情熱的氷滑芸術

女子シングルと,アイスダンスと,ジュニアファイナル女子と【グランプリファイナル感想(2),スポーツ雑誌風】

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◆女子シングル:樋口新葉 に平昌五輪を期待するのは酷

 女子シングルは予想どおりの大混戦となったが,アリーナ・ザギトワ(ロシア)の優勝は本命がきっちり獲ったという印象だ。グランプリシリーズ2戦とは緊張度が段違いの大舞台でも,ノーミスはもちろんのこと,かなりの完成度を披露したことで,平昌五輪の銀メダル候補の筆頭に立ったと考えてよいだろう(金メダル候補が メドベージェワ(ロシア)であることは言うまでもない)。15歳のファイナル制覇は 浅田真央 以来だが,浅田 が若さ溢れる演技だったのに対し,ザギトワ は若さを生かしてジャンプを演技時間後半に集めてはいるが,表現面では若さを武器にしていない。滑りがこなれてきて,シニア1年目とは思えない成熟した表現が随所に見られるようになり,ややエキゾチックな顔立ちが落ち着いた雰囲気をたたえる。技術面と芸術面が両立した,末恐ろしい15歳の出現である。

 シリーズのベストスコアが210点を下回っていた マリア・ソツコワ(ロシア)が,216点を出して2位に入ったことは,これぞロシア女子の勝負強さであり恐れ入った。私は,以前のブログ「グランプリシリーズ スコアランキング 女子シングル編」の中で ソツコワ について「レベルの高い試合になればそのレベルに追随するポテンシャルはある」と記したが,正にそのとおりの結果となった。もちろん,宮原知子 や オズモンド(カナダ)の演技が完璧なら結果は変わっていたと思うが,実際の結果がこうなった以上,これを勝負強いと評価すべきだろう。そして,ファイナルで216点という高いレベルのスコアを出したことで,メドベージェワ,ザギトワ に次ぐ3番手の地位を固め,ロシア代表入りにかなり近づいたと見てよいだろう。

 5位と6位に終わった日本選手だが,その評価は全く異なるものだ。宮原知子 は,FS(Free Skating,フリースケーティング)のジャンプの回転不足によりスコアが伸びなかったが,それでも213点を出しており,回転不足がなければ220点を超えていただろう。回転不足は,ケガ明け,繰り上げ出場,前の試合から中1週という状況を考えればやむを得ない面もあり,今回の演技は平昌五輪のメダル争いに加われるだけの力を示したと言える。NHK杯,スケートアメリカ,そして今大会の3試合で,試合勘を完全に取り戻し,芸術面では昨季と見違えるほどの豊かな表現力を魅せてくれた。個人的には,宮原 は代表当確としたい。

 一方の 樋口新葉 は,大舞台での弱さを三たび露呈してしまった。昨季の四大陸選手権,世界選手権,そして今回のファイナル。この3つの大会は,単に大きな国際大会というだけではない,大きな重圧のかかる大会だった。四大陸選手権は平昌五輪の本番リンクの予行,世界選手権は五輪出場枠の枠取り,ファイナルは自国開催でかつ五輪シーズンの代表選考へのアピール。今大会は昨季の反省を生かして同じ轍は踏まないものと期待したが,そうはならなかった。強い重圧に耐え高得点が求められる場面での失敗が3度目となると,平昌五輪では克服してくれるはずと期待したくても,その期待が単なる根性論になりかねないのである。

 失敗の内容もいただけない。私が一番問題だと感じるのは,得意な連続ジャンプである 3Lz+3T(トリプルルッツ→トリプルトウループ)でミスが出たことである。樋口 はこの連続ジャンプを得意にしており,演技時間の前半と後半の両方に計2回組み込んでいる。それほど自信を持っているジャンプなら,転倒,抜けはあってはならない。しかし,今大会の 樋口 は,後半のジャンプで回転が抜けて 2Lz(ダブルルッツ)になってしまい,連続ジャンプにすることもできなかった。しかもこのミスは,昨季の世界選手権でも起こしているのだ。得意なジャンプで同じミスを繰り返しているということは,「強い緊張を強いられる状況で起こしてしまうミス」の原因を取り除くことができていないことの表れである。

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