2009年07月26日

郡山・森本監督の最後の試合で見せた「天理の底力」

7月26日 奈良県大会 決勝
天理 7-2 郡山

レポート 氏原英明


 奈良県はついに決勝戦。対戦カードは私学の強豪・天理と伝統校・郡山が相対した。6年ぶりのカードとなったが、僕はこのカードをいろんな意味で注目していた。

 まず、ひとつめは郡山高校の監督を務める森本達幸氏が、この大会を最後に47年の指導者生活にピリオドを打つということ。
 幾多のプロ野球選手を輩出し、奈良県公立校の目標の的となるまでチームを作り上げた森本監督が、この最後の舞台をどういう形で終えるのか、注目していた。
 いつもは、大手新聞記者の地方部と地方新聞記者しかいない奈良大会だが、きょうばかりは50人を超える報道陣が押し寄せ、名将の最後を注目した。TV朝日にいたっては栗山氏がくるほどだった。

 そして、もうひとつの注目は、そうした「森本フィーバー」の中、天理がどのような戦いを見せてくれるかだ。
 私学であり、選手も集めているとなると、悪役的イメージを持たされてしまう天理だが、彼らは決してそういうチームではない。
 日常のゴミ拾いを実践し、イマドキの高校生のように眉毛をそりあげるわけでもなく、帽子のかぶり方、ユニフォームの着方など、品行方正だ。むしろ、彼らを手本にしてほしいと思うほどだ。
 球場での態度も素晴らしく、試合においても全力疾走を怠らない。だが、こういうフィーバーのもとでは不利な面も多い。技術ももちろんだが、この中で戦い抜くメンタリティーが、天理にあるのかどうか。

 言い換えれば、この雰囲気の中、天理がいつも以上の力を出し、精神面で乗り越えることができたら、甲子園でもいい戦いができるんじゃないか、そう思う。
 天理にとっても、大きな意味を持つ対戦相手なのだ。「森本監督に花道を」という気持ちが勝つか、天理の総合的な力が勝つか。興味はそこだった。

 試合は初回から動き出す。1回表、郡山は先頭の廣長が初球をたたき、中前安打を放つ。チームに勇気を与える安打である。
 2番・福岡も続き、無死1,2塁の絶好の好機を作り、郡山の中心・大杉がバッターボックスに立つ。そして、大杉は天理のエース・中山のボールをとらえ、二遊間へ強いゴロを放った。

 しかし、そこに天理の二塁手・原田が立ちはだかった。逆シングルでボールをおさえ、二塁へバックトス。これを遊撃手の西浦から一塁手の西川へと渡って併殺成立。ビッグプレーとなった。二死・三塁からワイルドピッチで1点を奪うも、この併殺プレーが試合の流れを天理に引き寄せた。

 その裏、天理は一死から原田が四球で出塁、ワイルドピッチで二塁へ進むと、3番・中村が右翼前安打で、1、3塁。ここで4番・西浦が右翼前安打を放ち同点。5番・大西にも左翼前適時打が出て、逆転。
 あっさりとひっくり返した。

 このあと、奈良県は突如大雨に見舞われ、約1時間の中断に入った。天の恵みとでもいおうか、流れを変えかねない中断である。しかし、天理打線は変わらなかった。

 2回裏、先頭の中山が中前安打で出塁、犠打で二塁へ進むと、1番・徳山が右翼前への内野安打。ここで2番・原田は投手ゴロを打つが、三走・中山が挟まれてしまい、刺されてしまう。

 とはいえ、このプレーはボーンヘッドに見えて、中山の好プレーである。
 1、3塁で投手ゴロ。いくら打者走者が俊足の原田とは言え、併殺打になり得る打球だ。しかし、そこで中山が飛び出したことで、併殺はなくなった。それどころか、中山が粘ったことで、1走・徳山は三塁へ、打者走者の原田は二塁へと進み、2死・二、三塁という形を作った。そして、3番・中村は右翼前への適時打を放ち、2点を追加。
 中山の好プレーが2点を生みだしたのだ。

 反撃したい郡山だが、3回表は三者凡退で終わる。この状況を打破するために、森本監督は先発の大江をあきらめ、児玉を投入した。
 さすがは名将である。こうした空気の読みは抜群だ。

