2009年01月26日

Jリーグ いますぐ為すべき3つの改善

いまこの国におきている多くの問題を、僕は“米国発の金融危機”以前に、この国の政治、長きに渡った自民党政治の腐敗や官僚支配の増長によるものだと理解しているが、その構図はそのままJリーグや日本のサッカー界においても、少しの時をおいて再現されるのではないかと思っている。要するにこの1~2年のうちにサッカー界におこるだろう様々な事柄は、一見“米国発金融危機”を主因として受け取られるものかも知れないが、その実態は決してそれだけではないのではないか…ということである。

結果平等と機会平等は、経済の世界ではよく聞かれる言葉であるが、いま米国の、行き着いた現実の一例としての“新自由主義”なるものが崩壊の危機に瀕しているとしても、僕は結果平等を求める社会よりは、機会平等を求める社会のほうが、やはりはるかに健全であると考える。これが数多の社会生活を営む民衆の為の政治ではなく、自らの意志でここに集い、自らの努力と挑戦によって、ここに何かを打ちたてようと集ったプロの集団の為の政治であるとするならば尚更である。

だからこそ僕は、その戦いの場に臨むものとして、何よりもまず“自主自立”こそが最低の条件であり、経済的にそれを為し得ないクラブが在るとするならば、当然ながらそこに参加する資格は無いものと思っている。

TV放映権を含むJリーグ配分金制度に対して、僕は反対の立場なのだが、その理由は下記の3つによるものである。

1.クラブの営業努力や開拓心がスポイルされる。
2.富の再分配システムによってトップクラブの成長力が削がれる。
3.Jリーグ(社団法人日本プロサッカーリーグ)自体の営業努力や経理情報開示への姿勢が曖昧かつ不透明である。


興味のある方は『Jリーグ配分金の推移(J1クラブ平均)』を見て欲しい。
2004年を境に徐々に各クラブが受け取る配分金の平均額が減じているのが分かるはずだ。これは新規参入クラブが増えれば増えるほど今後も減少するだろう。この大不況のただ中にあって、Jリーグ(社団法人日本プロサッカーリーグ)自体の支出がカットされるか、売り上げを大幅に増やすかしなければ、今後その減額傾向にはさらに拍車がかかるものと見込まれる。その時、この配分金に依存しながらどうにかこうにかやりくりをしてきた地方の新参クラブたちは、果たしてどうなるだろうか?結果、生めば生むほど、増やせば増やすほどに、まずはじめに困窮するのは、そんな“自主自立”の基盤を持たぬままにJに参入してきた経済的足腰の弱いクラブたちになるのではないだろうか?そしてこのシステムで、最後の最後まで自省なく優先的に守られるのはJリーグ(社団法人日本プロサッカーリーグ)である。この構図もこの国のそれと本質的に同じである。まただからこそ、そこに“危機感”が無いのだ。

自分なりのJリーグ改革案、健全化案として、

短期的にできること、
中期的に目指すべきこと、
そして実現不可能かもしれないが、あるべき理想の姿というものがある。

その短期的にできることとして、まずは

1.移籍係数(現在協議中)とベストメンバー規定の廃止。
2.選手保有枠(23名程度へ)の削減。
3.クラブスポンサーの全面解禁。

の3つを来期にも実施すべきであると思う。この1つ1つについてあえて細かく説明することはしないが、すべてクラブの経済と自立に直接繋がる重要な要素であるとともに、若く有能な選手達の出場機会創出に対しても有効な施策である。

“結果平等”のシステムは中期的なテーマとして可能な限り排してゆく中で、“機会の平等”だけはいますぐに着手し、来期に照準を定めて、認められるものすべてを認めるべきである。これらは“公平”の基準に沿ったルールの改善である。人為的な弱者救済、横並び為の方策とは理念の点で根本から異なるものである。そしてさらにJ参入基準やリーグ体系への私案については後日改めて触れようと思っている。

