2008年02月29日
言うまでも無く実際のサッカー、ゲームというものは選手が行うものである。
ひとつひとつのプレーや選択、そのいちいちについて監督が関与している訳ではない。例えが正しいかどうかは判らないが、ユースやクラブチームの監督というものが馬の調教師のようなものだとすれば、代表監督のそれは羊飼いのそれに似ていると僕は思っている。限られた時間と関係性の中で、関与できることなど非常に限定された範囲のみである。そのたくさんの羊の群れを一塊に束ねて、意図するひとつの方向へ誘導するぐらいのことだと思っている。そしてそれは、あくまでもその個々の羊の能力があっての出来事である。
そういう意味で、オシムのそれは世界の潮流からいえば少し異質なものであったと思う。彼はその限定された短い時間の中で、羊飼いでもあり、また調教師であろうとしていた。そして実際非常に短い時間の中で、選手個々の能力を開眼させた部分があったと思うし、またこの群れを一塊にし、非常に良い方向へと導きつつあった。
僕は岡田監督の就任に当たって、このオシムが示した、正しき方向性と、その流れだけは失わないでもらいたいと思っていた。それは個性や趣向の問題ではなく、サッカーの普遍の原理を指し示した道であると思っているからである。その上で、彼なりのアレンジや修正を加えてゆけば、この素晴らしい土台に、オシムのように華美ではなくとも、堅固な城郭を築けるものと思っていた。
率直に言えば、オシムのAC時に比べ、そのチーム力が低下してしまったのは事実だろう。またその方向性やベースの部分が、様々な誤解や行き違いのもとに、そのカタチを喪失しつつある危惧も正直感じている…。が、あのアジアカップ当時も、ここで散々『優勝がノルマ』『ベスト4がノルマ』『でなければオシムの所為、オシム解任!』と騒がれたものだが、僕はあの時と同じように、たった20日や30日ばかりの実働期間で、強化段階のその一々の結果や内容で、監督としての能力の是非を断じられるものではないと思っているし、また一国の代表監督の選定というものが、そんなに“軽い”ものであって良い筈は無い…と思っている。例え選者の思惑がどのようなものであったとしても…である。
…正直に言えば、僕はなぜあの時、あと2、3週間ばかりの“時”をJFAは待つことができなかったのだろうか…という不満が未だに消化できずにいる。そしてなぜ、とりあえず“暫定”や“臨時”のカタチで事を進めることができなかったのだろうか…と。
が、オシム危篤のあの状況から、そしてあのJFAの対応から、このような道を選択した以上、今のこの状況は通過儀礼の範疇の出来事であると“理解”しているし、これこそが、ニッポンの自然な、ノーマルな姿であると思っている。そしてここから、少しずつ、一歩一歩、前へ進んで行かなければならないのだと思っている。
既に新しい道を歩き出した日本代表に、現時点でオシムという対案は存在し得ない。またこの状況で、日本人を率いてどんなサッカーができるものか皆目見当がつかない海外のビッグネームに賭けるギャンブルもナンセンスであるし、Jリーグのどこかから問答無用でクラブ監督を収奪するような、信義を欠く振る舞いなど二度と許されるものではない。それができなかった中で、考え得るベストの選択は、やはり岡田武史であったのだと僕は今でも信じている。
名誉ソムリエの栄誉を授かった川淵三郎さんの口はたいそう滑らかなようで、オシム監督時代には決して口に出さなかった選手選考や起用についてのグチや軽口が新聞紙上を賑わせている。代表戦視聴率の低下や観客動員減の面で、ジェフの無名選手を重用し続けたオシムの選手選考に、やはりこれまでだいぶ不満や危機感を募らせていたのだろう…。そうやって、望んだ未来は果たして満足いくものだっただろうか?欲しいものは手にできただろうか?
