2009年07月29日
7月29日 東東京大会 決勝 (神宮球場)
帝京 24-1 都雪谷
レポート 小関順二
歴史的な試合を見てしまった。
夏の都道府県大会決勝戦でこれほどの大量得点は他に例があるのだろうか。さらに得点差23もすごい。速報のネット情報では新記録と紹介されていないのでまだ凄い記録はあると思うが、匹敵する試合はなかなか思い浮かばない。
◇08年・福井大会決勝……福井商19-2北陸
◇07年・南北海道大会決勝……駒大苫小牧15-0函館工
◇06年・福岡大会決勝……福岡工大城東14-1柳川
24対1という記録的な大量得点試合にもかかわらずダレた試合にならなかったのは、帝京が大量得点に気が緩んでの走塁ミスやバントミスをしなかったからである。
1回表に大量6点を入れた時点でこのゲームの勝敗はほぼ決まっていた。しかし帝京は攻撃の手を緩めない。
2回以降、送りバントは7、8回、スクイズは4、7回、盗塁は4、6、8回に決め、失敗はなし。帝京はとくに格下相手のとき、甲子園大会でもカサにかかった足攻を仕掛け、それが裏目に出て(失敗し)負けることがよくある。
しかし、この日は違っていた。足に溺れず、確実性のある攻撃パターンを心がけ、着実に1点を奪う戦術を徹底したのである。
精神的なタフさなら、打者走者の一塁到達タイムが参考にできる。
◇07年夏・選手権(駒大岩見沢戦)
タイムクリア1人(2回)
アンチタイムクリア4人(6回)
◇09年・東東京大会決勝(雪谷戦)
タイムクリア4人(5回)
アンチタイムクリア5人(5回)
タイムクリアとは打者走者が「一塁到達4・29秒未満、二塁到達8・29秒未満、三塁到達12・29秒未満」で各ベースに到達したことを意味する僕の造語である。
アンチタイムクリアとは「一塁到達5秒以上、二塁到達9秒以上、三塁到達13秒以上」かけて各ベースに到達することを意味する、これも僕の造語である。
帝京はまったくやる気のない走塁も目立つが、2年前と大きく違うのはタイムクリアの人数である。
凡ゴロでも手を抜かずに全力疾走することは、すなわち精神力の充実を物語るのではないか。
ちなみに、3回戦・墨田工戦でのタイムクリアは1人(1回)だから、どの試合でも精神力が充実しているとは言えない。
この天の邪鬼ぶりは帝京の個性と言ってもいいかもしれないが、決勝戦の帝京が充実していたことは間違いない。だから歴史的な大量得点差でも試合がダレなかったのだと思う。
試合がダレなかったのは、帝京の個人技が冴えていたこともある。
エース・平原庸多(右投右打)がこの試合で記録したMAXは146キロ。体重移動の中にゆっくりした部分がないので、トップが浅く、ストレートはリストで押さえ込まないと高めに浮きまくるが、しっかり押さえ込まれたときは「ドラフト上位候補!」と言いたくなるほど低めによく伸びある。
ただし、平原がいいのはピッチングよりバッティングである。
5回に放ったソロホームランは、平原の打者としての素質のよさを遺憾なく物語っている。
最短距離でヘッドを出し、これをボールの下に潜り込ませ、打球に逆スピンをかけるのである。このホームランの打球は、レフトスタンド中段まで飛んで行った。
もう1人紹介したいのが捕手の原口文仁(右投右打)である。
帝京の試合は割とよく見ているが、原口がイニング間の二塁送球で2秒を切ったシーンはあまり見ていない。
ところがこの日は、1回裏に雪谷の1番打者・里見隆暁が敢行した二盗を2・08秒という好タイムで刺し、3回裏が始まる前のイニング間の二塁送球では1・88秒という驚くべきタイムを記録している。
1・8秒台なら3日前、伊丹西の鎌戸亮如(右投右打)がイニング間で1・85秒という好タイムを出しているが、サイド気味の腕の振りのためボールは高く浮き、これを打者にタッチするにはさらに0・4秒程度要するので、実質的には2・25秒程度の肩ということになる。
しかし、原口の送球は常に低めにコントロールされているのでタイムにロスがない。ドラフト候補という称号を与えることに何の戸惑いがあろうか。
甲子園大会では花巻東、九州国際大付とともに優勝候補に挙げられるはずだが、帝京が優勝するためには今日のような堅実な攻撃も必要になる。
カサにかかった攻撃は時に圧倒的な点差の勝利につながるが、脇の甘さもつくる。ワンチャンスをものにして投手陣を含めたディフェンス陣で守り切る、そういう試合もたまには見てみたい。
posted by koshien2009 |22:02 |
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2009年07月19日
185㎝の大型ショート・小山台の3番、小保方内野手
参考記事:総合工科、小山台 都立高校それぞれの挑戦(7.18update)
撮影:鷲崎文彦

posted by koshien2009 |11:51 |
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2009年07月18日
7月18日 東東京大会 3回戦 (神宮球場)
国士舘 5-0 青稜
レポート 小関順二
センバツの初戦で福知山成美と対戦し、延長15回の末に2対5で敗れたものの鮮烈な印象を残した国士舘。
この国士舘を語るときに忘れてならないのが全力疾走である。
打者走者の「一塁到達4・29秒未満、二塁到達8・29秒未満、三塁到達12・29秒未満」が本コラムで全力疾走をいうときの基準タイム。
福知山成美戦では4人(10回)がタイムクリアを果たしているが、今日はどうだったのだろう。
