2007年12月02日

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

昨日の試合を観戦しての感想です。


まず第1試合USA-ARGは圧倒的にUSA勝利でした。

USAは当たり前の事を当たり前のように行う(実は結構難しい)チームと言う印象でした。
例えばレセプション時の声、「you」「mine」「in」「out」に始まり、味方が攻撃を繰り出す時にはコートの穴を埋めるためにフォローのポジションどりをいち早く行うといった、攻守の切り替え的な事をサボらないチームでした。

そしてとても完成されているUSAのサーブ&ブロック&ディグは我々も参考になると感じました。

ベンチからの指示と選手の反応がリンクしている印象の強いチームでした。





第2試合BRA-RUSは実に興味深いゲームとなりました。

事実上の決勝戦といっても過言ではない1戦だっただけに、とても白熱した好ゲームでした。

このゲームで得た自分自身の感覚をデータで裏付けながら振り返ってみたいと思います。



まずBRAとRUSをFIVBの記録から単純比較してみたいと思います。


                BRA        RUS


スパイク決定率      47.44%     47.62%

ブロックポイント       7本         6本

サーブポイント        1本         1本
 
ディグ             15本        28本

レセプション返球率    54.55%     57.14%
 


下線を引いたのは勝っている側です。


FIVBが発表している6項目の技術統計のうち5項目を取り出してみました(Setは比較しにくいため省きました)。
なんと5項目のうち3項目でRUSが勝っているではないですか!!
ブロックの接触数も効果もRUSが上です。

しかし、結果は3-0でBRA勝利です。


では何故技術統計で勝っていたRUSがストレート負けを記したのかを、検証してみたいと思います。

簡単です。

ミスの数が圧倒的にRUSが多いからです。



ミスによる失点が 
RUS30点 (スパイク9点 サーブ20点 その他1点)に対し 
BRA15点 (スパイク4点 サーブ9点 その他2点)だったと言う事です。


すなわち、スパイク効果率およびサーブ効果率が
BRA>RUS
だったという訳です。

RUSはリスクの高いサーブを打つことによって相手のレセプションを崩しディフェンスを優位に進めようという意図が見えます。
そしてスパイクも得点するか失点するかという2択の色合いの濃い戦術であると予測される記録です。

しかしBRAはサーブのリスクを最小限押さえデフェンスを成立させ、スパイクも得点か失点という2択にとどまらず、リバウンド、いなし、などという選択肢の多さを感じさせられる記録です。


やはりこれがBRAの強さなのでしょう。


現代バレーではサーブのリスクを大きくとりディフェンスを成立させやすくする事が主流です。
そしてレセプションが返球しにくくなった今、2段トスを正確に打ちこなす能力の高い選手の揃ったチームが上位にたつという構図もあります。


 
ハイリスクーハイリターンをねらった戦術が蔓延していると言えます。


しかし、
BRAはリスクを最小限に押さえても勝負できる戦術を身につけています。
サーブで優位に立てなかった際のディフェンスや、レセプションが崩された時のオフェンスに他のチームには無い戦術があります。

まさしく、

ローリスクーハイリターンを可能にする戦術を兼ね備えているのです。


こんな金融商品があったら詐欺を疑いたくなるようなチームです(笑)。


恐らくこのローリスクーハイリターンを可能にしている秘密が数多く隠されているのではないのでしょうか。


個人の能力も非常に高いチームですが、システマチックに反応するスピードと正確性は凄いとしかいいようがありません。





そして3試合めJPN-BULですが、
日本は最高の出だしで1セット目を奪い僕たちを楽しませてくれました。
しかし結果は1-3で敗れ7敗目を記してしまいまいた。


この試合でも取り上げたいのがミスです。


日本は1-3で敗れたのですが、総得点は85-97の12点差です。

85点97点の中には様々な得失点が隠されているのですが、特に注目したいのがスパイクミスでの失点です。

JPNが15点、BULが4点のスパイクミスで相手に得点を献上しています。
このスパイクミスの11点の差がそのまま結果に反映されたような形となりました。

当然ミスを怖がってばかりいたら良いプレーも生まれません。
しかしミスをする可能性(リスク)を受け入れてでも勝負する場面と、ミスを回避して体制を立て直す場面とがあって良いと思います。

前半BULのセッターと11番のニコロフのトスが合わないケースが何度かありニコロフは相手の嫌がりそうなポイントにフェイントで返しミスを回避していました。
対する日本は少々の悪いトスでも一か八かの勝負を仕掛けていった印象があります。


