2009年08月23日
8月23日 準決勝
日本文理2-1県岐阜商
レポート 小関順二
まずは下の表を見てもらおう。昨年までの20年間、新潟県勢が選手権でどういう戦い方をしてきたかわかると思う。
1回戦 2回戦 3回戦
89年 ●新潟南 1-6智弁学園
90年 ●高田工 5-6八幡商
91年 ●新潟明訓1-8柳ヶ浦
92年 ●長岡向陵0-11星稜
93年 ○新潟明訓3-1松江一●新潟明訓0-10横浜商大高
94年 ○中越2-1坂出商○中越1-0浦和学院●中越2-3長崎北陽台
95年 ●六日町 2-8柳川
96年 ●中越 0-9倉敷工
97年 ●日本文理6-19智弁和歌山
98年 ●新発田農2-5浜田
99年 ○新潟明訓10-5宇和島東●新潟明訓1-4旭川実
00年 ●新発田農4-14智弁和歌山
01年 ●十日町 0-10明徳義塾
02年 ●日本文理1-8海星
03年 ●中越 0-2江の川
04年 ●日本文理1-2京都外大西
05年 ●新潟明訓4-7宇部商
06年 ●日本文理1-2香川西
07年 ○新潟明訓1-0花巻東○新潟明訓2-1甲府商●新潟明訓3-8大垣日大
08年 ●新潟県央工2-4報徳学園
6勝20敗、勝率・231――これが過去20年間の成績である。ちなみに、第1回大会から昨年(第90回大会)までの通算成績は16勝48敗、勝率・250。勝ち星(16)、勝率(0・250)は49地区の何と最低である。その新潟県代表の日本文理がこの大会、快進撃をしている。
2回戦 日本文理4-3藤井学園寒川
3回戦 日本文理12-5日本航空石川
準々決勝 日本文理11-3立正大淞南
準決勝 日本文理2-1県岐阜商
この4勝で第1回からの通算成績は20勝48敗となり、勝率は・294となり、北北海道、山形、富山を抜いて46位に上昇した。決勝の中京大中京を破れば勝率・304となり、準決勝で敗退した花巻東の岩手(勝率・295)を抜いて45位になる。新潟のさまざまな不名誉を一掃する躍進だということが、これらの数字はよく表している。
この躍進の牽引車になっているのがエース・伊藤直輝(右投右打)である。寒川戦で初めて見て、フォームがいい投手だと思った。最も目立つのが高い位置でのリリース。
球持ちが短いというのではない。真上からの腕の振りと、リストで“ボールを潰している”ため、リリースポイントが高く見えるのだ。低めに伸びるストレート、角度十分にキレ込む変化球は、このフォームがなければモノにできなかったと思う。
変化球は120キロ台中盤の縦割れスライダー、117、8キロでシュート回転しながら落ちるチェンジアップがあり、どれもキレ味が鋭い。140キロ前後の速さがあり、多彩で実戦的な変化球があれば、それをどういうふうに使うかがポイントになる。
山田智弘と対した7回、無死一塁の場面を再現しよう。山田は昨日書いたように、振幅の大きい打撃フォームに特徴がある。当然、一本調子の投手に強く、緩急で攻めてくる投手に弱さがあるが、このクセの強い長距離砲に伊藤は1、2球ストレートを続けた。
緩急の攻めではないじゃないか、と言われそうだが、2球目のストレートは高めのクソボール。この1球でストレートのイメージを植えつけると同時に変化球を使いやすくし、3球目以降スライダー、カーブを続けて空振りの三振を奪う。こういう緩急もあるのだなと教えられた。
9回にも先頭の江崎秋馬を高めボール球のストレートで空振りの三振に仕留めているように、ボール球の使いどころが伊藤は本当にうまい。これが中京大中京打線にも通じるかというのが決勝戦のポイントになる。
決勝の相手、中京大中京は1番から9番まで、息を抜けない強・好打者をずらりと揃える。対する伊藤はこれまでの4戦、右打者には被打率・234、左打者には被打率・271という記録が残っている。
中京大中京では左打者の河合完治が花巻東戦で、本塁打に加え、三塁打2本を打って絶好調。これをどう抑えるか、伊藤―若林尚希の「ナオキ・バッテリー」の腕の見せどころになる。
posted by koshien2009 |23:11 |
