2010年02月08日

【東アジア選手権】 vs中国 戦評 【キリタニ】

まず最初に断っておかねばならない事がひとつあると思う。

それはこの中国戦と、先日のベネズエラ戦は、ゲーム内容も、対戦相手のレベルも、その対戦相手の目的も、そしてその戦い方も、まったく異なるゲームであった、という事である。

前回のベネズエラ戦より攻撃は良くなった……という。
確かにチャンスの回数は増えただろう。が、その背景にあるもの、そしてその中身を見落としてはいないだろうか?

この中国は、ベネズエラほど組織だったプレッシャーをかけてきていただろうか?
この中国は、半ば攻撃を放棄してまで守備を固めてきていただろうか?
この中国は、WC予選アウェーでブラジルと引き分けられるほどのポテンシャルを持ったチームだろうか?或いは、ホームとはいえ、コロンビアに2-0で勝てるだけの可能性を有したチームだったろうか?

僕はそのどれもがNO!だと思っている。
要するに日本は、ベネズエラ戦に比べ、実力的にも、状況的にも、戦術的にも、組みしやすい中国と戦って、勝ちきれないばかりか、1点も取ることさえできず、PK献上で敗色濃厚なところを命拾いした。

もちろん、こういうゲームがあるのもサッカーだ。が、そういう位置づけの試合であったことは、このゲームへの評価の基準として、建設的に踏まえて議論されなければならないものと僕は思う。

この試合から僕が問題を抽出するとするならば、むしろそれは永遠の課題である決定力を欠いた攻撃……などよりも、ボールを奪われた際の速い攻めに対する対応の方である。もし中国の中盤が、まともな状況判断から、あとワンテンポ速くボールを運び、稲本の壁をすり抜けることができていたならば、日本は少なくともあと3、4度の決定機を中国に与えていたように思う。そういう意味では、日本にとってこの試合は、無用なリスクを負いながら、非効率な攻めに終始したレベルの低い内容であったと僕は評価している。

稲本潤一の迷いのない、積極的で、的確な、“つぶし”が、いったい何度日本のピンチの芽を摘んでくれただろうか。彼はこのチームにしっかり自分の活き場を見つけ、その能力とポテンシャルの高さを証明したように思う。彼と内田篤人、そして楢崎正剛の安定したパフォーマンスが、この悲観的な試合における、唯一の光明であったと僕は思う。

一方の中国は、サッカーに関してはこれまでとあまり変わらない。本質的には、未だ10年前、15年前の眠れる獅子そのままであると僕は思う。 17番ガオ・リン、 20番ロン・ハオなど、個々の能力に光るモノはあれど、相変わらず戦略性を欠き、また戦術的なバリエーションと柔軟さが足りない。そしてまた、勝負どころで“力押し”でくる強引さにも欠ける。これでは実力に勝る日本相手に、無闇にリスクを負いながら、鴨がネギ背負って戦っているに過ぎない。この中途半端さが、ゲームインテリジェンスの無さが、中国サッカーの進化を拒んでいるのだと僕は思う。本来ならば、この結果に喜んでばかりもいられないはずだ。

何よりも一番気になったことは、ひとつひとつのプレーに“視野を確保する”という意識が欠けていることである。ボールを保持してルックアップできていないし、またそのボールを受ける予備動作の中で、状況を認識する意識が欠落している。そしてそんな味方の状況に対する、ケアとサポートの意識も希薄である。ある意味これは中国人の文化的背景に由来する“個性”なのかも知れないが、この部分を育成年代からしっかり叩き込んでゆかなければ、サッカーの質を根本から変える事は難しいだろう。

しかし、逆にいえば、そんな基本を欠いてこれだけ球際に強く、個々のキープ力を発揮できるのだから、やはり日本人より個の潜在能力は高いといえるだろう。特に17番ガオ・リンなどは、うまく溶け込めればJリーグでケネディと同じだけの存在感を発揮できるタレントであると思う。中国からJリーグへ……という流れは、今このタイミングを逃してしまえば将来実現不可能である。長期ビジョンに立って、どこかのクラブがその先鞭を付けてくれることに期待したい。

後半37分のPK。
今後の日本にとって、あの結果が齎すものは幸運なのか?それとも不運なのか?
きっと議論の別れるところだろう。過去にもそんな場面は何度もあった。そうして、その度にちょっとした幸運、或いはもしかしたら不運によって、ここまでダラダラと流されてきたのである。

今から他の誰かに監督を代えよ……とは、僕はまったく思わない。また、1、2敗したところで代えてくるものとも思わない。

もしかしたら数ヶ月で、チームを変貌させてくれる人は確かにいるのかも知れない。しかしそれによって、日本がWC本戦で何かを成し得るものとも僕は思わないし、また、その付け焼刃が、様々な幸運によって何らかの奇跡を成し遂げてみたところでどうだろう?もしかしたらそれは、本質的な問題の先送りにしかならないのではないだろうか?Jリーグのクラブにも、そんな前例が数限りなくあるのと同じように。

一番真理に近いところの妥当な『現実』を僕は受け止め、それを噛み締めてみたいと思う。例え自らは死滅してしまおうとも、僕にとってより大切なものは、4ヵ月後の日本より、40年後の日本なのだ。

しかし同時に、現体制においても確実にベストは尽くされるべきであり、今更ではあったとしても、若干のフォーメーション修正と人選の変更はあってしかるべき、いや、無くてはならないものと僕は思っている。WC三次予選アウェーのバーレーン戦において、無様な敗戦を喫した岡田監督は、一度大きくチームを変えている。もしかしたら今回の中国戦も、その為の大きなターニングポイントになり得たかも知れなかった。いずれにせよ、今がこのチームを多少なりとも変革し得るラストチャンスであることは間違いない。このまま“大きな問題はない”と云って南アフリカに向うのか?或いは、日本の100%を出し切る為に“覚悟を決めて練り直す”のか?

後半37分のPK。
あの結果が齎すものが、果たして幸運なのか?それとも不運なのか?
あと4ヶ月の間、僕はそれを自分自身に、反問し続けることになるのかも知れない。

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posted by キリタニ |11:52 | 岡田JAPAN | コメント(17) | トラックバック(1)
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