来月のバーレーン戦には召集されないようだが、きっとこれから中村俊輔も忙しくなるだろう。彼ももう若くは無い。欧州とアジアの、時差もあり気候も異なる過酷な移動で、体調を崩す事なく、セルティックでのシーズンを全うできるよう心から祈っている。そして願わくば岡田武史監督には、もうひとつの敵とも、怯まず、馴れ合わず、戦って欲しい。僕は彼の、そのもうひとつの戦いも、今後注視してゆきたいと思っている。
オシムさんがまもなく退院する予定だという。
きっと家族の反対もありながら、オシムさんは現場への帰還を望んでいることと思う。体調の回復が思わしくなければ、そのままサッカー界から身を引きボスニアへ帰るのかも知れない…が、リハビリの進展具合によっては、すぐに他国の代表チームや或いはACLを狙うようなアジアの強豪からのオファーがくるのかも知れない…。いずれにせよ、彼の望む未来が実現することを心から祈っている。
次回は、岡田ジャパンの中間評価 その2 で戦略・戦術的な部分について少し触れてみたいと思っている。
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posted by 桐谷 |11:28 |
岡田JAPAN |
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2008年02月25日
無骨さの中にも綿密なスカウティングに基づいた計算された戦略がある。決して驚くようなテクニックはないが、ストレングスの利点を活かした1対1、個のキープ力を充分に発揮した守備と攻撃がある。そしていつの時代も変わらぬ枯渇することのない豊富な運動量がある。これぞホ・ジョンムの、そしてこれぞ韓国のサッカーであり、昨年のアジアカップの挫折から見事に立ち直り、彼ら本来の地力が蘇生されつつあることを強く実感させられた。
いつの時代からニッポンの世論は、韓国を“格下”扱いでモノを語るようになったのだろうか…?僕自身は長い間日本代表のサッカーを見てきて、韓国が格下だと思ったことは一度も無い。この韓国に対して、結果ではなくその90分の内容で、キッチリと“強者”に値する日本の優位を見せられたゲームも、この二十数年の歴史の中で2度しか無い。(そのひとつは昨年のACである)
その韓国に引き分けた。
厳しいプレスに少々押されながらも、最後には敵陣に押し込んでほぼ互角の勝負に持ち込めた…。感情ではなく理性でこれを評価するならば、両者の今現在の実力に照らして至って妥当な結果であるし、また内容であったと僕は思う。
そしてオシムであれば勝てていた…とも僕はまったく思わない。
きっともう少し支配はできていたかも知れないが、それがこの試合の結果や内容に直結していたとは限らない。10戦すれば互いにほぼ互角の星を分け合うレベルであることは大きく変わってはいない。前回のACと今回の東アジアを比較するならば、相対的な日本のレベルダウンよりも、むしろ韓国のレベルアップの方がより大きく作用したものと僕自身は考える。
岡田監督も言っていたと思うが、局所局所での競り合いにおける優劣の集積が、最終的には非常に大きな負担となってしまう。またこの試合、韓国の厳しいプレスは日本の要所に的確に効いていたし、同点に追いつかれてしまえば、今度は自陣深くにデンと構えてはじき返し、そこからトップのキープ力でしっかりと腰の入ったカウンターに繋げる地力をも備えている。現状であればこの内容と結果を、僕は日本の善戦である…と認識している。願わくば、この韓国と“さかさま”の立場で戦ってみたかった。もし中国戦における田代の2点目が認められていれば、日本にとってはさらに過酷な試練の一戦になっていただろう。或いは先制したのが日本であったならば、その後のゲーム内容はさらに一方的なものとなっていただろう。そしてその場合の方が、日本の本質的な“弱点”がさらけ出されていたことだろうし、また得るものも大きかったものと思う。まあ、もっともそれで結果引き分けに持ち込めタイトルを得ていたならば、この“厳しい”世論は180度違う方向へ向かっていたのかも知れない。
岡田ジャパンへの評価。