 しかし、それを天理が上回る。一死から、7番・西川が初球をたたき、左翼スタンドへとぶち込んだ。貴重な1点である。試合の大勢は決したと言っていい。

 6回表、郡山は1死・1、3塁の好機をつかむも、併殺崩れの1点のみ。この時も、天理の守備陣は抜群だった。1死・1、3塁から三塁ゴロが飛んだのだが、三塁手・安田は三塁走者に目をくれなかったのだ。
 さきほどの中山の走塁と郡山の守備と比較すると、ここが天理と郡山にあった大きな差である。7回にも1点を加えた天理は、このまま試合を制した。

 9回表の最後の打者となった染川は二遊間への強烈なゴロを打ち返した。安打になってもおかしくないコースだったが、これを二塁手・原田がまたも好プレー。試合を締めた。
 走攻守で、天理の強さをまざまざと見せつけた勝利だった。

 試合後、森川監督は
「このチームは立ち上げ当初から、課題を与えて考えさせるという方針で取り組んできました。しかし、それでセンバツは勝てなかったから、方針を一度は変えて、以前のように僕が指示するようにしました。でも、それはこのチームの良さは生かされないと思い、もとの方針に戻しました。今では円陣に僕はほとんど入りませんし、選手を信頼しきっている。心が通じ合ったチームに成長したと思います。春、全国制覇を目指すと言ってできなかったので、夏こそは全国制覇を狙います」
 と語った。

 そして、主将の徳山も、こう語った。
「森川先生の野球を2年間、体現してきて、もう分かっているというのはあります。森川先生の野球は相手を思う気持ち、相手のことを考える気持ちが根本です。空気を読んだ戦い方ができたと思います」。
 
 一方、47年目の指導者生活にピリオドを打った森本監督は、涙を見せることなく気丈に語った。
「47年間も監督をさせてもらって、支えてくれた郡山の関係者、奈良県にお礼を言いたい。最後の大会に甲子園には行けなかったけれども、これが野球やなと。神様が甘くないと、言っているのでしょう。選手たちはよく頑張って、決勝まで連れて来てくれた。ありがとうと、言いたいですね」。

 いろんな意味で楽しめた決勝戦。森本監督の47年間の集大成、壁を乗り越えて完勝を果たした天理と、近畿で一番最初に終幕を迎えた奈良大会決勝は記憶に残る試合だった。
 それに打ち勝った天理の全国での活躍が楽しみである。
 ちなみに、このブログでも紹介した天理の4番西浦は、この日、4安打の活躍。8割を超えるアベレージは、もちろん、奈良大会新記録である。

posted by koshien2009 |10:54 | 奈良県大会 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年07月24日

奈良 3強の牙城は破られず

7月24日 奈良県大会 準決勝
天理 8-5 一条

レポート 氏原英明

 奈良大会は早くも準決勝。
 きょう出てくるチームの中に、甲子園出場校がいるわけだから、大会の緊張感が一気に高まってくる。
 選手たちの表情もこれまでとは一味違っているようで、引き締まってきた。みな、甲子園を現実のもとしてとらえている顔つきである。

 準決勝のカードは天理VS一条、郡山VS畝傍。
 以前にも書いたが、奈良県は天理・智弁学園・郡山の3校がこの38年間、夏の覇権を独占してきた。
 この牙城を破れるかどうかを注目してきたわけだが、第1試合で天理と対峙した一条にも、そうした期待がかけられていた。
 一条は、昨秋はベスト4、春は県大会を制し、この大会の成績で3季連続ベスト4以上という出場校中でもっとも実績を残しているチームなのだ。
 果たして、天理を破れたのか。

 1回表、一条はいきなり先制をする。
 立ち上がり、キレを欠いた天理の先発・沼田に対し、先頭の勅使河原が右翼前安打で出塁。2番・山根が1球で犠打を成功させ、流れを作った。3番・尾原が中前安打でつなぐと、4番・阿久の犠牲フライで1点を先制した。幸先の良いスタートである。
 1回裏の天理の攻撃を三者凡退できると、ペースを握るかに見えた。
 
 一方、反撃したい天理は、2、3回といい攻撃の形を見せる。圧力を掛けて、試合の流れを引き寄せようとした。
 そして、投げても、沼田が落ち着きを取り戻し、3、4回を4連続を含む、5三振に斬り、反撃を待った。

 4回裏、これまで不調だった安田がバッターボックスに立つと、左中間スタンドに飛び込む同点本塁打。さらに5回裏には、3番・中村、4番・西浦の連打で好機を作ると、最後は7番・西川の内野安打で1点を勝ち越づ。
 さすがは天理。自力で試合の流れをつかんだ。