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2009年08月23日
8月22日 準々決勝
県岐阜商6-3帝京
レポート 小関順二
「この大会で初めて先取点を取られて引き締まりました。相手投手とウチの打線の調子を考えれば序盤で3、4点差をつける自信はあったんです。今の山田(智弘・右投右打)ならちゃんとやれば3点くらいに抑えてくれますから、勝てると思っていました」
試合後に聞いた、県岐阜商野球部コーチの言葉である。
「相手は帝京さんですから胸を借りるつもりで試合に臨みました」
こんな言葉を予想していたのだが、予想は大きく裏切られた。
1回は3安打にエラーも絡めて2点、3回には2四球に3安打の波状攻撃で4点を奪い、冒頭の言葉通り序盤で強豪・帝京を1対6と大きく引き離す。
これまでの対戦校は県岐阜商が山梨学院大付、PL学園、帝京が敦賀気比、九州国際大付で、帝京の対戦校のほうが下馬評は高く、強いと言われていた。当然、この試合でイニシアティブを取るのは難敵を退けてきた帝京で、県岐阜商は一歩力が及ばないのではと、僕も予想した。しかし、県岐阜商は強かった。
この県岐阜商の投打の柱が山田智弘である。件のコーチに「山田を不思議ちゃんとノートに書いているんですよ」と言うと笑っていた。変則的な投球・打撃フォームでありながらしっかり結果を残す、そういう様を「不思議」と表現したんです、と補足した。
投球フォームはスリークォーター。始動でねじり、そのねじり返しで投げるから左肩の開きは早い。そういう投手は右打者の内角を狙えば死球になるような軌道でボールが抜けるから、どうしても外角主体の配球になる。しかし、山田のストレートは低めに伸び、右打者の内角にも正確にコントロールされる。不思議である。
この大会の球速はMAX143キロ程度で、変化球は125、6キロのスライダーに100キロ台前半のカーブがあり、打者近くで小さく落ちるフォークボールらしく球も散見できる。しかし、主体になるのはストレート。技巧派の趣があるが、実際はストレートで押す本格派というところが「不思議ちゃん」の面目躍如である。
打撃フォームは早い始動でゆっくり左足を回し上げる一本足打法。グリップを胸のあたりに置いて構え、バットを引いたときこのグリップを中村紀洋(楽天)のようにベルト付近まで下げ、打ちにいくときに肩まで上げるというクセの強さ。体重移動の際、上半身も下半身もできるだけ大きい動きは排除するというのが打撃技術の鉄則だが、山田はそういうことに頓着しない。思い切り反動をつけてフルスイングする。
山梨学院大付、PL学園戦で1本ずつ、さかのぼる岐阜大会決勝でも1本ホームランを打っているので「3戦連発」とスポーツ紙には紹介されていた。ちなみに、岐阜県の選手が選手権で2本以上ホームランを打つのは初めてである。
岐阜県勢としては70(昭和45)年の岐阜短大付以来となる準決勝進出で、今日の日本文理戦を勝ち上がれば56年の県岐阜商以来の決勝進出になる。かつての強豪県は再び満天の輝きを取り戻すことができるだろうか。
posted by koshien2009 |09:40 |
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2009年08月22日
8月21日 準々決勝
花巻東 7-6 明豊
レポート 小関順二
ここまで当ブログで花巻東の超高校級左腕・菊池雄星(左投左打)のことに触れなかったのは、1、2回戦で見た印象が微妙だったためだ。
センバツのときは“20年に1人”の逸材と書いても違和感がなかった。しかし、長崎日大戦、横浜隼人戦の菊池は悪すぎた。
<そこには、ヒジを最初からまとめてテークバックに入る菊池がいた。 こんなフォームの菊池は見たことがない。
バックスイングで腕が振れないから、投げに行くときは腕を押し出すような形になる。(中略)ストレートは左打者の内角方向に抜け、低めは今春のセンバツのときのような伸びがない。
それは二回戦の横浜隼人戦でも同様だった。