それを一言で言えば、今はオシム喪失後のジェフにとてもよく似ている…と僕は思っている。
選手個々に走る意欲が無い訳ではないのだろう…が、“どう走るか”そして“どう連動”するかのコンセンサスを失ってしまった。そんな中で“無駄走り”であっても、とにかく“走る”という泥臭いメンタリティが、どれだけ大切で得がたい美徳であったのかを、この2つのケースから僕自身改めて強く認識させられた。
それは現代サッカーの潮流からは少し外れる非効率なものなのかもしれない。が、けれども現状の日本であれば、やはり“走る”ことでしかこの袋小路からは脱出できないのではないか…僕はそう思っている。
1トップもボールが収まれば効率よく内も外も自在に使えるだろう…、が、収まらなければこの試合のようにただただ弾き返されるばかりである。常に厳しいプレッシャーに晒されるポジションにおいて、カズも柳沢も充分すぎるほど苦しめられた韓国屈強のストッパー陣が、そう易々と日本の要所を自由にさせてくれる筈などないのだ。それを充分承知した上で、バイタルでいかにしてスペースを創るか、むしろそれを囮に使っての次のビジョン、次の次の仕掛け…そんなコンセンサスと連動、そして無駄走りを活かしてゆく“知恵”と“修練”がやはりまだまだこのチームには足りていないのだと僕は思う。
厳しいプレスでMFが引いてしまい、サポートの無いスペースで田代有三もよく気迫を見せたと思う。彼は日本を代表するターゲットマンであると思うし、非常に粘り強く体を張り“繋ぎ”もこなす。が、韓国の9番、11番は“繋ぐ”ばかりではなく、懐に“収めて”さらに“前を向く”パワーがある。この差は小さいようで非常に大きい。これ一事をとっても、やはり今後も韓国は日本の目の前に立ちふさがる巨大な壁であり続けるのだと僕は思う。そしてこれからも勝ったり負けたりを繰り返しながら、お互いに切磋琢磨してゆく良きライバルであり続けるのだろう。
選手たちは疲れを癒す暇もないだろうが、まずは体調を整えて、これ以上のケガ人なく無事Jリーグ開幕を迎えて欲しい。憂鬱な東アジアがやっと終わった…。鹿島の仕上がりはどうだろう?熾烈な浦和のレギュラー争いはどうなっているだろうか?そしてフッキとジュニーニョ、テセはどう融合してゆくのだろう?最後にもう一度“岡田ジャパン”についての総評をまとめてみたい気持ちも微かにあるが、ここからはJ開幕に向けて、この淀んだ気持ちを切り替えてゆきたい。
この東アジア選手権、いろいろ考えさせられる部分もありながら、最後の最後に中国人主審のフェアなレフェリング、そしてなでしこジャパンの素晴らしい勝利によって救われた思いがした。
佐々木則夫監督率いるこの“なでしこジャパン”、そして永里優季さん、宮間あやさんの成長ぶりには非常に頼もしい将来性を感じた。ぜひこのメンバーでさらに大きな仕事を成し遂げて欲しい。
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posted by 桐谷 |11:08 |
岡田JAPAN |
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2008年02月21日
この東アジア選手権に勝つか、負けるか…。
僕はそれが大きな出来事であるとはまったく考えていない。
勝つか負けるか…以前に参加するべきかしないべきか…、或いは必要か不必要か…の本質的な問題からJFAは抜本的に考え直すべきである…とさえ思っている。
けれども例えそんな大会であったとしても、日程を組まれてしまえば選手たちは闘わねばならない。勝つために全力で取り組まねばならない。そして瞬間、瞬間に、各々の選手生命をかけて、敵に、ボールに立ち向かってゆかなければならない…。
この大会の意義とはまったく別次元で、僕はこの試合における彼らに、心からの感動を覚えたし強くこの胸を打たれた。絶対に負けられない試合…というものがもし本当にあるとするならば、まさにこの試合であったと僕は思う。彼らは国の期待を背負い、サッカーの義を背負い、そして自らの誇りを貫くために命がけで戦い、そして勝利した。きっと僕だけではない多くの人たちの…冷めかけていた日本代表への思いにパチンっとスイッチを入れてくれた。この選手たちに心からの礼を言いたい。