 ところが6回表、一条が猛反撃に出る。
 3番・尾原、4番・阿久が連続安打を放つ。二死をとられるも、7番・田積が左中間を深々と破る2点適時打。さらにワイルドピッチも重なり、一条が2点のリードを奪った。
 6回裏の天理の攻撃を三者凡退できり、形勢は逆転。もっとも精神面の強さをぶつけあう終盤3イニングを迎える。

 7回表、天理は前の回途中から登板していたエース・中山が好投。一条の攻撃を三者凡退で斬って、流れを作った。

 7回裏、天理は先頭の西浦が左翼前安打で出塁、5番・大西のところでエンドランを成功させ、2、3塁。6番・安田が死球で満塁となる。天理はここで一気に逆転に持っていきたいところだ。
 7番・西川は併殺打に終わるも、三塁走者が還って1点。8番・中山に左翼前適時打が出て追いついた。
 無死満塁からたった2得点は攻めきれなかったのは確かだが、とにかく同点に追いついたのだ。

 しかし、粘る一条は8回表、天理守備陣のミスに付け込み、2死・三塁と攻めると、最後はバッテリーエラーで1点を勝ち越した。ここへきての勝ち越しは大きい。
 あと2回、天理打線をどう抑えられるか。

 8回裏、天理は一死から2番・原田が中前安打で出塁、3番・中村が右翼前安打で続く。4番・西浦が四球で歩き、またも満塁とする。
 ここで、今大会2本の満塁弾を放っている大西の登場である。
 同点タイムリーか、逆転か、もしくは最悪のゲッツーか。
 大西はここまでほぼパスボールに近い形のバッテリーエラーをおかし、2点を失っている。そうした流れがどう転ぶのだろうか。

 大西は1-3からのストレートを一閃。すると打球は高々と舞い上がり、左翼スタンドへ届く満塁弾となった。1大会3本の満塁弾は、もちろん大会新記録である。
 試合はこれで決した。自力で勝った天理が、またも、挑戦者の一条を退けた。

 それにしても、3強の強さは何なのか。
 昨年の奈良大付といい、ことしの一条といい、力強さは見せてくれている。チームの雰囲気も、3強を凌駕するほどだった。しかし、越えられない。その差は何か。
 大会前に高田商の山下監督に話を聞いた時は、
「入ってきた時から、甲子園を意識している天理や智弁の選手たちと、3年生になってから『行けるんちゃう』とやる気を出し始めるか。その意識の差が結果として最後に出る」
 と語っていたが、果たして一条・兼本監督はどう分析するのだろう。

「ウチのチームは気持ちだけはどこにも負けない、技術は負けていてもそこだけはというチームを作ってきました。それでも、天理の子は、どれだけ劣勢になってもブレない。すべてにおいて素晴らしいチームでした」

 第2試合では郡山が畝傍を破った。
 つまり、明日の結果がどっちに転ぼうとも、3強の牙城はまたも守られたことになる。
 3強が敗れる時が来る時はあるのか。
 また、来年、新しい挑戦者たちを待ちたいと思う。

posted by koshien2009 |23:39 | 奈良県大会 | コメント(1) | トラックバック(0)
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2009年07月20日

激戦! 天理vs.高田商 

7月20日 奈良県大会 準々決勝
天理 2-1 高田商

レポート 氏原英明

 奈良大会はきょうから準々決勝。いよいよ、大会も佳境に入ってきた。
  きょうは2試合が組まれていたが、そのうち、天理VS高田商を取り上げたいと思う。

 高田商は、三浦大輔(横浜)の母校として知られる市立高。
 奈良県の中でも、常に上位に来る高校で、過去に選抜に出場したこともあるし、現監督の山下氏は2度、夏の大会準優勝に導いている。
 そのうちの1度が三浦を擁してのものだが、夏の覇権をいつも射程圏内にとらえているチームである。
 そして、天理とは因縁もあり、過去2度とも決勝で負けた相手である。そうした流れを汲めば、この試合がいかに楽しみか分かるだろう。

 試合は高田商の先発川上と天理の先発・中山の投げ合いで始まった。
 川上と中山では左右の違いはあるが、ほとんど同タイプのピッチャーと言っていい。コーナーを丹念に突き、変化球を低めに集めるのだ。
 試合はこの両者がベストピッチを見せ、ロースコアで進んでいく。

