2008年12月27日

800時間の邂逅

2007年の6月。
あのアジアカップの直前にこのブログを書き始めてから、もうすぐ1年半が経ちます。
エントリー数もまもなく200に近づこうとしている。

本文をひとつ立ち上げるのに概ね平均1時間。
そこからいただいたコメントを拝見し、それに対応するのに平均約3時間。
一編につき平均約4時間。
×200で800時間。
約500日で800時間なので毎日に直せばほぼ2時間弱…。

たかがブログ…なれど、自分なりにこの国のサッカーが強くなってゆくこと、進化してゆくことを真剣に夢見ながら、この一年半の日常生活の余暇の大部分をここに投入してきたように思います。

いちど止めてしまおうと思ったこともありました。
オシムさんが倒れ、JFAにオシムさん再任の意志が微塵も無いことが判った時です。
けれども逆にその時になって、自分にとってのここで書く意義、継続する意義のようなものが、はじめておぼろげながら見えてきた気がしました。どこかにゴールは設定したいと思ってはいますが、今は途中で投げる事はできない…と、妙な義務感と反骨心に駆られて、時にクタクタになりながらもこれを継続しているところです。

このブログにおいて、僕が絶えず頭を悩めているのはコメント欄に対する僕自身のスタンスと対応です。

自身が本文に描いた、描こうとしたそれと、これを受け取り、自身の価値観で解釈される人のそれとは、当然のことのように異なる。ここにはさらに僕自身の文章力の問題と、読者の読解力の問題が、必然的に介在してくる。きっと100人の読者がいれば100通りの解釈があるのだと思うし、本来それは自然な事なのだと思ってもいます。が、この書き手の意図とは異なる解釈や時に歪曲されて論じられるいちいちの主張に、限られた時間の中、誠意を尽くして応対するという事は、誰にとってもカンタンなことではないはずです。

また仮に描こうとしたものそれ自体が正しく伝わっていたとしても、それをどう受け取るかの哲学や倫理観には当然千差万別の個性が在る。世の中にひとつとして同じ正義は存在しないでしょう。

僕が一番疑問に思うのは、一部のものとはいえ、この場で関わりあうならば、或いは関わりあおうとするのならば、どうしてその当たり前の差異や相違を、当たり前のことと受け取り、他者の価値観に充分な敬意を払ったうえでものを語れないのだろうか?ということなのです。

そうでなければ…、そもそも頭からその書き手の価値観を否定するか、自らの主張を論じたいだけであれば、人様の庭を踏み荒らすようにそれを為すのではなく、自分自身でそんな場を拵えて、そこで唯我独尊の自由を貫けばいいし、議論がしたいのであれば、誰に嫌な思いをさせるでもなくその場を利用すればいい。

ラーメン屋さんの軒先で、
『ここのラーメンまずいですよ。僕の作るラーメンの方がうまいですよ!』
と叫ぶ人は見たことはないし、
『麺の茹でかたがなってないよ。スープにも旨みが足りない』
なんて文句をたれている人を僕は知らない。

まずければ二度と行かなければいいし、であれば店主にまずい理由を説明する必要もない。ラーメンを作る彼にも意地や誇りがあるだろうし、彼には彼の“他者とは異なる”価値観というものが当然のようにあるだろう。

しかしこれがスポナビのブログであれば、日々なぜか当たり前のように繰り返されている。
そもそも彼らはそれを売りつけられた訳でもなく、読んでくれと乞われた訳でもないのに。

それでもうまいラーメンが食べたければ他を探すか、どこにも見当たらないのであれば自分で作ればいい。当たり前のようにそうなれば、誰も不快な思いをする事はないし、書き手の皆さんにとってのこの場も、今よりずっと楽しいものになるのではないだろうか。さらに斬新で突飛な、突き抜けた個性を発掘する事も可能かもしれないし、僕はそんな差異や相違こそを、遠巻きに拝見し、また存分に楽しみたいと思っている。

いま年をとったからこそ、僕には骨身にしみて実感させられることが1つだけある。
それは自分自身の“無知”についてである。

何かひとつ知識を得るたび、自分自身の無限の無知を否応無く思い知らされる。今では得ようと欲しさえすれば、知識はいくらでも手に入るものになったが、だからこそ知識を得るということを、ひとつの戒めとしなければならない…と僕は思っている。新しい知識は、僕に僕自身の無知を教えてくれる。知識を得るということは、自分自身の無知を知る…ということなのだと。


あと何回、僕はこの場所で自身の無知を曝け出すのかわかりませんが、実際のサッカーと同じように、なるべくなら日々楽しみながら続けてゆければと思っています。
またこんな僕のコメント欄に対するスタンスや考え方が、このネット上の非常識であったり、通らない価値観・倫理観であるのだとすれば、今後はこのコメント欄に対して僕自身が一切の関わりを持たずに放置するか、或いはコメント欄自体を廃止して本文のみ書き進めていくかのどちらかを選択しよう…と考えております。

これまで多くの人に親しみや勇気や励ましをいただいたことを、いま心から深く感謝しております。

時間があれば、また年内に何か本文を立ち上げることもあるかも知れませんが、ひとまずこれだけ言わせていただきます。

今年も最後までお付き合いいただき、ほんとうにありがとうございました。
皆さんにとって、来年が良い年でありますように。

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posted by 桐谷 |11:24 | その他 | コメント(36) | トラックバック(2)
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2008年12月25日

サッカーの皮肉 サッカーの不条理 

バックパス禁止のルール化やベストメンバー規定に関する発言はだいぶ後退してきたかのようにみえる犬飼会長であるが、秋春制に関しては断固として折れる気配は無く、自身の再選を見越して2012年までには、チカラづくでも強行突破を仕掛けるタイミングを探してくる事だろう。この状況において、本来大切なのは歳入の維持ではなく無駄な歳出のカットであるにも関わらずに…。これも国の政治と同じである。そして国とは異なり無尽蔵に国債を発行できるわけではないので、窮したとたんに先送りは効かなくなる。今のうちにスリム化を図るべきなのだと僕は思う。(2008.12.12)