「ヒジを早くまとめる」「バックスイングで腕を振らない」――今、肩が痛いのか、少し前まで痛かったのかはわからないが、それは肩の負担を軽くしようとする意思の表れのようにも見える>
これは、横浜隼人戦が終わった8月17日に書いた別原稿からの抜粋で、「左肩痛」とも書いた。
よくないフォームの原因は「肩甲骨の下の背筋痛」だったわけだが、肉体的な変調が本来のピッチングをさせなかったことは、分かった。
この試合について書こう。明豊が河野凌太の犠牲フライで1対4にして、さらに2死一塁で攻め立てようとしているとき、花巻東の投手交代が告げられた。
今大会最大の注目選手にして、10月29日に行われるドラフト会議では8球団の指名が重複するのではと言われる逸材が、突然リタイアしたのである。ネット裏は騒然となった。
中継しているラジオは、再三腰に手をやる菊池の変調を告げていた。
4回表、バントをして一塁に駆け込んだとき一塁手と交錯して転倒しているので、そのとき腰を打ったんじゃないか、というのがネット裏の意見だった。
「甲子園に入ってから皆さんに注目されて、肉体的な疲れや精神的なストレスが溜まったんじゃないでしょうか」
「次の試合は大丈夫ですか」と聞くと、この花巻東の関係者は「トレーナーと相談しなければはっきりしたことは言えませんが」と断った上で、「休ませれば大丈夫だと思います」と言った。
当の菊池はナインに「あと2試合、俺に投げさせてくれ」と明るく言っているので、とりあえず大丈夫かなと思っているが、この変調で優勝戦線が混沌としてきたことは間違いない。
話を明豊戦に戻すと、2番手・猿川拓朗はMAX144キロを記録しながら変化球のコントロールが定まらず、5回3分の1を投げ与四死球5(死球1)、被安打8、失点5と厳しい状態だった。
明豊打線はこれをよく攻めたがあと1本が出ず、九州勢の3大会連続4強進出を「確定」できなかったのは残念である(都城商がまだ残っている)。
posted by koshien2009 |12:02 |
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2009年08月21日
準決勝組み合わせ
8月23日
第一試合
帝京-.県岐阜商 の勝者
vs.
日本文理-立正大淞南 の勝者
第二試合
花巻東
vs.
都城商-中京大中京 の勝者
posted by koshien2009 |14:46 |
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2009年08月21日
8月20日3回戦
明豊 8-6 常葉橘
レポート 小関順二
この試合、明豊各打者の意識の高さに注目した。
3番の今宮健太(右投右打)なら、打ちに行きながら体が外に逃げるほどの踵重心とアウトステップに特徴がある。しかし、この日は好投手・庄司隼人(右投左打)攻略のため、そういうバッティングが大きくなる要因をすべて封じ込めた。
たとえば、西条の秋山拓巳と対戦したときにくらべると始動がだいぶ遅くなった。
僕は打者の始動ポイントを早い順に1、2、3と3つに分けて見、観戦するほぼ全選手を記録している。
好打者の手っ取り早い鑑定法が始動ポイントにあると信じているからだ。もちろん、始動が遅い選手のほうが安定して打てる。
今宮は初戦の興南戦(島袋洋奨と対戦)が3の始動、2回戦の西条戦(秋山と対戦)が2の始動と変わっている。
それは今宮の中で、島袋のほうが攻略が難しいと思ったからに他ならない。そして、この日の常葉橘戦は3の始動で臨んでいる。
「力負けしないようにフォームを変えました。プライドより試合に勝つことを優先しました。これからも好投手との対戦が続くので、そうします」(今宮)
「庄司のストレートは思ったよりきていました。打つタイミングは個人個人が考えましたが、低めのボール球は振らないというのと、鋭く叩くということはチーム全体で決めて臨みました」(河野凌太)
いかに庄司攻略のためにチーム全体で考えたか、2人の言葉からもうかがい知れる。
試合のポイントは9回表にあった。
