2007年08月29日

柿谷曜一朗と城福ジャパンの終戦 

結果論になるが、もし日本がこの厳しいGLを勝ち抜けるチャンスがあったとしたならば、やはり僕は二戦目のナイジェリア戦、1点先取された後の戦い方にチームとしての“成熟した判断力”が求められていたのだと思う。
3戦目のフランス戦においては、見事にその意思統一ができていたが為に、それが残念でならなかった。あそこでの冷静な選択、リアリズムに徹した意思の疎通が可能であったならば、日本はあと1試合…いや2試合の経験は積めたのかも知れないと、僕は思っている。

このGLの3つの対戦相手は、どれも実質的には日本の実力を上回るとても強いチームであったように僕は認識している。ハイチ戦などはその結果から、かなり甘く見られているようではあるが、U-20のコスタリカ同様、もう一度試合をすれば勝つ確率より負ける確率の方が高いチームではないかと思う。要するにそれだけハイレベルなGLで、日本は突破まで“あと一歩”のところまで迫っているのである。これに関しては高い評価が成されるべきものであると思う。


ただし同時に、僕はこの大会が単なる経験の場、思い出作りの場などではあってはならないとも思っている。プロを目指し、その枠組みのルートに組み込まれた瞬間に、すでに彼らは実世界に自分自身の人生を“選択”した成人なのだと思う。さらに彼らはその中から選ばれた俊英たちである。南米やアフリカ、欧州列強のプロへの生き残りを賭けた優れたタレント達同様、人生を賭けて勝負へ挑むという強烈な気概を醸成してゆくことが出来無ければ、スキルや身体能力ばかりでなく、その“メンタル”の部分での差は開くばかりである。ここにそれを見守る周囲の厳しさが絶対に必要であると思うし、その為の環境づくりは僕達一人ひとりの意識の変化から生まれてゆくものなのではないだろうか。

ここで詳細な説明はしないが、韓国には“四強制度”というシステムがある。彼らは非常に若い年代から“勝つこと”そしてそれによって“生き残る”ことをシステムによって宿命付けられている。
彼らと日本、世界と日本とのこの部分での大きな“差”は、単純化された精神論のみで語るべきものでは無く、システムとしてのこの国のサッカーの在り方から、いずれ大局的に問い直すべきものであると僕は考える。

僕はここで“スキル”か“リアリズム”か…の不毛な論争を繰り広げる気などは毛頭ないが、世界はその両立を高いレベルで成し遂げている。いくらスキルで世界に一歩追いついたと喜んでみても、現実の勝負を分ける巨大な断層は、別次元で深く大きく深行している…僕はまたそんな恐怖も感じている。


そして柿谷曜一朗くん。
日本では明らかに“特別な存在”の彼も、世界へ出れば数多ある才能の中のヒトカケラに過ぎない。それを如何に過酷な競争の中で磨き、一歩一歩成長を積み上げて世界の中で“特別”なものにしてゆくかは、彼自身の今後の取り組み方にかかっているのだと思う。
現時点で中田英寿のそれよりも輝いている彼が、数年後に中田英寿のそれを越えていられるかはどうかは、彼自身の大きな課題である。
これまでもたくさんの“特別な存在”とその挫折を見てきているからこそ、彼の順調な成長であり進化を強く願う。そして高い次元の技術の前に、基礎の部分もしっかりと再確認してみて欲しい。細かいミスが無くなれば、そして運動量の質と量を高めることが出来れば、さらに一歩自分自身の価値を高められるはずである。中田英寿はそうして世界への道を駆け上がって行った。彼がそれを越えるという事は、その中田英寿自身の努力を超えてゆく…という事なのだと思う。そこに近道などないのだろう。
上を見ることと同様、足元を見つめることを忘れずに、今後も厳しく自分自身を磨いていって欲しい。


選手達、そして城福浩監督には、ここで味わった後悔、くやしさ、屈辱といったもの全てを、腹いっぱいに溜め込んでまた次のステップへの糧として欲しい。敗れはしたが、彼らのその戦いぶりに僕はこの国のサッカーの未来と希望を見出すことが出来た。この国に今できること、彼らはそれをピッチの中で精一杯に表現してくれたと思う。この頑張りに応えるのは、この結果と内容に対するJFAや技術委員会の今後の対応であり、それを見守る僕らの正しい評価と成長…なのだと思う。僕の抱いているこの危機感…に対する彼らの認識と対応を、今後さらに注視してゆきたい。


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posted by 桐谷 |06:45 | 2007 U-17ワールドカップin韓国 | コメント(18) | トラックバック(0)
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2007年08月26日

