2009年08月15日
布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [2]
JFAユースダィレクターであり、 U-18日本代表監督でもある、 布啓一郎監督のインタビューを読んで感想を少し。
「どこまでできるか分かりませんが、サッカー界から発信していこうということだと思います。例えば、エリート教育なんかはすごく敬遠されたり、特権階級と認識されることがありますが、本当の語源は戦場で先頭に立って戦う者ということなんです。苦しい時に一番頑張れるのがエリート。だから、われわれはあえてエリートという言葉を使っていますし、エリートが特権階級で嫌らしいというマイナスのイメージをサッカー界から打破したい。前に述べた平等の概念もそうです。平等というのは、誰もが楽しめる環境、能力に応じた環境ということです。そいうことを強く発信していきたいと思っています」 エリートというのはフロンティアのことでもあると私は思います。つまり、元々は能力的に優れた人たちが、集団の先頭に立って、後から続く人たちの為に敵を打ち倒し危険を排除していく、地ならしをしていく、道を作っていく、ということであり、だからこそ、そのエリートたちは多くの人たちから英雄視され、そこに特権が生まれていく、ということですよね。しかし、それがいつしか代を重ねるごとに特権階級化し、もはや優れた能力も持たず、集団の先頭に立ってフロンティアたることをしなくなり、やがて社会的な弱者から搾取するだけの人間に変わる、ある意味、歴史というのはそうやって繰り返されてきた訳でありますよね。まあ、それはさて置き、そして、近年の日本サッカーにおけるエリート、つまり、フロンティアと言えば、やはりカズとヒデ、この2人がそうであると思いますし、もし俊輔がスペインである一定の成功を収めることが出来れば、俊輔も偉大なフロンティアの1人になるかなと思います。要するに、以前にも書きましたが、育成というのは、上を更に上に伸ばし、下を底上げする、その両輪を以って成されなければならない、と言うことであり、そしてその為には、機会の平等ということが重要で、誰もが楽しめる環境、能力に応じた環境、それが必要である、と言うことでありますよね。 「個の力に関しては、今までの日本は個の弱さを組織力でカバーしてきました。でも、今はそのサッカーでは通用しません。今は、1人1人の強い個が組織としてチームのために働く時代です。組織で個の弱さをごまかすようなサッカーでは絶対に世界のトップ10には入れないと思うし、そういうことのメッセージです。それから、勝つこと、育てることの間でブレるということについては、日本人の真面目なところであり、ある意味ストロングポイントではないかと思います。日本人はすごく生真面目で、例えば、協会はどういう指導方針を発信をするんですか? とよく聞かれます。だけど、勝つことと育てることは決して乖離しているわけではなく、サッカーの原理原則を押さえていけば、わたしは勝つ可能性は高まると思っています。ただ、日本人は真面目だからこそブレるんだと思います。今はまだそういう段階かもしれませんが、ブレているうちに徐々に振れ幅が小さくなって定まってくると思います」 そもそも、個の弱さを組織力でカバーするという発想自体が幻想で、理想論で、成功している組織なりチームというのは、そこにズバ抜けた能力を有した人間が存在していなくても、実は個々の人間の能力的なアベレージが一般的な人たちよりも高い、それが常であると私は思う訳ですね。組織力というのは、あくまで個の能力を更に輝かせる為に有り、あくまで個の力を前提とした上に存在しており、決して個の弱さをカバーする為に存在している訳では無い、そのように私は思います。従って、とりあえず、個の弱さを組織力でカバーする、という発想を、育成段階では捨てていかないと、日本のサッカーが強くなることは無い、と言うことでありますよね。 そして、勝つこと、育てること、そのどちらを重視していくのか、という話で言えば、当然それは、布啓一郎監督が述べているように、決して乖離しているものではなく、要するに、勝つ為に育てる訳ですから、勝てるように育てなければならない、しかし、どこで勝つのかということは重要で、例えば受験で言えば、その入学したい大学の試験に受かることが重要な訳ですから、その前にある模擬試験では、点数や偏差値が云々ということよりも、その試験で自分の能力の問題点を浮き彫りにし克服すること、または、得意な分野で更に得点を取れるようにしていくこと、その作業こそが重要であり、もちろんそこでは育てることがより重視されるべきであり、目的でありますよね。そしてそれは、日本サッカーのピラミット構造が整備されていけば、自然にそうなっていくのではないかと私も思いますから、そのブレを無くすためには、まずはシステムを完成させていくこと、それが必要なのではないかと思います。 「結局、それは指導者が、フットボールを教えているか、部品を教えているかの問題だと思います。サッカーというのはゴールを奪うためにやっているわけで、ゴールに向かってプレーすることは当たり前のことです。そういうことをわれわれ大人が間違わずにコーチングしてあげなくてはいけない。どうしてもポゼッションというとポゼションにこだわって、ボールが後ろにいってもポゼッションしているからいいということになる。部品としてとらえるのではなく、全体として、フットボールとしてとらえていかなければいけません。