2008年08月07日

聖火と政治とオリンピック

marketing-41688.jpg北京オリンピックが開幕する。
オリンピックを嫌いな人はあまりいないと思う。じゃあどこが好きか。と尋ねられるとあんまり具体的に答えられないものだ。
僕は開会式がとっても好きだ。夏季オリンピックだと開会式は4時間近くに及ぶ。その半分以上が選手の入場行進だ。ただただ世界中の選手がメインスタジアムを歩くだけだ。自分でも何が面白いんだろう。と疑問に思う事もある。それでも楽しいのだ。IOCの偉い人のスピーチや、選手宣誓のあと、開会式のメインイベント聖火点灯向けてどんどん盛り上がって行く。

 聖火リレーは1936年のベルリンオリンピックで初めて行われた。ナチスがその国力を世界に示すために利用されたオリンピックだ。この大会でアテネで聖火の点灯式が行われ、その炎をランナーが手に持って開催地まで運ぶと言う企画が発案された。現代風に言うと、プレイベントであり、オリンピックが行われる事を、メディアに露出するためのパブリシティー狙いのイベントだった。
聖火ランナーが到着した国ではニュースになる、しかも大きなニュースだ。このニュースを見た大衆は、いつどこでオリンピックがあるのかという情報を自然とインプットするのだ。ナチスが世界中の注目を集め、過去最大のオリンピックを開催し、自国を宣伝するための手段のひとつに過ぎなかった。
こういった政治的な背景の上で誕生した聖火ランナーは、その後も様々な政治的なメッセージを世界中に届ける役割を担わされるハメになる。
開会式で聖火の点火は、もっともオリンピックを象徴し最も注目があつまる瞬間だ。世界中の目が見守る中、メインスタジアムに聖火を掲げて入場してくるランナーたち。そこには天文学的数字のメデイア価値が存在するのだ。

【1964年10月10日東京オリンピック】
東京オリンピックの開会式は、国立競技場で行われた。
選手の入場行進に続いて、昭和天皇の開会宣言。そして聖火ランナーが登場した。
1945年8月6日に広島市近郊で生まれた青年が、聖火トーチを持っていた。広島に原爆が落ちた日に、広島市近郊で生まれた青年だ。
世界でたった1国、原子爆弾の被害を受けた国日本。東京オリンピックの聖火ランナーに込められた思いは、戦争の無意味さと、大戦敗戦から復興した日本の姿を世界に示す事、そして二度と原爆を使って欲しくない。というメッセージを、1962年秋にキューバ危機が起こり、アメリカとソ連は核戦争一歩手前にまでエスカレートするほど激しく対立した、東西冷戦まっただ中の諸国へ向けたものだった。

【1988年ソウル大会】
では、ソン・キジュンさんが最終ランナーだった。
ソンさんは1936年ベルリンオリンピックに、マラソン選手として出場し、金メダルを取っている。しかし韓国選手としての出場ではなかった。
当時韓国は日本の占領下にあったため、日本人としてオリンピックに参加していたのだ。日の丸を胸につけての金メダルだった。
ソウル大会では、誰よりも最初にメインスタジアムに走って入ってくる、最終聖火ランナーになった。祖国の国旗を胸につけて、1番最初にスタジアムをかけ抜けた。そして満場の喝采を浴びたのだ。52年前の屈辱を晴らした瞬間だったに違いない。

【1992年バルセロナ大会】
1992年バルセロナ大会の最終ランナーは、ロサンジェルス大会バスケット銀のエピ。そして、右足が不自由なパラリンピックのアーチェリー選手アントニオ・レボリョが火のついた矢を放ち、70m離れた聖火台に点火した。オリンピックは健常者だけのものではないことを、このセレモニーで世界に伝えた。

【1996年アトランタ大会】
1996年アトランタ大会で、聖火点火を担当したのはモハメッド・アリだった。1960年ローマ大会でボクシングライトヘビー級で金メダルを獲得。プロボクシングでも、世界ヘビー級チャンピオンだった。
ローマ大会で、黒人であることを理由にレストランへの入店を拒否され、それに抗議して川へメダルを捨ててしまったり。アメリカのベトナム戦争への徴兵が黒人中心であると非難。アリ自身に送られてきた徴兵礼状を拒否し、ヘビー級チャンピオンをはく奪されたり、人種差別問題に対して少々過激な活動を行ってきた。
そのモハメッド・アリが、世界が見守るオリンピックの桧舞台に帰ってきた。それはアメリカ政府とアリとの関係回復を意味した。しかし病に侵された手は震えていた。経緯を知る者には、言葉では表現しきれない様々なメッセージを投げ掛けたシーンだった。

【2000年シドニー大会】
2000年シドニー大会の聖火最終ランナーはキャシー・フリーマン。オーストラリア先住民の血を引くアボリジニの女性だった。民族や人種による長年の冷遇から開放されたことを伝え、オリンピックの理念である、全ての人類が集う平和の祭典であることを強調した。キャシー・フリーマンは女子400mに出場し優勝し、その雄姿を世界中に強く印象づけた。


北京では、誰が聖火の最終ランナーを担当し、どんなメッセージがそこに込められるのだろう。
どんな競技よりも僕がわくわくしてオリンピックを観る瞬間だ。


posted by marketing |23:10 | オリンピック | コメント(0) | トラックバック(0)
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