本当に苦しいのはこの春からの2年。或いは3年…。
JFA・Jリーグが、この深刻さを切実に把握し、公平の基準を踏み外すことなく、キチンとした施策さえ打てれば、そこで倒れなくてもすむいくつかのクラブを救うことも可能だろう。

折りしもこの1月23日にJリーグは、若年層プレーヤー改革プロジェクト「J.LEAGUE Under age players Move up Project」を発足させたとのことである。現状のままのサテライトの充実や、ナビスコのU23化など、地方クラブの経済状況、その窮状を踏まえない“負担増”を強いる強化の方向性が打ち出されることのないよう切に願う。

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posted by 桐谷 |10:53 | Jリーグ改革案 | コメント(13) | トラックバック(2)
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2009年01月21日

【AC最終予選】 対イエメン 戦評 

まずこの時期にこのレベルまで仕上げてきて、あれだけ走れた選手たちに拍手をおくりたい。特に中村憲剛や鹿島の選手たちにおいては、ここからACLを越えて、シーズン終盤までコンディションを維持できるのかな…と少なからず不安でもある。来月のWCアジア最終予選オーストラリアとの一戦をにらめば、この時期のイエメンとの公式戦は、むしろ控えの選手達にとってよい準備になったと言えるのかも知れないが、今後も所属クラブで長いシーズンを戦っていくことを考えれば、やはりこのスケジュールは過酷である。
合宿中、ケガで脱落した選手たちの回復も含めて、シーズン前これ以上のケガ人なく選手をクラブへ返せるよう願っている。

試合全体を見渡せば、いつもの日本代表の試合であり、いつもの日本代表らしい内容と結果であったが、細かな部分にフォーカスすればチーム全体での“ゴールする!”という意識が、折々にカタチになって現れた良いシーンも少なくなかった。PA手前、人数をかけてダイレクトでパス交換しながら相手ゴールをこじ開けてゆこうとする連携。クロス時のPA内の陣形。またゴール前に飛び込んでゆく人の数…。

その前の“連動”のレベルが物足りなく、また終盤は個の仕掛けでゴリ押しをはかろうとするプレーが増え、結局はモノにすることはできなかったが、狙いとする“ゴールへの意識”とそれに対するピッチ上の“共通認識”も見え隠れし、その点についてはこれまでのひとつの継続の成果と評価したい。

相手との自力の差もあり、カウンターの恐怖に腰を引かされるシーンがなかったこととも無縁ではないだろうが、今回選出した若い選手、代表経験の乏しい選手たちが、そんな監督の意志をゲームにおいて不完全ながらも体現できたことは、前向きに捉えたい。どんなメンバーであっても、今の代表のサッカーを実践できるということの確認はできたのではないだろうか。

また、選手個々に目を向ければ、中村憲剛と田中達也の姿に僕は深い感銘を受けた。
このような時期に、このような試合において、このレベルの選手たちが、率先して誰よりも走り、頑張る事を自らに課すそのプロ“意識”と、代表選手としての“覚悟”を、若い選手たちの目の前で見せつけてくれた。これは当たり前のことのようでいて、決して易しいことではない。この難しい試合において、美しいもの、価値あるものを、惜しみなく見せ付けてくれたこの選手たちの姿勢に、僕は心からの敬意を表したい。もし彼らがいなければ、きっと僕はこの試合最後まで見ることはできなかっただろう。

試合とは別に、今回昨年の天皇杯出場選手のスケジュールを考慮し、代表選手の選出を行なった岡田監督の決断を評価したい。オシムさんであれば、もしかしたら構わず召集していたのかも知れない。ここに柔軟に対応すること、クラブ側や選手側の事情を配慮してゆくことは、これからの代表とクラブの関係を考える上でとても大切な事であると僕は考える。信頼関係とは、一瞬で壊せるものだが、それを築くにはきめ細かな積み重ねと長い歳月を必要とするものである。これが良い契機となることを期待したい。