6対5で常葉橘がリードし、明豊は2番・砂川哲平からの攻撃という局面。砂川はこの試合、ホームランが出ればサイクル安打という働きをしているの庄司は細心の注意をもって攻めるべきだったが、スライダーを2球続けて2球目を三塁打されている。
ここで迎えるのが、庄司が「対戦したかった」と大会前から意識していた今宮である。試合後、庄司はこんなことを言っていた。
「自分(庄司)のことを知っているかどうか知らないですけど、自分の存在を知らそうと思った」
この今宮に庄司は全球ストレートを投げた。
①145キロ(ファール)
②146キロ(ファール)
③147キロ(ボール)
④146キロ(ファール)
⑤146キロ(ファール)
そして6球目の146キロを今宮は軽く合わせてライト前に同点タイムリーを放つのである。
全球145キロ以上のストレート、それも全球外角に集中した。
1球でいいからスライダーを入れるか、ストレートでも内角にねじ込めば結果は違ったものになったと思うが、チーム勝利より今宮との勝負を優先したのだから庄司は満足しただろう。
この試合が素晴らしかったことは言わずもがなである。
打者走者の各塁到達を見ると、全力疾走の基準「一塁到達4・29秒未満、二塁到達8・29秒未満、三塁到達12・29秒未満」をクリアしたのが、常葉橘が3人(6回)、明豊が4人(4回)と拮抗している。よく走ったと評価していい数字である。
さらに素晴らしいのがアンチ全力疾走(一塁到達5秒以上、二塁到達9秒以上、三塁到達13秒以上)が少なかったことだ。
常葉橘は0人で、明豊は1人(2回)しかいなかった。この走り合いと言ってもいい試合で、1人だけ2回もタラタラ走っていたのが今宮である。
打者走者としてだけでなく、塁上の走者としても今宮は走らなかった。
四球で出塁した1回表、阿部弘樹の右前打で二塁走者の砂川が生還。このとき、右翼手のホーム返球は暴投になっているので今宮は三塁まで走らなければいけなかったが、二塁ベース上で仁王立ちになって三塁へ向かう気配すらなかった。
今宮に注目するスカウトは多く、投手としてより二塁や遊撃手としての才能を買われてプロ入りする好素材だと言われている。
そういう選手が甲子園という大舞台で全力疾走を怠り、1つ先の塁を狙わないというのは信じられない。
沖縄で行われた春の九州大会で今宮とは取材で楽しく話をさせてもらい、このとき「ドラフト近くになったら誉め殺しするくらい誉めるから、今は悪口をいっぱい書くよ」と言った。
それは中島裕之(西武)ばりの大きいフォームで打つバッティングを念頭に置いて言った言葉だが、この試合では走塁に注文をつけざるを得なかった。
最も難しいバッティングを改造できたのだから、今度は走塁を見直してもらいたい。
posted by koshien2009 |10:47 |
三回戦 |
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2009年08月20日
8月21日
第一試合
明豊(大分)vs.花巻東(岩手)
第二試合
日本文理(新潟)vs.立正大淞南(島根)
8月22日
第一試合
帝京(東東京)vs.県岐阜商(岐阜)
第二試合
都城商(宮崎)vs.中京大中京(愛知)
posted by koshien2009 |17:00 |
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2009年08月20日
8月19日 3回戦
帝京 4-3 九州国際大付
レポート 小関順二
優勝候補同士の一戦は手に汗握る好ゲームとなり、最後まで目が離せなかった。
2年生右腕の鈴木昇太が帝京の先発と発表されたとき、「スキが生まれた」と思った。
ベスト8進出を懸ける試合、さらに戦力差がない相手ならエースを先発させるのがセオリーである。戦力過剰なチームにありがちな迷いだと思った。
4、5年前の巨人がそうだった。
選手起用に「お前と心中する」という覚悟が見えず、昔の名前で生きる大物も、若手の成長株も、日々存在感を薄めていった。
