2008年04月22日

今年一番美しい試合 

サンフレッチェ広島+セレッソ大阪+『?』

今年のJ2昇格レースを、事前に僕はそう予想していた。
おそらく昨年のJ2を見てきた多くの方達も、きっと同じような感覚で今年のJ2を捉えていたのではないかと考える。

これまでいくつかのゲームを見てきた中で、ゲーム内容とそのクオリティに目をやれば、やはりサンフレッチェ広島のそれは頭一つ抜け出している感があるが、その他のチーム、FC岐阜にしろ、モンテディオ山形にしろ、そして現在11位のアビスパ福岡にいたるまで、本当に差の無い実力を有している。J2下位といえども、先日の日本代表バーレーン戦のような“夢も希望も”見出せないようなサッカーをしているチームなどひとつも無い。今年のJ2序盤戦は、昨年以上に“混戦”を予想させる立ち上がりとなった。

そんな中、この4月20日に行われたサンフレッチェ広島VSヴァンフォーレ甲府のゲームは、僕にとって今年一番“熱く”そして“美しい”試合だった。

きっと多くのヴァンフォーレ甲府サポーターの方々と同様に、僕も今年の彼らの苦戦を予想していた。即戦力でチームの核となれるような助っ人は望むべくもないし、また昨年のこのチームの攻撃を担った主力選手たちの幾人かもJ1へと去っていった。基本のベースを失うことはないとしても、茂原岳人の存在無くしてそのクオリティをキープする事は至難の業であると実際思っていたし、またそれをキープしたところで、そこからどうやってフィニッシュまで持ち込むか…といった課題は、J2においてもなお引き続き厳しく問われ続けるものと考えていたからである。

結果やはり苦戦は免れなかった…。が、それでも選手、そしてサポーターたちは、この難しい局面を、厳しいJ2での序盤戦を、様々な不運やミスジャッジの数々に苛まれながらも必死で戦ってきた。そしてここまで希望を繋ぎ続けてきた。その戦いのひたむきさ、その熱さ、そして極限の泥臭さの中に見出すその“美しさ”に、昨年同様、今年も僕はたくさんの感動的なシーンに巡り会わせてもらった。

この強いサンフレッチェ広島を倒すとしたら、きっとそれはヴァンフォーレ甲府やアビスパ福岡のようなチームなのではないだろうか?そう思って、僕はこの日の試合をずっと楽しみにしてきた。そして前半の彼らの、そのリスクを厭わぬ強烈な前からのプレスを垣間見、早々の失点にも関わらず必ず彼らは甲府らしいサッカーを見せてくれる…と確信したし、実際その激しい闘志と運動量で、あの広島のビルドアップとポゼッションを、前半彼らは見事に粉砕してみせてくれた。このゲームは、今年のJリーグで一番見るものの情感に訴える“熱”を放射していたと思うし、時に2バック、数的不利の最終ラインの危機を度々招きながら、それでも恐れず怯まずに後半開始早々から繋いで、組み立ててきたサンフレッチェ広島の、ペトロヴィッチの、その信念と揺るがぬ哲学に、この誇り高き両チームの、サッカーに対するその志の高さ、尊さに、改めて心の底から深い感動を覚えた。

サンフレッチェ広島には、このスタイルで、そしてこのペトロヴィッチのサッカーで、必ずJ1に返り咲きそこで花を咲かせて欲しい。またヴァンフォーレ甲府には、今は苦しんで、苦しんで、この困難を乗り越え自らの力として蓄積していって欲しい。そしてやはりいつの日か、J1の舞台に再び辿り着き、そこでこの誇り高い甲府のサッカーを、J1のファン達に見せ付けて欲しい。

クローズとオープンを自在に使い分ける判断力と柔軟性をこの一年でしっかりと学んで欲しい。また時に蹴りこむことを厭わずに、それによって更にこのクローズに光を当てる術を会得して欲しい。そしてゲーム状況において、前か後ろか…の守備、その決断を共有し、押し込まれる局面においても4-4-2の3ラインをベースに、敵のアタックを弾き返し、さらにその喉元に絶えず2枚の刃を突きたてる揺るがぬ闘志を貫いて欲しい。そうなってはじめて、僕はこのヴァンフォーレ甲府のサッカーが“完成”するのではないか…と思っている。