前からの厳しいプレスと、ボール奪取からの1-2-3ですばやくフィニッシュに持ち込む鋭角な攻め。そしてそこに活路が見出せない場合の、落ち着いてサイドを丁寧に攻略するゆるやかな展開。田代有三の頑張りもあり、1トップに両翼2人のサイドプレーヤーというフォーメーションが運よく嵌った感もあるが、僕が見る限りここまでの岡田ジャパンにおいて、もっともクオリティの高い内容を示したと思うし、速攻と遅攻のバランス的にもベストな配分であったように感じる。
田代有三のターゲットとしての粘りと献身的なチェイシング、また遠藤保仁の絶妙なポジショニングと間、そして山瀬功治の個で仕掛ける姿勢、ボールを下げない姿勢が前線でうまく調和し、攻撃の多彩さとボリュームを形作っていたように思う。
そして中村憲剛のファーストタッチのアイディアとボディシェイプ、最善のバランスを見つけるカバーリングと機を捕らえた前線への進出…海外組みも含めて、彼こそが今現在日本最高のMFであると改めて認識させられた。きっとこの試合における彼のパス成功率は、鈴木啓太や遠藤保仁に比べても高いものではないだろう…。が、その選択は常に、得点機会の可能性とリスクマネージメントの狭間のベストバランスを追及して放たれる最良の“トライ”だった。通ってよし、通らなくてもまたよし…という的確な判断力と戦術眼。彼の持つサッカーセンスの奥深さに改めて感服させられた。今日の中村憲剛をオシムは見ていただろうか?だとすれば、きっとTVの前でニヤリとほくそ笑んでいた事だろうと思う。体調の優れない中、本当に素晴らしいパフォーマンスであったと思う。
また鈴木啓太の闘う姿勢、チームを鼓舞するその姿に、僕はこのチームの心の拠り所、闘争する魂の源泉…を見た気がした。キャプテンマークを誰が巻こうと、彼こそが常にこのチームの中心に在り、皆を引っ張ってゆく主体であるべきだと改めて感じた。
厳しいスケジュールの中、今年も浦和をCWCへ、そして代表をWCへと導いて欲しい。さらに、できることならばキャプテンマークを巻いて北京五輪のピッチへ立って欲しい…また立たせるべき選手である…と僕は思っている。
そして中国。
彼らがもし現状の力で日本に勝ちたいのならば、北朝鮮のように戦うことである。
そこに自覚が持てないならば、あくまで力でねじ伏せようと試みるならば、1対1で凌駕し得る完全なる“個”の水準を備えるまで、さらにもうしばらくの年月を要することだろう。逆に言えばこの試合における日本は、中国の状況、蒙昧な世論の欲求と、ベンチの無策に助けられた…と言えるかもしれない。冷静に評価すれば、彼らがサッカーにおけるリアリズムを踏まえて闘えば、日本にとってやはり先日の北朝鮮よりも1クラス手強い相手である事は間違いない…と僕は感じた。
彼らを見て僕たちニッポン人も“理性”というものの何たるか…を充分にわきまえねばならないと改めて強く思う。薄っぺらなナショナリズムや独りよがりな感情を理性で制御できぬ人間としての愚かな品性が、傍目からどれほど醜悪で、またサッカーというスポーツにとって、どれほど有害なものかを、これを機に多くのニッポン人も重々承知するべきである。そして未来永劫、決してあのような品性に堕して欲しくないと僕は強く願っている。
そして最後に、これだけは付け加えておきたい。
1月1日まで天皇杯を闘った選手たちがいた。その僅か2週間後には代表の合宿、親善試合に借り出されるカタチで彼らは新シーズンのスタートを切らなければならなかった…。
こんなスケジュールをこのまま咎めなく放置していては絶対にいけない。この日の選手たちが、傷つき、疲弊し、ボロボロになってまでも国の為に、自らの誇りの為に精一杯戦ったように、Jリーグもこの選手たちの側に立ち闘うべきである。各クラブも一丸となって物言うべきである。そして僕たちも、微力ながらそれぞれのやり方で何らかの行動を起こすべき時なのかもしれない。