使える選手が多いことが必ずしもプラスにならないことを、巨人は身をもって教えてくれたはずだ。
しかし、前田三夫監督は修正が早かった。
3回表、九州国際大付の先頭打者・三好匠(1年・右投右打)がヒットで出塁すると、間髪を入れずエース・平原庸多(右投右打)をマウンドに送った。これで帝京ナインは1つになれたと思う。
失点しても、納得できる失点があるということだ。
試合は3回裏に帝京が1点を先制すると、九州国際大付が6回に1点、7回に2点を取って逆転し、8回裏には帝京が2点を取って同点とし、9回裏に帝京が金子竜也のタイムリーでサヨナラ勝ちするというめまぐるしい展開を見せる。
これらの得点に多く絡んだのがエラーである。
エラーは試合をだらけさせ、興を殺ぐが、この日のエラーは「した」というより、「させれられた」ものばかりで納得ができた。
6回表、九州国際大付は1死から3番・国枝頌平が三塁打を放ち、反撃の狼煙を上げる。
この打球がもの凄く、前進するライト・有賀ナビルの頭上を上昇するミサイルのように越えていった。4番・榎本葵が三振してピンチは脱したかと思われたが、平原の暴投で国枝が生還して同点、と軽く書くわけにはいかない。
暴投といっても好捕手、原口文仁が少し後方に逸らしただけなのである。普通の走者なら絶対に走ってこない。
しかし、国枝はそのわずかなスキを突いて、猛然と駆け込んで1点をもぎ取った。勝利への執念である。
7回の九州国際大付は、死球で出塁した走者をバントで送って1死二塁とし、9番・三好がセンター前に弾き返して勝ち越すが、送球間に二塁を狙ってアウトになり、反撃もここまでかと思われた。
しかし、ひと息ついた平原の初球スライダーを1番・小林知弘が振り抜いてレフトスタンドにぶち込み、得点差を2点とする(3対1)。
平原をマウンドから引きずり下ろした九州国際大付に、今度は勝利へのプレッシャーがのしかかる。
8回裏、帝京は1死から1番・金子が中前打で出塁すると、2番・田口公貴が三塁前にバントをするが三塁手・榎本が一塁に高投して、チャンスは一、三塁と広がる。
ここから九州国際大付は自滅していくのだが、それは選手個々の怠慢プレーというより、帝京の存在感が九州国際大付の上にのしかかってエラーを誘った、という雰囲気なのだ。
打席に平原が立った1死一、三塁の場面、捕手・河野元貴の捕逸で1点差となり、平原が四球で歩いて1死一、二塁とチャンスはさらに続く。
ここから納富の二塁けん制悪送球、(二、三塁になる)河野の三塁けん制悪送球と続き、帝京は労せずして同点とするのだが、九州国際大付バッテリーの立ち居振る舞いから、中軸の平原と原口まで回したくないという強迫観念が痛いほど伝わってきた。
それこそが強打・帝京が放つオーラでありプレッシャーだったのではないか。
9回裏には2四球とヒットで1死満塁とし、金子がこの日3本目となるヒットで三塁走者を迎え入れ、帝京が劇的なサヨナラ勝ちを決めた。
強打の優勝候補が土俵中央でがっぷり四つに組んで投げを打ち合ったという一戦。
今大会ナンバーワンといってもいい好ゲームだった。
posted by koshien2009 |05:00 |
三回戦 |
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2009年08月19日
8月18日 2回戦
智弁和歌山 8-5 札幌第一
レポート 小関順二
8回裏が終わって札幌第一が強豪・智弁和歌山を5対4と1点リードして最終回に突入、甲子園球場は異様な雰囲気に包まれた。
智弁和歌山の7番・北畠良真が左前打で出塁し、さらにバントで二進すると、9番・途中出場の喜多健志郎が左中間を破る二塁打を放って同点。
球場はやんややんやの大歓声に包まれ、スタンドは智弁和歌山への応援一色に染まる。天理、龍谷大平安、関西学院、滋賀学園が敗れ、残っている近畿勢はPL学園と智弁和歌山の2校だけ。ここで負けてもらっちゃ困る、というファンの思いが波のようなうねりとなって伝わってきた。
1死二塁と智弁和歌山の攻撃はまだ続く。
