2009年07月20日
7月19日 千葉県大会 四回戦 千葉県野球場
八千代東3-2東海大望洋(延長12回)
レポート 小関順二
関東を代表する超高校級左腕、真下貴之(東海大望洋)が千葉大会4回戦で姿を消した。それも「いかにも」という点の取られ方で。
8回を終わった時点で東海大望洋が2対0とリードし、真下の投球内容は被安打1、奪三振13、失点0という完璧な内容。誰が見たって勝利は東海大望洋が手中に収めていた。9回も二塁ゴロ、投手ゴロと打ち取り、3番高橋勝之は既にツーナッシングと追い込み、八千代東の運命は風前の灯。まさかこのあとドラマが待っているとはほとんどの人は思わなかったのではないか。
ここで真下は自信のあるストレートで三振を取り、ガッツポーズを決めようと思ったはずである。雑誌のインタビューで真下はこんなことを言っている。
「まだ狙われて真っすぐを打たれるので、狙われても打たれない投手になりたい」(『報知高校野球2009・7-No.4』)
ところがストレートはことごとく高めに浮いて、高橋に四球を許してしまう。1球カーブを挟めば、高めのボール球でも八千代東打線は手を出したはずである。それまでの13奪三振の中には、高めストレートのボール球を空振りしたものが多く含まれていたからだ(ストレートの空振り三振は9つ)。
勝利を目前にした真下は八千代東が昨年秋、県4強に進出した強豪校だということを忘れていたのだと思う。また、バックスクリーン上に立てられた3本の旗がライトからレフトへ吹く風のため、千切れんばかりにはためいていた光景も見えていなかったはずだ。
ランナーを一塁に置いて打席に入った4番上條優太(左投左打)の打球は風にも乗ってぐんぐん飛距離を増し、何とレフトスタンド前列に飛び込む同点2ランホームランになってしまう。僕の前にいたスカウト3氏はこの光景を見てから席を立った。
真下のピッチングにも触れると、今日のデキはよかった。「凄い」とか「速い」というより、「ほれぼれする」という形容のほうがぴったりくる。腕の振りは真上。右肩の早い開きを抑えてステップ幅を広く取り、マウンドの傾斜に飲み込まれながら体全体をしっかり前に乗せていく。プロでタイプを探せば井川慶(阪神→3Aスクラントン・ウィルクスバリ・ヤンキース)が近い。
また、バックネットの真裏から見て気づいたのは、ボールの軌道とフォロースルーで伸びた真下の左腕が重なって見えること。打者の目にもボールの軌道が真下の腕に遮られ、距離感がうまく掴めないのではないか。高めに抜けるストレートにくるくるバットが回る姿を見続け、抜け球に手が出る原因はそれだと確信した。
さて、試合は延長12回表に入る。同点ホームランを打たれた上條を四球で塁に出すと、山本夏幹の投手前の送りバントを二塁に悪送球して無死一、二塁とし、村上浩一の送りバントで1死二、三塁となると、飯田弘之のバントを再び真下が一塁に悪送球し、決勝の1点が入る。この間、ヒットは1本もない。真下が勝手に四球を出して、勝手にバント処理を誤っただけである。
高校野球は1人のスーパースターがいても勝ち続けることは難しい。スター選手が卒業した年に念願だった甲子園出場を果たした高校も過去にはあるくらいだ(長島一茂が卒業した2年後に夏の甲子園大会に出場した立教高が僕の中では印象深い)。独り相撲を取ることの愚かさを真下は思い知っただろうか。
posted by koshien2009 |00:47 |
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2009年07月16日
7月15日千葉県大会3回戦
千葉英和 6-1 千葉経大付
レポート 小関順二
風速10メートルは間違いなく越えていた。
グラウンドの砂が舞い上がり、そのつど試合は中断し、顔や腕に砂の粒がまとまって当たってくるのがわかった。帰りの成田線車中で目尻をこすると、真っ黒な消しゴム滓のようなものがべったりと指の腹にくっついてきた。
こんな劣悪な環境の中で千葉英和の左腕、小川龍也(左投左打)はよく投げた。