 そんな中で試合が動いたのは3回表。
 天理は1死から1番・徳山が右翼前安打で出塁。2番・原田のところでエンドランをかけ、遊撃ゴロ。徳山は二塁へと進んだ。ここでこの夏からレギュラーをつかんだ3番・中村が右翼前へ適時打を放ち1点を先制した。

 あっさり打ったかのように書いたが、このタイムリーは、中村の能力の高さがうかがえたものだ。
 というのも、中村は3球目にインコースのスライダーをとらえ、ホームラン性の大飛球をポール左に打ち込んでいる。会場がどよめく、強烈な打球だった。
 誰もが打ち直しを期待したが、中村はその次の球、アウトコースのストレートをおっつけて右翼前安打にしたのである。引っ張っての大飛球の後の技あり右翼前打は、そう誰でもできる芸当ではない。
 恐るべし2年生である。

 1点を先制し、天理が勢いに乗るかと思われたが、高田商の先発・川上が粘る。ピンチを作れども、決定打を許さず0を並べた。
 一方の天理の先発・中山も走者を出しながらも、最後のところはやられまいと、粘り強く投げ抜いた。

 6回表、試合が動く。
 一死からバッターボックスに立った西浦は2-3からの6球目を一閃。つまり気味ながらも、右手で上手く押し込み、左翼スタンドにぶち込んだのだ。
 2試合連続の本塁打は貴重な追加点である。

 しかし、粘る高田商はその裏、すぐに反撃。先頭の2番・瓜生が死球で出塁。
 バントで二進の後、二死となって5番・川上が二塁を強襲。天理の二塁手・原田はグラブに当てたが、これがはじかれ、二走・瓜生が生還。 ほぼ暴走に近かったが、原田の判断が遅れ、好走塁に代わった。
 2-1。試合が分からなくなった。

 いや、むしろ、追い上げる挑戦者・高田商に勢いがあったのは確かだろう。高田商が天理を倒すんじゃないか、そんな空気が流れた。
 天理は好機を作るも、得点を挙げられず、それがそうした空気を招いていたのだ。

 だが、それでも、天理はぶれなかった。高田商の大逆転を期待するスタンドの雰囲気もよそに、9回裏の高田商の攻撃を三者凡退。
 天理が勝った。

 この試合には大きな要素が隠されていた。
 ひとつは、天理の守備。
 天理はこの春のセンバツがそうだったように、打線につながりを欠くと、守り負けることが多かったが、きょうはそうした脆さを見せなかった。
 昨秋から「打の天理」といわれてきたが、守備でも勝てる戦いを見せたのである。 さまざまな勝ち方ができるところを見せられたのは、今後への大きな布石になる。
 
 試合後、森川監督はこう話している。
「こういう展開になる予測はしていた。だから、気持ちで負けない9人をきょうのスタメンに選んだ。9番の西川は打撃は不調だけどね、心で野球ができるから。中山が先発したのも、あいつの気持ちに掛けた。やっとやりたい守備の野球ができた」。

 一方、高田商は先発・川上の好投がこの好ゲームを演出したと言っていい。
 3回戦では登板がなかった投手だけに、ここでの抜擢は意外だが、高田商・山下監督に聞くと、 
「本人が志願してきた」
 という。
 指揮官の思惑は3回戦で好投した2年生・松村で行きたがったが、3年生の心意気を買い、それに乗ったのだ。
「ウチは練習でも気合いを入れてやっています。それでも、それを越えて志願してきたというのは相当な覚悟やったと思うんです。うちは王者・天理に臨むわけですから、迷わず川上で行きました。ベストピッチをしてくれました」

 気力と気力のぶつかり合い。わずかな差で天理が勝ったが、王者に立ち向かった高田商の姿勢は見事だった。
 無失策試合の非常にシビれた試合、今大会のベストゲームの一つに数えられるだろう。

posted by koshien2009 |20:38 | 奈良県大会 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年07月19日

