2010年03月19日

一番つまらない試合 【キリタニ】

一番つまらない試合とはどんな試合か?

それは、レフェリーが勝敗を決してしまう試合である。もっと厳密に云えば、レフェリーのあやふやなジャッジによって、勝敗までもが歪められてしまう試合……である。

「ホールディング」に対するジャッジの厳格化によって、残念ながらそういうゲームが格段に増えてきている。リピート放送を含めて、ここまで10試合ほど見てきたが、僕の目にはその1/3が、レフェリーのあやふやなジャッジが勝敗を歪めてしまったゲームに映った。このままではJリーグがつまらなくなってしまう。

僕は以前この場に、

『Jリーグは手を使うファールに甘すぎる。厳しく取らなければ国際試合に対応できない』

と書いたことがある。

僕が厳しく取るべきだと考えたのは『手を使う』プレーであって、『腕を使う』プレーではない。さらに具体的に言えば、手で相手や相手のユニフォームを、アカラサマに掴むプレーであって、手で相手や相手のユニフォームをレフェリーに見つからないように上手に掴むプレーではない。

裁きの基準は、そこにファールが『在ったか無かったか……』ではないと僕は思う。
あなた(レフェリー)にそれが『見えたか見えなかったか……』であるべきだ。
あなた(レフェリー)はそれを『確認したか確認できなかったか……』であるべきなのだ。
そしてその前提は、観客も共有しなければならない。

これまで2節のJリーグを見ていると、相手の身体に腕が当ると即座に笛が吹かれるような過剰なジャッジが増えたし、明らかにレフェリーに見えていないような角度であっても、腕を使ったと思しき選手が、不当なカードを貰ったりしている。

これでは逆に国際試合に対応できなくなる。むしろ、腕はもっともっと上手に使うべきなのだ。

稲本潤一や長谷部誠、松井大輔を見ていて、僕がもっとも感心するのは、腕の使い方と上手なファールの仕方である。欧州に行って、皆が皆、間違いなく上達するのはこの部分である。正しいファールの仕方とその為の判断力……と、言い換えても良いかも知れない。特に一番激しいリーグで、激しいポジションで、濃密な経験を積んできた稲本潤一のそれは、これまでの日本選手の中でも最高峰のレベルにあると僕は思う。

本来ならばJリーグは、彼のような知性や判断力や経験やそのテクニックこそを、日々のゲームの中で育んでゆかねばならない。そのためにもJリーグのレフェリーたちは、海外の、とりわけ欧州トップリーグのゲームを、もっともっと丁寧に見るべきであるし、その基準を素直に取り入れるべきなのだ。

僕がJリーグのレフェリーに求める事は、ルールブックの杓子定規な適用の前に、欧州基準に照らした感覚的な妥当性であり、ある面での大らかさである。

あからさまにユニフォームを引っ張るようなベタなファールやベタなシミュレーション、そして危険なバックチャージの類には容赦なく罰則を与えるべきだが、激しくエキサイティングなゲームを演出する上での、身体と身体との激しい衝突や、感情と感情のある程度のぶつかり合いや交錯は、積極的に解放し、また許容してゆくべきであると考える。そこでの適切な判断力こそが、ゲームの質やファンの満足度に繋がってゆくのだ。

素晴らしい試合であればあるほど、レフェリーの存在は目立たないものである。また良いレフェリーであればあるほど、笛の数も、カードの数も少ないものである。要するに僕にとっての良いレフェリーとは、少々眼力は劣れども、予断で裁かない、笛を吹かないレフェリーのことである。

ニーチェの遺した言葉にこんなものがある。

事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである。

ニンゲンは神ではないのだから、たとえゲームの審判を任されたレフェリーであろうとも、すべての真実を知ることはできないし、僕達もまたそれを許容しなければならない。要するに、判らない事は判らないまま捨て置く覚悟を持って、ジャッジとはなされるべきなのだと僕は思う。

※関連エントリー
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posted by キリタニ |11:37 | Jリーグ | コメント(9) | トラックバック(2)
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