今年のオフは、いくつか少し首をひねりたくなる監督交代劇が繰り広げられた訳だが、もしこのベガルタ仙台が、手倉森誠監督を解任して事前に噂された元五輪代表監督の招聘に向かうのだとすれば、同じように釈然としない疑問が残る。現状の戦力を踏まえれば、僕は充分なパフォーマンスを見せてくれていると思うのだが…。今シーズンの何試合かを見て、そして入替戦2試合を拝見して、僕は仙台のサッカーと、ベガルタのサポーターの皆さんにとても楽しませていただいた。来シーズンこそ良いスタートを切って、ぜひJ1に返り咲いてくれる事を期待している。(2008.12.14)

今回のアデレードは鹿島と戦ったときのあの強いアデレードだったように思う。この足元の技術のおぼつかない選手たちを率いて、しっかりと繋ぐサッカーにトライし、ここまでに創り上げたビドマー監督の手腕は、やはりなかなかのものであると思う。フェイエノールトやテネリフェなど欧州での経験も豊富な人材である。欧州を知り、日本を知り、そしてアジアをも知る若き有能な指導者。いずれJリーグにおいて、彼の創り上げるチームを見てみたい。(2008.12.16)

実際にマンUが、どのレベルの“本気”で挑んできてくれるのかは分からないが、ニッポンの、Jリーグの“スペースとリズム”で、プレミアの、マンUの“スペースとスピード”に、どこまでやれるのか、或いはどこまでヤラれるのか…を、個人的にはチェックしてみたい。彼らの“本気度”にもよるが、ガチンコならば、中盤でさえまず前も向かせてもらえない展開になるのではと予想する。アジアで見る遠藤保仁のキープ力も粉砕されるのかも知れない。僕なら予め彼を下げて、低い位置から前線に勝負のパスを出させたいところだが、今回は正攻法のぶつかり合いを見てみたい。(2008.12.18)

CWC決勝戦。皮肉なもので、一人多くなって攻めざるを得なくなったキトと、それによって逆に得点のチャンスを拡げる事ができたマンU。もしもあのまま11対11のまま試合が進んでいたならば、キトはPK決着にまで持ち込む事もできたかも知れない。サッカーの不条理がまざまざと露になった試合であったと思う。GKカレロはこれで引退と聞いたが、幾つかすごい反応を見せられた。こんなGKをぜひJでも見てみたい。そしてやっぱりルーニー…。今が彼の絶頂期なのだと思う。この瞬間を見逃してはならない。(2008.12.22)

昨夜、やっとサッカー批評最新号のオシムさんのインタビューを拝見した。木村元彦さんとのやりとりということもあったのだろうが、彼にしては珍しく、ストレートに今後の協会での仕事、JFAにおける取り組みに意欲を見せているセリフもあり、アドバイザー契約の解除は彼からすれば意外でもあり、また辛い通告であっただろうことをうかがわせる。勿論インタビューがあったのは“通告前”の事である。彼はCWCのガンバを、遠藤保仁を見てくれただろうか…。彼の運動量と判断力、パススピードの意識と前へのトライを見てくれただろうか…。痕跡は確かに残っている。この国のいたるところに、それは息づいている。(2008.12.23)

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2008年12月24日

クラブワールドカップ改革、最終案

来日直前に南米最高のストライカーと契約を結び、ゲーム一週間前には来日して体調を整え、僅か2日ほど前に来て時差調整もままならないままの欧州王者を迎え撃つ南米王者。

ゲームとなれば、幾人かの熱い魂を持ったものと南米出身者以外は、あきらかにダレた様子の欧州チャンピオン。彼らに、ガチンコの南米が激しいチャージと闘争心で果敢に挑み、欧州王者の意地の前に、一人の男としての闘争心を呼び起こすことで、その戦いは徐々に熱を帯び、ヒートアップしてゆく…。

ずっとそれが、僕はこのTOYOTACUPの構図であったような気がする。

モチベーションに欠ける欧州王者の闘争心に火をつける戦い…。
勝ち負けは別として、僕の基準としては、そこまで辿り着いたときにこの大会は成功であり、辿り着けなかったときには、この大会は失敗であったと考えてきた。そして残念ながら、現在のこの構図にも限界が近づいてきているのではないかと思っている。

しかし、だからといってUEFAを除く“その他の世界”にとって、これは決して失ってはならない、失いたくない大会であることは自明である。では、どこでどう折り合いをつけてこの大会を存続させるのか。さらに実質を伴った、どちらにとっても価値ある大会にまで持っていけるのか…と考えたとき、僕は世界一決定戦というこの興行を、わずかな条件の下にそのままUEFAに預けるのが一番効率の良い、また可能性を秘めた方策であると考えている。

昨年の夏に僕は、

Jリーグへ その1 クラブワールドカップ改革

の中でそのラフなデザインを提示したのだが、これをさらに自分自身の発想と感覚で自由に企画できるものならば、僕はこの現状のCWCを下記のように改革したいと考える。


1.欧州チャンピオンとその他の世界チャンピオンの決勝戦1マッチ『世界クラブCUP』と、その他の世界チャンピオン決定トーナメント『世界チャレンジCUP』の2つの大会に分割する。

2.『世界クラブCUP』は、必ずUEFACL王者の本拠地にて開催する。興行収入・利益に関する権利はUEFA+CL王者クラブに譲渡する。

3.『世界チャレンジカップ』は現行のCWCから欧州王者を除き、各大陸持ち回り(オセアニアはのぞく)のFIFA主催で開催される。オセアニア代表は大会前にアジアorアフリカとの予備予選を義務付ける。

※実質3の興行を成立・存続させるのが一番大変な部分だろう。金銭的な利がのらなければFIFAのCWCに対する意欲も失われる。本来このような部分にこそJFAは尽力してもらいたいのだが…。


昨年この素案を書いたときも、『それでは欧州が有利すぎる』『公平ではない』『アウェーで勝てるはずがない』との意見を頂いたが、この国のサッカーファンにそんな価値観が根強いことも確かなのだろう。しかし、僕はこうも思う。モチベーションに欠ける欧州王者に勝つ事と、地元のプレッシャーと欧州LIVEの視線下で、負けられない彼らと、より“ガチンコ”に近い勝負ができること…。果たしてそのそのどちらが、ほんとうに価値あることなのだろうか?