もし天皇杯の日程を大きく移動する事が困難であったとしても、せめて今生陛下ご存命のうちに12月23日をファイナルに設定する事はできないだろうか?そして最低でも代表選手含めJリーグ全所属選手にそこから1カ月の完全OFF期間を、来期からでも約束することはできないだろうか?そして少なくとも、JFAはWC、五輪予選をのぞくあらゆる代表召集を、1月、そして各クラブのシーズン前合宿中は行うべきではない…と僕自身は考えている。与えられた任務を全力で果たそうと命を削って奮闘している選手たち…そんな彼らに、無理を承知で際限の無い過酷を強いる現状のJFAの在り方を、僕はある意味中国の蛮行よりも危険であり、また卑劣であると思っている。
一番大切なのはお金ではない…。それは視聴率や観客動員でもないし、ましてやスポンサーや広告会社の顔色でもない。まずはじめに、それは信義であるべきである。サッカーそれ自体と、それをプレイし慈しむ者たちへの尊敬である。JFAは一度“原点”へ立ち返るべきである…僕はそう思っている。
もっとも大事なこの時期に、大切な選手たちをこのような大会へ供出させられたチーム、関係者、サポーターの気持ちを思えば本当にやりきれない思いが残る。ある者はここで傷つき、所属チームでの過酷なレギュラー争いに敗れ、その活躍の場を喪失してしまうかも知れないのだ。
傷ついた選手たちの一刻も早い回復を祈っている。
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posted by 桐谷 |11:45 |
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2008年02月18日
攻守の切り替えが速く、シンプルながらも前線での動きの連動が効果的だった北朝鮮に対して、その2つの要素で少し劣勢だった日本。1-1の得点の中身が、個の打開力によって崩されての失点と、相手GKの基礎的な素養に欠ける凡ミスが絡んでの得点だった事を考慮すれば、むしろ幸運な結果であったとさえ言えるのかも知れない。
北朝鮮との試合ではいつも感じることであるが、GKの基礎ができていない。いつもこの部分で彼らは驚くほど多くの、そして余分な失点を喫している。これだけの組織と運動量と当りの強さを持ちながら、その部分でいつも足を引っ張られる彼らの戦いぶりは見ていて非常に気の毒である。GKの養成は、現状では優れた育成ノウハウを持つ外国人スペシャリストに依存するより他無く、彼らの経済状況においては、きっとそれは非常に難しい事なのだろう。
北朝鮮のみに限らず、やはりアジア全体のGKの水準はまだまだ低いと感じる。そしてこの日本もその例にもれない。そんな中、川口能活や楢崎正剛を押しやり、この試合川島永嗣が貴重な経験を得たのは明るい兆しである。やがて西川周作や菅野孝憲らと共に今後10年の日本代表のゴールを守ってゆくだろう彼に、岡田監督だからこそ根気強くチャンスを与え続けていって欲しいと願っている。内田篤人もここへきてやっと“らしさ”が感じられるパフォーマンスを見られるようになってきた。岡田さんのここまでの“我慢”が早くも実りつつある予感を僕は感じている。
前回のタイ戦で苦言を呈したサイドで2対1を形成する…というオシムジャパンから引き継ぐべきオートマティズムも、多少窮屈なフォーメーションから中澤佑二や鈴木啓太の献身により幾度かトライする場面もあった。特に後半からは田代有三や羽生直剛のムーブによって、サイドの深いスペースをうまく使えていた。さらに、トップに楔を入れる際の動きの連動・オートマティズムが整理され、徐々に磨かれてゆくのならば、もっとシンプルにフィニッシュへと結び付けてゆくことができるようになるだろう。後半の攻撃には、今後の戦いに向けてわずかながらも明るい兆し…を感じ取ることができた。
この試合の一番の問題は、前半開始早々の北朝鮮の“前からのプレスに対する対応”にあったように思う。ここでオフェンシブなポジションから後方に顔出しさせてまで、丹念に、ある程度のリスクを背負ってまで“繋ぐ”のか、或いはセーフティーにまずはサイドに蹴り込むのか…その状況判断とコンセンサスにまだまだ曖昧で危険な部分があったように感ずる。