試合前のピッチング練習では腕の振りが固かった。ヒジを柔らかく回すというより直線的なテークバックに特徴があり、投げにいくときは腕を振り下ろすというより、腕を押し出すような形。強打の千葉経大付を抑えるのは厳しいかなと思った。
しかし、試合が始まると固いと思ったバックスイングも、押し出していると思った腕の振りも気にならなくなった。ストレートが低めによく伸びてくるのだ。MAX143キロはダテではない。
このストレートより魅力があるのが変化球だ。横変化のスライダーは大小2つあり、小さく落ちるカーブは途中までストレートの軌道に近いうえに打者近くで落ち込むので、真縦に変化するときは手がつけられない。
2回に迎えた2死二塁のピンチでは左打者の川島百年樹に対してカーブで内角を突いて追い込み、大きく外に逃げるスライダーで三振に打ち取った。
キレとコントロールがないとこういう攻め方はできない。
驚いたのが走者を一塁に置いたときのクイック。
ストップウオッチの画面に1・02秒と映し出されたときは押し間違いかと思ったが、その後、0・90、0・94、1・06秒と続いていく。クイックが遅い左腕では異様に速いタイム、というよりストップウオッチを押し続けてきた中で右、左に関係なく最も速いクイックタイムである。
そのくせバント処理はのろのろして、7回の失点は川島の投前バントヒットがきっかけだった。まだまだ成長する余地があるということだ。
小川以外で注目したのは千葉英和の1年生右翼手、立花玲央(右投左打)。シートノックのときから肩の強さが目を引き、ゴロ打球を捕ってからホーム返球までに要する時間は2・69秒。この数字を裏づけるように3回には右前打で三進を狙う一塁走者をレーザービームで刺し、未然にピンチを防いだ。
打者走者としての一塁到達は投ゴロ4・15秒、一失4・25秒と速いが、この速さが仇になり走り打ちから抜け出せないでいる。あと2年でどう変わっていくのか見守っていきたい。
posted by koshien2009 |01:26 |
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2009年07月15日
7月14日 千葉県大会 2回戦
習志野 10-1 柏日体 (7回コールド)
レポート 鷲崎文彦
14日は東海大望洋だけでなく、同じAシードの習志野、Bシードの成田が、県野球場に顔を揃えた。
有力3校の戦い振りを比較してみると、やはりセンバツに出場した習志野が一歩リードしている印象を受けた。
エースの山田は登板しなかったが、先発した伊田は回転のいい目測130キロ中盤のストレートと2種類のカーブで打たせて取る投球ができていた。春の公式戦では山田の登板数を減らし、2番手以降の投手に経験を積ませることに主眼を置いた習志野。伊田は不運なヒットで1点を失うも終始、落ち着いていた。
打線も初回にコンパクトな振りでヒットを集めて6得点。長打は狙わず、つなぎの意識がしっかりと浸透している。また、1年生が4人メンバー入りしているが、この日は3人が途中出場。それぞれ代打、代走、最後の打者のみ登板と、プレイタイムは長くなかったとはいえ選手層も厚くなったのだろう。甲子園春夏連続出場へ視界良好といえそうだ。
一方の成田は背番号1の岡野が5回を無失点に抑えるも、変化球ばかり投げていたのは気になった。ストレートは目測から130キロ台前半だろうが、何か意図があってのことなのだろうか。飛びぬけた選手はいないが、ソツなく得点を重ねる打線がどれだけ投手陣を支えられるかだろう。
習志野の破れたものの、柏日体の2番手で登板した橋(1年生)は見所があった。3月までは中学生だったとは思えない。投手としての素質の良さを随所に感じさせた。
6点をリードされた初回の途中から登板し、6回までに4失点したが、軸足にしっかり体重を乗せてから、ややスリークオーター気味で投げるストレートは目測で球速130キロ前後ながら、球威がある。腕が良く触れているし、リストも強いのだろう。変化球も球速の違う2種類のスライダーを投げていた。習志野の打者が完全に詰まらされる場面もあった。