1番・大畑勇が左前に落とし(記録は二塁打)一、三塁とチャンスは広がり、2番・岩佐戸龍はストレートの四球で満塁。この場面で打席に立ったのは2年の西川遥輝(右投左打)。
昨年から左手首の痛みが消えず、右手主体のバッティングを強いられているが、初戦は4打数2安打、この試合はここまで4打数1安打と結果を残している。
さらに偉いのは、手首が万全でなくても足は関係ないと言わんばかりに、第1打席の一塁ゴロ4・17秒、第2打席の右前打4・18秒、第4打席の二塁エラー3・80秒と、全力疾走を怠っていないことだ(第3打席は一直)。
走塁より強打に特徴のある智弁和歌山打線にあって、脚を使える選手が全力疾走でチームを引っ張っている。攻撃パターンにバリエーションを作る上でも、こういうプレースタイルは貴重である。
この西川が1死満塁の場面で打席に立ち、2-2からのスライダーをジャストミートすると打球はライト線を襲い、二、三塁走者が生還し、勝負はほぼ決した。
昨年、高嶋仁監督の謹慎3カ月という逆風があり、チーム作りが遅れても、強いチームが甲子園大会期間中に出来上がる。この復元力の強さには脱帽するしかない。
エース・岡田俊哉(左投左打)は体が大きくなった。1年のときが167センチ、2年のときが177センチ、そして今は181センチになった。
大きくなったことによってボールに一層の角度が生まれ、力まなくても強いボールが投げられるため、ゆったりと大きいフォームで投げることに岡田本人、迷いがなくなったような気がする。
ストレートは136、7キロが多いが、今日は8、9回に140キロ台を連発させ、それ以前とのスピード差でチェンジアップ効果を生んでいる。 さらにいいのがスライダー。初戦でホームランを打っている松浦昌平を第2、3打席、連続三振に斬って取った球が縦割れのスライダー。続け球でも打てないと踏んでのスライダー攻勢は見事と言うほかない。
不安はヒジが十分に使えない投球フォームにある。“アーム式”というほどヒジは伸び切っていないが、立ち方が緩い。このフォームだと腕を振り下ろすというより、腕で押し出す形になる。低めより高めが伸び、さらに左打者の内角を狙えば死球になる軌道でボールが抜ける。
この悪癖が今日は守備面でも出た。
2回無死一塁の場面で、5番・富田嘉樹は投手前にバントを敢行し、これを捕った岡田は判断よく二塁に送球、と思った球が左側の高めに抜けて野選になってしまう。
さらに満塁になって迎えた7番・坂本優樹(右投左打)には、2-1から投じた球が高めに抜けて暴投になり1点を献上。この回許した2失点のうち、死球、野選、暴投(捕逸)に絡んだのは、コントロールとディフェンスによさがあるだけに残念だった。
しかし、悪癖を抱えながら初戦の滋賀学園戦が2安打完封。この日は失点5(自責点2)ながら完投し、13、12と2ケタ奪三振を記録して、チームを勝利に導いているのは立派である。
伝統的に進学する選手が多い中、岡田はプロ志向が強く、高嶋監督もそれを後押ししていると聞く。
秋のドラフトでは3位くらいの順位で指名がかかりそうである。
posted by koshien2009 |11:34 |
二回戦 |
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2009年08月17日
8月17日 2回戦
常葉橘 7-6 高知
レポート 小関順二
今大会は驚かされることが多い。札幌一の強肩捕手、松浦昌平の二塁送球1・76秒(イニング間)がその最たるものだと思っていたら、この試合、2つの超絶タイムが記録された。
まず、常葉橘の2番打者・小泉泰樹(二塁手・右投左打)が第3打席でバント安打を決めたときの一塁到達が3・55秒という速さだった。
試合後、お立ち台に立った小泉に、「タイムは計ったことある?」と聞くと、冬場にあるという。「一塁到達は何秒くらい?」とさらに聞くと、3・7~3・8秒くらいだという。
第3打席のバント安打が3・55秒だった、そう言うと人懐っこい笑顔で、「そうですか」と嬉しそうだった。
日常的な練習の中で、走塁にはどう取り組んでいるのだろう。