これにはさまざまに異なる価値観が存在するだろうことは認めるし、あえて言及されるまでもなく理解するが、僕は欧州の“本気”を引き出し、そこに全力で挑める図式の方が、その他の世界にとっても遥かに価値のある試みであると考える。その有利を逆に捉えれば、欧州王者にとってはより“負けられない”状況を作り出すことに他ならないのだから。

そしてこれにより“その他の世界王者”決定トーナメントも、興行的価値はいくぶん損なわれるものの、その実質は今以上に公平で厳しく、また意義あるものに変革し得るはずだ。

このような図式にすることで、確かに欧州の有利は如何ともし難いものになることは間違いないが、しかし今の図式でCWCを継続して、もし仮にキトがマンUに勝っていたならば、キトは世界王者として世界に承認され得ただろうか?そこにこの大会の栄誉や権威、名声が育まれてゆくものなのだろうか?

僕はそこに大きな疑問と欺瞞を感じる。

欧州のサッカーファンに、その他の世界の存在とこの大会の意義を周知し、認知させ、また根付かせるためにも、僕はこの大会、決勝戦がCL王者の本拠地で執り行われる事を願ってやまない。そうすることでこの大会のステータス、そしてその利益は、将来的に大きな期待値を含むものとなることだろう。僕はそんな、構造上完全ではなくとも、ある程度の実質を伴った世界一決定戦の実現を夢見ている。

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posted by 桐谷 |11:38 | ACL&CWC | コメント(14) | トラックバック(3)
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2008年12月22日

CWC総括 浦和レッズかガンバ大阪か

このCWC準決勝と3位決定戦。

異なる2つの試合において、異なる2つの対応を求められ、それを高いレベルで遂行し得たガンバは予想を上回るデキだった。今年後半の流れは、悪しきポゼッションの轍からの脱出がひとつのテーマとして追求されてきたようにも思うが、遅攻と速攻を高い次元で使い分けられるようになった今、このガンバのサッカーはさらに1歩前へ前進することができたのだと思う。

2人の強力なストライカーの加入が噂される来期が今から非常に楽しみである。遠藤保仁さえ繋ぎ止めることができれば、来年のアジアチャンピオンの最有力候補ともいえるだろう。厳しいスケジュールの中ではあるが、最後のACL出場権を手中に収める事ができるかどうか…。今後、天皇杯の行方にも注目してゆきたい。

昨年、浦和レッズがACミランに敗れた時、僕はこの場でこう語った。

~この試合の積極的か消極的かの議論や評価とは、両者のその現実を踏まえた上で、僕達それを見る者がいったい何を望んでいたのか…本質的にはその立場こそが問われるのだと改めて僕は思っている~

~少なくともあのACミラン戦においては、彼らはその攻められない、ボールを奪いに行けない状態を必死で耐え忍びながら、Jリーグ王者、そしてアジア王者として、勝つための最善の可能性に最後まで賭けていた…今もって僕のその評価はまったく揺るがない~


今年のマンUに対するガンバ大阪の攻める姿勢、点をとりに行く姿勢と、昨年の浦和レッズの守りの姿勢、点を取られないための姿勢は、ある意味サッカーのスタイルとしては対極に在るものなのかも知れない。しかし、より勝ち負けに対して切実なトライをしたチームがどちらで、その可能性を追求したチームがどちらであったのか…と問えば、僕はきっとそれは浦和であっただろうという感想を持っている。

しかしその一方で、大勢に迎合する訳ではないが、嗜好としてそのどちらのスタイルを僕が好むのか問えば、間違いなくガンバのそれを好むし、彼らがこんな戦い方をしてくれたからこそまた、少なくない人々に欧州とニッポンの間のその“隔たり”を、ありのままに認識してもらえたのではないかとも思う。

対比としては浦和の0-1とガンバの0-5の方が、より明確でまた鮮烈だったのだと思うが、幾つかの運にも恵まれ逆にそうならなかったことでのこの高評価なのかも知れず、だとすればこれをニッポンサッカー界の本質的なコンセンサスとは言い切れないものなのかも知れない。この3-5というスコアは、そう理解するにはいささか都合の良過ぎる“結果”であったといえるかも知れない。

僕は昨年のCWCのコメント欄において、こんなふうにも語っている。

~0-5で負けても前へ出て勝負を挑むのか?
或いはどこまでも0-0を狙って、最後に力尽きて0-1で敗れるのか?
この状況の浦和にとって、そのどちらが正解であったのか?そして僕らの視線はそれをどう受け入れ、評価するのか?

僕達がそのどちらを望んでいるのか?
やはりその価値観に帰結してゆく問題であると僕自身は思っています~


ガンバ大阪はガンバ大阪として求められるサッカー、あるべき姿勢を貫き、浦和レッズは浦和レッズとして、求められるサッカー、あるべき姿勢を貫いた。要するにこれは両クラブとサポーターとで創り上げた文化であるとの見方も可能な訳で、そんな両極端な多様性がJリーグに併存することを、僕は一方でサッカー文化の進展であるとも思っている。ひとつのサッカー、ひとつのスタイルが支配するリーグなど、あまり楽しいものではないだろうから。

しかし、僕らそれを見るもの、見守り育んでゆくものとして、それぞれの愛するクラブに対する、代表に対する、明確な“定見”というものが求められているのではないだろうか?

世界の頂点を目指すこの途上で、いま同じように、どうせ敗れるにせよ、0-1のサッカーなのか、或いは0-5のサッカーを許容し得るのかどうか?

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posted by 桐谷 |11:39 | ACL&CWC | コメント(25) | トラックバック(0)
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2008年12月19日

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評

まず最初に、僕は西野朗氏に謝らねばならない。

もう12年も前のことになるがアトランタ五輪“マイアミの奇跡”と呼ばれる試合から、或いはその前のアジア最終予選の戦いから、僕はずっとこの西野氏の監督としての力量を見縊ってきた…。その最後の土壇場における彼自身の、勝ち負けに揺るがぬ攻撃サッカーへの“覚悟”、“胆力”のようなものを、どこかで見縊ってきた気がするのだ。

このマンチェスターU戦を見て、そして今年のACLでの戦いぶりを見せつけられて、これまでのそんな印象を改めねばならないことがよくわかった。彼がいま、日本人最高の監督であることが理解できた。どれだけの揺るがぬ信念の元に、いま彼が迷いなくガンバのサッカーと格闘しているのかをガツンと思い知らされた気がした。

素晴らしいチャレンジであったと思う。
たとえ運に恵まれず、3-5ではなく0-6で敗れていたとしても…である。

怯まずDFラインを押し上げる事。絶えず前からのプレッシャーを与え続ける事。チャンスには躊躇わず前へ出る事。一対一を恐れないこと。アタッキングサードにおいてダイレクトの速いパス回しで勝負を仕掛け続ける事…。

