2007年12月11日

ストヤノフのプライド

『自分が苦しいときに手を差し伸べてくれたクラブを去る訳にはいかない。プライドがある』

来年度の契約に関わる広島サイドとの面談の中で、彼はそう発言したらしい。きっと厳しい経営事情の説明も受けての事であると思う。大幅な年棒カットは避けられない状況である事も理解してのことだろう。

彼のジェフ千葉でのプレー、そしてそこであった経緯、さらに今回の広島での入れ替え戦における魂の篭ったパフォーマンスをつぶさに見続けてきただけに、この言葉には胸を打つ響きがあった。

言葉というものをひとつの記号として安直に解し、どこまでも日本的情緒というものに対して従順に用いさせてもらうならば、彼のプレーは相当に“汚い”。おそらくJでも1、2を争う“汚さ”である。

けれども彼はジェフにいたその時代から、誰よりも勝利というものの追求に対して一生懸命であったし、またそれに手段を選ばず行動してもいた。僕の価値観は、決してそれを“汚れた”ものとは受け止めていなかったし、むしろプロとしての、勝負の世界に生きるものとしての、一途に真摯な心の在り様として、彼のその姿勢を深い敬意の念と共に見つめ続けてきた。
ジェフにおける去り際の、アマルとの軋轢や退団までの経緯も彼のそのような“変わらぬ魂”の在り方を貫いた結果であったのだと思う。

そしてあらためて思う。僕は彼のような人間が大好きである。


僕が柏木陽介であれば浦和へ行くだろう。自らのその可能性をめいいっぱい羽ばたかせる為にも“今”この一年はサッカー人生における一番大切な“踏み切り”のタイミングであると思う。
駒野友一であれば、海外であれ日本のビッグクラブであれ、自分自身の“到達点”を確認したいと思うだろう。その為に与えられた“機会”はこれが最初であり、最後なのかも知れない。

そしてフロントであれば、一年でJ1へ復帰する事よりも、まずは総支出を、とりわけフロント人件費・経費をも含めた支出を抜本的に切り詰めて、J2においても赤字を出さずにやりくりできるだけの経営基盤を整える事を最優先に取り組むだろう。そこから10年、20年続く“広島サッカー”の原型創りに、地域と一体になって取り組んでみるべきではないだろうか。この挫折をその為の“チャンス”とするのか、ただの“痛み”として消化するのかは彼ら自身の手腕にかかっている。今こそ、抜本的な改革に取り組むべき“チャンス”なのだと僕は思う。

それぞれがそれぞれの悔恨と苦悩を抱えながら、それでも前を向いて歩き出さなければならない。そして明日もサッカーは続いてゆくのだ。


U2にPRIDE/(IN THE NAME OF LOVE)という歌がある。
マーティン・ルーサー・キング師を讃えた曲なのだが、その中に
『奴らはあなたの命を奪ったが、その“プライド”を奪うことは出来なかった』という歌詞がある。

“プライド”とは、他人に『傷つけられたり』『奪われたり』『敬われたり』『尊重されたり』するものではない…と改めて僕も、思う。それは自身と他者との関係性の中に生ずるものではなく、自分自身で律し、律したからには、何を失おうとも、自らで守り通さねばならないもの…なのではないだろうか。そしてだからこそ、決して他者には触れられないものであるのだとも思う。


良識ある親や指導者達はストヤノフのプレーを見て子供達にこう言うのかも知れない。

『ほら見ろ。あんな汚いプレーをしちゃいけない』

残念ながら僕に子供は居ないし、サッカーの指導者になることもなかったのだが、僕ならばサッカーを愛する子供達にこう問いたい。


『きっと彼はあんなにしてまでも負けたくないんだと思う。君はどう?』


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posted by 桐谷 |12:08 | ジェフ千葉 | コメント(14) | トラックバック(0)
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posted by 桐谷 | 2007-12-11 12:17

