2009年07月30日

智弁和歌山 甲子園でも見せろ「野球王国の意地」

7月29日 和歌山県大会 決勝
智弁和歌山 3-0 南部

レポート 氏原英明

(前項より続く)
 さて、智弁和歌山。ことしの智弁和歌山のウリはなんといっても、エースの岡田俊哉である。
 140キロ台のストレートとカーブ、スライダーを投げ分け、ドラフト候補としても挙げられる逸材だ。
 しかし、智弁和歌山といえば「打線の智弁」なのに、ことしは岡田が目立ってしまうあたり、いつもとは異なるチーム事情を示している。

 過去、智弁和歌山は看板の攻撃力を武器に甲子園を制してきた。
 本塁打数や通算打率を塗り替えたりと、常に「打の脅威」を与えてきた。
 しかし、2000年に金属バットに規制がかかったのが影響しているのか、それからは打線のチームを作れども、優勝を果たすことはできなかった。
 駒大苫小牧の田中将大(楽天)や仙台育英の佐藤由規(ヤクルト)らその世代のNO1投手や好投手とぶつかると、打線が沈黙し、そのまま敗れてしまっていたのだ。

 高嶋監督は常にこういっていた。
「あんな球投げられたら高校生では打てません。お手上げです」
 と。

 かといって、甲子園では勝てないと、さじを投げたわけではないが、そうした話をした時、僕たちはしつこく、高嶋監督にその後の展望を聞いた。
 勝つために必要なものは何か、と聞いていくと、こう答えるのだ。
「田中や佐藤に匹敵するようなピッチャーをウチが持つことでしょう。でも、和歌山にはあんなピッチャー、おりません」。

 そういった中での、岡田の登場だったのだ。
 智弁和歌山の流れを変える投手。そうした予感と期待が岡田にはあった。
 1年生夏から甲子園のマウンドに立ち、常に智弁和歌山の投手陣を支え、最後の夏を迎えていた。

「ここで投げないということは、ことしの智弁和歌山はダメだっていうことやろ。エースが初戦になげないなんて…。」

 1回戦の串本戦。プロ野球のスカウト陣は、岡田の投球を一目見ようと10球団ほどが集まったが、肩すかしをくらった。
 このコメントはあるスカウトが裏切られた心情をストレートに表わしたものだが、智弁和歌山に、岡田に拍子抜けしたのは事実だろう。

  しかし…

  予告先発して臨んだ準々決勝の伊都戦では優勝候補を完封する圧巻のピッチング。
 さらに準決勝・決勝と続けて完封。智弁和歌山に岡田ありと、印象を見せつけたのである。
 岡田は今大会、32回1/3、失点0。42奪三振で、チームを優勝に導いた。

 今までとは違うスタイルでの5連覇達成。ただ、これがそのまま智弁和歌山の強さを表すかというと、必ずしも、そうとは言えない。
 岡田の存在だけで、あっさり智弁和歌山は、県大会を制してしまったのだ。

 そこが滋賀と和歌山の大きな違いだ。
 岡田を見られるというには、個人的には大歓迎である。しかし、その昔は「野球王国」と言われた和歌山県に、対抗する相手がいないのはさみしいのではないか。
 今春の選抜でベスト8入りした箕島が、初戦敗退とは、期待外れもいいところである。

 本大会で、智弁和歌山がそこまで勝ち進のか、まったく想像はできないが、5年連続出場を果たしたチームが、序盤で敗れるようなことがあれば、それこそ、和歌山自体のレベルを疑われる。

 そういう意味では、智弁和歌山には少なくともベスト8進出、それ以上を狙わなければいけない。それだけの使命を持っていると僕は思う。

 近江の3連覇を破って初優勝を遂げた滋賀学園、5連覇を達成した智弁和歌山。
 この二つの結果に、僕はそうした感情を抱いているのだ。

posted by koshien2009 |00:38 | 和歌山県大会 | コメント(34) | トラックバック(0)
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2009年07月13日

串本がみせた「打倒・智弁和歌山」へのヒント

7月13日 和歌山県大会 2回戦
智弁和歌山 9-2 串本 (8回コールド)