言葉にすれば余りにも容易いが、これは本当の勇気なくしてできないこと。自信を持たずしてやりきれないこと。そして勝ち負けの次元を超えた“攻撃への信念”なくして貫けぬサッカーであったと思う。遠藤保仁をひとつ下げて、プレッシャーのないところから、縦に速い勝負のパスを繰り出させる。播戸竜二、山崎雅人の動きの質とスピードに手を焼いたマンUのDFラインは、3失点した後半よりも、寧ろリードした前半30分までの時間帯の方に、より大きな不安とストレスを感じていたことだろう。

この点に関して、マンチェスターU側の攻撃と守備の選手におけるガンバ大阪への印象は大きく異なるものなのではないだろうか。クリスチアーノ・ロナウドやテベスから見れば、ガンバDFはさほど恐れるに足りぬイージーな相手に思われたかも知れない。しかし、DFの選手たちから見れば充分に怖い相手であった筈だ。セットプレーからの失点は、ある意味致し方の無いものに思われるが、せめて前半を0-0で終えることができていたならば、また違う世界をのぞき見ることができたのかも知れない。


これが“本気”のマンチェスターUだったかどうか?

負けて即帰国できるレギュレーションではなく、もちろん勝ちに来た試合であったことは確かだと思うが、優勝を争うプレミアと同じだけの、或いはCLを戦うそれと同じだけのテンションで彼らが戦ってくれたのかどうか?と問われれば、僕はやはりそうではなかった。そこまでの“本気”は見えなかった…と、残念ながら思っている。もし彼らがそのレベルの“本気度”でこの試合に臨んでいたならば、あれほど遠藤保仁に自由を与える事はなかったと思うし、中盤のボール回しに余裕を与えてくれる事はなかったのではないだろうか。だからといってこのガンバの素晴らしい挑戦を讃える気持ちに変わりは無いが、Jと世界との“隔たり”については、なお冷静な認識を持ち続けるべきであると僕自身は思っている。

ではどうやったら彼らの“本気”を引き出す事ができるのだろうか?

きっとそれは選手たちの問題ではない。UEFAに対するFIFAの問題。UEFAに対する、その他の世界の今後の大きな課題。そしてFIFA主催CWCの宿命的な禍根なのだと僕は思っている。僕はこの大会の未来を楽観していない。どこかで抜本的に改革されねばならないものと考える。Jリーグにとって、そしてその他の世界にとって、決して失いたくない世界への扉であるからこそ、またつまらぬ利権に振り回される事なく、真の実質を追求する大会となってゆくことを望みたい。そうあるべきだと思っている。

最後にこの日のメキシコ人主審のジャッジを讃えたい。
PKがらみの難しいジャッジがいくつかあり、その全てが妥当であったかどうかはわからないが、これほどゲームに手垢をつけず、スムーズで気持ちのよい流れを作ったのは、両チームのスタイルばかりでなく、このレフェリーの貢献するところが非常に大きかったように思う。

たった15分の出場時間で、ガチンコの“本気”を見せてくれたルーニーのプロ意識とともに、この日の主審ベニト・アルチュンディアさんの素晴らしいジャッジに深く感謝したい。

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posted by 桐谷 |11:49 | ACL&CWC | コメント(10) | トラックバック(0)
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2008年12月18日

オシムの痕跡

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの”

昨年暮れに書いたその文中において、『オシムについて書くことはこれを最後にしよう…』と書き記してから、いったい僕はオシムさんについて、ここまでに何度自制なく書き記してきたことだろう^^;
この狼中年の言葉などもう誰も信じてくれそうもないし、ここらへんで前言を撤回して、これからもオシムのことを書く!宣言をしておきたいと思う。

例えたった数週間先に、オシムがこの日本に永遠の別れを告げて立ち去ろうとも…である。それでも僕がサッカーを語る上で、この先もオシムというワードを欠かすことはできないだろう。とりわけ楽しいサッカーを語る上で、美しいサッカーについて語る上において…。

彼が実際のサッカーの現場に、現実にカムバックすることが有り得るのかどうか…或いはいまもってその意志を持ち続けているのかどうか…さまざまな新聞報道には接しながらも、僕にはその真意のほどは判らない。誰かがああ言っていた…真相はこんなんらしい…という伝聞も幾つか耳にしたが、僕にとってそれらすべては予測のための道具、不確かな断片に過ぎず、どちらにせよ真相は分からないというのが、正直なところである。

JFAの決断が正しかったどうかもまた分からない。
ただし田嶋専務理事が契約を延長しなかった理由を、「ドクターと話した結果、ストレスがかかるのはよくないということ」と説明したらしいが、そこに作為や虚飾がなかったことを祈っている。そしてこの結果が、オシムさんの今後にとってより良いミライを導きだすものであることを祈る。場合によってはこのJFAの決断が、彼の反骨心に火を点けてくれたであろうことを。

オシムさんがこのニッポンを去るにあたって、僕はひとつだけ切望していることがある。
それはこの国のメディアに対してである。

“すべてを聞きだして欲しい”

彼のいま頭の中にあるこの国のサッカーへの言葉を、すべて搾り出させ、抽出せずありのままに、僕らの目耳に届けて欲しい。きっと彼もそれを望んでいるはずだ。サッカーにとって、それが如何に大切で、重要な要素であるのかをこれまでも彼は解いてきたはずだ。

「今でも日本に痕跡を残したいと思っている…」

彼にとって、いますべてのサッカーへの思いを吐き出した上でこの国を去ることが、その“痕跡”を残してゆく最期の手段であるのかも知れない。僕らはオシムさんのその命がけの“痕跡”を、心で受け止め、そして脳に刻まなければならない。そうしてミライへ役立てることが、今僕らにできるただひとつの彼に対する恩返しなのだと思う。彼がこの国に刻んだ、美しきサッカーの日々に対する敬意の証なのだと思う。

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2008年12月17日

秋春制の結論

「移行するメリットが見えない」

秋春制移行に関しては、Jリーグ実行委員会で表明されたこのコメントに尽きるのではないだろうか。メリットこそが全ての出発点であり、現実に移行できるかできないかの議論は、そのずっと先の話である。