若い選手たち。
特に香川真司や金崎夢生、柏木陽介などの才能は、僕の目にも眩いばかりである。けれども彼らが日本代表として何かを為すには、まだまだ不足しているもの。足りないもの…がある。それはきっと、この日中村憲剛や田中達也、巻誠一郎らが見せてくれたもの…であると僕は思う。

特別な才能に恵まれた訳ではなかった彼らが、今こうして日本代表のピッチに立ち、誰よりも大きな歓声を浴びながらそこで戦っている姿。きっとそれに学ぶ者たちが彼らをピッチ上から引き摺り下ろしてゆくのだ。それを超えようとする者たちが、新しいニッポンを築いてゆくのだと思う。『ガンバレ!』と言われなくても頑張る彼らに僕にはかける言葉などないが、香川真司や金崎夢生、柏木陽介や興梠や内田には、大きな声で『頑張れっ!』と叫ばせてもらおうと思う。もっと頑張れっ!早くやつらを引き摺り下ろせっ!と。

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posted by 桐谷 |11:27 | 岡田JAPAN | コメント(13) | トラックバック(0)
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2009年01月19日

アジア枠はニッポンを強くする

アジア枠…の議論がかまびすしいようだが、概して否定的な意見が多いように思う。

韓国人選手ばかりじゃないか。

これではさらに日本人の若手の出場機会が減ってしまう。

といったものだが、韓国人選手に関しては折からのウォン安もたぶんに影響しているだろうし、1枠という中途半端な縛りによるものではないかと考える。これでは強化以外の、ビジネスとしての腰を入れたアジア展開は見込めないし、実際海外での放映を勝ち取った場合には、それにトライしたクラブが正当な果実を受け取れる仕組みは考えられているのだろうか?そこに明確なインセンティブがなければ、どこもタイ、ベトナム、マレーシアやインドなどにはトライしないし、実際する意義もないだろう。その点についていったいJリーグはどう考えているのだろう。

また日本人の若手出場機会については、FC東京監督の城福氏もエルゴラッソで言及されていたように思う。短い記述でもあり、実際氏がそれについてどう考察されているのかまではその記事から詳しく伺い知ることはできなかったが、アジア枠を増設すれば日本人選手の出場枠が減るのは確かである。
しかし、同時にそれによって即ち日本人選手のレベルが下がったり、向上しないのか…といえば僕は絶対にそんなことはないと思っている。

欧州主要リーグでは、ご存知のようにほとんどの場合EU加盟国であれば登録に制限などない。EU圏外の外国人においても試合出場枠としておおむね3人は認められているし、また、二重国籍や過去の歴史的関係性において規制は非常に緩やかなものだ。よってどの国を見ても実質ピッチ上には半数ぐらいの自国籍選手枠しかないことになるが、それらの国は弱くなっているだろうか?

僕はそうは思わない。
例えばイングランドには、ピッチ上ほとんど外国籍選手…などという構成が常態化しているクラブも少なくはないが、彼らがイングランドを弱くしているのだろうか?

やはり僕はそうは思わないのである。

彼らはイングランドを強くしている…と思っている。ご存知のようにイングランドにはEU内といえども他国に転出する選手はさほど多くはない。その1部リーグであぶれた選手は他国のトップリーグに転出する訳ではなく、自国の2部リーグで活躍している。しかしだからといってイングランド自体が弱くなるわけでは決してない。2部には2部の厳しい競争があるし、そこで磨かれた選手がまた1部に吸い上げられてゆく循環があるだけなのだと思う。

Jリーグにおいても、自国選手より実力的に劣る外国籍選手であれば、すぐに淘汰されるものだろう。彼らが試合に出場するとすれば、彼らがその試合のレベルを高めてくれている事に他ならない。そしてそこで日本の選手たちも磨かれるのである。

