2009年08月13日

布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [1]

JFAユースダィレクターであり、
U-18日本代表監督でもある、
布啓一郎監督のインタビューを読んで感想を少し。

「育成に関しては3つの柱がありますが、究極的に言うなら指導者の質が一番大事になってくると思います。それ以外の2つは、トレーニング環境とゲーム環境です。今、日本が一番やらなければいけないことは、年間を通したリーグ戦環境を低年齢の小学生年代から高校生年代まで作ることです」

この3つの柱は、育成ということを考えている人にとっては、もはや常識的な考え方になっているかなと思います。とにかく指導者の質というものが向上しなければ、その指導者に育成されている選手のレベルがアップすることは無い、これは当り前過ぎるほど当り前であり、それが今の日本が抱えている最大の問題でもありますよね。そして、トレーニング環境とゲーム環境の整備と充実、特に日本の場合には、ゲーム環境の充実、これは急務であると思う訳です。試合をやらなければ練習の意味は無いし、試合をやらなければ練習の効果も効率も上がらない、これも当り前のことで、そのような当たり前のことをどれだけ高いクオリティをもって充実させるのか、それだけで育成と言うのは、ほぼ機能していくと私は思う訳です。何もこれはサッカーという特定の分野に限ることではなく、あらゆる分野における育成でも同じことで、なぜ現在の日本のみならず多くの世界で閉塞感が生まれているのか、それは育成というシステムの機能性が崩れているからでありますから、そこにもっともっと多くの優秀な人材が関わり、最大限の力を注いでいくべきであると、私は強く思う訳であります。


「3つの考え方がありまして、まずは年間リーグであること。年間20試合程度をホーム&アウエーでやりたいです。次に、拮抗したリーグであること。例えば、10点差くらい開くようなゲームで「いい経験になりました」なんて言う人がいますけど、わたしは決していい経験だとは思わないんです。そこまで開けば、勝った選手も負けた選手もつまらないですから。平等というのは、お互いが楽しめる環境だと思います。あと、複数のチーム登録が可能であること。つまり、補欠ゼロ。
では、なぜリーグ戦かというと、日本人の1つの欠点というか課題は、チャンスとピンチを感じる力が足りないところです。子供というのは失敗するものですから、リスクを冒さないとそういうものは体験できないんですよ。それがトーナメント戦になれば、子供も指導者もリスクを冒すことを避けてしまう。年間を通したリーグ戦であれば負けても次のゲームがある。選手も指導者も自分の責任でリスクを冒していく。そういう環境を作っていきたいと思っています。また、リーグ戦にすると指導者がああだこうだ教えていくよりも試合を通してサッカー理解が深まっていくと思います。つまり、教える環境ではなく、子供が育つ環境。そして、同時にリーグ戦が指導者を育てるようになるのではないかと思っています」

これもまさにその通りであり、そして、ある意味では常識でありますよね。大学生がいくら中学生や小学生と試合を重ねても成長は望めませんし、また、人というのは実践を繰り返して得られた経験と非実践による学習、その両輪で成長する訳ですから、そのどちらも欠けてはならず、特に現状と言うのは、その実践を繰り返して得られた経験というのが、ほとんどの人や選手に欠けている、そのように私は思う訳です。「つまり、補欠ゼロ」。これは社会にも必要なことで、そしてそういうシステムが存在している社会でなければ、そこに輝ける未来は生まれない、これはもはや常識であると私は強く思いますね。
また、なぜリーグ戦なのか、という部分を要約すれば、つまり「教える環境ではなく、子供が育つ環境」この部分がそうでありますよね。どうしても教育問題を議論する時には、子供に何を教えるのか、子供にどうやって教えるのか、その小手先の手法ばかりの議論になってしまいがちだと思いますし、その典型が、褒めて育てるのか厳しく育てるのか、ということであると思いますが、そんなことは重要ではないし、また、そのどちらが良いのかということは、決められるはずが無い訳ですよね。子供や若者というのは自分の力で成長できる能力を有していて、しかし、常に健全な方向へ成長のベクトルが進むとは限らないので、そこでは的確なアドバイスが出来る大人が必要であり、またそもそも、成長を促してくれるような場所が存在していなければ、成長など出来るはずもない、と言うことでありますよね。


「単純なことですけれど、サッカーの原理原則をブレずに選手にすり込んでいける指導者じゃないでしょうか。特に育成年代ではサッカーの原理原則を習慣化する。多分、そういうことができればプロになった時に監督がどれだけ変わろうが柔軟にそのサッカーに対応できる選手が育つと思います。日本の指導者はいい意味で聞く耳を持ってくれている。そういう中で最終的には自分の色を出せるようにしてもらいたいです。教科書通りには教えないけれど、教科書の内容をしっかり理解していて、子供にうまく理解させられる先生っているじゃないですか? そういう風になっていくことが理想なんじゃないですか。あと、わたしはコーチにクリエーティビティー(創造性)がなければ選手に「クリエーティブになれ」と言ったって無理だと思っています。コーチ自身が柔軟な発想を持ってやっていく。協会が言っていることはあくまで土台のキーファクターで、それは自分の頭の中の引き出しに入れておけばいいと思っています」