例えば100億、200億の資金があれば可能だとして、それだけの莫大なサッカー界の財を、或いは国家・地域における血税を、そんなメリットの定かならざるものに投入することが、果たして妥当なのだろうか。有効な金の使い道だと言えるのだろうか?街に失業者が溢れ、プロサッカー界においても容赦の無い大量解雇が相次ぐこの時勢に…である。

それならば、そんな金があるのならば、それは草の根の普及のために使ったほうがはるかに有意義であると僕は思う。子供たちの登録費を減免する。女子サッカーの普及のために助成する。学校体育にフットサル取り入れの為の働きかけをする。或いはユース世代の海外経験、留学の為の資金とする。さらには、国内での日本代表興行を減らして、海外遠征に予算とスケジュールを割く…など、より有効な使い道はいくらでも思いつく筈だ。

可能か可能ではないか…。
の議論は、往々にしてその前段の大切な部分が抜け落ちている。

考えるまでもなく思いつくだけの多種多様なデメリットを、まとめて覆すだけのメリットが果たして“秋春制移行”に見込めるのか…。秋春制賛成の主張はいくつかの場所で目にしたが、そのデメリットに勝る具体的なメリットを、そしてそれを立証するに足る論拠を、僕はついに発見することはできなかった。
単に欧州にスケジュールを順ずることが、メリットであるとする論理は僕にはまったく判らない。Jリーグの選手たちが欧州へ移籍することが、即ちニッポンの利益ばかりであるともまた思わない。少なくともそれはJリーグにとっての不利益であることだけは確かなのだ。

この問題の本質はどこにあるのか?
僕はそれをずっと前から、JFAとJリーグ各クラブの“利害の相克”、その不一致にあるのだと思っている。JFAが財団法人としての立場を逸脱して、この先も己の利益追求に血道をあげてゆくのであれば、この利害の衝突を避けることはできない。そしてこの先JFAが経済的に窮することになれば、その傾向はますます強まり、ますます鮮鋭化されてゆくものと考える。

犬飼基昭会長が優秀なビジネスマンなのかどうかは僕には判らない。が、少なくとも川淵体制から連なる現在のJFAに対する忠義な組織人であることだけはよく理解できる。この僕とて、一企業人、組織人としてであれば、JFA川淵名誉会長の命を受けてこのJFAビジネスをさらに盛り立てる為に、まずはこの“秋春制移行”を最優先課題として取り組んでいた事だろう。それは広くサッカー界、Jリーグの利益の前に、JFAの利益を優先して考えるのであれば…である。

ここに在るべき構造、システムを、常にJFA側からの上意下達を是とする慣習の惰性から脱し、Jクラブ側からも対等にモノをいい、意見し得る、均衡のとれたある種の対立関係を醸成してゆくべきなのだ。現状それなくして、JFAが自ずから自省し立場を改めることも、誰から言われもせぬままに膨張した利権を自らの手によって手放す事も、僕は有りえないことであると思っている。選手同様、クラブもここで戦わなければならないのだ。そのために今何を言い、何をすべきなのかを、必死で考えなければならない。そしてそれは僕たち自身も同じなのではないだろうか。

僕は改革を拒むものではない。むしろ強く推進すべきものであると思っている。
しかし、いま犬飼会長から発せられるそのほとんどすべては、JFAにとってはいざ知らず、日本サッカー界にとっては改革ではなく、“改悪”そのものであると思っている。まずは是正すべきものを是正し、どのようなJリーグを目指すべきなのかについて再度私案を提示してみたい。このシーズンオフに、もう一度自分なりにそんな問題意識と、あるべき改革の方向性についてまとめてみたいと思っている。

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2008年12月15日

ベガルタ仙台とハンス・オフトへの感謝 

たとえ勝負事といえども、つねに勝利のみに至上の価値が宿るものとは僕は思わない。

負けて尚、納得させられる試合…。

それこそが最も難しく、また最も価値ある試合であり、成熟したサポーターとクラブが織り成す究極の理想の姿、目指すべき高みであると僕は考える。

そういう意味でジュビロ磐田と戦ったベガルタ仙台の入替戦2試合を、僕はそんな価値ある試合であったと考える。負けて尚選手たちの健闘を讃え、敵であるジュビロ磐田の勝利さえ讃えたベガルタサポーターの姿勢。そのサッカーに対する成熟した理解を、そして敵に対する敬意を、僕は何より大切なものだと考えるし、ニッポンのサッカー界の最高の宝物だと思う。いろいろなことがあったこのJリーグの一年を、あのようなカタチで締めくくってくれたベガルタのファン・サポーターの方々に、深々と頭を下げまた感謝したい。Jリーグの最後の最後に、今年一番美しいシーンを見せていただいた気がする。

ベガルタから見れば勝つチャンスもいくつもあっただろう。
けれどもやはり、この2試合を通してどちらがゲームをコントロールしていたか、どちらが余力を残し強いカードを備えていたか…と問われればやはり磐田のそれが一枚、二枚上回っていたようでもあり、そんな相手に対してギリギリまで追い詰め、ロスタイムの震撼までをも味あわせたこのベガルタの挑戦を、僕は心から讃えたい。

リャン・ヨンギ、関口訓充、中島裕希、このJ1でも充分に通用しそうな攻撃の担い手たちを来シーズンのチームに繋ぎとめられるかどうか…そして“純国産”の方針、財政状況もあるだろうが、外国人助っ人を揃えられるのかどうか…この手倉森体制でもし来期に臨む事ができるのならば、やはり戦力の維持・積み上げが可能かどうかにJ1昇格がかかってくるのだと思う。あとは背広組に良き判断と全力の努力を期待したい。この2試合で選手たちが見せてくれたそれと同じだけの、死力を尽くした努力を…である。

最後にハンス・オフト氏に心からの感謝を。
思えば僕らはドーハ以来、勝とうが負けようがいつだって、最後の最後には彼の苦渋に歪む顔しか見てこなかった気がするのだ。これだけニッポンの為に尽くし、目をかけて育んできてくれた功労者であったにも関わらず…である。
そんなオフトさんの、おそらくは指導者としてピッチに立つラストシーンが、このヤマハスタジアムであり、ジュビロのファン・サポーターに囲まれた歓喜の情景であったことを、僕は心から嬉しく思う。彼のほんとうの笑顔に触れられたことに、いま心から感謝したい。