FWが外国人ばかりで、日本人FWが育たない…という話をよく聞く。

では、逆に僕はこう聞き返してみたい。
DFが日本人ばかりで、果たして日本のDFは育っただろうか?…と。日本のGKは育っただろうか?と。

僕に言わせれば、少しずつながらそのどれもが着実に進化はし続けているとは思う。突出してFWが育っていない訳でも、出場機会によってDFやGKばかりが育っている訳でもない。どのポジションにおいても成長はしている。しかしそれは、Jリーグのレベルなり…の成長でしかない…ということである。

どれだけ外国人FWが幅を利かせようと、プレミアリーグにおいてイングランド人FWがいなくなる訳ではないし、リーガエスパニョーラにおいてスペイン人FWが育まれない訳ではない。ルーニーやF・トーレスがそこから生まれてきたように。

もしJリーグがやがてプレミアのような実力を保持するリーグとなるのならば、僕はきっと日本人からルーニーやオーウェンのようなFWが誕生するものと思っている。そしてそんなJリーグにするためには、TV放映権料の増収が不可欠なのであって、そのためにまずは単に強化の為の外国人枠廃止ではなく、アジア枠の開放…という手順なのだと思っている。この道筋は正しい、しかし今の1枠ではまったく不十分である…と。

出場機会を“与える”ことは確かに意義のないことではないと思う。
特に18歳からの21歳ぐらいまでの若手有望選手にそれが欠けている事は間違いのない事実である。そしてそれはレンタル移籍の早い時期での活用や、移籍障壁を取っ払い、若手選手のステップアップを促す土壌をJに拵えればいいのだと思う。

また同時に、日本代表レベルの視点でJを見るのならば、その出場機会に“高いレベルの競争”が伴わなければ、実質的な意味はほとんどないのだとも思っている。ニッポン人だから…と、くれてやる出場枠をいくら確保してやっても、そこで高いレベルの試合が成立し得ない状態では、真のレベルアップには結びつかない。僕はサッカーとは、そういうものであると思っている。

これからのJリーグ改革論のキーワードとして、ダウンサイジングという言葉を僕は用いてみたい。

Jリーグは、いま無闇にクラブ数を拡大するべきではない。
複雑なシステムや規制は、速やかに廃止すべきである。
若手出場機会のためにも、経営の効率化のためにも、保有選手枠は極力絞り込むべきである。
そして組織としてのJリーグ、JFAも、この機会に抜本的にスリム化されるべきである。

それら1つ1つについて、今後改めて語ってみたいと思っている。

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posted by 桐谷 |11:04 | Jリーグ改革案 | コメント(17) | トラックバック(2)
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2009年01月15日

犬飼会長のヴィジョン

近年のCWCを見ていて思うことは、もう南米にもこちらがトキメくようなFW・ストライカーは残されていないんだな…ということである。欧州クラブの青田買いはますます加速し、それとともにロシア・中東までもがそこからあぶれた選手の多くをオイルマネーで平らげてきた。これは10年、20年前のTOYOTAカップ欧州VS南米の趣や構図とも明らかに異なる。実質的には欧州王者シーズン前のアジア興行に、FIFAが多少の色をつけただけのイベントに堕してしまっている。TOYOTAのスポンサードもどこまで続くのか判らないが、変わるべきタイミングなのだと僕は思っている。(2008.12.24)

あけましておめでとうございます。2008年も多くの方に読んでいただき、また励まされて、いまこうして新しい年を迎えることができました。言葉を交し合った方も、また直接交わし合う事はなくともここでお会いした皆さんにとっても、2009年が良い年になることを祈っております。そして間もなく欧州へ戻られるオシムさんにとっても来年が良い年でありますように。(2009.01.01)

アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)1次リーグの組み合わせが決定したが、出場枠の変更に伴い、昨年までに比べると対戦相手がずいぶん強化されたように思う。どのグループにも中韓2チームとJクラブ1チームが入るカタチとなり、移動はだいぶ楽にはなるが、コマを落として勝てそうな相手も見当たらず、勝ち抜くのは本当に厳しい…。これをサポートする為にも、ベストメンバー規定やそれに纏わる明文化もされていない不当な要求などはここで改めるべきであると考える。(2009.01.08)

