2008年05月12日
カープ「1失点の収穫」ヤクルト戦を振り返る
野球の神様がいるのなら、何とも意地悪な運命を与えるものだ。
ベテラン、高橋建。
ルーキー、篠田。
2人とも1失点なのに、勝ちと負けの差がついてしまう。
野球とはそういうもの。
勝負とはこういうもの。
そう言ってしまえば、それまでだけど、野球の神様がいるのなら、何とも皮肉で何とも意地悪で、悪戯な運命を見せてくれたものだ。
かたや、プロ野球選手としてのゴールがおぼろげに見えてきたベテラン投手。残り少ないプロ野球選手人生に、1つでも勝ち星を重ねていきたいベテラン投手。
神は、たった1発のホームランでベテラン投手から勝利を奪う。
かたや、プロ野球選手としてのスタートに立ったばかりのルーキー。まだまだ果てしなく広がり、そして続いてゆくプロ野球選手人生。幾らでも勝てるし、幾らでも投げられるルーキーに、神は勝利を与えた。
同じ1失点。
しかし、神は、ベテラン投手に味方打線が援護することを許さず、ルーキーには4番の一振りと助っ人外国人の一発を用意した。
非情で、悪戯で、残酷な運命。
「どうやって勝てばいいのか分らない」
「これからは、限りなくゼロに近い点数に抑えないといけない」
ベテラン投手が口にした怒りと嘆きは、ファンである我々の胸にも突き刺さる。
1失点。
これ以上、限りなくゼロに近い点数は、ないのだから。
「緊張はまったくなかった」
と、ルーキー。
5回のピンチも内野ゴロによる1失点に抑え、無四球でマウンドを降りた。
試合後。
A紙では“少し照れた表情で、駆け足でさっそうとグラウンドを後にした”と書かれていた。
B紙では“車内で待っている先輩に気をつかってか、そそくさとバスに乗り込んだ”と書かれていた。
おそらく、後者だと思う。
プロ初勝利。
嬉しいに決まっている。
これから始まるルーキーのプロ野球選手としての人生に、ファンである我々の胸も高鳴る。
ただ、心のどこかで…引っ掛かるもの。
単に先輩を待たせているというのではなく、ベテラン投手の敗北と傷みを思う時、心のどこかに“なんか、申し訳ないな”という気持ちが、ルーキーを足早にさせたのではないか、と思う。
“今、チームで一番安定している”
とマスコミはベテラン投手を讃える。
その評価も、見方も、裏切らない好投。
限りなくゼロに近い失点。
それなのに勝てなかった現実。
打てない野手陣を責めることは、簡単だろう。
しかし、誰が、チームメイトを責めることが出来ようか…。
ベテラン投手に許されたのは、ただボヤき、嘆き、失意を堪えることだけ。
間もなく終えるであろうプロ野球選手人生の中で、この敗戦は余りに生々しい傷みを伴って、ベテラン投手の記憶に刻まれたのではないか。
「逃げるような投球をしなかったのが良かった」
と指揮官。
ルーキーの力投は、カープ再生にまた新たな光を注いでくれた。
どんなに緊張なく投げられたとしても、プロ野球選手人生をスタートさせる自信を得たとしても、今回のヤクルト戦でルーキーが最もいい経験をしたと言えるのは、ベテラン投手の敗北を目の当たりにしたことではないか。
どんなに好投しても勝てない時がある。
攻撃陣を信じたくても信じられない時も来る。
どう気持ちを切り替えるべきなのか。
どう向かっていけばいいのか。
投手をしてきたなら既に知ってるであろう、そんな当たり前のことを、改めてプロの世界で目の当たりにしたことが、ルーキーには一番の収穫ではなかったかと思う。
また、せめてそれくらいの収穫になってくれなければ、ベテラン投手の好投が浮かばれない。
「実績と経験は、違う」
と知り合いの社長から聞かされたことがある。
「実績があるということは経験を積んだということだから、ただの屁理屈では?」
と揚げ足取りな言葉を返した。
社長は少し笑いながら
「実績は結果。経験は過程。目に見えない、形に残らない経験ってものもあるんだよ」
と付け加えた。
今、この言葉の意味が解る気がする。
嫌でも期待が募るルーキーには、もっともっと色々な経験をしてもらいたい。
実績を求められるプロの世界にあっても…。
海を渡っても、我慢と忍耐が続く、かつてのエースのように。
不思議な時間の流れを感じている。
今年カープに生まれた新たな光が、全て“そこ”へ向かっている気がしてならない。
かつてエースと呼ばれた男が、新たな実績と経験を携えてカープに戻って来る、その時へ向けて新たな光が注がれている気がしてならない。
今はまだ、チグハグでギクシャクした戦力も、近い将来必ず1つにまとまると思える。
「カープは強くなったねぇ」
そう言える日が、ゆっくり近づいて来ている。
posted by koita |13:00 |
広島東洋カープ |
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