1つ1つの部品としてそろえることを考えると、木を見て森を見ず、という状況になりかねません」 とにかく何にせよ、どこに向かっているのか、何を目標としてやっているのか、そこだけは常に確認して、そこを失念しないようにしなければならない、と言うことですよね。サッカーというスポーツはどのようなスポーツなのか、結局それは、失点をせずに得点をする、それが目的のスポーツな訳ですから、そのために何々をしましょう、何々の能力を高めましょう、と言うのは、手段のことを示していて、それが目的ではなく、また、その手段が目的になってはならない、と言うことですよね。つまり、究極的に言えば、プロセスなどは関係無く目的だけを達成してもOKな訳ですが、しかし、プロセスが美しいサッカーと言うのは魅力的なサッカーである訳で、従ってそのプロセスと結果ということを、そのチーム事情に合わせて、その国のレベルに合わせて、どれだけの比率のバランスで構築していくのか、その問題なだけであるように私は思う訳です。確かにプロセスというのは重要で、あまりにプロセスを排除してしまったサッカーというのは魅力に欠ける、それは私も強く思うところであり、但し、しかしながら、そのプロセスはあくまでプロセスであり目的ではない、つまり、ポゼッションということで言えば、ポゼッションすることはあくまでプロセスであり目的では無い訳ですから、そのことだけは常に念頭に置きながら選手はプレーし、指導者は選手を育成する、それは絶対でありますよね。 日本代表・Jリーグ関連記事は「FCKSA55」へどうぞ。 【2009/08/15】 「メンタリティというものはいつも持ち続けていなければならない」 オシムの言葉55 【2009/08/14】 「楽観的に物事を考えていなければ失望することはない」 オシムの言葉54 【2009/08/13】 「リスクを冒す哲学」 オシムの言葉53 【2009/08/12】 「持ち合わせた自分たちの特性を、どう上手く伸ばせるかが重要なのだ」 オシムの言葉52 【2009/08/11】 「100%の力を出さなくても勝てるようなそんなチームではありません」 オシムの言葉51 【2009/08/10】 浦和レッズ 選手の年間を通してのスタミナ強化もしくは回復力強化が課題。 【2009/08/09】 JOMOCUP2009 オールスター戦 Jリーグ選抜対Kリーグ選抜 「オールスター戦とは思えないぐらい興味深かった試合」 【2009/08/08】 京都サンガ 個人的に考えるチーム力アップの為の3つのポイント。 【2009/08/07】 横浜Fマリノス 勝負弱さを生んでいる3つの原因。 【2009/08/06】 ガンバ大阪 不調の原因とは? 個人的に考える3つの原因。 【2009/08/05】 「どのようにして勝ったかということを聞く人はほどんどいなくて」 オシムの言葉50 【2009/08/04】 ウェズレイ引退と三都主アレサンドロの名古屋完全移籍について少し。 【2009/08/03】 中村俊輔 リバプールとのプレシーズンマッチでの評価 【2009/08/02】 横浜FMvs京都S 「加藤采配不発、マリノスの個人技が光り快勝」 【2009/08/01】 「ある程度の自由さが必要ではないか」 オシムの言葉49 【2009/07/31】 「なにか歴史に残ることをしよう」 オシムの言葉48 【2009/07/30】 「走りすぎても死なない」 オシムの言葉45 【2009/07/29】 「ライオンに追われたウサギが逃げ出す時に肉離れをしますか?」 オシムの言葉46 【2009/07/28】 アレックス・ミラー解任に思うこと。 【2009/07/27】 「走りすぎても死なない」 オシムの言葉45 【2009/07/26】 鹿島Avs柏R 「復調兆しの柏が首位の鹿島と引き分ける」 【2009/07/25】 「じゃあどうするんだ。いる人間でやるしかないだろう」 オシムの言葉44 【2009/07/24】 「監督は常に誰がうまくいっていないかを探さないといけない」 オシムの言葉43 【2009/07/23】 「日本人は自分たちに何が出来るかを理解するべきです」 オシムの言葉42 【2009/07/22】 「どうして勝利できなかったのか練習で追求させる必要があるからね」 オシムの言葉41 【2009/07/21】 「そのもっと先に最も重要な頭脳がある」 オシムの言葉40 【2009/07/20】 「いい対戦相手と出会った時は戦いながら賢いプレーをしなければなりません」 オシムの言葉39
posted by kodahima |14:16 |
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布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [2]
コメント投稿者ID :
>>個の力に関しては、今までの日本は個の弱さを組織力でカバーしてきました。でも、今はそのサッカーでは通用しません。今は、1人1人の強い個が組織としてチームのために働く時代です。
ジーコジャパンが敗退してからまた『日本は個の弱さを組織力でカバーする』という風潮が出だした気がしていたので心配していましたけど、このように考えてるなら心配無用ですね。時間は掛かるかもしれませんが階段はしっかり上れそうで安心しました。
posted by FOOT! | 2009-08-15 15:06
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