2008年03月03日

岡田ジャパンの中間評価 その2

もし僕があの状況下、岡田監督の立場でチームを引き受けたのであれば、

まず第一に、現状のチームに混乱を生じさせない…という点に最大限留意したと思う。

岡田監督がオシムジャパンをどう評価していたかは判らないが、僕はオシムジャパンのベースは非常に期待値の高い、また拡張性に優れたものであったと考えるし、3次予選であればあのベースで充分に戦える…と考えた筈だ。であれば、まず何よりも、良い部分をいじらない、潰さない…という事に細心の注意を払ったものと考える。そしてその為にも“今は”新しいものを極力盛り込むべき時期ではない…と。

その上で、現段階では、弱点の補強、補修に留めて3次予選に向かった。端的に言えばそれはアタッキングサードでの失敗を恐れないシンプルなトライと、ゲーム終盤の攻めあぐねた局面でのパワープレーの鍛錬、そしてセットプレーの強化である。

現状、この後者に対しては、岡田監督は非常に良い手腕を発揮してくれていると考える。またディフェンスにおけるチャレンジングな前からのプレッシングへの傾斜も、非常に岡田武史さんらしい“色”であり、このチームの今後を見据える上で、とても重要なトライであるように思う。僕は非常に好感を持って、これらの“岡田色”を眺めている。

問題が生じているのは、ビルドアップとアタッキングサードでの硬直したボール回しからくる展開の“膠着”である。

岡田ジャパンのキャッチコピーとしてよく用いられる『接近・展開・連続』であるが、オシムの志向してきたそれが、“接近”と“展開”が一対のものとして連動してきたのに対して、今現在の岡田ジャパンのそれは“接近”の場面で停滞し、“展開”に至るまでに、ボールを失ってしまったり、大切な時間とスペースを浪費してしまっている感があるのだ。要するに自らで形成した“接近”から抜け出せずに、そこに“埋没”してしまう展開があまりにも多く見られる…ということだ。
“接近”と同時にそこからの“離散”という所作があって、はじめてパスコースが生まれ、ドリブルというもう一つの選択肢も得られる。そうすることによって、各々がDFを引き付け、局面での膠着を解き、はじめて縦にも横にも自在に選択可能な“展開”へ結び付けられるのではないだろうか?そこで活かし得るのが、最初の数歩で僅かでも先んじることができる日本人の持つ“アジリティ”という優位性に繋がって行くのだと思う。

僕はやはり“走る”という要素が足りていないのだと思う。
そしてどう連動し、それぞれがどのような動線を描いて、新たなスペースを創造してゆくか…という修練こそが、オシム後も引き続き求められる課題であり、そして日本が永遠に格闘してゆくべきテーマなのだと思う。

今はまだ、守備時における前からの圧力をもう少しセットバックして、それを攻撃時の走力に転換できないものだろうか?勿論、前からのプレスは決して否定されるものではないが、1対1で決して劣位ではないアジアでの戦いにおいては、守より攻へエネルギーを集約した方が、僕は合理的であると考える。
限定された局面での数的優位、前からのプレス、ショートパスでのダイレクトな展開…それらは、アジアを超えた先では必ず必要になる要素であるが、現時点で殊更に強調しなければならないものではないように感じている。

逆にそれを余りにも選手たちが意識し過ぎてしまった事で、ここまで築き上げた大切な財産を、今失いつつあるように思うのだ。きっとそれは岡田武史さんも大木武さんも重々気づいている事と思う。実際、タイ戦までの内容はあまり芳しいものではなかったが、東アジアでの中国戦あたりから徐々に“接近”下での停滞は、改善しつつある状況にあると思う。

この状況は指導者としてみれば非常にストレスも溜まり、また面白みにも欠けるものだとは思う。が、理に通じる岡田さんだからこそ、僕は今後も期待して見守ってゆきたいと思っている。そしてアジア後の世界へ辿り着いてはじめて、大木さん自身ヴァンフォーレ甲府で直面した課題…クローズのその先の世界へ、バレーの存在無くしてこの日本代表も立ち向かってゆかなければならないのだと思う。そしてそこからの戦いこそが、本当に長く険しい道のりであることも、僕らは充分に承知しておかなければならないだろう。

“岡田監督と大木コーチの間に微妙な距離感が感じられる。練習場でも試合中のベンチでも大木コーチの存在感、役割が見えにくくなっている…”

先日エルゴラッソで、カメラマン六川則夫さんのエッセイにそう書かれていた。常にサッカーのピッチ上の光景から、人間の情感を掬い上げる六川さんらしい視点だと深く感心しながらも、今チームの中に、岡田武史さんの中に生じている“迷い”や“焦り”を感じさせるその描写に、そして練習中リフテイングの一人遊びに興じてしまうという大木武さんの孤独な姿に、やはり日本代表というものの厳しさ、難しさと共に、とてつもない“重さ”をひしひしと感じる。

ここを乗り越えれば必ず良い循環が巡って来ると僕は信じている。
そして岡田武史と大木武の“融合”にこそ、僕は日本サッカーの未来への夢を託したい…と思っている。この困難な時期だからこそ、欠点を論うばかりではなく、長所も掬い上げて正当に評価してゆきたい。そして彼らを信じて、僕は見守ってゆきたい。


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posted by 桐谷 |11:28 | 岡田JAPAN | トラックバック(1)
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