郡山、勝利を掴んだ奇跡のポジショニング

7月19日 奈良県大会 3回戦 県立橿原球場

郡山 10-8 智弁学園

レポート 氏原英明



 きょうは奈良で1試合、京都で1試合を観戦。どちらも激闘だった。



 奈良の1試合は郡山と智弁学園の試合。奈良県3強とも言われる両者のプライドがぶつかり合う好ゲームだった。



 試合は1回から激しい攻防を見せる。1回表、郡山は先頭打者の死球から、バント内野安打、バスターと様々仕掛けて、満塁の好機をつかむと、押し出しで1点を先制した。しかし、智弁学園も負けてはおらず、すぐさま、先頭の稲森が右翼前にポトリと落ちる安打を放ち、足で稼いで二塁打。そのあと、3番・中井のバントを、郡山の投手・上西がミスし、同点に追いついた。

 

 ともに、ミスからの得点ではあるものの、両者の仕掛けが相手のミスを誘ったといっても、言い過ぎではない。



 2回裏、智弁学園の好機。先頭の大西が二塁打で出塁、犠打で三振のあと、9番・米田のところでスクイズ。打球は投手の正面を突き、本塁憤死を狙ったが、郡山の捕手・藤井が落球し、智弁学園に1点が転がり込んだ。



 反撃したい郡山は4回表、先頭の大江が出塁、すかさず盗塁。一死後、6番・藤井が一二塁間を破り、1死・1、3塁とする。8番・上西は三塁ゴロに倒れるも、三塁走者・大江が併殺を逃れるために、飛びだし、2死ながら二人が残った。すると、9番・染川、1番・廣長の適時打で逆転に成功した。



 さらに5回表には、2つの敵失と四球で満塁とすると、8番・上西が三遊間を破る適時打を放ち二人が生還。その差を広げた。郡山が俄然に有利。5、6回をしっかり抑え、流れをつかんだ。



 そして、7回表、郡山打線が爆発。打者二人を置いて、1番・廣長が3点本塁打。さらに4連打で2点を奪取。計5得点で10-2。コールド点差をつけた。多くのものが、このまま郡山の圧勝で終わったと思った。



ところが、そうとはいかない。ここが、高校野球の面白いところである。



 7回裏、智弁学園が反撃、二死・1、2塁から4番・中村が中前安打、四球で走者をため、6番・宮木が左中間を破る適時打で、一気に4得点。10-6とし試合を分からなくした。



 こうなってくるとしのぎ合い。郡山はもう1点を奪って、試合を決定づけたいが、それができない。智弁学園の方も8回は無得点に終わり、9回を迎える。



 9回裏、智弁学園は先頭の4番・中村、5番・岩本が連続安打、6番・宮木が死球で歩き満塁とビッグチャンス。ここで、7番・大西が二人を還すタイムリーで1点差。さらに、送球間に、二、三塁とした。これで試合は分からなくなった。



 この好機をどう防ぐか、どう生かすか注目されたが、僕はこの時の郡山守備陣のポジショニングが気になった。2点リードで二、三塁。同点を諦めて、定位置を構えると思ったが、郡山守備陣がとったのは、定位置よりやや前目である。



 そして、8番・稲垣の打球は、セカンド後方へふらふらっと上がった。定位置なら、普通に取れる打球である。しかし、これを郡山の二塁手・福本がダイビングキャッチ。気が付くと、二塁走者・大西が飛び出していた。併殺成立。これで試合は決した。続く9番・田中を遊撃ゴロに抑え、郡山が勝った。



 このポジショニング、果たしてどうだろう。僕自身は間違いだったと思ったが、福本が好プレーを見せたことで、郡山は救われた。しかし、あれを例えば、福本が定位置を守っていたら、どうなっていただろうか。おそらく、大西は飛び出していなかったはずだ。福本のポジショニングを見てしまったから、行けると思っただろう。



 野球とは面白いものである。



もっとも、試合を分けたのはあの場面だけではない。中盤から終盤にかけて、智弁学園に見られた守備の破たんが、こういう試合を招いたのが紛れもない事実としてある。だが、最終局面で見られたあのシーンには、ほとんど奇跡に近いように思えてならない。最後、9番・田中は遊撃ゴロに倒れているが、二、三塁なら抜けていたような当たりだったし、福本のとった奇跡に近いポジショニングがこの試合のハイライトになった。



 試合後、郡山森本監督は「コールドで勝てると思ったが、さすがは智弁学園。すごく鍛えている。選手らは良く頑張りました。きょうは100点満点。前回の試合後に、和歌山が智弁で、奈良も智弁が連続で出られるわけにはいかない、それを止めに行くといいましたが、それができてよかった」と話した。