【U-17】 フランス戦 その結末と評価

フランスの17歳の少年達は完全な大人だった。

前半開始早々から、見事なポジショニングとトライアングルの形成によるディフェンスとボールキープの技術を見せ付けてくれた。アフリカのタレントを欧州トップレベルの組織の中に組み込んだ完成されたチームであり、僕は開始10分でこの試合の厳しい結末を突きつけられた気分になった。

この相手に対して、日本は本当に良く戦った。
敵の圧倒的なポゼッションにも慌てずに、よくリトリートしてスペースを消していたし、リスクを軽減しながらの鋭いカウンターは、充分にフランスDFにプレッシャーを与え、攻守の均衡を保たせることに貢献していた。
日本にとってこの試合は、今回のGL3試合の中で、最も意図が明確で、成熟した戦略に基づいたベストゲームであったように思う。そして城福監督の采配についても、僕はその全てのロジックを受け止めることができたし、考え得る最高の判断であり選択であったと心から思う。

僕はこのチームの局面に垣間見せる“インテリジェンス”の部分を高く評価したい。そして90分のゲームであり、3試合のGLであり、一つの大会を通して、その“インテリジェンス”に基づいたチームとしてのさらに一歩進んだ判断力・決断力が不可欠である事もまた痛切に感じた。
技術ばかりでなく、フィジカルばかりでなく、精神力ばかりでなく、組織ばかりでなく、その成熟した知性からなる決断であり判断力を、これから経験を積むことによって、もっともっと磨いていって欲しいと強く願う。

そしてこのクラスの相手に勝ち負けの勝負を挑むのであれば、さらに“メリハリの利いた攻守”のスイッチと、疲弊して動けなくなった段階でのもう一段の“肉体的・精神的パワーとエネルギー”が必要である事をしっかりと胸に刻み、さらに今よりももっとタフな選手、そしてチームに、成長していって欲しいと願う。

GL突破の鍵は、結局得失点差の部分にかかってきそうな雲行きではあるが、幸運か不運かそのどちらに転ぶにせよ、その結果については明確なロジックを見出し、未来への糧として役立てて欲しい。

3試合目にして山田直輝、岡本知剛の中盤二人のタレントのポテンシャルが発揮されたことを非常に嬉しく思う。そしてできることならば、なんとしてでもこのチームにもう一試合のチャンスを与えてあげたい…。

僕の知る限り、これまでの日本のU-17の歴史の中で最高のクオリティを有するチームである。もしここで敗れ去ったとしても、僕の中のその評価は決して変わることはない。


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posted by 桐谷 |13:48 | 2007 U-17ワールドカップin韓国 | コメント(19) | トラックバック(0)
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2007年08月24日

【U-17】ナイジェリア戦 皮肉なトラップ

この厳しい結果を導いた最大の原因…それは前半20分までの日本が素晴らしすぎたからであると僕は思っている。

はじめにガツンと彼らの怖さを見せ付けられていれば…、或いは圧倒的な能力差を、個対個の劣勢を身にしみて味わえてさえいれば、最初の失点に繋がる数的同数のピンチを招くことはなかったのかも知れない。もっと慎重に、勝ち点1を賭けた繊細な攻防が繰り広げられたのかもしれない…。ここに現実の厳しさとその皮肉を感じずにはいられない。

僕はこの試合、勝ち点1に執念を燃やすべき試合であると考えていた。そしてそこには、当然のリアリズムが求められてしかるべきものであると考えていた。例えU-17といえども…である。
そして絶対にあってはいけないこと…、それは例え勝ち点1を逃したとしても、先のハイチ戦における+2の得失点差のアドバンテージを失わないこと。すなわち何としてでも2点目を与えないこと…が大切だと。

ところが先取点を取られた後、DFラインを押し上げて日本は点を取りに勝負に出た。実際前線でのすばらしいインターセプトから、2度の決定的チャンスを作り、そしてそれを逸した。ナイジェリアに高いラインの裏を突かれて追加点を与えたのは、その直後の事であった。

僕はこの判断、そしてトライが間違いだったとは思わない。

が、そのリスクを、危険を、そしてそこでの喪失を、キチンと解釈したうえでのベンチの指示であったのかどうかは、今後の為にも大会後、技術委員会においてしっかりと議論されるべきポイントであると考える。
僕が城福監督の立場であれば、あそこはリアリズムに徹して、まず0-1の状況をキープして後半に入ることを何よりも優先させたと思う。もちろん引いて守れば守りきれる…などと言うつもりはないが、少なくとも次の失点を防ぐための最良の手段と思われる選択を選手に指示したように思う。

これはどちらが正解なのかは僕にもまったく判らない。ただし、U-17だから…というエクスキューズが認められてはならないように思う。結果的に後半あれだけバテてしまっては、ゴールを守りきることなどできなかったのかも知れない。が、このGLの行方を考えた場合、これは非常に大きな勝負の分かれ目…になるかも知れない選択であったような気がする。

