2009年08月23日

強豪・帝京を下した投打の柱は“不思議ちゃん”

8月22日 準々決勝 

県岐阜商6-3帝京

レポート 小関順二
 
「この大会で初めて先取点を取られて引き締まりました。相手投手とウチの打線の調子を考えれば序盤で3、4点差をつける自信はあったんです。今の山田(智弘・右投右打)ならちゃんとやれば3点くらいに抑えてくれますから、勝てると思っていました」

 試合後に聞いた、県岐阜商野球部コーチの言葉である。

「相手は帝京さんですから胸を借りるつもりで試合に臨みました」

 こんな言葉を予想していたのだが、予想は大きく裏切られた。

 1回は3安打にエラーも絡めて2点、3回には2四球に3安打の波状攻撃で4点を奪い、冒頭の言葉通り序盤で強豪・帝京を1対6と大きく引き離す。

 これまでの対戦校は県岐阜商が山梨学院大付、PL学園、帝京が敦賀気比、九州国際大付で、帝京の対戦校のほうが下馬評は高く、強いと言われていた。当然、この試合でイニシアティブを取るのは難敵を退けてきた帝京で、県岐阜商は一歩力が及ばないのではと、僕も予想した。しかし、県岐阜商は強かった。

 この県岐阜商の投打の柱が山田智弘である。件のコーチに「山田を不思議ちゃんとノートに書いているんですよ」と言うと笑っていた。変則的な投球・打撃フォームでありながらしっかり結果を残す、そういう様を「不思議」と表現したんです、と補足した。

 投球フォームはスリークォーター。始動でねじり、そのねじり返しで投げるから左肩の開きは早い。そういう投手は右打者の内角を狙えば死球になるような軌道でボールが抜けるから、どうしても外角主体の配球になる。しかし、山田のストレートは低めに伸び、右打者の内角にも正確にコントロールされる。不思議である。

 この大会の球速はMAX143キロ程度で、変化球は125、6キロのスライダーに100キロ台前半のカーブがあり、打者近くで小さく落ちるフォークボールらしく球も散見できる。しかし、主体になるのはストレート。技巧派の趣があるが、実際はストレートで押す本格派というところが「不思議ちゃん」の面目躍如である。

 打撃フォームは早い始動でゆっくり左足を回し上げる一本足打法。グリップを胸のあたりに置いて構え、バットを引いたときこのグリップを中村紀洋(楽天)のようにベルト付近まで下げ、打ちにいくときに肩まで上げるというクセの強さ。体重移動の際、上半身も下半身もできるだけ大きい動きは排除するというのが打撃技術の鉄則だが、山田はそういうことに頓着しない。思い切り反動をつけてフルスイングする。

 山梨学院大付、PL学園戦で1本ずつ、さかのぼる岐阜大会決勝でも1本ホームランを打っているので「3戦連発」とスポーツ紙には紹介されていた。ちなみに、岐阜県の選手が選手権で2本以上ホームランを打つのは初めてである。

 岐阜県勢としては70(昭和45)年の岐阜短大付以来となる準決勝進出で、今日の日本文理戦を勝ち上がれば56年の県岐阜商以来の決勝進出になる。かつての強豪県は再び満天の輝きを取り戻すことができるだろうか。

posted by koshien2009 |09:40 | 準々決勝 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年08月22日

菊池雄星の変調

8月21日 準々決勝
花巻東 7-6 明豊

レポート 小関順二 

 ここまで当ブログで花巻東の超高校級左腕・菊池雄星(左投左打)のことに触れなかったのは、1、2回戦で見た印象が微妙だったためだ。
 センバツのときは“20年に1人”の逸材と書いても違和感がなかった。しかし、長崎日大戦、横浜隼人戦の菊池は悪すぎた。

<そこには、ヒジを最初からまとめてテークバックに入る菊池がいた。  こんなフォームの菊池は見たことがない。
 バックスイングで腕が振れないから、投げに行くときは腕を押し出すような形になる。(中略)ストレートは左打者の内角方向に抜け、低めは今春のセンバツのときのような伸びがない。
 それは二回戦の横浜隼人戦でも同様だった。
「ヒジを早くまとめる」「バックスイングで腕を振らない」――今、肩が痛いのか、少し前まで痛かったのかはわからないが、それは肩の負担を軽くしようとする意思の表れのようにも見える>

 これは、横浜隼人戦が終わった8月17日に書いた別原稿からの抜粋で、「左肩痛」とも書いた。
 よくないフォームの原因は「肩甲骨の下の背筋痛」だったわけだが、肉体的な変調が本来のピッチングをさせなかったことは、分かった。

 この試合について書こう。明豊が河野凌太の犠牲フライで1対4にして、さらに2死一塁で攻め立てようとしているとき、花巻東の投手交代が告げられた。

 今大会最大の注目選手にして、10月29日に行われるドラフト会議では8球団の指名が重複するのではと言われる逸材が、突然リタイアしたのである。ネット裏は騒然となった。

 中継しているラジオは、再三腰に手をやる菊池の変調を告げていた。
 4回表、バントをして一塁に駆け込んだとき一塁手と交錯して転倒しているので、そのとき腰を打ったんじゃないか、というのがネット裏の意見だった。

「甲子園に入ってから皆さんに注目されて、肉体的な疲れや精神的なストレスが溜まったんじゃないでしょうか」

「次の試合は大丈夫ですか」と聞くと、この花巻東の関係者は「トレーナーと相談しなければはっきりしたことは言えませんが」と断った上で、「休ませれば大丈夫だと思います」と言った。

 当の菊池はナインに「あと2試合、俺に投げさせてくれ」と明るく言っているので、とりあえず大丈夫かなと思っているが、この変調で優勝戦線が混沌としてきたことは間違いない。

 話を明豊戦に戻すと、2番手・猿川拓朗はMAX144キロを記録しながら変化球のコントロールが定まらず、5回3分の1を投げ与四死球5(死球1)、被安打8、失点5と厳しい状態だった。
 明豊打線はこれをよく攻めたがあと1本が出ず、九州勢の3大会連続4強進出を「確定」できなかったのは残念である(都城商がまだ残っている)。
 

posted by koshien2009 |12:02 | 準々決勝 | コメント(2) | トラックバック(0)
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