以下が試合後に語られたオフトさんからの選手、そして皆さんへのお知らせである。【ジュビロ磐田オフィシャルHPより】

私からもう一つお知らせだ。明日は10時から練習だ(笑)。月曜日はオフで、火曜日の午前中も練習。その後、私はホリデーに入る。私は(監督を)辞めるからだ。そしてこの4ヶ月の仕事を終える。ジュビロは来季フレッシュなスタッフと共に、フレッシュなスタートを切ることができるだろう。
これが私からのお知らせだ。それでは、皆さんもよい人生を。

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2008年12月12日

入替戦は存続させるべきである 

東京Vのラモス常務が11月30日までに、翌年の契約を結ぶか否かを選手に通知しなければいけない現行の制度に異論を唱えた。「なぜ、あと1週間待てない?なぜ、11月30日にこだわるの?分からない。最終戦の翌日ってことにすればいい。選手がかわいそうだよ」*スポニチ/一見正論のようにも見えるが、事実上解雇される選手らに対して、少しでも早くそれを通達するという約束事は選手保護の立場から必要。それを先延ばしにされればされるほどかわいそうなのは選手。Jが11月内に終われないのは寧ろ契約TV会社の意向なのではないだろうか。(2008.12.04)

終盤戦のジェフのフクアリでのホームゲーム。直接スタジアムへ…と思ったが、すでにチケットが無い…という事が何度かあった。チームがこんな状態の時でも、こうして熱心にサポートしてくれる方々がスタジアムを埋め尽くしている。結果どうなるにせよ、そんなサポーターたちの“想い”に応える最終戦にすることを、チームには望みたい。僕もたったひとつしか選べない最終戦の生中継、このジェフ千葉対FC東京を見ようと思う。チャンスはある。チャンスは充分にあるのだ。勝つにせよ負けるにせよ、彼らが何を見せてくれるのか、この目で確認したいと思っている。(2008.12.05)

詳しくは明日にでもまた書かせていただくとして…。
すべてのチーム、選手、そしてサポーターやボランティアの方々に『素晴らしいシーズンをありがとうございました!』とお礼を言わせていただきます。2008Jリーグも、僕にとっては見応えのある最高のシーズンでした。ひとつだけ残念に思うのは、こんな素晴らしいドラマの結末を、限定されたTV放映を通じてしかこの国のサッカーファンの方々にお届けできないということ。潜在的なサッカーファンの方々に、提供し得ていない…ということです。鹿島サポーター、そしてジェフサポの皆さん、本当におめでとう!(2008.12.06)

浦和FWエジミウソン(26)が8日、来季も残留することを明言した。「カタール移籍はしない。来年も浦和でプレーする。1月9日に帰ってくるよ」この日のブラジル帰国前、荷物整理に立ち寄った大原グラウンドで笑顔。来季を心待ちにした。*スポーツ報知/…これほどサポーターをビミョウな気分にさせる“残留宣言”もなかなかないと思われるが^^;あと2年6億円(確か1年3億と聞いた…)の保険を棒に振る選手もそういないだろう。彼の場合はモチベーション次第によっては充分戦力になるはず。フィンケ監督の手腕に期待したい。(2008.12.08)

チケット発売からたった数時間で2万ものそれが完売されてしまう。
これほどすべてのサッカーファンにとって魅力的で、心を惹きつけるイベントを廃止してしまうのは残念…もったいないと僕は思う。僕は自動2枠、入れ替え戦2枠、ぐらいが望ましいとずっと思っていて、その入れ替え戦4ゲームも日程をズラしてすべてのサッカーファンの方々に地上波、生放送でご覧いただくべきだと考える。そうすれば彼ら選手が、どれだけの気迫で、情熱で、戦ってくれているのかを感じてもらえる。Jリーグの面白さを体感していただけるのだと思う。(2008.12.10)

入替戦第一戦、1-1の結果はどちらにとっても悩ましいものである。ボールは持ちながらもサイドで手詰まりになり崩しきれなかった磐田と、右サイドと中央から時折鋭い仕掛けで良い形をつくっていた仙台。ゲーム内容はやや仙台有利といった見方もできるかと思うが、0-1の状態からもわりと慎重にゲームを進めた磐田、オフト監督の采配は、この二戦にかける綿密なシミュレーションによるものであったのだろう。次の試合は磐田の0.5点リードの状況から始まる。磐田からみれば長い90分になるだろう。(2008.12.11)

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2008年12月08日

彼らの魂のキセキ

愛とか、情熱とか、根性とか、感動とか…言葉はあまりにも薄っぺらくて、時々語ることが、語ろうとすることが、不自由すぎてイヤになる。

それが偶然か必然か、どう理解しようが理解しまいが、起きてしまった事がすべてであり、そこにあの日フクアリで戦った、フクアリに思念をおくったすべての人々…の思いが介在したことは事実なのだと思う。

キセキなんて無数にある。
宇宙の137億年の歴史を紐解けば、そこらじゅうキセキだらけである。

けれども僕らは永遠に生きられるわけではないので、この目のとどくほんの小さな世界にしかそれを見い出すことができないので、僕はこの現実という無限の暗闇を照らす小さな星のような一点の光りを…、あの日あの場所に彼らが“紡いだ”出来事を…、サッカーを見、聞き、語る上で、何よりも尊いひとつの記憶として、生涯忘れずに慈しみたいと思っている。

これによって2009年のジェフは、確かにより良き1年を過ごす事ができるだろう。

けれども5年後はどうだろうか?
10年後に、より良き1年を過ごしていると誰が保証してくれるだろうか?

あの日フクアリに集った17000ものサポーターと選手たち。
彼らは“繋いだ”のである。
死に物狂いで、必死になって、ボロボロになって、それでも諦めずに、明日への希望を、いまこうして“繋いで”くれたのだと僕は思う。

その希望のバトンを受け継いだのは、いま背広を着た紳士たちである。
このシーズンオフに彼らが、死に物狂いで、必死になって、ボロボロになって、それでも諦めずに、明日への希望を、ジェフに関わるすべての人々へ“繋いで”くれることを僕は心から期待している。

言葉にすればそれはあまりにもカンタンだが、現実のそれが容易くないことはわかっている。
そしてまただからこそ尊い。何よりも尊く、美しい“循環”なのだと思う。

この循環が創るミライを、僕は覗いて見たい。
いまこのクラブは、そんな美しい“循環”へのチケットの先端を、その指先にかすめたのだと思う。


僕の頭の中には、ひとつの問いがある。

あの日、あの場所にもたらされたものが、もし歓喜ではなく、悲愴な落胆の方であったならば、スタジアムに詰め掛けた彼らは、どう反応していたのだろうか?