良い指導者とは何であるのか、その答えの1つが、「特に育成年代ではサッカーの原理原則を習慣化する」、そこにあると私も思う訳です。よく、何をやっても上手く出来ない人と、何をやっても上手く出来る人が存在していると思いますが、これは別にその人に天が二物を与えたのではなく、やはり天は二物を与えずが本当で、その1つの才能を高めていくことで、その1つの物事の原理原則を理解することで、それが他の分野にも応用できる、それだけのことであると私は考える訳であります。と言うことはつまり、良い指導者というのは、そういう物事の原理原則を正しく完璧に伝えることが出来る、理解させることが出来る、そのような人であると私は思う訳であります。
但し、ここで布啓一郎監督が述べている、「コーチにクリエーティビティー(創造性)がなければ選手に「クリエーティブになれ」と言ったって無理だと思っています」、という部分に関しては少し異論がありまして、これは創造性ではなく寛容さであると私は思う訳ですね。別に指導者自身が創造性豊かな人間である必要は無く、その指導者が創造性豊かな選手を受け入れていく寛容さを備えていれば良い訳で、そういう意味では、そこまで指導者に完璧な能力を求める必要は無い、基礎を正しく完璧に伝えることが可能で、後は個性を許容していける心の広さがあれば、それでその指導者は優秀な指導者で有り得る、そのように私は思うところです。


「わたしは弊害は出ていないと答えます。その理由は、サッカー自体が進歩しているからです。今のサッカーは時間も空間がどんどんなくなってきていて、例えばチャンピオンズリーグ決勝のマンチェスター・ユナイテッドとバルセロナのユニホームを逆にして、選手が覆面でも付けてプレーしたら本当にチームや選手が分かりますか? というところまで似かよってきています。だから、今は全体的に選手の個性は見えにくくなっている。10年、20年前は1試合見れば誰が中心選手か分かったかもしれないけれど、今は日本の育成年代の試合を見ても誰が中心選手か分かりにくくなっています。それはまさに全体がレベルアップしているからです。
ただし、日本の指導者の評価基準は変えていかなければいけないと思っています。というのは、日本人で目立つのはどうしても中盤の選手ですが、それはラストパス、スルーパスを出せる選手を「いい」と言う傾向があるからです。でも、運動量があってプレーをし続けられるとか、守備で常にボールを奪える選手とか、多用な個性を評価できるようになればもっといろいろなものが見えてくると思います。日本人指導者の価値観が固定化している面は、もしかするとあるのかもしれません」

日本の画一的な指導によって若い選手の個性が失われているのか、そのことに対して、布啓一郎監督は、そのようなことは無いと述べていますが、しかし個人的には、やはりそれは傾向として顕著なのではないか、そのように感じています。最近のサッカーでは、一昔前に比べれば、その試合の中で担わなければならないタスクは増えてきていて、その自由度というのは減少傾向にある、それは否定できないところですが、しかし、結局最後に勝負の明暗を分けるのは個の力やアイデアであることに間違いは無い訳で、と言うことは、どれだけその担わなければならないタスクが増えたとしても、選手が自分たちで考えてプレーする部分だけは絶対に削ってはならない訳ですから、その余地を今の育成プログラムが内包しているのかという部分では、結果を見る限り、あまり内包していないのではないかと感じます。
中盤のラストパスやスルーパスを出せるような選手が良い、その傾向は少しづつ見直されつつあると感じる一方で、今度は逆に、運動量や組織的にプレーできるかどうか、その部分ばかり評価されつつあるような印象も感じますし、しかしながら、1対1における若い選手の守備力というのは低下傾向にあり、フィジカルも低下傾向にある、そのように私は感じていますから、やはりそこは真摯に現在の育成プレグラムを見直していく必要がある、そのようには強く感じるところですね。


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posted by kodahima |11:47 | コラム | コメント(3) | トラックバック(0)
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布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [1]

コメント投稿者ID :

Kさん

そうですね。
今、指導者となっている人達はリーグ戦どころか
Jができる前の旧時代のサッカー選手達ですからね。

これからは少しずつ中田や俊輔みたいな世界を見てきた選手が
指導者となって下の世代を育てて欲しいですね。

これも個人的意見ですが
布氏は元市船の監督だった人ですよね。
その程度の実績で日本代表のアンダー世代の監督をやれるわけです。
布氏個人に何の恨みもありませんが、せいぜいJで活躍できる選手を育てるぐらいまでしかできないでしょう。
人間、自分が経験した以上の事を人に教えるなんて不可能に近いですからね。

posted by TAKA | 2009-08-16 00:59

布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [1]

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TAKAさんのゆう「指導者の野心」みたいなモノも、子供の頃から沢山リーグ戦を経験して来た中で養われていくモノなのではないでしょうか?

日本は選手以上に指導者が育ち難い環境であると思います。

posted by K | 2009-08-15 18:39

布啓一郎監督のインタビューを読んで考える [1]

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個人的な意見ですがリーグ戦とか技術論も、もちろん大事だけど
日本の場合、指導者自身の「野心」が足りないのではないでしょうか。

例えばいずれバルサの監督になってみせるとか
モウリーニョにようになって見せるみたいな
ギラギラした情熱が日本の指導者にはぜんぜん無い。

布氏のインタビューを聞いていてもまったく心を打たれない。
単なる育成者としての一意見みたいな・・・

そうじゃなくていずれ俺は世界一の指導者になってみせる。
ヨーロッパのビッグクラブで君達と再会できるのを楽しみにしている。
ぐらい言って欲しい。


例えばヒディング、カペッロ、モウリーニョのような名指導者達のギラギラ感といったら半端ない。
選手だってそういう実績ある指揮官の「オーラ」に触れる事こそが成長の鍵なのではないか。
「この人の言うことを信じてれば世界一の選手になれる。」みたいな。

なので「世界に通じる選手になれ」と言う前に
自分がまず「世界に通じる指導者」になって欲しい。



posted by TAKA | 2009-08-14 18:41

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