勿論、WC予選の真剣勝負とこのようなゲームとではその判断に異なる部分もあるだろうが、監督がどうのこうの…という問題ではなく、ピッチ上の選手たちが即座に判断、意思統一してそれを実行できるだけの“しなやかな対応力”といったものがそろそろ備わって欲しいと感じている。その為にも、次戦の“手負いの中国”との試合は非常に良いテストケースとなる筈である。きっと純粋にスポーツとしての側面ばかりではなく、そこでは様々な感情や悪意…といったものまでをも彼らは突き付けられることだろう。
そこでの彼らの“闘争心”+“冷静な判断力”、そして戦術的な意味での“しなやかな対応力”といった幾つかの要素を注意深く見守ってみたいと思っている。
敵ながらチョン・テセの素晴らしいパフォーマンスとゴールに拍手を送りたい。もしかしたら来年、彼は日本に居ないのかも知れない。川崎サポーターの皆さんには、チョン・テセと共に闘えるこの一年を精一杯楽しんで欲しいし、またここで初めて彼を見た…という方々には、ぜひ今年一年のチョン・テセ、そして川崎のサッカーを見逃さないで欲しい。
この北朝鮮は、非常に良いチームであることが確認できた。4番パク・ナムチョルと11番ムン・イングクの両サイドアタッカーも、この試合を見る限りJでやれるだけの充分な素養を保持していると見て取れる。もし最終予選に出てくれば侮れない相手となることは間違いなく、この機会にぬかりなく、充分なスカウティングも施しておくべきチームである。
最後に、あの環境の中で冷静に戦い、ラフなプレーで試合を壊すことのなかった両チームの選手たちに心から感謝したい。
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posted by 桐谷 |10:47 |
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2008年02月07日
一言で表現すれば、
“タイのナイーブさに救われたゲーム”
であったように思う。
いかにスキルや体力面で長足の進歩を遂げたとしても、弱いチーム、歴史と伝統に乏しいチーム…というものは、往々にしてこのようなカタチで墓穴を掘ってしまうものである。もし10番ナロンチャイの決勝点につながる愚かな凡ミスと子供じみた振る舞いが無ければ結果はどうなっていただろうか?さらに主力選手の半数を欠いた…とも言われるこのチームが、もし万全の状態でこの試合に臨んできていたならば、同じようにキッチリ勝ち点3をものにできていただろうか?
残り20分、そして10分。
本当の戦いがこれから始まろうとするその時に相手が自滅してしまったカタチである。勝ち点3を得たこと以外には、まだここで取り上げて評価し得るポジティブな要素は見当たらない…というのがこの試合の率直な感想である。
オシム時代、執拗に偏りすぎたと感じるボールの“横”への展開が、この試合、そして岡田さんの体制に入ってからは、今度は逆に執拗に“縦”へと偏りすぎている…と感じる。
3人目の動き、次の次の展開…というビジョンが共有できて狭いスペースに持ち込むのならば、それは常に有意義なトライと映るのだろうが、大切なボールがビジョンの共有の無いまま、ただ性懲りなくパスカットのリスクに晒され続けている…そんな印象すら受ける。
“縦”への展開が有効な状況、“横”への展開が有効な状況。
その両者をこだわり無く上手に使い分けて攻撃すること…それが世界の基準である。単に選手たちの生真面目さや応用力や柔軟性の問題なのだと思うが、良い意味でのしなやかな“中庸”の気構え、心構えが早く芽生えてきて欲しい。
そしてこの試合を見ていて、僕が一つ非常に残念に思ったのは、サイドの攻略…である。
あの灼熱のアジアカップでオシムと共に紡いだサイドでの2対1を形成するオートマティズムが、この試合まったく試みられなかった事である。
きっとこの日の為に、彼は信念という一縷の光を用いて、あえてあの灼熱の中、一人暗室に篭る様な孤立無援の悲壮な覚悟の中で、あのオートマティズムをこのチームに焼き落としていたのだ…と僕は考える。それは決して岡田監督も否定している訳ではない筈だし、それは決して“オシムのサッカー”という訳でもない。世界の“スタンダード”である。