秋春制の議論もとんと聞かなくなってきたが、やっとのことでサッカー批評最新号のインタビュー記事“犬飼会長のヴィジョン”にまで辿り着いた。まあいろいろと噂は聞いていたが、読んだ印象をひとことで語れば『バカらしい…』に尽きる。そのバカらしさ具合をありのままに引き出してくれた西部謙司さんに感謝したい。それにしてもサッカー批評って良い雑誌だなぁ…と思う。痒いところに手が届く…というか。この雑誌が提議する問題意識は、多くの場合僕自身共有するものである。いったい何万部ぐらい売れているのだろうか?とりあえずサッカー批評ガンバレ!(2009.01.12)

選手権決勝。試合については別に“戦評”を書くつもりだが、ゲームの中で鹿児島城西FW大迫勇也くんが線審にクレームをつける場面があった。果たしてサッカーファンはこれをどう見ているのだろうか?あるいは指導者の方々はこれをどう見ているのだろうか?野球やその他のスポーツ、それも高校年代のそれと比べて、とりわけサッカーにおいてはそういうシーンをよく目にする気もするのだが、単に良し悪し…ではなく、これはなぜなのだろうか?見るものや指導者の意識もまたその他のスポーツと多少異なるものなのだろうか?非常に興味深いテーマである。(2009.01.13)

日本代表監督の選定機関を新設することが明らかになった。これまでは技術委員会が監督候補者を選ぶ権限を持っていたが、新たに会長直轄の組織を立ち上げ、人事権を集約させる。正式決定すれば、日本代表監督の人事権とそれによる責任は、会長が一身に背負うことになる。[デイリースポーツ]
サッカー批評のコメディ…というよりはある意味ホラーな犬飼会長のインタビューを見たばかりで、追い討ちをかけるようなこのニュースに少し戸惑っている。責任の所在が誰にあるのか判然としない今のシステムもいただけないが、かといってこれものめる話ではない。まあ、そんなこと言ってもなにもはじまらないが…。(2009.01.14)

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posted by 桐谷 |11:14 | 一言コラム | コメント(7) | トラックバック(1)
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2009年01月13日

【選手権決勝】 鹿児島城西VS広島皆実 戦評

元旦の天皇杯決勝以来、僕は意図的にサッカーを見ないことにしてきた。
じっくり骨休めできてもいないし、年末の疲れを引きずったまま、またこの場で戦闘モードに突入してしまうことに少し躊躇いを感じたりもしていたからである。

けれどもこの試合を見て、僕が両校のサッカーから与えられたのは、疲れではなくてむしろ元気であり、わくわくさせられるような昂揚感であった。おかげさまで、やっと2009年の自分の中のサッカーが動き出した気がする。

僕はこの決勝戦を、事前の情報から攻撃の鹿児島城西VS守備の広島皆実…というイメージで捉えていた。しかし、試合開始後すぐにそんなイメージは覆され、カウンターの鹿児島城西VSポゼッションの広島皆実…となり。やがて個の鹿児島城西VS組織の広島皆実…となる。自らのチームのストロングポイントを徹底的に磨かれた鹿児島城西のサッカーと、目の前の状況に組織として適切に対応し、様々なカードを自在に選択し得る広島皆実。

特に広島皆実の戦術的な部分。
同点のシチュエーション、ビハインドのシチュエーション、そしてリードのシチュエーションにおける選手個々の選択、チーム・組織としての選択と、そのリスクマネージメントの在り方には深く感心させられた。この知性を選手個々の頭脳に育み備えさせる藤井監督の戦術指導。そしてそんな要求に対応し無理なくそれを実践させ得る、ここに至るまでの小・中学生時代の基本技術の積み上げ。この優勝は、広島のサッカー界全体で享受すべき栄光であり、皆で分かち合うべき栄誉なのだと思う。