やるかやられるか玉砕覚悟の勝負も時には良いと思いますが、BRAが見せたような粘って粘って相手のミスを誘うようなバレースタイルのほうが、日本人向きな気がしてしまいました。







おまけで何故1セット目日本が勝つことが出来て2セット目以降は勝てなかったのかをマッチアップの観点から考察してみます。


1セット目、日本サーブスタートです。

スタートローテーションはS5(ローテ3)でした。


    コンスタンチノフ(WS)  ニコロフ(OP)  ガイダルスキー(MB)   
  
    ズラタノフ(MB)   ジノフ(S)   カジスキー(WS)
ネット======================ネット
    松本(MB)    越川(WS)   山本(OP)
   
    宇佐美(S)    石島(WS)   山村(MB)


日本、ブルガリア共に前衛レフト(ゾーン4)にチーム最高スパイク決定率を誇る選手を配置してスタートした背景が伺えます。

ただしブルガリアの誤算はそのカジスキーが山本選手に立て続けにブロックされてしまったことです。

そして、ブルガリアのもう一つの誤算は、
レセプションでした。

日本には強力なサーブを打つ選手が4人います。
山本選手、石島選手、越川選手、宇佐美選手です。

その4人がサーブを打つ時のブルガリアのレセプションフォーメーションがこのとおりです。

   山本サーブ           石島サーブ           
     ↓                 ↓
            
  カジスキ コンスタ L         コンスタ カジスキ L       


  宇佐美サーブ           越川サーブ

     ↓                 ↓

  コンスタ カジスキ L         コンスタ L カジスキ  


それぞれのサーバー達の得意なコースにブルガリアのエースカジスキー選手が見事に配置されていたのです。
カジスキー選手は攻撃では世界1と言われていますが、レセプションの得意な選手ではありません。
彼をレセプションで苦しめるのは攻撃力を半減させるうえでも欠かせません。
実際に山本選手のサーブや石島選手のサーブが効果的に機能した結果このセットをものに出来た可能性が高いと思われます。

ところが2セット目以降ブルガリアはカジスキーのサーブスタートからローテーションをスタートさせ、こうなりました。


    カジスキー(WS)    ジノフ(S)    ズラタノフ(MB)   
  
    イバノフ(MB)    ニコロフ(OP)    コンスタンチノフ(WS)
ネット======================ネット
    越川(WS)     山本(OP)       山村(MB)  
   
       松本(MB)     宇佐美(S)    石島(WS) 


その結果、日本の強力サーブ陣の得意コースにカジスキーが配置されいたのが越川選手のサーブ時だけになってしまいました。図は割愛します。

3セット目以降もブルガリアは同じカジスキーサーブからスタートさせ、3セット目はさらに狙いにくいポジションへと変わってしまったのです。

4セット目は2セット目と同じでした。


敗戦原因は一つではないので、ローテーションを操作すればどうにかなる問題でもないのかもしれませんが、第1セットと同じ当たりにすることによって、光だ見いだせた可能性もあったのではないかと勝手に思っています。

以上おまけでした。



今日の最終戦も観戦予定ですが明日お休みなので更新もお休みさせていただきます。


今回のワールドカップはみなさんと一緒に大変楽しませていただきました。
ありがとうございます。

今回学んだことを肥やしにしてVプレミアリーグへと向かっていきたいと思います。

東レアローズの応援をよろしくお願いいたします。

























 













posted by kobayashi |19:35 | 日記 | コメント(6) | トラックバック(1)
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善戦及ばずブラジルに敗れる  どえらいアクシデント(ミス)も 【日本男子 W杯】 【スポーツマン・スポーツウーマン 体に良いことはじめよう!!】

日本男子、今日はブラジル相手に本当に良く頑張ったと思います[:!:] 今日の戦いを見て、本当に9位なの?っていうぐらい、ブラジル(1位)相手に随所に良いプレー、気迫あるプレーが出て、互角に戦ってましたね[:グッド:] 相性も結構いいのかも[:男:]しれませんが、他チームとの対戦でも今日みたいな出来だったら、本当にメダルも狙えたのでは?というような最高のゲームでした[:拍手:]  日本男子は来年の大会で、必ずや北京行きを勝ち取ってくれると信じています[:OK:] 頑張れ日本[:!:]  第4セッ...

