2007年12月24日

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

『サンタクロースはいるの?』

と誰かに問わなくなってから、どれぐらいの年月が流れただろうか…。
今ではケーキを食べる事も、誰かとプレゼントを交し合うことも、もちろん親父の大きな靴下をベットにくくりつけて眠る事も全くなくなってしまったが、言葉にしがたい当時の高揚感だけは未だに忘れられなかったりもする。

結局は真夜中に薄目を開けて、父や母のゴソゴソと何やら動き回る姿を垣間見る事になるのだが、その翌年からは“受け取りたいモノとあげたいモノ”に齟齬が生じないように、事前にしっかりと言葉に出して要求する事で、僕の中のサンタクロースは幕を閉じた気がする…。まったく味気の無い幕切れだったが、今にして父や母という存在の喪失を知って、僕はその頃の輝かしさや幸福さ…というものを初めて知る事ができたと思う。
まったく、なんて幸せなクリスマスだったのだろうか…と思ったりもする。

僕はこのサンタクロースのように、僕の中のオシムの頁をここで閉じてしまわなければならない…とずっと思ってきた。そしてズルズルと40日間をここまで先延ばしにしてきてしまった。

さあ、決着をつけねばならない。
新しい戦いに、集中しなければならない。
その為にも、オシムについて書くことはこれを最後にしよう…と思う。


オシムがくれたもの…

それは『希望』である…と僕は思う。
それは決して現実と乖離した幻想の領域における『希望』ではなく、
それは決して机上というまやかしや虚構と手を結んだ肌触りの良い『希望』でもない。

風変わりなものでも、独創的なものでもなく、そこに到達するためのヒントや、道を踏み外さぬためのお守りやコンパスの類でもない。

彼が人生の最後に、命を掛けてこの国に伝えたかったもの、そして残したかったもの…その思いが、そこに凝縮された彼の、彼自身の挑戦が、オシムがくれたものであり、僕はそれを『希望』と名付けたいと思う。

そしてその希望の先にある未解の最終定理は、僕達自身の手でその鍵を見つけ出さなければ成らない。その為の近道など、もうどこを探しても存在しないのだろう。

…ある凍える夜に、僕らは薄目を開けて、あまり人相のよろしくない大男が汗をかきながらゴソゴソと部屋の中を動き回っているのを見た。
ある子供達はそれを泥棒ではないかと心配し、またある子供達は一途にトナカイに乗ってやって来たサンタクロースだと信じた。

男は大きな袋をその背に抱えているようにも見えたが、結局それで子供達のカラッポの靴下を膨らましてくれる事はなかった。

子供達は大男にこう尋ねた。

『あなたはここで何をしているのか?』

大男は子供達にこう言い残した。

『さあね、何だろうね…』


父や母と過ごした幼い頃のクリスマスのように、ずっとずっと先、この先何年かかろうとも、僕はこの“カラッポの靴下”というオチの無い物語に、きっと輝かしい幸福への“希望”が息づいていたのだと信じている。彼への言葉にならぬ感謝の気持ちと共に、僕は疑いなく、今それを信じている。

楽しいクリスマスを。

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posted by 桐谷 |09:55 | オシムJAPAN | トラックバック(3)
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posted by 桐谷 | 2007-12-24 12:38

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの 【キリタニ】

管理人さんが仰られる点に関しましては、
オシムジャパンに関して、心の頁をいつか閉じなければならないと思いつつ、なかなか踏ん切りがつかないまま今日に至っている人も多いのではないかと予想しています。
かくいう私も、そのような人達の一人です。

私の個人的な希望を述べさせてもらえれば、
日本代表との拘わり以外に、まだまだオシムさんの存在が意味を持つ領域が残されてる様に思えます。

幸い、一般病棟に移られ、これからリハビリに取り組むことになるはずですが、入院後、右手が反応していたことから思考能力(左脳に関係している)は大丈夫のようです。

体力が戻れば、評論やアドバイスの仕事はこなせると思うので、その延長上での活動に期待しています。
私が、彼に日本代表以外の活動を期待しているのは、まさにこの点です。
特にユーゴ、そしてボスニア・ヘルツエゴビナの出身として、オシムさんが世界にアピールできる分野は数多く残されてるので、むしろ日本代表の分野にとどめておくことは、彼の才能を閉じ込めることになる。(と思うようにしています。)
私にとっても、オシムジャパンは一つの頁の終わりでしたが、彼のための新しい頁が残されてると思うようにしています。
オシムさんが、ニューサンタクロースとして再登場される日を期待しています。

posted by 長居 | 2007-12-24 13:22

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの【キリタニ】

泣けてきました。

posted by ・・・ | 2007-12-24 13:43

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの【キリタニ】

そうですね、心の整理を付けて踏み出さねばならないですね。
このような形での喪失感を伴う出発は確かに辛いのですが、不思議な事に僕の中では異質な辛さに変りつつあります。

