2006年09月28日
魔球炸裂・三浦淳宏~ヴィッセル神戸対サガン鳥栖
昨日はJ2リーグ42節が行われた。 ヴィッセル神戸はサガン鳥栖と対戦。 試合前、J2を報道する数少ないマスコミは一様に「新居vs神戸DF陣」という観点を掲げていた。 しかし、これはあまりに皮相的だ。 現在J2の得点王を独走する新居選手は確かに素晴らしいFWだ。 前節でも、途中交代で出場ながらロスタイムに決勝点を入れるなど良い働きをしている。 だからといって、新居選手だけが鳥栖のサッカーを作り上げているわけではない。 むしろターゲットが一人に絞れる分、DFはやり易いはずだ。 昨日の試合で注目すべきは神戸の攻撃のメソッド。 鳥栖は全体にラインを低い位置に置きながらも、コンパクトにつなぐサッカーが特徴。 J2に多く見られる、単純に引いて守り、カウンターで長いパスを前線に送るような「引きこもりサッカー」に対しての攻撃論は神戸は確立してきた。 しかし、あのようにコンパクトに短いパスで相手を引き付けつつ上がっていくサッカーには一歩間違うと、裏を取られてしまう。 そうした意味でもサイド攻撃から組み立ててくる神戸のサッカーをどうアレンジしてくるのか、コンダクターであるペドロコーチ、松田監督の手腕に注目すべきであった。 結論から言おう。 どのようなシステムも打開してしまう個人技こそがフィールドの王様として君臨する、という誠に実も蓋もない結論を導かざるを得なかったのだ。 前半、素晴らしく早いチェックで鳥栖にボール回しすら許さなかった神戸だが、Jリーグ最低と評されるウイングスタジアムの芝の影響だろうか、攻撃時には全くといっていいほどボールがつながらず、効果的な攻撃は皆無だった。 後半55分、距離は約30m強、ペナルティエリア左隅延長線上辺りからのFK。 蹴ったのは三浦淳宏。 右足から放たれたボールはそのままゴール右上に突き刺さった。 このFKについて視点を変えて紹介する。 ・ゴール裏(正面)から見た場合→右上(三浦から見て左)に向かったボールが突然軌道を変えて左に曲がりストンと落ちた。 ・スタンド(横)から見た場合→フカシ気味に上がったボールが三角形を描くように急降下した。 ・ゴール反対側(後ろ)から見た場合→完全に上に上がったボールが突然見えなくなった。 これは嘘でも何でもない。 まとめると、三浦の右足から放たれたボールはゴール手前まで上昇しながら、突然右方向に鋭角に落ちた、ということだ。 キャプテン翼に登場する、主人公のドライブシュートが鋭角に落ちたものというと解り易いだろうか。 全ての球技における球の変化は球体力学の法則に則っている。 空中で突然向きを変えることなどありえないはずだ。 しかし、あの瞬間スタンドにいた誰もが、ボールそれ自体が意思を持った生き物であるかのごとく変化するのを目にした。 試合後、GKの経験のある人に話を聞くことができた。 彼が言うには物凄いキレで変化したボールは、あたかも空中で突然向きを変えたかのような錯覚に陥ることがあるそうだ。 その証拠に、鳥栖のGKは蹴った次の瞬間右(三浦から見て左)に動こうとしている。 彼には空中で突然向きを変えたように見えたことだろう。 それまで膠着していた試合は、その瞬間に決着がついたといっても過言ではない。 結果は2-0で神戸の勝利となった。 サッカーはチームスポーツである。 もちろん、三浦がそのキックを蹴る前に、チームが連動して動いていたからこそ、その位置でFKを蹴ることができた。 しかし、時にスポーツにおいてはその集団性を忘れさせるかのような個人の輝きが放たれることがある。 そうした瞬間は見ている我々の中で、語り継がれる「伝説」に昇華される。 このような瞬間に立ち会うことができた幸せに感謝。 惜しむらくはこの試合が4000人にも満たない人間の前で行われていたことだ。 しかもテレビニュースでも一切放送はされなかった。 平日のナイター。 しかもJ2。 悪条件は揃っていたのかもしれないが、このような素晴らしい瞬間の価値を高めるためにも、もう少しJ2にも目を向けて欲しい。
posted by lovesportslove |18:53 |
JリーグDivision2 |