そしてほぼ同時に、僕にはひとつの確信があるのだ。

その多くは、ほとんどすべてといえる人々は、きっと必死で戦い、そして力及ばなかった彼らを、拍手で迎えていた。僕の知るフクアリは、そして臨海は、ずっと以前からそんな場所だった。やりきれぬ理不尽を絶えず力あるものの手により突きつけられようとも、それに翻弄される選手たちに対しては、いつも理解と優しさを忘れぬ人々だった。

そしてそんな、彼らの魂の軌跡こそが、永遠に語り継がれるであろう“残り16分のキセキ”を手繰り寄せたのだ。このキセキは、ひろい宇宙に散らばる無数の、偶然の、奇跡とは異なる。それは決して諦めなかったみんなの、魂の軌跡が引寄せた必然。たった1コの、もしかしたら人生で一度きりの、最高のキセキなのだと僕は思う。

遠い昔に誰かが言った言葉がある。

“ミライは現在と同じ材料でできている…”

無学な僕は、今もってその本意を知り得ないが、
“ミライをより良きものに変えるために、今、この瞬間にすべてを尽そう”
ということだと解釈したいと思っている。

夢を実現するために、今在るこの現実を真正面から直視せねばならぬのと同じように。
そして世界を変えるために、まず自分自身が、変わらなければならないのと同じように。

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2008年12月04日

JリーグとJFAの利害衝突の中で 

磐田のオフト監督が天皇杯5回戦・G大阪戦で先発10人を入れ替えることを受けて、日本協会の犬飼会長が不快感を示した。「外国人監督には大会の権威など関係ない。クラブが導かないといけないが、監督に丸投げの社長が多い」。磐田への指導については「これから考える」と試合結果を見て判断することになった。*スポニチ/オフト監督には堂々と自らのチーム事情を踏まえた選手起用を貫いて欲しい。そしてもしこれにペナルティが科せられるようなことがあれば、その時Jクラブは一致団結して協会と戦うべきである。この問題の本質を焙り出すべきである。(2008.11.26)

そもそもの2年契約…解任宣告するにしてもこのタイミング…そして球団社長と強化本部長の監督招聘をめぐるはっきりとしない責任と位置づけ。浦和レッズのここまでの流れを、僕は非常に杜撰なものであったと思うが、ただひとつ次期監督就任を噂されるフォルカー・フィンケ氏には、大きな期待を抱いている。ブンデスリーガはまったく見ない僕にも、その手腕とサッカースタイルへの賛辞は、以前から耳に届いていた。ここから契約まですんなり運ぶかどうかはまだ分からないが、願わくばこれが浦和再出発の契機となることを期待している。(2008.11.27)

石崎信弘氏の柏レイソル監督退任が発表されたそうだが、後任監督は海外から招く事になるのだろうか?あらゆる日本人監督の中で、石崎信弘氏のその手腕を、僕は日本人では最高峰のものであると考えている。その手堅いサッカーで、どのチームを率いても素晴らしい土台を築いてきた。結果は期待していたほどのものではなかったかも知れないが、今年一年の柏レイソルのサッカー、その内容はJ1の中でもトップレベルのクオリティを有していたと思う。これが柏の衰退に繋がらない事を祈る。(2008.11.29)

犬飼基昭会長は29日、秋―春制シーズン移行に慎重なJリーグに対し「世界と戦っていない」と苦言を呈した。「世界と戦うためには(秋―春制の)世界基準に合わせるしかない。日本代表は世界と戦っているが、Jリーグは戦っていない」と話した。さらに12月のトヨタ・クラブW杯について「今のままではJクラブはシーズン終わりの疲れ切った状態でクラブW杯を迎える。秋―春制になればシーズン中盤の状態といい時に世界の強豪クラブに挑戦できる」と力説した。*スポーツ報知/ではシーズン終わりにWCやEUROを戦う欧州は、世界(?)と戦っていないのか?3秒考えれば破綻する理屈。Jリーグ試合報道の紙面を潰して蒸し返される妄言。彼は何と戦っているのだろう。(2008.11.30)

この時期になると、いつもホーム最終戦の選手とサポーターとの惜別のシーンにじんわり目頭を熱くさせられるものだが、今回もまた瑞穂陸上競技場と、日立柏サッカー場の2つのドラマに胸を打たれてしまった。両チームともこの先に大事な一戦が待ち構えている。そしてきっと、また来年もどこかは分からないがJのピッチにおいて互いに出会う事ができるのだろう。あとたった一試合で、このJリーグ2008が終わってしまうのだと思うと、正直とても寂しい。最後の1ゲーム、今からどの試合を見ようかと頭を悩めている…。(2008.12.01)

クラブによる選手の大量解雇が続々と報道されている。選手たちにとってはたいへん気の毒な状況ではあるが、来期以降さらに悪化するだろう経済状況を鑑みれば、この厳しい決断も致し方ない部分もあるだろう。が、同じように各クラブの背広組のリストラ、コストカットも適正になされているだろうか?Jリーグはどうだろうか?そしてJFAは?この国の政治と同じように、お上はぬくぬくと暴利を貪り、下々にだけ過酷な条件下での労働や理不尽な犠牲を強いていないだろうか?(2008.12.03)

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2008年12月02日

2008Jリーグ ベストイレブン 

【2008Jリーグ】僕が選ぶベスト11をここに書き記しておきたいと思う。本来MVPとは、優勝チームから選出されるべきであると考えるので、ここでそれについて触れる事はしないが、来週は時間が取れないかも知れないので、残り1試合を残してベスト11だけでも先にまとめておこうと思う。

GK 楢崎正剛(名古屋)
DF 岩政大樹(鹿島)
DF 田中マルクス闘莉王(浦和)
DF 阿部勇樹(浦和)
MF 青木剛(鹿島)
MF エジミウソン(大分)
MF 小川佳純(名古屋)
MF 中村憲剛(川崎)
MF 遠藤保仁(G大阪)
FW マルキーニョス(鹿島)
FW 柳沢敦(京都)


