2009年01月08日

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

■2008年12月6日

長いロスタイムが、ようやく終わりに差し掛かっている。

センターライン付近でこぼれ球を拾った下村東美は、前方に大きなスペースがあるにも関わらず、走るスピードを緩めた。 

主審の松村和彦が長い笛を吹き、フクアリの奇跡は完成した。 

崩れ落ちる巻誠一郎、他会場の結果を気にするよりも先に、「WIN BY ALL」とコールするサポーター。 

フクアリという劇場で見せた、2点のビハインドをたったの6分間で跳ね返した奇跡のシナリオは、1年間の苦悩や絶望を乗り越え、最後まで諦めずにジェフのために戦った者に与えられた、最高のご褒美だった。 


■2007年12月4日

益山司という未来のジェフを担う選手の加入に沸いた翌日に、アマル・オシムと唐井直チーム統括本部長の解任が発表された。 

アマル・オシムはジェフを初タイトルに導き、「日本で最も面白いサッカー」を見せたイビチャ・オシムの実子であり、イビチャ・オシムが日本代表に引き抜かれる以前から、ジェフの後任監督として噂されていた人物である。 

緊急でバトンタッチした2006年、さらに阿部勇樹と坂本将貴を欠いた2007年に思うような結果が残せず、残念ながらジェフサポーターとはサテライト監督時代のような幸福な関係を築くことは出来なかった。 

また、唐井直は自らの幅広い人脈でヤン・フェルシュライエン、ザムフィール、ベルデニック、ベングロシュ、イビチャ・オシム、アマル・オシムらを招聘した、祖母井秀隆の推薦でジェフのGMに就任した人物であったが、やはり結果が出なかったことでサポーターの信頼を得ることは出来なかった。


■2007年12月5日

翌日から、雲行きはすぐに怪しくなった。 

淀川隆博社長(当時) 
「選手の能力を最大限に引き出し、いい結果を出せるなら、オシム路線の継承は問わない」(2007/12/4 読売新聞) 

「これまではたまたま外国人監督が続いたが、国籍にはこだわらない。次の監督にオシムさんのサッカーをやれと言っても無理」(2007/12/5 スポーツニッポン) 

「6連勝したが、その後は勝てなかった。後任は今は言えないが、何人か候補はいる。日本人、外国人にはこだわらない。後任には、オシムさんのサッカーをやれるかどうかという枠にはとらわれない。今いる選手の能力を最大限に出せる人に任せたい」(2007/12/5 日刊スポーツ) 

アマル・オシム 
「コメントできない。私は雇われの身で、決定権はクラブにある」(2007/12/5 スポーツニッポン) 

羽生直剛 
「よく分からない部分もある。これから、クラブとは契約交渉の機会があるので、その時に詳しく聞きたい」(2007/12/4 日刊スポーツ) 

「クラブは積み上げていくものだし、それを捨てるのは残念。オシムさんとアマルさんに教えてきてもらった者としては寂しい」(2007/12/5 スポーツニッポン) 

巻誠一郎 
「本当に何をしたいのか分からない。毎年毎年この時期にドタバタして」(2007/12/5 スポーツニッポン) 

山岸智 
「突然でした。僕らが結果を残せなかった責任もあるし、複雑な気持ち」(2007/12/4 日刊スポーツ) 

「オシムさんが倒れたときと同じで、突然で何て言ったらいいか分からない」(2007/12/5 スポーツ報知) 


アマル監督の電撃解任は、この日の練習前のミーティングで、淀川社長から選手に伝えられ、今後は“脱オシム”を図り、ACL出場を目指すとも説明されたという。(2007/12/5 東京中日スポーツ) 