センスを感じさせたのは4回の4番豊田に対峙した際。追い込んでからそこまで1球も使っていなかったシンカー系のボールを放り、見逃しの三振を奪ったのだ。
センスとはこういうところに出るのだろう。これには豊田も呆然とした表情を浮かべるしかなかった。
マウンド捌きも落ち着いたもので、自分のペースでないと思えばプレートを何度も外し、キャッチャーのサインにも自信を持って首を振る。
堂々とした夏デビュー。今後の成長が楽しみである。

posted by koshien2009 |12:17 |
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2009年07月14日
7月14日 千葉県大会 2回戦
東海大望洋 4-3 天羽
レポート 鷲崎文彦
昨夏、東千葉大会決勝で涙を飲んだ東海大望洋。
「歴史に名を刻む」を合言葉にし、プロ注目のMAX144キロ左腕・眞下(まっか)を軸に甲子園初出場を狙う。
しかし、今夏の初戦は課題ばかりが浮き彫りになる格好となった。
眞下は天羽打線からひと回り目で7つの三振を奪い、6回までは1人のランナーも許さなかった。記録だけで判断すれば、評判通りの投球と言えようが、その内容は決して芳しいものではなかった。
ストレートの球速は目測で130キロ台半ばから後半。それでも187センチから投げ下ろされたボールは威力がある。しかし、投じるストレート、変化球ともに狙ったコースには行ってくれず、高さも打者のベルトより上の球が目立った。低めに決まるような球は数えるほどしかなかった。
投げ終わった後に三塁側に体が流れるときがあり、やや上半身に頼った投げ方をしている。それが制球が安定しない理由の1つだろう。
本人も打ち取ってはいるものの、思うようにコントロールできないことを気にしたのか、6回の頭から常にセットポジションからの投球に変えた。
しかし、これが結果的には裏目に出た。
コントロールされたボールが少し増えたものの、球威が落ちてしまい、目が慣れてきていた天羽の打者に捉えられ始める。
7回1死後、四球で初めてのランナーを出してしまうと、続く打者には初ヒットを浴びる。完全試合どころかノーヒットノーランもなくなった。
いや、それどころではない。東海大望洋のここまでの得点はわずか1。先発のラインナップに7人の左打者が並んだ望洋打線は、相手先発左腕・安藤の投球に翻弄されていた。
安藤の投球の9割はスライダー、カーブを中心とした変化球。しかも左打者には徹底的に球を外に集めたのだ。
初回の攻撃で安藤のパターンを理解した望洋打者は多くが打席のピッチャー寄りに立って、変化球の曲がり端を捕まえにいくが、引っ掛けて内野ゴロを重ねた。
2回にスクイズで1点を先制するも追加点の糸口をつかめずに試合は進行。そうこうしていたときに眞下が7回にピンチを迎え、エラーも絡んで2失点。まさかの逆転を許してしまった。
直後の7回裏から望洋の打者は体が開かないようにとバスター打法で安藤攻略を図るが、かえって消極的なバッティングとなり無得点。8回表には眞下が2本のヒットを浴びた後、スクイズで追加点を許す。
1ー3。
「番狂わせが起こる……」
球場にはそんな空気が漂い出していた。
だが8回裏、安藤の疲れによる制球の乱れと、開き直って強振に出た左打者の右方向への2本のヒット、天羽外野陣の拙い守備が重なり望洋が3得点。優勝候補は、辛くも初戦を乗り越えた。
打線は安藤の粘り強い投球、調子のピークを先に合わせているのだろうということを考慮しても不安の残る内容で、眞下も修正が求められる状況。
苦しいスタートとなったが、限られた時間の中で投打ともにどこまで本調子に近づけられるか。悲願成就は「茨の道のり」か。

posted by koshien2009 |20:53 |
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