【GK】楢崎正剛(名古屋)
川崎の川島永嗣との間で最後まで迷ったが、チーム失点数により彼の方がより相応しいと判断する。大分の西川周作は出場試合数の面で少しマイナスとさせてもらった。

【DF】岩政大樹(鹿島) 田中マルクス闘莉王(浦和) 阿部勇樹(浦和)
他にも大分の深谷友基、森重真人、ガンバの山口智、清水の高木和道なども選択に迷う部分もあるが、上記の3名のパフォーマンスおよびリーダーシップ含めた部分のチームへの貢献を上位として評価させてもらった。

【MF】青木剛(鹿島)、エジミウソン(大分)、小川佳純(名古屋)、中村憲剛(川崎)、遠藤保仁(G大阪)
攻撃的なポジションにあたる小川、中村、遠藤に関しては文句なしの働きだったと思う。遠藤はJに関しては出場試合数が決して多くはないが、ACL含めてそのゲームの中で見せてくれたパフォーマンスは傑出していたように思う。そして鹿島の青木剛は今年一年で大きく成長した。また大分のボランチコンビ、ホベルトとエジミウソンについては、出場試合数とカードの少なさでエジミウソンの方を選出した。
他にも清水の枝村匠馬や大分の金崎夢生、そして京都の渡邉大剛、川崎の谷口博之など、将来性豊かな若手、中堅選手たちの活躍が目立った一年だった。この中から2010年WCの主力を担う選手が出てくるような気がする。

【FW】マルキーニョス(鹿島)、柳沢敦(京都)
マルキーニョスに関してはMVP級の働きであり、異存をさしはさむ余地はないと考えるが、もう一人に関してはジュニーニョかダヴィかカボレか柳沢かで悩んだ。しかし、柳沢敦の復活劇は非常に鮮やかで、またチームの降格がかかる終盤戦の大事な局面でゴールを量産したことを最終的には高く評価し、上位とさせてもらった。

また、ここに選出することはできなかったが、例えばチーム内の厳しい評価を覆して見事にポジションを奪い返して意地を見せた浦和、坪井慶介の頑張り。チーム成績にはつながらなかったが、ピッチ上つねに全力で戦っていることがひしひしと伝わってくる東京V土屋征夫や、磐田ジウシーニョ、千葉巻 誠一郎や、神戸石櫃洋祐たちの健闘にも触れておきたい。多くの選手達の、すべての頑張りに支えられて、今年のJリーグも存分に楽しませてもらったことに、ここで深く感謝したい。

残り1試合。
最後の力を振り絞って、すべての選手たちが、今年一年で最高のパフォーマンスを見せてくれる事を期待している。

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2008年12月01日

残留争いの土壇場と背広組の責任

J1第33節、横浜FマリノスVS東京ヴェルディの後半戦を見ていて妙な違和感を覚えた。

東京Vが直接降格を争う相手であるジェフ千葉はすでに敗れている。このまま、引き分けのままゲームを終えれば、次戦敗れても得失点差を考慮し自動降格は免れる。

しかし、選手たちはリスクを負って前に出る。

“ああ、ジェフの試合の結果を聞かされていないのだな…”

と思い、僕はヴェルディの選手たちを少し気の毒に思いながらその後の試合を見ていたのだが、やはり肝心なところで守備のバランスを欠き、最後には疲弊して、自力に勝るマリノスを相手に完敗を喫した。

0-0のゲームを念頭に置いて後半45分のゲームを進めていれば自動降格の危機を免れていた筈だ…とまで言い切るつもりはない。が、少なくとも僕がヴェルディの監督であったとすれば、プロであり、多くの経験も有したピッチ上の選手たちに(ジェフが敗れた…という)情報だけは提供していたと思う。

勝ち点1持ち帰れば“自動”だけは免れる。
リスクを負って攻め、守備のバランスを崩すよりも、しっかり守りながらマイボールを大切にして可能な限りDFラインを押し上げていこう…と言ったところだろう。
目標は勝ち点1。その意識をしっかりと共有した上で、少ないチャンスに勝負をかけよう…と。

0-0のサッカーというものがある。
それと同じように1-0のサッカーもあれば、0-1のサッカーもある。
その状況に応じて、それぞれ求められる選択、チャレンジ、リスクマネージメントの仕方に違いがあってしかるべきだと僕は思うが、従来のニッポンの価値観は、常に安直に、選手たちに一本調子で“攻める”ことを要求してきたように思うのだ。そしてこの短絡こそが、ニッポンのサッカーに守備の文化が根付かないひとつの大きな要素であるとも僕は思っている。

このとき『(千葉の結果は)聞いていない』と柴崎晃は証言する。指揮官は、勝ち点“1”を取りにいく戦いではなく、“3”を奪いにいこうと選手を送り出した。*エルゴラッソ
と、この試合同じようにこの部分に視線を向けて居られた、いしかわごう氏がレポートして下さっている。

本当の意味での、プロの選手たちに対する“信頼”を持ち得ない指導者と、そんな中自身や家族の生活と未来がかかったこの状況で、なかば片目を閉じさせられたままにただ蛮勇を奮うことを強いられた選手たち。

早々とクラブによる来期の柱谷監督続投の意思が報道がなされるなか、その一方では、GK土肥洋一やMF福西崇史、DF服部年宏ら10人を超える選手たちに対し、最終戦を前に“ゼロ提示”が通告されたとも聞く。プロである限り、最後の最後までチームの為、サポーターの為、J1残留の為に、死力を尽くして戦わなければならないことは当たり前の条理ではあるが、しかしそれを安楽な高みから見下ろしている者たちは、果たして本当にプロとしての仕事を全うしていると言えるだろうか?

ピッチ上の選手たちに要求される“責任”と同じものが、背広を着た紳士たちにも要求されるべきではないだろうか?ピッチ上の選手たちに要求される“スポーツマンシップ”と同質のものが、背広を着た紳士たちにも同じく要求されるべきなのだ。

信頼と責任とは一対のものである。
敗れ去ってゆくJクラブのトップの多くが、それを踏み外してきたように、ここ数年日本のサッカー界のトップが、同じようにそれを踏み外し続けている。ピッチでの出来事に目を向けるのと同じように、僕たちはもう一方の“責任”と“スポーツマンシップ”に対して、さらに厳しい目を向けてゆくべきなのではないだろうか。

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