参考記事:musicsalad ミュージックサラダ


■2007年12月10日~2008年1月10日

報道では連日、淀川社長のコメントを「脱オシム」として大きく報道。 

オシムの容態をゆっくり見守る間も与えられず、ジェフサポーターは多くの報道に踊らされた。 

12月10日 
水本裕貴にガンバ大阪、FC東京、名古屋からオファー。

12月20日 
川崎が山岸智獲得を目指す。
京都も参戦した水本争奪戦が4クラブに。

12月21日 
監督とGMが不在という状況でジェフが坂本にオファー。

12月25日 
京都が佐藤勇人獲得を目指す。

12月26日 
大宮が巻にオファー。 

12月28日 
佐藤勇人が京都移籍を決断した。 

12月30日 
ガンバ大阪が水本争奪戦から撤退し、今野獲得を目指す。 

2008年1月5日 
山岸、佐藤勇人の移籍が決定的に。

1月8日 
水野晃樹のセルチック移籍が噂される。

1月9日 
水野晃樹のセルチック移籍が決定的に。
水本争奪戦にガンバ大阪が再参戦。
巻は監督と会談後に去就決定。

1月10日 
羽生は同僚の動向を見て去就を決める。
水本のガンバ移籍が決定。

「フロントに不信感」と煽られた選手たちには例年通りオファーが殺到し、移籍確実というニュースにサポーターはただただ呆然としながら、2008年を迎えた。 

年明け早々、羽生、山岸、佐藤勇人、水野晃樹、水本裕貴、そして巻誠一郎の移籍の噂が徐々に現実味を帯びてきた。 

公式発表こそないものの、山岸、水本は決定的で、佐藤勇人と羽生は移籍に気持ちが傾いており、水野晃樹は労働ビザの問題さえ解決出来れば移籍が確実とされていた。 

ジェフサポーターはいつしか「せめて巻だけでも」と願うようになるが、この時に巻が取った行動はサポーターの予想以上のものだった。 


■2008年1月11日

この日、ジェフの2008シーズン新体制が発表された。 

監督にはヨジップ・クゼが就任した。 

指導した選手にはボバン、プロシネツキ、スーケルとビッグネームが並び、ジェフサポーターは不安を胸に隠しながら、「クゼならば大丈夫」と話し、新監督が決まったことによって、羽生や佐藤勇人が残留を決めてくれることを願った。 

そして、新チーム統括本部長には、昼田宗昭(元強化部長)が就任。

「7年間、選手のスカウトを中心にチーム強化に携わってまいりましたが、この度、チーム統括本部長に就任することになりました。今季、我々には、『Change-変化』が必要になると感じています」

08年の世相を1月の時点で当ててみせた彼の存在こそが、フクアリの奇跡に欠かすことが出来ない、大切なピースの一つ目であった。


続きます。


本日も最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

Numberチックなノンフィクションで、空いた時間に08年を振り返っていきたいと思います。

口調変えるのが難しいです。

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posted by marcos2008 |12:01 | ドキュメント(2008) | コメント(6) | トラックバック(0)
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2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

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numberというより、プロジェクトXっぽくて次回が待ち遠しいです!続編楽しみにしております!
それにしても、昨シーズンは激動すぎて私はまだ冷静に振り返れないです・・・。

posted by 小田急犬 | 2009-01-08 14:17

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

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はじめまして。
一昨年からの時系列で、12/6を考えると、
なんというか、重みが増す感じがします。
続きも楽しみにしてます。

ひとつだけ。
冒頭の東美のところ、
「フリーでボールを受けた」というより、
「センターライン付近でこぼれ球を拾った」とか、
そういう感じなほうがいい気がします~。

posted by inu | 2009-01-08 16:16

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

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 こんなに待ち遠しいのは、子供の頃に
毎週楽しみに待っていた少年ジャンプ以来です。
続きを楽しみに待ってます。

posted by たばこ | 2009-01-08 19:09

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

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こういう振り返り方はとても面白い。頑張って続きをお願いします。

トーミのとこは、inuさん書かれたように、状況的には
「センターライン付近でこぼれ球を拾った」
で、尚且つ、
「瓦斯の選手とこぼれ球の競り合いに勝って...」
と言ってもよい程だと思いますよ。それくらいに気合が入っていました。

posted by 犬サポ | 2009-01-08 22:15

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

コメント投稿者ID :

>小田急犬さん
お世話になっております。

コメントを拝見して、読み直してみたら、確かにそんな感じでした。
numberを目指したらプロジェクトXになる自分のセンスに驚きました。

おっしゃる通り、激動のシーズンであったからこそ、私も中々冷静に振り返れません。
なので、ここでは主観を省き、ひたすら事実だけ書いていこうかな、と感じております。

>inuさん
はじめまして。

最近、昨年の同じ時期のことを思い出し、今の状況が非常に素晴らしいもののように感じます。

冒頭の部分はおっしゃる通りでしたので、修正させて頂きました。

posted by マルコス | 2009-01-09 12:35

2008ドキュメント フクアリの奇跡 その1

コメント投稿者ID :

>たばこさん
お世話になっております。

私も子どもの頃は漫画雑誌の発売日が待ち遠しくてたまりませんでした。
ど素人の書くものですが、どうか見捨てずにいてやってください。

>犬サポさん
コメントありがとうございます。

ご指摘、非常に助かります。
今後もあれこれ怪しい部分があるかと思いますが、その際には厳しくツッコミをお願いします。

下村選手がボールを受けたシーン、何度か映像で確認すると新居選手が相手DFと競り合って、なんとかボールをこぼれさせたところを、下村選手が拾っていますね。
普段は飄々としている新居選手が、最後まで気迫を見せた、素晴らしいシーンだったと思います。

posted by マルコス | 2009-01-09 12:39

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