僕の母が亡くなって、もう7年になります。
僕は、母からもらったものはとても大きくて、その時は本当に痛恨事でした。
しかし、今なお、母の言葉は思い出され、時々において僕を励まし、僕を叱咤し、僕に希望をくれます。

今回のオシム氏倒れるという痛恨事も、なぜか同じ匂いを感じるのです。
桐谷さんが書かれたものと違うものかもしれませんが、オシム氏のくれたものは僕の中では確かに希望なのだと思います。

posted by lionheart | 2007-12-24 17:24

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの【キリタニ】

 桐谷さん、こんばんは。あきら@です、またお邪魔します。

 就任の際、「代表を車に例えてみると、全員が車を後押ししなければならないと思う。」という旨のコメントをしていました。

 全員で押す。あくまで自分一人でチームをどうにかするのではない、そう言っていました。

 これからは、今まで以上に、協会・監督・スタッフ・選手・Jリーグ、そしてサポも後押しする力を強めなければならないのかもしれません。

 オシムさんが何かするのではなく、オシムさんの後を受けて、これからのサッカーの形を見出して行きたいですね。

posted by あきら@ | 2007-12-24 18:42

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの【キリタニ】

オシムは口にしていないようですが、状況や周囲の発言から、彼は日本ナショナルチームでの指導を自らのキャリアの最後のものと考えていたようです。昔ユーゴ代表として日本でプレーした(東京五輪)ほど日本とは縁がありました。彼は日本を知り、日本を愛してくれました。そして日本代表のために奔走して倒れた。アジア杯で選手に言ったように彼は文字通り命を賭して闘っていた。私たちはオシムを忘れなければならない。しかし、彼が日本のために命を賭して闘っていたことだけは、決して忘れてはならない。単なるセンチメンタリズム(感傷主義)としてではなく。私たちがオシムから教わった最後のこと、それは闘う魂ということなのですから。

posted by うが | 2007-12-24 19:29

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

桐谷さん へ

全てまとめて頂きました。
オシムさんは『夢物語』ではない『希望』を与えてくれました。
日本代表選手はオシムが教えてくれたことを、たとえ監督が誰になろうと
『魂』は受け継ぎ、そして後の世代に伝えて行ってほしい。

06年W杯前の『根拠の無い幻想』はもういらない。
しっかりとした『根拠』のある『希望』をシッカリ魅せて欲しい。

そしてオシムさん。一般病棟に移られたとの報道を読みました。
焦らず、ゆっくり治ってほしいと心より願っております。

posted by しろーと | 2007-12-25 16:55

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

桐谷さん、いつも楽しく読ませて頂いています。

オシムさんには仰るように、希望を与えてもらいました。
が、オシムさん以後を決める過程には、日本のサッカー界に絶望を感じてしまいました。
実際に代表を動かして行く人たちに、オシムさんの何かを引き継ぐ気持ちはあるんだろうか。
この人たちは、私たちのようにオシムさんに希望を与えられた訳ではなかったのか。
オシムさんの回復の報道を聞くたびに、やはりオシムさんに未練たらたらで、割り切れない気持ちが残ってしまいます。

posted by けい | 2007-12-26 07:30

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

桐谷さん。

こんにちわ。

私自身、まだまだオシムに未練タラタラです。
またいつの日かオシムが率いる日本代表を見たい!!なんて自分勝手な夢を見てしまいます。

しかし、オシムは本当に日本を愛してくれていたので、監督という立場を離れても祖国に帰られたとしても、日本のことを気にかけ助言を与えてくれるのではないかと密かに期待しています。

posted by pirlo_21 | 2007-12-26 12:32

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

田嶋専務が、勇退の事実をオシム本人に伝えたとき、オシムは素直に納得されたわけではないようですねぇ。
協会は、何か別のポストを用意すると言ってますが、そういうことで憤っているのではない気がします。

posted by やっぱりか。 | 2007-12-26 21:46

オシムジャパン最終章 オシムがくれたもの

桐谷さん、エントリー拝見しました。
私も未だにオシム前監督退任についてどうすべきだったのか自分の意見さえ持てずにいます。
もしかしたらまだタイムアップでもないのに諦めてしまったのではないか?(予測は現実ではない)
しかしながら、実は歴代の監督の中でも「結果」の出ていない監督をこれ以上希望的な予測で待ち続けていいものなのか?
オシムさんのサッカーに対する知識と情熱とそれを練習にフィードバックできる手腕は疑いないと私は感じていますが...延々と空回りするばかりです。
ひとつだけとても気になる事は岡田監督に「オシムのサッカーを継承して欲しい」と発言したこと。これはあまりに失礼であるばかりか、岡田監督に「オレの好きなようにやらせてもらえれば...」というエクスキューズを与えることにもなります。
オシムさんを惜しみつつ現監督には結果を出して欲しいという類いの日本サッカー協会の甘えは今に始まったものではありません。
とても暗い気持ちになってしまいます。

posted by CHUE | 2007-12-27 13:07