 一方、敗れた小坂監督は「コールドの展開でしたが、選手たちには諦めたらそこで終わり。そこまでのチームやったってことや、といいました。よく粘りました。智弁のプライドを持ってやってくれたと思います。でも、最後、ランナーが飛び出してしまったのは、甘かった。鍛え方がまだ甘かったのだと思います」と肩を落とした。



 両指揮官のコメントはそれぞれの思いはあるが、両者にはベストゲームを演じれたことへの満足感が聞き取れた。

posted by koshien2009 |21:25 | 奈良県大会 | コメント(2) | トラックバック(0)
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2009年07月19日

PHOTO 天理・西浦内野手【検証甲子園NEWS】

2点本塁打を含む3安打を放った天理の四番・西浦内野手

参考記事:覚醒した天理の主砲(7.18update) 

撮影:氏原英明
koshien2009-101155.jpg


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posted by koshien2009 |14:51 | 奈良県大会 | コメント(0) | トラックバック(0)
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2009年07月19日

覚醒した天理の主砲

7月18日 奈良県大会 3回戦
天理 15-0 十津川 (5回コールド)

レポート 氏原英明
 
 きょうは奈良大会の4試合を観戦。
 7月13日にも取り上げた奈良大付が敗れるなど、一発勝負の怖さが顔を出し始めてきた3回戦の熱戦である。
 そんな中で、きょうは優勝候補の筆頭格・天理を取り上げたい。

 天理はこの春のセンバツ大会に出場したが、1回戦で敗退した。
 早稲田実の前に、持ち前の攻撃力を発揮できずに大会を去った。その成長ぶりが気になる存在である。
 この日の対戦相手は2回戦でシード校の法隆寺国際を破った十津川。奈良県最南端にある小規模校である。
 注目は、そんな小規模校が強豪校の天理とどういう試合をするかだった。小規模校の大金星など、夢物語は膨らんでいたかもしれない。

 しかし、いざ試合が始まってみると、天理の圧勝。1回表、1死満塁の好機をつかむと5番・大西が左翼スタンドへ本塁打を叩きこむなど5点を先取。2回には主砲・西浦の本塁打で2点。3回にはまた大西が満塁本塁打を放つなど、5点。4回に3点を取って、試合を決めた。
 終わってみれば15-0の圧勝で5回コールド勝ち。圧倒的な力を見せつけた。

 センバツ以降、打線が湿りがちで頭打ちを危惧されていたが、ここへきて覚醒した形だ。
 1番・徳山から、2番・原田、3番・中村と走れて確実性の高い選手が好機を演出し、大西・西浦が破壊力を見せる。下位打線も充実し、破壊力は抜群だ。
 なかでも、2回に2点本塁打を放った西浦の成長ぶりに感心するばかりだ。

 西浦は昨年秋から主軸に座り、近畿大会や神宮大会でサヨナラ安打を放つなど、勝負強い選手として注目されてきた。
 しかし、センバツでは、その力を発揮することはなかったし、それまでもサヨナラ安打は打つものの、安定して結果を残すことができていなかった。
 体にパワーを感じるのだが、それが打席で生かされない。むしろ、力で打ってやろうという力みが感じられ、彼の良さが消され続けてきた。

 それがこの大会に入って、1回戦から力みが消え、柔らかさと懐の深さを感じるようになったのである。
 2回に放った本塁打は力で打ったものではない。体の回転で軽く払ったもので、弾丸で左翼スタンドに突き刺さった。これは昨秋の彼のバッティングには見られなかったものである。

 「自分の間合いで打てるようになってきました。今までは良くなかったですけど、自分のイメージするプレースタイルと近づいてきたかなぁという感じはあります。だいぶ、積極的にやれているんで」。
  とは西浦本人である。
 穏やかな性格が彼のプレーを大人しくさせていたのか、というのが今になって気付いたことだ。
 彼は取材中で何度も「積極的に」という言葉を使い、内面からの成長を感じているようだった。
 
 コーチにも、彼の成長を聞いてみると、こう話してくれた。
 「今までは僕らが指導をすれば、なんでも聞き入れるという感じだったのですが、いまはそういうことはない。自分の中に芯みたいなものができたんでしょうね。積極的になったのも、そうした自信が出てきたんでしょう。西浦は冬場からも振り込んできましたから、その成果がやっとでてきたと思います」