ストヤノフのプライド 【キリタニ】

筆者様

初めまして。
確かに筆者様の仰るとおり、ストヤノフの言動は「日本的情緒・感性」そして価値観から見れば、逸脱したプレー、そして言動ととらえられ、不満分子として敬遠されることでしょう。
しかし、彼は日本人ではないのですから、そのブルガリア人として誇りを旨に自分の為、そしてチームの為に戦ってくれました。その姿にそのプレーに、僕は汚さを感じたことはありませんでした。そしてその熱いプレーでサポーターの期待に答えてくれたからこそ、サポーターから愛されたのだと思います。それがゆえにああいう形で衝突してしまったことには、本当に残念でした。このことに、誇りを貫き通すことと適応することとは表裏一体なのだと、サッカー界も社会の縮図であるのだなと痛感致しました。
ですが、イリアンの生き方には同性として深く感銘できます。彼にはあくまで自分の誇りを貫き通してほしいと思っています。

posted by foresta | 2007-12-11 13:09

ストヤノフのプライド 【キリタニ】

筆者の言う通りだと思います。

同感します。

posted by Charlton | 2007-12-11 13:58

ストヤノフのプライド 【キリタニ】

千葉時代も魂を感じさせるプレイぶりでしたね。
いい試合ができれば相手選手にも拍手していたのが印象的です。
こういう選手を無策に切った千葉には疑問を感じます。
育てようったって育たない、世界中捜してもなかなかいないタイプだと思います。

posted by そうすね | 2007-12-11 14:07

ストヤノフのプライド 【キリタニ】

ストヤノフらしい?ですが.個人的にはコンサド-レあたりが
良いオファ-を出して移籍してもらえたらコンサの選手に勝つことの意義を中盤の底から体言できる選手だと思ってますし今もあくまで希望ですがコンサに・・湘南のジャ-ンにも同じ臭いを感じます。

posted by RED ROLL | 2007-12-11 18:08

ストヤノフのプライド 【キリタニ】

イリアンは、精悍な野武士のようなプレイヤーです。飼いならされた城勤めの武士ではなく、平和な時代にも一人戦塵を身にまとっているような、そんな選手です。彼に取り重要なことは戦うということ、それが全てです。およそ日本人プレイヤーには居ないタイプです。イリアンを切り捨てた千葉のフロントに総退陣してもらい、イリアンには千葉に戻ってきて欲しいと心から願います。トラブルを避ける官僚的なJリーグ経営陣が多い中で、イリアンに手を差し伸べてくれた広島には本当に感謝しています。イリアンの気持ちもコメントの通りでしょう。残念ながら広島は降格してしまいましたが、こんなときこそ、イリアンのあの闘志が役に立つのではないでしょうか。精神的支柱がサッカーほど大切なスポーツはないでしょう、千葉も勇人だけががんばっても荷が重過ぎます、阿部も坂本もイリアンも居なくなってしまった千葉に、何が欠けているかといえば、イリアンに体現される闘争心です。心のない経営陣が心ある人間を切り捨て、物のように扱うのは、どこの世界にも見受けられますが、千葉の場合は、その最悪のケースです。まあ、愚痴はともかく、イリアンには、広島のJ1復帰のため、全力を尽くして欲しいと願っています。がんばれ、イリアン、がんばれ、広島!!

posted by 攻撃的GK@千葉サポ | 2007-12-11 21:47

forestaさんへ

千葉を去るときの経緯は、知れば知るほど残念な気がしますが、あの時点での彼の決断は、しっかりと現在の彼の行動と結びついている気がしますね。とても責任感の強い、そして強い信念を持った人間なのだと思います。

どのようなカタチであれ日本に残ってくれる事を期待して、次の報道を待ちたいと思います。

posted by 桐谷 | 2007-12-12 22:27

そうすねさんへ

守備も攻撃参加も高いレベルでこなし、しかも強い精神と勝利への執念を持った素晴らしい選手だと僕も思います。

彼から学ぶべきものは本当に大きいと思いますし、もし広島に残る事ができるのならば、槙野くんや青山くんの良い手本になるものと思います。

posted by 桐谷 | 2007-12-12 22:33

RED ROLLさんへ

彼は元々左サイドバックの選手であったとも聞きますし、キープ力や展開力から中盤も難なくこなすでしょうし、まさにリベロと呼べる攻守の中心となり得る働きもできます。
心情的には、できれば広島に残って選手としての最後のキャリアを、サンフレッチェのJ1昇格に賭けてくれたら…と思っています。

