2008年05月06日

フッキとニッポンの限界

僕は悔しかった。

それはフッキの強引さゆえの失敗が…ではなく、それに対する我々ニッポン人の評価が…である。

“なんでパスを出さないの?”
“どうして一人でやろうとするの?”
“確率の低いシュートを、なんで、どうして、打ってしまうの?”

僕が彼であれば、そんな批判にいちいちにこう答えるだろう。

“やってみたかったから”
そうして、
“きっとやれる…と思ったから!”

自分の限界はどこにあるのだろうか?
それが判れば、きっと判断はたやすいし、今より賢いプレーができるだろう。
けれどもその限界を認め、限定された可能性の中に、彼が自分のプレーを探し始めたとしたらどうだろうか…?きっと僕はこの21歳の若者にこんなにもトキメクことはもはやないだろう。

若き日のエジムンドも、ロマーリオもアドリアーノも、常に限界のその先の…プレーを捜し求めていたストライカー達であった。そして今それを、僕たちはニッポンで、Jリーグで、見ているのである。結果、彼がどれほどの到達点に辿り着くのかは僕には判らない…。中東の果てでただ金の為にそのポテンシャルを燻らせたまま終わるのかも知れないし、もしかしたら欧州に渡り、メッシやテベスのようなタレントたちとバロンドールを争う選手にまで上り詰めるのかも知れない…。それはまったく判らない。が、その2つの可能性の均衡の中で、21歳の若さにして、このニッポンでそのプレーを披露してくれた選手は、このフッキが初めてである…と、僕はそれだけは断言できる。彼に訪れる未来が、そのどちらであったとしても、僕はまったく驚かない。
そしてその未来が、より実りあるモノになるように、

『パスじゃない。一人で行け。シュートまで行ける。できるっ。やれるよっ!』

そうTVの前で一人呟きながら、今彼のプレーを見ている。

ジョージ・ベスト、マラドーナ、エリック・カントナ、そしてエトオ、ルーニー…。飛びぬけた次元を有するタレントたちが、いつも少々クレイジーであることは世界の常識からすれば“当たり前”のことなのかも知れない。そして僕は、なぜかそんな彼らの物語が“嫌い”ではないのだ。アルシンド、ストイチコフ、ストイコビッチ、エムボマ、ウェズレイ、エメルソン…Jリーグにおいても、こうして光り輝いたタレントたちは、僕らの“規準”からみれば、多少なりともクレイジーな気質…を持ち合わせていた筈である。
僕はそれも含めて、今このフッキのプレーを愉しんでいる。プレーにしろ、キャラクターにしろ、その突き抜けたスケールであり、クラスを味わっているのだ。


東京ヴェルディVS横浜マリノス。
前半42分頃のプレーである。

1点のリードを得た前半残り3分ほどの時間帯。バイタルの少し手前の、状況的に可能性の見えない局面から、フッキは強引にゴールへ向かって左足を振りぬいた…。フッキであれば20回に1度は“入る”局面である。が、日本人であれば100回に1度しか“入らない”局面である。

その瞬間、スカパー解説の原博実さんであったと思うが、残念そうな声をあげた。そうだ。いつものあれ“なぜ、確率の低いシュートを打ってしまうのか…”というあの嘆きである。

100歩譲って、0-1のビハインドの局面、前半残り3分の局面でのその“嘆き”であれば、僕も甘んじて聞き流したい…と思う。けれども1点リードして、残り3分。ゲームは終始マリノスのポゼッションに押し込まれているし、展開が開けていた局面ではない。少々強引であろうとも

“シュートで終わる”

そのシチュエーションに、僕はあれ以上正しい選択など無かったと思っている。
そしてこれこそがニッポンの問題であり、大きな“壁”なのだな…と改めて思う。

ストライカーが育たない…という。
そしてニッポン人はシュートを打たない…という。だから敵にとって“怖く”無いのだ…と。

大きな森を仰いで、僕らはつねにそう嘆くが、一つ一つの木を見ながら、果たしてそんな“嘆き”に正しく向き合ってきたのだろうか…。日本を代表する元ストライカーのそんな言葉を聞いて、僕は小さくない焦燥と不安に苛まれたりもする…。

そして改めてフッキに、そしてニッポンのストライカーたちに、心の底からこう叫びたい。

やれる。きっとやれる。
パスじゃない、シュートまで行ける!…と。

そして、何度でも、失敗していいんだ…それがサッカーなんだ…と。


★サッカーブログランキング…応援のクリック、いつも本当にありがとうございます★
⇒⇒⇒人気blogランキングへ

キリタニ100法『 キリタニ映画ランキング TOP10  』掲載いたしました。こちらもよろしくお願いします。

*現在このエントリーは、コメント欄に認証システムを導入しております。参加を希望される方は、ご面倒をおかけ致しますが【スポナビ、そしてサッカーに集うすべての皆様へ】にて当ブログのコメント欄に対するコンセプションを一度ご確認のうえ、コメントをお寄せください。

  • 共通ジャンル:

posted by 桐谷 |06:19 | Jリーグ | コメント(28) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加