけ市場を開拓し、顧客に指示されて来た。今度は政府にホンダを認めさせるためにレースをやる。というのが創業者本田宗一郎氏の考えだった。 1964年7月 F1ドイツGPに参戦。不十分な設計もあって、テスト走行も予選も走れないまま決勝レースを迎える。12周目にカーブが曲がり切れずにコースアウト。その後2つのレースもリタイア。1964年ホンダのF1参戦1年目は惨敗に終わった。1964年までにF1に費やした費用は20億円オートバイ主力車種の年間利益に相当する金額を投資したが結果が出なかった。 この時点で「特振法」は廃案になり、ホンダは軽自動車の開発に注力していた。
1965年そのシーズン最終戦10月24日のメキシコグランプリに、新設計のエンジンと車体で参戦。スタート直後の第一コーナーでトップをとりそのままゴール。ホンダのF1参戦は2年目にして優勝を勝ち得たのだ。 1966年ホンダは、国産初の軽自動車N360を発売、大型の外国製自動車には出来ない低価格と家族4人が乗れる大衆車を発売し、オートバイメーカーから自動車メーカーへと成長を続けてゆく。 その後1968年にF1撤退するが、1983年から1992年の10年間参戦、2000年から2005年は車体の共同開発を含めたエンジン供給として参戦し、エンジンサプライヤーとして69勝を記録。2006年から再びオールホンダ単独チーム(Honda Racing F1 Team)として参戦し、現在までに1勝を記録。通算72勝(単独チームでは3勝)を達成。社員教育の一環として、社員を3~4年程度チーム専属として派遣してきた。 気になるのは、F1日本GP開催だ。 2009年の鈴鹿大会は予定通り開催することを、鈴鹿サーキットがホンダ撤退のニュースを追いかけるように発表した。鈴鹿にとってF1がもたらす経済効果は100億円以上と報道されており(2006/10/07日経新聞)もしこれを失うと、鈴鹿サーキットの存続も危ぶまれる。 鈴鹿でのF1開催は1987年、ホンダがF1にチームとして本格参戦した4年後のことだ。鈴鹿サーキットはホンダのグループ会社で、鈴鹿という地域もホンダの本拠地だ。そこへ世界的な自動車レースを招聘し地域経済に貢献した功績は大きい。2006年まで20年間連続でF1が開催されてきたが、2007年から富士スピードウエイでの開催に変更された。 F1の富士スピードウエイでの開催にはトヨタが尽力している。 2000年11月に富士スピードウエイの株式の67%をおよそ53億円で取得した。富士スピードウエイの年間売り上げは16億円、経常利益は3億円の赤字(2000年度)だった。 トヨタが富士スピードウエイの株式を取得した時の会見で張富士夫社長、加藤伸一副社長は以下のように記者の質問に答えている。 ――なぜ今モータースポーツに投資をするのか。 張社長 モータースポーツは一つの文化であり、技術陣は大きな夢を持っている。トヨタは若者の心をつかむことが足りないと言われ、ここ数年いろいろと手掛けてきた。今回もその一環だ。 ――経営の立て直しは。 張社長 黒字になることは必要だが、それだけでない。健全なモータースポーツの発展、ドライバーの育成など社会貢献の実現で事業の成否を判断したい。 ――F1はすでに本田が鈴鹿で開催権を持つ。FISCOでの開催は。 加藤副社長 なるべく早く開催したい。F1は一国一開催が原則で二開催は非常に難しいが、国際自動車連盟(FIA)と話し合いをしたい。ホンダは(モータースポーツでは)大先輩で世界でも実績があるが、私たちは幕下。道が本当に険しいことは分かっている。謙虚にやりたい。 (2000/11/02日経新聞) 2000年当時はトヨタは2002F1参戦予定であることを表明していた。 そして予定通りに2002年F1参戦。開幕戦のオーストラリアGPで6位入賞を果し、いいスタートを切った。 2002年9月 トヨタは富士スピードウェイを200億円掛けて全面改装することを発表する。 記者会見には、社長の張富士夫氏と豊田章一郎名誉会長も同席、同社の意気込みを示した。 自動車レースの最高峰のフォーミュラワン(F1)について「将来は誘致できればいい」と意欲を示した。若者層を取り込むため、F1誘致でもホンダに対抗する。 改装工事は新たな国際レーシングコースの建設が柱で、改装オープンは2005年4月。 2006年3月に富士スピードウェイは国際自動車連盟(FIA)と交渉の結果、2007年からのF1開催件を取得したと発表。およそ100億円の経済効果が、鈴鹿から富士に移動することになった。その後鈴鹿が粘り強く交渉した結果、富士と鈴鹿の交互開催で決着していた。 鈴鹿サーキットを運営するモビリティランドは2009年のF1開催に向けて200億円を投じた改修計画を2008年3月に発表、同年8月には改修工事に入っている。 この世界的な金融危機は誰も予想出来なかった。突然やってきて、急激な景気後退をさせた。この急場に対応するために、ホンダが年間500億円掛かると言われるF1から撤退するのは、適切な判断だ。 オリンピックやワールドカップの招致は、地方自治体や国家が支援して行うほどの盛り上がりを見せる。