吉田豊、輪湖直樹という、このニッポンに希求される将来性豊かな素晴らしいサイドプレーヤーがいる。そして藤田健という日本を代表するレジスタがいるし、石原克哉という凡庸な、とてつもなく凡庸な、小瀬の、そして僕のヒーローが居る。刀折れ矢尽きるまで、前へ、できるだけ前へ、と踏み出す勇気を失わないで欲しい。そして敗れ去ったとしても、常に夢と希望を繋ぐ内容と、心を繋ぐその気迫…をピッチ上に描き続けて欲しい。


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posted by 桐谷 |11:10 | ヴァンフォーレ甲府 | コメント(11) | トラックバック(0)
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2007年11月30日

一番大切な戦い 大木武と甲府の冒険

良いサッカーとは何だろう…

と考えるとき僕の中にはある一つのイメージがある。

それは何よりも“能動的”であること。ボールを保持している時も、それに自らの意志を注いで“線”を描き、ボールを保持していない局面にあっても、そのボールに対して常に“線”を分断して“点”で奪取を試みるサッカーである。

シンプルに言えば、それは“人もボールも動く”“早く考え早く動く”サッカーであり、絶えず枯渇しない豊富な運動量を要求される“プレッシングサッカー”である。そのひとつの完成形が、僕の中では90年代初頭のズデネク・ゼーマン率いるフォッジャのサッカーであり、日本においては大木武率いるヴァンフォーレ甲府のサッカーである。

それぞれのサッカーを深く敬愛しながら、この二人に関わり(ラツィオの合宿に大木さんが押しかけて教えを乞うたのだという)があった事を僕はまったく知らなかったのだが、オフサイド・ルール変更後に、この日本においてこれだけ刺激的なサッカーに出会えたことは、僕にとっては非常に大きな驚きであったし、感動であった。
イビチャ時代のジェフ市原と共に、この大木武のヴァンフォーレ甲府のサッカーを、僕は生涯忘れる事は無いだろう。

彼らの降格が現実のものとなりつつある段階から、僕は優勝争いそっちのけでその苛酷な降格争いを見守った。

最後はアタッキングサードでの細かいパス回しに終始し、自らが自らでボールが躍動し前方への“線”を描くスペースを食いつぶして自滅してしまったが、ひとつだけ言えるのは、彼らのサッカーはその最後の最後まで“能動的”であった…という事である。
自らで描こうとしていた…という事である。
そして敗れ去ろうとも、理想を貫いた…という事である。

『まだ終わりじゃないぞ!諦めるなっ』

柏戦、甲府の降格を決めるホイッスルが鳴るその瞬間まで、何度も何度も、声を枯らして絶叫し続けた大木さんの声が、今も僕の鼓膜の中で響いている。

ヴァンフォーレと大木武の冒険は、きっとここで終わるのだろう。
明日の試合を残してすでに自動降格は決定済みである。
J2においても財政的に恵まれているとはいえない甲府が、いつまたJ1に復帰できるのか…きっと誰も予想できないだろう。

が、明日の試合こそが甲府にとって一番大切な試合である…と僕は思っている。すべてを出し尽くして、全力で取りに行かなければならない試合であると思っている。

この冒険を支えてくれたサポーター達がいた。負けても負けても涙を流しながら声援を送り続けてくれた、そして敗れ去った者達を、頭上で手を叩き最後の瞬間まで温かく見守り続けていてくれたサポーター達がいた。その心に報いるための戦いこそが、一番尊く、そして大切な戦い…であると僕は思っている。その心を繋ぐ戦いこそが、この素晴らしい冒険のラストに欠かせないシーンであると僕は思っている。

明日僕はJ1優勝争いを捨てて、彼らの“一番大切な試合”をライブで見届けようと思っている。勝利よりも価値あるもの…の存在を、しっかりとこの目に焼き付けたいと思っている。


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posted by 桐谷 |08:39 | ヴァンフォーレ甲府 | コメント(17) | トラックバック(0)
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2007年10月09日