あのオートマティズムは世界のスタンダードであり、このドン詰まりのアジアの混沌を勝ち抜くための、そして世界に手を掛ける為の、ニッポンの手にしたかけがえの無い“大きな武器”“支え”である。決して手放すべきではないこの国の基盤であると僕は思っている。世界を驚かすための最良の手段である…と。
が、それが有効な、一番必要とされるこの状況において、逆サイドのスペースを持て余し、それを試みる事さえなく、煮えきらぬ1対1の勝負で無策のまま好機を逸している。僕自身非常に残念な思いがしたし、それを目の前で見ていたオシムの心情はどのようなものだったのだろう。このままでは、あの苛酷なアジアカップでの日々が報われない…。もう一度そこに光を当てて欲しいと切に願う。
中国重慶での3試合、良い内容とオートマティズムの蘇生を期待して見守りたい。
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posted by 桐谷 |11:33 |
2008WCアジア予選 |
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2008年02月05日
これまでに一番多く訪れた海外の国はどこか…?
と問われれば、僕にとってそれは間違いなくタイである。
一体何度旅したのか…それすら思い出せない。買い貯めた文庫本の詰まったバックパック一つ背負い、足早にバンコクの喧騒を離れ、サムイ島やタオ島などの秘境めいた南の島のビーチや、北部、東北部の田舎町で一人のんびりと羽を伸ばす。
そんな辺鄙な場所であっても、ひとたびこちらをサッカー好きと見て取ると、決して放って置いてくれないのがタイのサッカーフリークたちであり、たちまちお互い拙い英語でのサッカー談義が始まる…。その話題は、いつも当然のようにイングランドプレミアリーグについてであった。
近年のタイ代表の試合を見ていても、そのイングランドプレミアリーグの影響は色濃く感じられる。スピードと激しさ、そしてある程度運動量の伴った90年代後期からのタイ代表は、日本にとってももはや決して侮れる相手ではない。カウンターはそれなりに鋭く、スキルもACで対戦したベトナムに比べれば一階級上位である。ゴール前での強さ・高さ…といった部分での明確な弱点はあるし、実際にACではそれ一事によってオーストラリアに惨敗した訳だが、日本がキレイに勝とう、繋ぐサッカーを誇示しようという気構えで臨めば、思わぬ苦戦を強いられる可能性もあり得るものと考える。
FW陣のケガもあり、どのようなスタメンでスタートするのか…現時点では予想がつかないが、敵の守備陣に的を絞らせない為にも、90分間速攻と遅攻の使い分け、ショートパスとロングボールでの効果的な揺さぶりで、一事に固執しないメリハリある攻撃を展開して欲しい。0-0のまま残り10分…というシチュエーションには、できることなら出くわしたくは無いが、ピッチ上の選手とベンチとの間で、その状況ならば“何をすべきか?”というコンセンサスだけは、事前に明確なものを持ち合わせていて欲しいと切に願う。
いずれJ改革案の方で触れる機会があるかも知れないが、今タイ代表が歩き出した道、そして方向性…元首相であるタクシンが私財で買収したマンチェスターシティと、そこに有望な選手を送り込み、代表チームをジョイントさせる事でさらに高いレベルへ引き上げようとする彼の野望や試みは、非常に興味深いものである。ビジネスとしてのこのトライが成功するのかしないのか?強化としてそれは機能し得るのかしないのか?そして文化として、それはイングランドの、マンチェスターの人々から果たして受け入れられるのか、或いは受け入れられないのか…?
Jとアジアの未来…を展望する上で、これは非常に興味深いテストケースであると僕は捉えている。
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posted by 桐谷 |10:43 |
2008WCアジア予選 |
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