レポート 氏原英明
 
 きょうは地元・奈良を離れて、隣県の和歌山へ。隣県とはいえ、電車で乗り継いでいくと2時間はかかる。結構、遠いのである。
 そこまでして、なぜ和歌山に行きたかったかというと、見たいチームがあるからである。
 
 それは、春・夏通じて3度の全国制覇を誇る智弁和歌山だ。
 チームを率いる高嶋監督は監督通算勝利数が56勝と、トップの元PL学園監督・中村順司氏に2差と迫る。
 大記録更新に向けて、周囲の期待も高く、さらに、今年のチームのエースを務める岡田俊哉は今秋のドラフト候補としても注目されている。

 チャンピオンチームの戦いぶり、高嶋監督の采配、エース岡田の仕上がり、など注目すべき点の多い智弁和歌山だが、今回はストレートに1試合の面白み、について書いてみたい。

 野球とは面白いもので、強いチームが必ず勝つとは限らない。特に、短期決戦で行われる高校野球では、強豪校が苦戦したり、足元をすくわれたりすることが往々にしてある。
 力が落ちるといわれるチームが、(言葉は悪いが)弱者の戦いぶりを熟知し、泥臭く戦ったとき、そうしたことが起きるのだ。
 
 きょう、智弁和歌山と対戦した串本はそんな「弱者」の立場を熟知した試合運びを見せてくれた。
 結果的にはコールドで決したが、中盤まで1-4の善戦を見せ、智弁和歌山に冷や汗をかかせた。羽山―浅利の2年生バッテリーによる巧みな配球が、強力智弁和歌山打線をてこずらせたのだ。

 「外の変化球を投げて、甘く入るのが一番怖い。とにかく、インコースを使えと指示しました」
 そう話したのは串本・堀木監督である。右サイドからスライダーとシンカーを投げる羽山は技巧派くタイプだ。
 強力打線を前にすると、変化球で交わしたくなるが、このバッテリーは変化球に固執せず、とにかくインコースを突いたのだった。
 
 えぐって、えぐって、えぐって……である。

 打者を打ち取るためのセオリーとして「内に速く、外に緩く」というのがある。内を意識させたうえで、外で勝負し打者の目線を惑わせるためだ。羽山、浅利の二人は、「これでもか」、「これでもかと」、内へ投げ込んだ。

 4回までは2安打1失点。初回に死球の出塁から守備陣のミスでホームスチールを食らったが、
「1-0が続いた時は少し焦りました」
 とは登板がなかった智弁和歌山・岡田は試合後に話している。

 串本バッテリーの配球は、まさに弱者が強者を脅かすものだった。5回には3失点を喫したが、先頭に打たれた二塁打は打ちとった飛球を右翼手が目測を誤ったところから始まった。
 配球を間違えての失点は一つとしてなかった。

 試合後、羽山を上手くリードした捕手・浅利に話を聞いた。
「智弁和歌山は打線がいいので、バッターの意識をそらそうとリードをしました。羽山のスライダーを生かすために、インコースを使っていこうと考えました」
 大正解である。

 ただ、残念だったのは、そうしたリードから流れを引き寄せながら、ミスが多かったことだ。
 先制点のホームスチールも、5回の3失点も防げない点ではなかった。堀木監督は、
「もっと、アウトを取ることに執念をもってやってほしかったですね。簡単にホームスチールをやられたり、ベースを離れるのが早すぎたりとかそこが悔しい」
 と唇を噛んだ。
 
 打線の方も反撃の形をほとんど見せられず、2安打に終わった。
 5回まで好投を見せても、そうした流れを作ってしまっては試合に勝つことは難しい。結局、6回からは智弁和歌山打線に安打を連ねられた。

「ピッチャーがバテてきたのもありますけど、その中で、声をかけたりとかして、投手を引っ張ってあげられなかったのが、悔しいです」
 と浅利はいった。
 彼を含めて、串本のスタメンには下級生6人が名を連ねていた。若いチームには大きな経験になったであろう。
 そして、彼らの戦いぶりは、5連覇を狙う智弁和歌山打倒に、大きなヒントとなったかもしれない。

 弱者が強者に勝つためには、「内に速く、外に緩く」、である。

 

posted by koshien2009 |23:06 | 和歌山県大会 | コメント(2) | トラックバック(0)
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