2007-12-03 06:11 | 続きを読む
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2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

小林さんの文章、大変勉強になります。
現代のデータバレーは、バレーをしていた人でも、なかなか理解し難いものです。
様々な視点からの分析を、わかりやすい文章・言葉で解説してくれる小林さんは、頑張って勉強してらっしゃるんだろうなぁと思い、ホントに頭が下がります。
排球参謀、これからも楽しみにしています。時間のあるときに自分の想いを綴ってください。
東レよりも、小林さんを応援します!頑張ってください!

posted by 九州 | 2007-12-02 20:01

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

いつも読んでいます。
小林さんの解説、とてもわかりやすいです。
読んでいて勉強になります。
ありがとうございます。
もうすぐVリーグですね。
もちろん東レの優勝を心から
祈って応援しています。
頑張ってください。

posted by えみ | 2007-12-02 20:15

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

小林さんの戦術解説は大変参考になります。こういったことはTVの解説では決して伝わってこないので、私のような者にはとても助かります。
大変稚拙な質問ですがよろしいでしょうか?セット毎のスタートローテーションを決定するときは、相手のローテが分かった上で決めているものなのでしょうか。それとも、監督同士の駆け引き(?)なのでしょうか。

posted by ミカエル | 2007-12-02 20:50

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

こんにちは。私はバレー観戦が大好きなのに戦術などは全くわかっていない「バレー関係者」です(-_-;)
いつもこちらのブログで勉強させていただいていますが、コメントは初めてさせていただきます。
今回の解説も、非常に参考になりました。
特に最後の「おまけ」。実は、1セット目を日本が取った理由は「サーブが良く入った」、そして2セット目以降落とした理由は「サーブミスが増えた」かなーと思っていました。
でも、同じサーブ絡みでももっと深い理由があったのですね。
おっしゃるとおり、ローテ操作がうまく行けば、もう1セットくらい取れた可能性もありますね。
相手がどう出るかわからないので、難しいとは思いますが…。

小林さんのブログ、そして小林さんもコメントされたrioさんのブログのお陰で、最近ようやく試合の見方が変わってきました(おバカな関係者で恥ずかしい限りです)。
Vは長丁場なので大変だと思いますが、頑張ってくださいね!

posted by ぽんこ | 2007-12-03 01:17

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

こんにちは。

見られなかったブルガリア戦の”鍵”に大興奮です。ブルガリアは気づいてローテを変えて来たのに、日本はそのまま。植田監督は「気づいていなかった」のか、「分かってたけどローテを変えるリスクをとりたくない理由があった」のか、気になるところです。

W杯では、好調だったセンター陣の中で控えに甘んじることが多かった富松選手。その分、Vリーグで大爆発をみせてほしいです。

posted by rio | 2007-12-03 05:17

2007ワールドカップ第4ラウンド東京大会を観戦して

小林さん、バレーの試合におけるリスクとリターンについて、詳しくご説明いただきありがとうございます!小林さんの観戦の感想や解説は、さすがにポイントを突いているなーといつも感心しています。


> 当然ミスを怖がってばかりいたら良いプレーも生まれません。
しかしミスをする可能性(リスク)を受け入れてでも勝負する場面と、ミスを回避して体制を立て直す場面とがあって良いと思います。

BRAが見せたような粘って粘って相手のミスを誘うようなバレースタイルのほうが、日本人向きな気がしてしまいました。

口で言うのは簡単かもしれませんが、私も全日本チームにできればBRAのような粘りがあってスピードのある魅せるバレーを期待します。RUSのようなバレースタイルは個人的に男女共、好きではありません。

BRA対RUSの3セット中盤あたりからTV観戦しましたが、RUSは雰囲気が悪く、ミス続出で全然、面白くなかったです。ひとつ言える事は、強豪チームでもミスが重なるとチームの雰囲気が悪くなり、だんだんやる気を失ってしまうという点です。これは日本だけでなく、世界各国に共通しています。大切なことはチームに悪い雰囲気を呼び込まないこと、長く停滞させないことではないでしょうか。
「取られたら取り返す」。毎回、これが出来れば言うことないですが、誰かがミスをした後、それをカバーして決める選手がいないといけませんね。
外国人の場合、欧米の選手ほどチームメートへの細やかな気配りができているのではないかと思います。彼らは個人主義で、いつも団体行動するわけではありませんが、その代わりに他人の感情も重んじています。簡単に言えば、チームメートの神経を逆撫でするような行為は慎んでいると思います。そういう姿勢はコート上にも表れるものです。選手も人間で、感情があるわけですから、選手同士、監督対選手の感情面がしっくりいっていないと試合で実力以上のものを発揮できません。正直に言って、今大会を通じて、全日本男子チームにものすごく強い絆があるようには感じませんでした。
小林さんが指摘されたUSAチームのレセプション時の声掛けなどは正にその例で、まずはチームをいい雰囲気にすることから始めるべきだと思います。

posted by ピピ | 2007-12-04 17:39

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