現在招致活動がさかんな、東京オリンピック。東京都は経済効果3兆円で、都税を466億円投資すると発表しているが、この額はいささか多すぎる気がする。 それに比べてF1は、地方税を費やして行うイベントでは無い。前述の通りサーキットの改装や交通網の整備などもあるが、民間が行うものが中心。年間100億円の経済効果もオリンピックに比べて少ないが、継続的に毎年行われる事を考えれば、大きな地域経済の活性化に繋がる。 鈴鹿では20年間F1が開催されて来た。その効果は大きい。 練習走行、予選、決勝の3日間でのべ32万人が押し寄せる。宿泊や交通、飲食代など地域経済に大きな恵みを与えてきた。 鈴鹿市内には31の宿泊施設があるが、収容能力は約3,700人にすぎない。このため名古屋市から三重県松阪市近辺のビジネスホテルや温泉までがF1で潤う。 津都ホテル(津市)もF1チームのスタッフや取材陣など常連客の予約で1年前から満杯状態。鉄道やバス会社への影響も小さくない。特急が停車する近鉄白子駅には昨年、3日間で約6万人の観戦客が殺到。三重交通は同駅から運行する直通シャトルバスで42,000人を運んだほか、全国各地からの観戦ツアーバスも270台仕立てだ。自家用車による乗り入れも毎年2万台を超え、多くが決勝までの数日間を車中やテントで寝泊まりする。サーキットに近い大規模商業施設、イオン鈴鹿ショッピングセンターでは一般ファンのほか、F1チームのスタッフが大型の台車で食料品や日用品をまとめ買いするなど、広範囲にわたって好影響があった。 2002ワールドカップはスタジアムという負の遺産を残してしまった。長野オリンピックはバブル期の計画をそのまま正直に遂行した為、2008年現在も長野県民はオリンピックの負債を負担し続けている。そういう点ではF1の日本開催は、ホンダの懐事情とは関係なく継続出来る仕組み作りをしなくてはならないだろう。
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posted by marketing |09:00 |
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ホンダF1撤退と経済的影響
コメント投稿者ID :
『世界のホンダ F1から完全撤退。』
あまりにも衝撃的なニュースでした。
正直、予想の範囲内って感じデス。
アメリカに端を発した、世界的な金融危機の昨今、
400億円近くかかるF1に参加するよりも、
次期ハイブリット車の開発や、経営効率化にお金を使った方が良い。
企業であれば、そりゃそう考えるでしょう。
今はそれで良いと思われます。
いずれは復帰してくれる事を期待しています。
posted by F1ファン | 2008-12-07 00:23
ホンダF1撤退と経済的影響
コメント投稿者ID :
どんなにいい撤退理由を見つけようが、「F1ファン」にはホンダの第3期がみっともなかったという結果が忘れられることはない。そして、それを認めることすらしないで逃亡。。。もうスピリットすらないのなら、そんなチームはトヨタだけで充分だよ・・・。
posted by ↑本当にF1ファン? | 2008-12-07 01:07
ホンダF1撤退と経済的影響
コメント投稿者ID :
>2002ワールドカップはスタジアムという負の遺産を残してしまった
とてもプロサッカークラブと契約していた人間のコメントとは思えません。
一体どのスタジアムが負の遺産となっているのか教えて欲しいものです。
(宮城スタジアムがお荷物なのは認めますが)
posted by | 2008-12-07 13:49
ホンダF1撤退と経済的影響
コメント投稿者ID :
F1グランプリ開催の交渉はまずはFOCAとおこないますね、サーキットのインフラ面など規格に合致しているかなどでFIAが認めるとカレンダーに載ることにになりますね。
スタジアムが負の遺産っていうのは地元自治体や第三セクターなどに赤字をもたらしていることを言っているのでしょうが、スポーツマーケティングという視点なのにこの言い方はいかがなものか。どっかの経済記事の受け売り?と感じます。
日本GP自体は原則としては条件的に影響はありません。集客とスポンサー集めの影響がどれだけあるかです。
TV放映権についても日本のTV局(現在はフジテレビ)がキー局となって世界に配信する放映権料が主なので日本で放送しなくても(その方が儲かる?)お金が入ってきますよ。
posted by マルクス | 2008-12-07 23:59
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確かにアメリカ発金融危機が原因となって、自動車産業は世界的にダメージを受けている。アメリカのビック3も、救済措置としてアメリカ政府に11兆円を超える経済支援を申し出ている。
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