 この日は4度打席に立って3安打1四球。1回戦は3打数2安打、2回戦は5打数4安打と、彼の勢いはとどまる気配はなさそうだ。
 目標とする選手は西武ライオンズ・浅村栄斗選手という。
「守備についても、バッティングについても、攻めるプレーが目についていたので」
 というのが大きな理由だそうだ。浅村に近づくこと、それは昨夏、浅村が果たした全国制覇であることを、本人はもちろん分かっている。

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2009年07月13日

「38年」の壁に挑む奈良大付

7月12日 奈良県大会 2回戦
奈良大付3-1奈良情報商業

レポート 氏原英明

12日は、奈良大会の4試合を観戦した。

 そんな一日の中で、第4試合に行われた「奈良大付VS奈良情報商業」の試合を取り上げたい。
 この試合は、「府立桜宮の挑戦」で僕が書いた、高校野球の楽しみ方でいうと「チャンピオンチームを追いかける」に属する。
 だが、この試合は、それに加えて、奈良大付の2年生エース松田浩幸という逸材に出会えたので紹介したい。 

 まず、奈良大付について説明すると、このチームは今、奈良県で最も注目を浴びているチームだ。
 というのも、奈良県は夏の大会に限ると、この38年間で3校しか夏の代表校を出していない全国でも稀有な地域の一つである。私学の強豪・天理、智弁学園の2強が大きな壁として立ちはだかり、公立の雄・郡山も、県上位の存在として、君臨しているのである。

 いわば、奈良県で高校野球をする者にとって、この3校は越えなければいけない壁、なのだ。

 その一番近くにいるのが奈良大付である。昨年と一昨年の奈良県大会では決勝に進み、惜しくも涙をのんだ。一昨年は郡山に圧勝しながら、決勝で智弁学園に大敗。昨年は天理・郡山を倒しながら、決勝で再び、智弁学園に辛酸をなめた。

 だから、今年こその期待は高まるのだ。

 さらには、新チームになってからの成績でも、3校に肉薄する成績を収めている。
 昨秋の県大会では智弁学園1-0で勝利。今春の県大会は天理に6-0で勝った。2試合ともにエースの松田が先発し、完封勝利を収めている。この2年の実績と私学2強に対して堂々たるピッチングを見せる松田の存在、今の奈良大付には期待 が高い。
 
 対戦相手の奈良情報商業は左腕エース横山治明が好投手と評判。昨年からのチームを引っ張り、今大会も1回戦の榛生昇陽戦で完封勝利を収めている。つまり、左腕の好投手同士の投げ合いが見られたというわけだ。
 
 試合は予想どおりの投手戦。3回までは0行進が続き、奈良大付が4回表に、相手守備陣のミスから1点をもぎとり、試合が動いた。さらに、6回表に、四球とミスに乗じて、1点を追加。7回裏に1点を失うも、9回表に貴重な追加点を挙げて3-1で制した。
 
 辛勝といえば辛勝だが、松田のピッチングは見事だった、130キロ前半のストレートとカウント取るカーブ、縦横のスライダーを、調子に合わせて使い分けてくる。この日は、横のスライダーがよく、決め球に効果的だった。
 
 監督を務める、田中一訓に松田の良さを聞いたところ、こう返ってきた。

「コントロールがいいんです。きょうは、あまり調子がいい方ではなかったんですけど、自分で崩れることなく、ピンチであっても淡々と投げる」
 
 安定感のあるコントロールとピンチでも動じない強心臓に指揮官も心酔しているようだ。さらに、松田の特性として、以前に田中監督はこんなことを言っていた。

「どんなピッチャーも失投はすると思うんです。でも、松田の場合は、失投が中に行かない。インコースなら当ててしまうような球か、外なら外れていく」
 
 これはなかなか、簡単には持ち得れない能力だ。天性のコントロール能力を示す言葉である。
 
 そんな松田の好投があり、奈良大付は幸先よくスタートを切った。とはいえ、チームとしての戦いに課題が残ったのも事実。田中監督は「もっと打ってくれると思ったんですけどね」と語っているように、攻撃力が課題になる。
「昨年ほどの力は、今年のチームにはないと思っています。強いところからさらに強くしたのが 去年のチームでした。ことしは緊迫したゲームを経験する中で、勝てるチームになっていければ、いい戦いができるんじゃないかと思っています」
 
 38年の壁は破られるか。奈良大付の今後の活躍に注目である。
 

posted by koshien2009 |22:40 | 奈良県大会 | コメント(1) | トラックバック(0)
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