2008年06月28日
『私のチームにとって重要なことは、プレーを楽しみ、創造的であり、ゴールを決めること。ロッカールームでは、選手たちに“誇らしく思う”と伝えたよ』
セミファイナルでドイツに敗れたファティ・テリム監督(トルコ)の、おそらくはこのチームに向けた最後の、そして惜別の言葉である。
ニンゲンとは弱いもので、サッカーにおいて、いや、なにもサッカーに限った事ばかりではなく、あらゆる事柄において、“結果”を追うことで見えなくなるもの、失ってしまうもの…というものがあるような気がする。もしかしたらそれは、プレーを楽しみ、創造的であり、そしてゴールを決めること…なのかも知れないし、このような敗北を“誇らしく思う”という、揺るがぬ哲学なのかも知れない。
この大会が、なぜ僕の目にはこんなにも素晴らしく、スペクタクルに満ちたものに映ったのか…。きっとそれは彼らのような魂、哲学を貫いた者たちに、“結果”という光が射したからなのだと僕は思う。運が報いを与えたからなのだと思う。
一番大切なのは、勝つことの前に、戦うこと。そして戦うことの前に恐れぬこと。さらに恐れぬ為には揺るがぬ信念を持つ事。その原点にあるべきものこそが、サッカーを楽しむこと…なのだと僕は思う。
僕に言わせれば、結果よりもずっとずっと先に大切なものがある。“結果”に“価値”が宿るのではなく、“価値”に“結果”が宿る事こそが、僕にとってのサッカーの“醍醐味”であり、“希望”なのだ。僕はサッカーを見ながら、いつだってそれを追い求めている。それこそが、僕にとってのサッカーの喜びなのだ。
トルコは最後の最後まで、本当に素晴らしいチームだった。また準決勝では良いところなく敗れたが、ロシアこそがこの大会の“華”だったと思う。ドイツはドイツらしく、粘り強い受身でトルコの攻撃を交わし、そしてゴール前での強さを発揮した。スペインはロシアの緩慢なプレッシャーに恵まれたとはいえ、まさに自在にボールを動かし、クリエイティブなサッカーの模範を体現してくれた。
決勝戦の図式が、創造と破壊のガチンコのぶつかり合いになるか、或いはスペインの創造に対してドイツもまた創造で対抗しようとするのか…。両チームの中日が一日異なる事を踏まえれば、前者のぶつかり合いの場合にはドイツが、そしてそれ以外であれば現状の地力でスペインが勝るような気がしているが、幸運はどちらに微笑むだろうか。未だ動きの悪いバラックと、準決勝で意地を見せたセスク。両監督が、彼らの起用をどう考えるのか…動くのか、動かないのか…僕はそんなところに注目してこのファイナルを観戦したいと思う。
最後に、スカパーでは岡田武史監督が現地で解説を務めているのだが、スペインのセスクやイニエスタやその華麗な攻撃に見とれる前に、彼らの守備をじっくり見て欲しい。
このEUROにおけるスペインは、アジアにおける日本だと僕は思っている。この攻撃の為の効率的な守備の在り方。守備の為の効率的なポゼッションの在り方…を、ぜひ現日本代表のそれと比較・分析してみて欲しい。アジア最終予選の組み分けも決定したが、このスペインがどうドイツと対峙するのか?それはそのままオーストラリアとの戦いの為の良い教訓となる筈である。三次予選の過酷な重圧からひとまず開放されて、今は“自分へのご褒美”気分に浸りたいキモチも重々承知するが、この願ってもない機会を、今後の日本代表の在り方にぜひとも活かし、役立てて欲しいと切に願う。
*EUROの閉幕とともに少し休暇をいただいて旅に出ようと思います。
よって決勝後のエントリーを仕上げる時間がありませんので、完全なるオフサイドではありますが、ここに今大会の私的ベスト11を付記して、この場のEURO2008を幕引きして終えたいと思います。
GK ジャンルイジ・ブッフォン /イタリア
DF セルヒオ・ラモス /スペイン
DF カルラス・プジョル /スペイン
DF ペル・メルテザッカー /ドイツ
DF ユーリ・ジルコフ /ロシア
MF マルコス・セナ /スペイン
MF ルカ・モドリッチ /クロアチア
MF ダビド・シルバ /スペイン
MF アンドレス・イニエスタ /スペイン
MF ルーカス・ポドルスキ /ドイツ
FW アンドレイ・アルシャビン /ロシア
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posted by 桐谷 |11:38 |
EURO2008 |
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2008年06月24日
強い国であれば強い国であるほど、その国の優秀なタレントは欧州各国に散らばり、シーズン終盤まで厳しい連戦を戦い、異なるスケジュールと、異なるメンタリティー、スタイルに馴染んで、バラバラの状態でこのEUROの一ヶ月に召集される。
そこに強者ゆえの難しさが存在することも自明であり、それゆえに近年少なくない番狂わせが生じてしまっているのも一理の真実なのだと思う。
だが、それを慮ってなお、このEURO2008のヒディンク率いるロシアは、傑出して素晴らしいサッカーを展開してきたと僕は思う。グループリーグからここまでのゲームを見てきて、今どのチームにアンリ・ドロネー杯がもっとも相応しいかと問われれば、僕は迷う事無く