鹿児島城西に目を向ければ、やはり大迫勇也くんのスキル、懐の深いキープ・ドリブルとターンの速さ身のこなしにはミライを感じた。そして幾つかのミスもありながら、間延びしがちな前線と最終ラインを数的不利の状況ながら懸命に繋いでいた、10番安田啓優くんの運動量と頑張りにも心打たれるものがあった。この中盤にはキツいスタイルの中で、城西の中盤は本当によく頑張っていたと思う。

また広島皆実でいえば、この試合僕が一番惹かれたのは2番右サイドバックの村田俊介くんのパフォーマンスである。チームとしての狙いもあったのだろうが、終盤の体力的に苦しい時間帯においてもなお短くない距離をトップスピードで駆けながらサイドのスペースへ飛び込み、そのスピードをころさずに精度の高いクロスをトップへ合わせていた。彼のサッカー人生が、今後もさらに上を目指して続いていってくれることを強く願っている。

選手と共に藤井潔監督の今後にも大いに注目したい。
この広島皆実のサッカーを、僕はある意味大人のサッカーであると感じた。的確な戦略や戦術の組み立てと、それを実践させ得る指導…それプラス、広島皆実の選手たちのプレーに、僕は個で判断し、個で対応し得る成熟した“知性”を感じた。もちろんこれは高校入学以前からの蓄積もあるのかも知れないが、藤井監督の指導と無縁ではないはず。ゲームの中の技術と戦術において、ややもすると技術に熱心で戦術、選手個々の知性や判断力の成熟が後れを取りがちなこのニッポンのサッカー界の中にあって、彼のような指導者は非常に貴重なのではないだろうか。選手たちばかりでなく、やがては藤井監督もプロの世界を目指すべきタレントなのではないかと感じたし、それを期待したい。

これだけ磨かれた組織が、サッカーが、この時点で終わってしまわねばならないことは非常に残念であり、指導者の方々にとっても寂しいものだろうと思う。3年間築き上げてきたものに、ここで否応なく別れを告げざるを得ない。高校サッカーの宿命とはいえ、ほんとうに“もったいない…”の一言である。が、そんな一瞬の輝きだけに、またいっそう美しいものなのかも知れない。

UEROの決勝戦を見た。UEFA/CLの決勝戦を見た。
しかしだからといってこの高校サッカー選手権の試合がつまらない訳ではない。むしろ世界のどんな試合よりも熱くなれる自分がいたりもする。サッカーの面白さとは、単にそのレベルなのではなく、戦う選手達のその気持ちの熱さであり、それを観るものの共感なのかも知れない。この試合を観て、あらためてそんなふうに思った。

この選手権に辿り着いた彼らも、そして辿り着けなかった彼らも、高校生活におけるサッカーとの関わりが、その後の素晴らしい人生に繋がってゆく事を心から祈っています。

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posted by 桐谷 |10:48 | 高校サッカー | コメント(13) | トラックバック(0)
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2009年01月08日

世界の中のニッポン 

サンパウロやパルメイラスは無理だとしても、もしJリーグに、フルミネンセやヴァスコ・ダ・ガマクラスのチームが1つ2つ加わればJリーグのレベルはどれだけ底上げされるだろうか?そのレベルのチームと少なくとも年間2~4試合、多ければ4~8試合ものガチンコの試合が組めるメリットは、Jの強化にとってどれほどの利益を齎すものだろうか?