まずは1番・高橋直樹(右翼手・2年)が記録したセンバツ時の一塁到達タイムを見てみよう(○内数字は打席数)。
①三安打3・91秒、②投安打3・82秒、③三安打4・06秒、④二ゴロ4・06秒、⑥中前打4・31秒、⑦二ゴロ3・98秒
チームのタイムクリア10回のうち半分が高橋のものであることがわかる。
まさに「走る国士舘」を象徴する選手である。
しかし、今日の青稜戦では高橋以上に目立った選手がいる。それは3番・福田元基(左翼手・3年)である。
◇高橋……①一ゴロ4・26秒、②二ゴロ4・06秒、③遊ゴロ3・95秒
◇福田……②バント3・70秒、③バント安打3・69秒、④三塁打11・16秒、⑤三ゴロ3・73秒
この福田がセンバツでタイムクリア0だったとは信じられない。それもそのはずで、7打数で4三振、1右飛、1三直、1三ゴロ(4・36秒)というのがセンバツでの全内容である。足の見せ場が1回しかなかった。
ちなみに、4三振のすべてが超高校級右腕・長岡宏介の変化球を空振りしたもので、このときのトラウマがまだ残っているのではないかと思えるときがある。
どの打席でもバントの構えから入り、第2、3、5打席では実際にバントをやっている。
第2打席は無死一塁の局面だから納得できるが、第3打席は先頭打者、第5打席は2死二塁の局面である。弱気と言われても仕方ないし、センバツのトラウマと言われても返す言葉がないのではないか。
また、第4打席の三塁打はいわゆる“走り打ち”で打ったもので、足の速さがマイナスになっている。
「脚力は超高校級、バッティングは普通」――こんな評価しか得られないことに福田はもっと腹を立てるべきである。
そして、腹が立ったらバッティングを見直すべきである。
第2試合も面白かった。都立小山台のスタメン全選手の体格が私立の強豪校並みに素晴らしかったことにまず驚いた。
3番(遊撃手)小保方慎治 187センチ68キロ
4番(一塁手)馬庭 拓也 184センチ77キロ
6番(右翼手)小林 裕貴 179センチ67キロ
7番(中堅手)山岸 航 185センチ77キロ
8番(三塁手)丸澤 賢人 178センチ71キロ
「大きければいい、小さければダメ」ということはないが、全国的に見ても私立校には大型選手が多く、公立校には小さい選手が多いというのが普通だ。
偏差値が高い都立の同校でよくこれだけ大きい選手を集められたなと感心した。この中でも特に興味を引かれたのが小保方である。
打席の中で体もバットもよく動き、安定して打てる形を持っていないが、打球の強さやしなやかな脚力、さらに遊撃手としてのフィールディングやスローイングには豊かな素質を感じた。もっと注目されていい選手である。
posted by koshien2009 |23:14 |
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2009年07月18日
7月18日 東東京大会3回戦
都総合工科4-3足立学園 (神宮第二球場)
都小山台8-1都江戸川(8回コールド・神宮球場)
レポート 鷲崎文彦
東東京大会は12のシード校のうち6つが都立。中でも注目されているのが、春の県大会で修徳、桜美林、八王子という名の通った私立を撃破してベスト4に進んだ小山台と、同ベスト8で創部4年目ながらシード権を獲得した総合工科。
小山台は身長180センチ台の選手を4人擁する、私立にも引けを取らない大型チーム。
総合工科は99年の東東京大会で都城東を初優勝させた有馬信夫監督が昨秋、指揮官に就いている。
この日のそれぞれの試合から感じた両校の印象は対照的なものだった。攻の小山台、守の総合工科――。
小山台打線は1番にピッチャーの高辻、2番にキャッチャーの山本という常識にとらわれない打順。
打者は下位までみな、しっかりとバットを振ってくる。この試合でも6、7、8番が外野手の頭を越すような当たり(ひとつは相手ライトの好捕によってアウトだったが)を放つなど、春の県大会で桜美林から10得点、八王子から11得点を奪ったのも偶然ではないと感じさせた。打力アップの練習には力を入れているのだろう。
試合自体は6回を終わって2対0と楽な展開には持っていけなかった。理由はそこまではチャンスでクリーンアップに1本が出なかったこと。
185センチの大型ショートとして注目していた3番の左打者・小保方も7回の第4打席で内角の球を打って1、2塁間を抜いていったものの、オープンスタンスの構えから右足を上げて着地するまでの動作の中で少し腰が引けてしまうせいか、外角の球には合わせるような振りしかできていなかった。
守備範囲が広く、捕球から投球までの動きもコンパクトで素材としては楽しみ選手だけに今後の成長に期待したい。
一方の総合工科は最後までもつれる接戦となったが、随所で好守備を見せて相手に流れを与えなかった。内野手がヒット性の当たりを飛びついて捕るだけでなく、ピッチャーのそつないベースカバーや、相手打者や状況によって変える守備位置の取り方。9回に大きなホームランを放った足立学園の4番・宮城は左のスラッガーで、6回の彼の3打席目のときにはセンターが右中間のほぼ真ん中にポジションを取っていた。選手に自分で考えることを求める有馬監督の指導が短期間で浸透していることをうかがわせた。
野球のスタイルは違っても目指すところは同じ。まだ時間はかかるだろうが、先に夢舞台に辿り着くのはどちらか。
posted by koshien2009 |19:37 |
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