『ロシア』
と答える。
強豪にも怯むことのない気迫と闘争心。驚異的な運動量と、攻撃は最大の防御という90分を通して貫かれる一途な攻撃への姿勢。さらにアルシャービン、パブリュチェンコらに見られる眩いタレントたち。対スウェーデン戦にしろ、準々決勝のオランダ戦にしろ、単に結果のみならず、彼らはその内容でこの欧州の一流国を圧倒し、勝つべくして勝ってきたのだ。
今回のドイツも素晴らしい、スペイン、トルコもまた素晴らしい…が、ここまでの内容をつぶさに見てくれば、ロシアほど素晴らしい戦いぶりを見せてきた国は他にない。たとえ彼らが優勝を逃すとしても、この2008EUROを僕はロシアの鮮烈な攻撃サッカーと共に思い出すことだろう。
そしてまたファティ・テリムが今大会で成し遂げた仕事も偉大なものであると僕は思う。
EURO予選ではマルタやモルドバに勝ちきれず、またギリシャやボスニアに敗れた事で、自国ではテリム解任の声まで上がっていたと聞くが、本選で見せてくれたサッカーは、トルコの歴史上最高の輝きを有したものであると思う。僕はテリムサッカーの信望者として、氏の今後の動向が非常に気にかかるのだが、大枚を叩いてでも、Jリーグは彼のような指導者こそ引寄せるべきであると思う。
今回のEURO2008。
僕はオランダが優勝した1988大会や、その次の1992年、直前までオシムが率いていたユーゴが排斥され、代わりに出場権を得たデンマークが優勝したこの2つの大会を上回るレベルの感動と興奮を感じている。
スイス代表とコビ・クーン監督のその7年にわたる冒険の心温まる惜別のシーン。
同じく6年もの栄華のときを共に過ごしてきたチェコ代表とブリュックナー監督とのその儚すぎる夢の結末…。
グループリーグ、他のどこよりも素晴らしいサッカーを見せてくれたビリッチとクロアチア代表の突然の敗退。そしてラーション、コラー、ファンデルサール、マケレレ、ニコ・コバチら華々しいスター選手たちの国際舞台からの離別。1試合1試合が終わるたびに、その一人一人の去り際にこみ上げてくるものがある…。
また選手の技量ばかりではなく、その優れたレフェリング技術の巧みさにも深く感心する。スタッツの紹介やカメラワーク、スイッチングにいたるまでのサッカー中継の充実ぶりも、日本のそれと比較すれば雲泥の差がある筈だ。これらすべてを含めて、欧州のサッカー文化の豊かさを、改めてまざまざと思い知らされた気分だ。
残り3試合。
ドイツのサッカーもクリンスマン以降だいぶ様変わりしてきた部分もあり、今回生き残った4チームの面子を見れば、今後も高確率で、スペクタクルな試合が展開されるような気がしている。
正直に言えば、僕は1998年フランスWC以来のヒディンクサッカーの虜…である。
アルシャービンのその眩い輝きと共に、6月29日のファイナルまで、この闘争するロシアのパンクなサッカーを、存分に味わいつくしたいと思っている。
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posted by 桐谷 |11:35 |
EURO2008 |
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2008年06月09日
今回のEURO2008の組み合わせを見て、ファンの興味を一番惹きつけるグループはやはり“死のグループ”とも言われるC組(オランダ・イタリア・ルーマニア・フランス)なのだと思うが、僕にとってもっとも興味深く、見逃せない組み合わせ…となっているのが開催国スイスの組み込まれたA組である。
基本的に僕は、サッカーを個人ではなく、チームや戦術で見たいタイプなのだと思うが、その中でも特に監督というものにフォーカスして、ひとつひとつのゲームや大会を見てきた…といえるのかも知れない。
そんな中で、引退宣言されたカレル・ブリュックナー率いるチェコが見たかった。2000年UEFAカップ決勝、ガラタサライを率いてベンゲルのアーセナルを叩いたファティ・テリム監督の現在(トルコ代表)を確認したかった。そして2006年ドイツワールドカップにおいて、僕の記憶にもっとも鮮烈な驚きを残してくれたコビ・クーン監督(彼も今大会で引退)率いるスイスのサッカーを再確認したかったし、また、このタレントの質・量があれば誰が監督をやっても…と思えなくもないのだが、いつだって楽しいサッカーを見せながら上位にまで進出して大会を盛り上げてくれるフェリペ率いるポルトガルも見たかった。他にもスウェーデンのラーゲルベック監督、ロシアのヒディンク監督、そしてまたある意味趣向の範囲外でギリシャのレーハーゲル監督が導き出すその“結果”にも注目していたりもするのだが、僕にとっての最大の見所は、やはり名将の豪華な競演ともいえるA組なのだ。
そして迎えたこの開幕戦、スイスVSチェコ。
やはり往年の迫力はすでに失われたと見受けられるチェコが、組織サッカーをさらに進化させたスイスの、その磐石の厚い守りとシステマチックなプレスをかいくぐり1点をもぎ取りそのまま逃げ切った。