富めるチームがさらに富むこと。
それによってさらに強化されること。
最終的には欧州各国のように、2強~4強とその他のチームというおおまかな階層が、結果として構成されてしまうこと。

これらはむしろ自然なことであり、Jリーグ全体を俯瞰して見れば、悪い事…どころか、逆に良い事であると僕は思っている。

僕が感ずるここ数年のJの頭打ち感…は、おもにその2~4強を形勢すべきトップクラブの躓き(背広組の無策や失策)と、突出した外国人助っ人の度重なる他国(特に中東)への流出を主因とするものであるが、これがJリーグ・JFAによる厳しい競争環境を促進するための正しい施策と、各クラブ背広組の学習や世界の激変する経済状況によって是正され、適切に強化へと結びつける事ができたならば、それはJ1のその他のクラブどころか、広くJFLにまで波及し、この国全体のサッカーのクオリティはさらにもう一段階底上げされるだろう。

その為にも、僕はJリーグ改革の柱として、横並びの平等主義を廃し“自由で公平で尚且つ激しい競争”を促す方向性を打ち出すべきである…とこれまで解いてきたし、その為に必要だと思われることの核として、TV放映権の問題からAFC枠自由化、選手保有枠、さらにはベストメンバー規定の廃止にいたるまでしつこく書き連ねてきた。

これらはすべてバラバラの話のようでいて実は密接に繋がっている。

優勝劣敗が勝負の世界、プロの世界に生きるものの鉄則であり、弱肉強食はさらに自然界の法則である。困っている人、苦しんでいる人をみればニッポン人はすぐに手を差し伸べようとするが、それが公平である限り避けては通れない現実でもあるのだと僕は考える。これが社会の問題ではなく、プロの世界、勝負の世界における出来事であるとするならば、なおさらである。

この、世界に繋がる競技において、いつまでも弱きを助け強きを挫いていては、世界への扉は永遠に開くことはできない。俯瞰して見れば、日本の強者は未だ世界の中の弱者でしかないのだ。Jリーグの終わりなき平等・拡大政策が、いつまでもこれの強化の妨げになっていてはいけない。
そして日本の中の強者が、世界の扉に手をかけた時、この国の弱きものたちは、世界という括りの中では、充分に強者足り得ている筈なのだ。

【Jリーグ】 2008シーズン 展望

昨年のJリーグ開幕前に僕はシーズンを展望し、鹿島アントラーズとガンバ大阪の優勝争いを予想している。当っている部分も外れている部分もたくさんあると思うが、期待通りのチカラを発揮できなかったガンバや浦和は、やはり上記の助っ人流出と背広組みの失策が、結果に大きく影響したのではないかと思っている。残念ながら1強へ向けてすべてのお膳立てが整っていた浦和は、最後の詰めで背広組みが判断を誤ったと共に、そのための十数億円もの資財をドブに捨て去ってしまった。ここからまたやり直しである。
一方ではガンバ大阪や川崎フロンターレ、そして鹿島アントラーズが、いまクラブの土台を磐石に築きつつある。この中からJリーグにおける今後10年の強者の地位をしめるものが、世界においてフルミネンセやヴァスコ・ダ・ガマに比肩する実力を有するクラブがぜひ誕生して欲しいと僕は思っている。

その為にも、それを促す意味でのJリーグ改革が、いま必要なのである。
このJ開幕までの短いオフを、僕はそんなJ改革私案のまとめに充てたいと思っている。
現実的か実現可能か…など、門外漢の僕にはまったく関係のない話である。ただ、あるべき理想について、この機会に語り尽くしてしまいたいと思っている。

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posted by 桐谷 |11:17 | Jリーグ改革案 | コメント(38) | トラックバック(2)
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2009年01月05日

オシムのいた楽園

PARADISE

エデンの園。楽園。キリスト教で救われた人が、この世を去ってから行く幸福なところ。天国。一般に、悩みや苦労のない、楽しい世界のたとえ。※小学館カタカナ語辞典より

アジアの或る南の島のビーチにPARADISOというレストランがあった。
そのレストランではマズいと評判の焼き飯やヤキソバなんかとともに、ウ●コ臭いと評判のミートソースがあり、同じくウ●コ臭いと評判のハンバーグがあった。何を頼んでも、ほぼ100%マズいかウ●コ臭いかのいずれかに当ることは間違いないのだが、夕暮れまでビーチでゴロゴロしたりボールを蹴って遊んだりしていた僕らは、夜になるとそのPARADISOに詰め掛けた。サッカーを見るため、プレミアリーグを見るために…である。