posted by 桐谷 | 2007-12-12 22:40

攻撃的GK@千葉サポ さんへ

僕は以前ジェフに居たミリノビッチという選手のプレーにとても好感を持ってジェフの試合を見ていた時期があるのですが、彼に変わってやってきたストヤノフを見て、ジェフというチームは本当に素晴らしい選手を連れてくるな…と深く感心しました。大人しいジェフというチームに、彼とハースのような欧州の勝気な代表選手達が植え付けていってくれたものは非常に大きかったような気がしますね。彼が広島に、そして日本に残って、今後もサッカーを続けてくれる事を期待しましょう。 ジェフも試練の時を迎えましたね。この苦境を良い契機として、10年20年色あせる事のない明確なビジョンを持って、クラブ改革に取り組んで欲しいと願っています。

posted by 桐谷 | 2007-12-12 23:15

管理人さんへ

桐谷さん、こんばんは。今年は私もジエフがJ2落ちするのを本気で心配しました。戦力的にはジエフより勝ると感じられる広島がJ2に行くのは、とても不思議な気がします。サッカーは甘くないということでしょうか。イリアンにサッカーの場を与えてくださった広島には心より感謝しています。多くの千葉サポも同じだと思います。我がチームもJ2降格はなかったものの、相当に危機的状態であることには間違いありません。広島とは、ほんの首の皮1枚のみの差でした。サポの出来ることは限られていますが、クラブが間違った方向に行かないよう、みんなして、戦おうとしてはおります。比較的のどかな千葉サポですが、今回は、のんきに構えているわけに行きません。広島も激動期で、来期の戦力が一体どうなるのか心配ですね。イリアンがいるので、来期はJ2では、断然広島を応援します。広島サポの方々の苦衷は察するに余りありますが、心から、広島の健闘を祈っております。

posted by 攻撃的GK@千葉サポ | 2007-12-13 00:02

攻撃的GK@千葉サポさんへ

今年のジェフは結果だけ見れば良い時と悪い時とキレイに色分けされて見えますが、実は負けがこんでいる時もそれほど内容は悪くなく、また勝っている時でもそれほど内容は良くない…という微妙な低い次元での安定感があったように思いました。

戦力的に広島より劣るのは僕もまったくそう思いますし、個人的にも今のチーム事情であれば、この結果は監督の問題…というよりも、よりフロント側の責任の方が多大なのではないか…と思います。

フクアリも出来、やっと新しい一歩を踏み出した時期でもありますし、どうか長期的ビジョンを持ったチーム運営を期待したいですね。サポーターの方々の果たす役割も非常に大きいのではないかと思います。

ジェフともにJ2で戦う広島も一緒に見守らせていただきたいと思います。来年こそ良い年にできるよう期待しております。

posted by 桐谷 | 2007-12-13 17:19

広島にとり来年がいい年でありますよう

仰る通りだと思います。今年の千葉は、極端に悪い試合もなく、極端にいい試合もなしの1年でした。千葉くらいのチームで、主力から、巻、羽生、山岸、佐藤、水野、水本と各代表に抜かれると、打つ手は、そうありませんでしたね。DFとGKの層の薄さも問題でした。こうしたことは、監督の問題というより、フロントが長期的視野で考えるべき問題です。今の千葉には、それがありません。今年は、選手たちもフロントに物を言っているようですし、おとなしい千葉サポも、最終戦では、球団社長に相当なブーイングをするようになりました。こうしたことが、来年の糧となるように祈るばかりです。正直、DFの崩壊などなど、理由を挙げようと思えばできるのですが、なぜ、広島が降格したのか、具体的かつ明確な理由が見つかりません。チームとしても、その辺の徹底した分析が必要ですね。
なにはともあれ、来年が、広島にとり、また、我が千葉にとり、いい年になるよう、心から願っています。どうぞ、良いお年をお迎えくださいませ。

posted by 攻撃的GK@千葉サポ | 2007-12-14 06:23

ストヤノフのプライド

千葉ファンです。そして千葉を離れてもストヤノフ選手が好きです。

いつか岐阜で試合があるときは応援に駆けつけたいと思います。ただ、そういう試合に限って出場停止になっていそうな予感が(笑)。

posted by saneyoshi | 2007-12-26 22:31

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