今年一番の感動と権力者の戯言

J1の毎週末9試合のうち、僕はLIVE・リピート・録画含めて3~5試合、平均すると約半数の試合を見ている。

その内訳はというと、ジェフ千葉、浦和レッズ、ヴァンフォーレ甲府の3チームの試合にプラスして、川崎フロンターレ、柏レイソル、横浜マリノス、ガンバ大阪あたりの試合を1~2試合。要するに僕から見ておもしろいゲームになりそうだ…と思われる試合は録画してでも目を通すようにしている。

そうして毎年J1約170~180試合見る中で、本当に感動できるゲーム、心をうち揺さぶられるゲームは多くて2~3試合あるだろうか…。

このJ1第28節、ヴァンフォーレ甲府VSジェフ千葉の試合は、まさにそういうゲームだった。

見方によっては“パスの繋がらない雑なゲーム”と取られる事もあるだろう。けれどもパスが繋がらないのは、互いの決して引かない全力のプレスの応酬によるものだし、その中盤の膠着の中に、絶えずゴールに直結するチャンスとリスクがリンクしている状態…中盤のせめぎあいの中に、絶え間なく連続して凝縮された土壇場の攻防が繰り広げられる…という非常にエキサイティングなゲームだったと思う。

その攻防も90分を過ぎ、降格と6連勝のかかる両チームの状況を鑑みて、今年最高の“0-0”だな…と勝手ながら勝ち点1を分け合うその“結果”に安堵の感情を抱いた瞬間、千葉にとっては“歓喜”の、そして甲府にとっては“無残”なゴールが、勝負を決してしまった…。

この試合内容からすれば、勝ち点3対勝ち点0は非情すぎる“結果”である。けれどもまた、それがサッカーであり、現実というものなのだろう。


試合後、この期に及んでの2試合連続のロスタイム、終了間際の失点という結果に、小瀬に詰め掛けたヴァンフォーレサポーター達がどのように反応するのだろうか…とTV画面を通して見守ったが、ブーイングは聞こえない。むしろ立ち上がって手を頭上に掲げイレブンを拍手で迎える姿が見える。中には泣いている女性もいるようだが、そんな人でさえも頑張ってくれた選手達を讃える拍手で彼らを出迎えている。

それはゲーム以上に感動的な1シーンだった。


そこには“理解”があり、そして“信頼”があった。
勝って褒められるチームや選手はたくさんいるが、これだけ負けて、負け続けてなお、それを“理解”し、その未来を“信頼”して支えてくれようとするサポーター達がいる。
それはこのヴァンフォーレというクラブチームの、どんな栄冠にも勝る財産であり勲章であると僕は思う。

バレーを失い、茂原岳人は長期に渡る出場停止とそこからくる不調で未だトップフォームを取り戻してはいない。アタッキングサードで仕掛けられる“個”の不在の状態で、このチームはそのクリエイティブな闘い方を変えようとはしない。中盤のプレスをかい潜るためのラドンチッチという飛び道具を得てなお、窮屈なそこでの勝負から逃げずに組み立て、自らのスタイルを貫く事に活路を見出そうとしている。

僕はそこに勝敗を越えた信念の、その強さと尊さを見る。そして大木武とこの選手達の戦い、それを支えるサポーター達の姿を、永遠にこのJ1から失いたくないと思う。


ブラッターはルールにより各国リーグは自国選手枠6人を確保すべき…という。Jリーグは過去5試合のスタメン選手最低6人をスタメンで使えという。彼らが何におもねて、どのような打算と了解のもとに、何らかの“利”をみてそれを言っているのか僕には分からないが、彼ら権力者がどこかで勝手に取り交わしてくる“利”による契約の前に、クラブとそれを支えるサポーターには明文化されなくとも“理”と“義”によって交わされた約束がある。

クラブが、スタッフが、そして選手達が何よりも大切にしなければならないのは、その自分達を必要とし大切に思う者たちとの最初の約束である。そのことの尊さをこのヴァンフォーレ甲府、そして川崎フロンターレのサポーターの姿が、今現実に証明してくれているような気がする。

両チームのここからの健闘を祈っている。


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posted by 桐谷 |10:28 | ヴァンフォーレ甲府 | コメント(11) | トラックバック(0)
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