どこから見ても金を持ってなさそうなイギリス人やドイツ人、スペイン人なんかが、この時間だけはビール片手に嬉々として1プレー1プレーに声を張り上げ、楽しげに互いを罵倒し合う。試合が終われば、今度は互いに、自己紹介でもするかのように、お気に入りのチームのお気に入りの年式を語り合う。

ある者は『1995年のアヤックスは最強だった』と言い。またある者は『1992年のバルサの方が強かった』と言う。『悔しいが80年代後半のミランが一番強かっただろう』という者がいると、『アーセナルもチェルシーもク●喰らえだ。俺にはミルウォールしかねぇ』と、ウ●コ臭いハンバーグを素手で口に運びながら叫ぶイカにも…な感じのオッサンもいる。

味は最低だったし、値段も他に比べて割高だった。店のク●ガキはいつもつり銭をくすねるし、大概最後にはミルウォールのオッサンが誰かにケンカをふっかけてお開きとなるのだが、それでもそんなことすべて知った上で、僕らは毎晩そのPARADISOに通った。

きっと要するに、あの頃の僕らにとってはサッカーそれ自体がPARADISO…楽園であり、キリスト教も仏教もヒンドゥー教もイスラム教も関係なく、悩みや苦労のない、楽しい世界を“一時”提供してくれる唯一のものだったのかも知れない。それが僕らにとってのサッカーだったのだろうと、今にして懐かしく思う。

昨日オシムさんはこの国を離れた。
僕はこの出来事に多少の悔しさを感じつつも、彼のためにはむしろ幸いであったのではないかとも思っている。権力者の口実やアリバイ、または体裁の為のなんら実権のないお飾りの役職であれば、むしろそれはオシムさん自身の誇りに傷をつけ、現場復帰への意志に対する障害となったかも知れない。彼のこの国のサッカーに対する貢献や愛情に恩義を感じればこそ、僕はこの国において彼にそんな思いはさせたくないと思った。

それならばここで一度別れて、いつかの再会を夢見るほうがずっと健全な気がした。
そして僕は、これまで以上に大きな希望を持って、彼との再会を待ちたいと思っている。ここで、待つつもりでいる。様々な可能性についてあらかた認めた上で、ひたすら待ってみようと心に決めた。彼が何ものかと戦い、そして未だ戦い続けているそのキセキに、陰ながら声援を送りつつ。

彼の人生にとって、この国が、果たして一時のPARADISO足り得たのかどうか?
僕にそれを語る自信はないが、少なくとも昨日成田に駆けつけた教え子たちとの絆、数百人もの黄色いレプリカを身につけた人たちとの絆、そしてそこに姿はなくとも彼を想い、慕ったすべての人々との絆が、この国での悩みや苦労を、一時忘れさせ、彼を癒してくれたとしたならばとても嬉しく思う。これまでの彼らの、その途切れなかった一途な想いに、いま心からの感謝と尊敬を表したいと思う。

僕もなんとなくいろんなものに疲れてきたし、そろそろ本格的に旅に出かけたくなってきたりもしている。アジアの或る南の島のビーチに建つ悪名高きレストラン。もしそこに、今でもあの日々と同じように、サッカーに夢中な旅人たちが集い、サッカーについて語る夕べが繰り広げられているのならば、僕は懐かしのウ●コ臭いミートソースを口に頬張りながら、そんな仲間たちに堂々とこう言って聞かせたい。

『アーセナルもチェルシーもク●喰らえだ。2004年のジェフ市原が最高だった。イビチャ・オシムのいたジェフが、俺にとっては最高のPARADISEだった』と。

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posted by 桐谷 |11:44 | ジェフ千葉 | コメント(57) | トラックバック(0)
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