この試合に関して言えば、僕はむしろスイスの方に好感を持ったし、また勝たせたい…とも思ってゲームを見ていたのだが、決定機をことごとくチェフに防がれ、またそれでも前がかりに攻め込もうとDFラインを上げて行ったところで、コラーからスピードあるスベルコスに変えられ、裏のスペースを狙われた。最終的にはセットプレーからのオフサイド崩れによる失点だったと思うが、ゲームの流れが変わったのはこのスベルコス投入を契機としたものであったように思う。
どんな名将であったとしても、采配・選手起用とは当たったり当たらなかったりの“気紛れ”なものである。が、たとえ失敗に終わったとしても、そこにゲームを動かしてみるだけの“理”が在ったのかなかったのか…?僕はそれで“采配”そのものを評価する。大会緒戦、後半の早い段階でチームの大黒柱ともいえるコラーを下げたこの采配は、信頼あるブリュックナーでなければできなかったことであると思うし、実際あのままその成り行きを見守っていたとしたら、結果どうあれ、チェコは後半の最後までスイスの圧力に押し込まれてしまっていただろう。
この試合に関しては、ブリュックナー監督のスベルコス投入には確かな“理”があったと僕は考えるし、実際にその“采配”が勝利を導いた…と言えるのかも知れない。
スイス側から見れば、ある意味開催国として“勝たねばならない”重圧からくる悲劇であり、またその優位なゲーム内容の手応えから来る焦り…でもあったのだと思う。フレイを失ったショックも当然大きいだろう。3ゲームリーグの緒戦で、勝ち点0に終わることがどれだけの痛手かは僕も充分に理解するが、彼らの戦いぶりは、その完成度は、やはりグループA随一のものであったように思う。チェコとポルトガルがすんなり決勝進出を決めるか、或いは次のスイスVSトルコ戦でどちらかがその2チームに対する挑戦権を得られるかどうか…。このグループはまだ終わってはいない…と僕は思う。スイスの奮起に期待したい。
また今後、スイス15番フェルナンデス(マンチェスターC)のその激しくも献身的なプレーぶりにも注目して見守ってゆきたいと思う。まだ21歳、地味な役割ながら豊かな将来性を感じさせるタレントである。
またポルトガルVSトルコの試合は、互いに攻撃的なスペクタクルなシーンを数々披露してくれた。ある意味ポルトガルが勝つべくして勝った…と言えるのかも知れないが、僕はむしろこの10年のトルコサッカーの躍進振りが強く印象に残った。そして彼らはもうすでに日本の手の届かないところまで到達してしまっている…というこの現実に、大きなショックを受けた。
僕らが東南アジアや中東の小国と戦っている間に、彼らは欧州列強と日々しのぎを削る真剣勝負を繰り広げている。それはJリーグと、ガラタサライやフェネルバフチェ、ベシクタスを擁するトルコリーグとの必然的な、そして歴然たる“格差”と言えるのかも知れない。そして彼らにはさらにUEFAでの厳しい戦いが在るのだ。
Jリーグ、そしてニッポンサッカーにはもっと切迫した“危機感”が必要なのではないだろうか。
WCに出場すること…と世界に追いつくこと…とはイコールでは結ばれない。これは現存のFIFA・AFCの枠組みの中で、日本代表の問題として考えるには自ずと限界があるのだ。
僕はJリーグこそが、変わらなければならない…のだと確信する。少なくともJはトルコを目指す、メキシコを目指す、それと同等かそれ以上の質を目指す。そしてその為の強化の方向性を今すぐに探るべきだ。11ミリオンという数字に、具体的に何の意味があるのかは僕には不明だが、リーグが強くなり、サッカーの質も上がれば、きっと代表も強くなるし、自ずと観客動員も増えるだろう。数字のトリックに夢うつつを抜かしている暇が在るならば、もっと本質的な事柄に取り組んでゆくべきである。
もしJリーグ自体が変わらないのならば、僕らは100年経っても欧州や南米の後塵を拝したままでいるか、或いは有能な選手たちをすべからく海外へ輸出することで、結果的にはJそのものを消耗させてしまうより他ないのだ。そのどちらをも拒むとするならば、やはりJそのものが本質的な“改革”に取り組まねばならないのだ。
………と、ここまで書いた所で、ふと我に返る。
確かEURO開幕にあたってのエントリーではなかっただろうか…。
なぜ今ここでイレブンミリオンなのか、Jリーグ改革なのか…話がここまで脱線してしまってはもう後戻りは効かないし、時間もない…。
とにかく最後にクリスチアーノ・ロナウドに一言。
この1、2年で本当に成熟した。プレーに無駄がなくなったし、その判断に誤りもなくなった。
けれども僕は、彼だからこその“トライ”が見たい。
突き抜けた“何か”をさらに期待したい。彼にはいつまでもそういうプレーヤーで居て欲しいと思う。そしてシモンに何か弱みでも握られているのかも知れないが、とりあえずFKはお前が蹴れ…と、そう付け加えておきたい。
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posted by 桐谷 |17:31 |
EURO2008 |
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