◇自分の目で判断しろ、◇1つ先の塁を狙え、◇一塁への駆け込み(全力疾走)ができない者はグラウンドを去れ
こういう教えが浸透しているらしい。しかし、黒沢学監督は必要以上に口出しはせず、かなりの部分、選手の自主性に任せているという。
これを聞いたとき、06年の春、夏甲子園で旋風を巻き起こした熊本工を思い出した。
藤村大介(現巨人)をはじめとする俊足集団は監督の指示より、自分たちで戦略を立て、グラウンドの中でそれを実践した。
監督の権限が絶対的な高校野球では稀有な例なので驚いたが、常葉橘も3年前の熊本工に近いメンタリティを持っている。
そういう環境の中から藤村、小泉という快速ランナーが出現するのだから面白い。
なお、小泉は第2打席で遊撃安打を放っているが、そのタイムは計測することができなかった。遊撃手の動きを追っていたためで、小泉に目を移したときは既に一塁ベースを駆け抜けていた。
打者走者の一塁到達、それも速い選手の到達に合わせて目を移したつもりだったが、間に合わなかった。恐ろしい俊足選手である。
以下に紹介するのは、今日までに記録された各塁到達のベスト5である(二塁打は7秒台に絞ったので4人)。
[一塁到達ベスト5]
①小泉 泰樹(常葉橘) 3・55秒
②松田 智宏(県岐阜商) 3・62秒
③菊池 雄星(花巻東) 3・79秒
④早川 顕一(常葉橘) 3・85秒
④山村 悟(樟南) 3・85秒
④国友 賢司(中京大中京)3・85秒
[註]全員バントでの記録
[二塁到達ベスト4]
①九重路祐貴(伊万里農林)7・43秒
②脇田 徹也(作新学院) 7・66秒
③小泉 泰樹(常葉橘) 7・85秒
④西川 遥輝(智弁和歌山)7・95秒
[三塁到達ベスト5]
①大槻 和史(PL学園) 11・55秒
②吉原光一郎(都城商) 11・59秒
③佐野 太地(東北) 11・67秒
④伊藤隆比古(中京大中京)11・80秒
⑤黒木 秀太(関西学院) 11・81秒
⑤小番 大輝(明桜) 11・81秒
小泉が一塁、二塁両部門に顔を出しているのを紹介したくて、二塁到達、三塁到達タイムも併せて紹介した。
この他に驚いたのが捕手の二塁送球タイムで、これは常葉橘の7回裏の攻撃のとき目撃できた。
2死一塁(一塁走者は内野安打で出塁した稲角航平)の場面、つまりイニング間ではなく実戦での話である。
2番手投手・瀧平祥史の投じた球は高めに浮いた。これを中腰になりながら捕球した高知の木下拓哉(右投右打)は、捕るやいなや真下に叩きつけるような腕の振りで二塁に送球すると、ストップウオッチの画面には実戦のものとしては初体験の1・83秒という数字がはじき出された。もちろん、一塁走者はアウトになっている。
二塁送球タイムの今大会ベスト3も紹介しよう。
[二塁送球ベスト3]
①松浦 昌平(札幌一) 1・76秒
②木下 拓哉(高知) 1・83秒
③竹沢 大貴(聖光学院 1・86秒
[註]1・8秒台だけ紹介した。全員イニング間での記録
木下は8月10日の降雨ノーゲームになった如水館戦でもイニング間1・87秒という記録を残しているので、松浦と並ぶ大会屈指の強肩捕手と形容してもいい。
年々、ストップウオッチで数値化できる各塁到達、あるいは二塁送球タイムは速くなっている。素晴らしいことではないか。
posted by koshien2009 |20:53 |
二回戦 |
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2009年08月17日
いままでなかった甲子園の本が登場します!
『検証 甲子園2009』 9月発売予定!
第91回全国高等学校野球選手権大会を、地方大会より徹底取材。
ブログの観戦記だけじゃない。強豪校の選手・監督の独占インタビュー、金の卵100人のリスト、この夏の感動のドラマなどなど、盛りだくさんな内容を予定しています!
お楽しみに!
posted by koshien2009 |18:32 |
【検証甲子園NEWS】 |
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