噂には聞いていたが、R・イブラヒムの異次元のボールタッチには大きな衝撃を受けた。当然母国では“オコチャ2世”などと呼ばれているのだろうが、僕はむしろガーナの天才児、ランプティの再来を見た思いがした。
彼は世界の宝となり得る素材である。道を踏み外すことのないよう、着実に、成功への道を駆け上がって行って欲しい。

一戦目に続き、この高温多湿の環境下で選手たちはよく頑張ったと思う。結果的にも内容的にもそれは惨敗ではあったが、この試合においては、自分たちの力はしっかりと出し切れていた事を高く評価したい。

そして前半20分までの“人もボールも動く”世界に通じたサッカーが、人が動けなくなった瞬間に、脆くも崩壊し無力化させられてしまう恐ろしさを充分に知ってくれたのではないだろうか。
技術だけではない、フィジカルだけではない、組織だけではない、そして精神力だけではない、サッカーの難しさと奥深さをしっかりと経験して、また次のステップに繋げて欲しい。

そしてここでまた再度、城福浩には悩ましい判断が迫られる訳である。勝ち点1を得られれば決勝トーナメントへの進出はまず間違いないが、その戦い方をどう決断し、そしてまた選手たちにどう伝えるのか…。

僕はその結果…ではなく、彼の決断に注目してこのフランス戦を見守ってみたい。この状況において彼が導き出す答え…それが明確なものであるのか、或いは煮え切らないものであったのか…僭越ながら僕は、それを含めて、城福浩という人物の資質をこの試合を通してじっくりと見極めてみたいと思っている。


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posted by 桐谷 |08:59 | 2007 U-17ワールドカップin韓国 | コメント(16) | トラックバック(1)
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2007年08月20日

【U-17】ハイチ戦 城福浩と日本の未来

このハイチ戦が初戦で本当に良かったと思う。
もし彼らがナイジェリアやフランスに1敗した上で、或いは1敗1分の勝負がかりのシチュエーションでこの試合に臨んでいたならば、日本は粉砕されていたかもしれない…。それぐらい個の能力と、その将来性には圧倒的な差異を感じた。
もう一度試合をしたら勝てる相手ではないのかも知れない。が、それだけに大切なGL初戦、この相手に知略と試合運びの巧みさで勝利したこのU-17城福ジャパンの健闘は大いに讃えられるべき成果であると思う。

大会前、僕はこのGLの組み分けを見て、正直3戦全敗という悲惨な結果もその可能性のひとつとして想像したし、そのたった一度の結果によって、これまで城福浩と選手達が積み上げてきた内容が全否定される事を非常に恐れていた。
だからこそこのハイチ戦の勝利には、日本の未来に繋がる偉大な価値を見出している。彼こそ次の日本のサッカーを背負ってゆくべき、イビチャ・オシムの良き後継者であると僕は考えている。
この大会を終えたら、すぐさまオリンピック代表か、或いはJリーグにおいてFC東京のようなチームに活躍の場を得て欲しい。そこでの成功が、オシム後の日本代表に直接繋がってゆくことを僕は願っている。


ナイジェリア戦は必死で守りぬく90分になるのかも知れない。
その中でゴールへの筋道をいかに絞り込んで、少ない人数でカウンターを成立させるかに勝ち点1の行方がかかっているのだと思う。ハイチ戦で見られたようなパスミスのオンパレードと、踏ん張りの利かないガス欠が見られれば、最終ラインでの攻防は即座に“決壊”してしまうだろう。
高温多湿の苛酷な環境の中での、間をおかずのこの試練の一戦は選手達にとって、肉体的にも精神的にもとても厳しいものであるはずだ。が、この試合に彼らの未来がかかっている。城福浩と日本の未来がかかっている事を肝に命じて、是非ともこれまでで最高の試合を見せて欲しい。

FWの低パフォーマンスもあり、柿谷曜一朗にはさらに無理を強いることになるかも知れないが、このレベルでの戦いであれば、引き続き彼の個力という+αが不可欠である。そして河野広貴のドリブルも、今後の強豪相手の押し込まれる展開では必ず活きてくるはずである。ディフェンスについてはある程度の信頼性を見せてくれただけに、このハイチ戦の1点目に見られるような洗練された知略と、日本人らしいアジリティを活かした速い攻めで、次のナイジェリアとの戦い、なんとか勝ち点1を奪って欲しい。

決勝トーナメントにさえ進出できれば、後は何が起こってもおかしくない。それだけの可能性を有したチームであると僕は思っている。


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posted by 桐谷 |10:30 | 2007 U-17ワールドカップin韓国 | コメント(20) | トラックバック(1)
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