2007年11月30日
一番大切な戦い 大木武と甲府の冒険
良いサッカーとは何だろう… と考えるとき僕の中にはある一つのイメージがある。 それは何よりも“能動的”であること。ボールを保持している時も、それに自らの意志を注いで“線”を描き、ボールを保持していない局面にあっても、そのボールに対して常に“線”を分断して“点”で奪取を試みるサッカーである。 シンプルに言えば、それは“人もボールも動く”“早く考え早く動く”サッカーであり、絶えず枯渇しない豊富な運動量を要求される“プレッシングサッカー”である。そのひとつの完成形が、僕の中では90年代初頭のズデネク・ゼーマン率いるフォッジャのサッカーであり、日本においては大木武率いるヴァンフォーレ甲府のサッカーである。 それぞれのサッカーを深く敬愛しながら、この二人に関わり(ラツィオの合宿に大木さんが押しかけて教えを乞うたのだという)があった事を僕はまったく知らなかったのだが、オフサイド・ルール変更後に、この日本においてこれだけ刺激的なサッカーに出会えたことは、僕にとっては非常に大きな驚きであったし、感動であった。 イビチャ時代のジェフ市原と共に、この大木武のヴァンフォーレ甲府のサッカーを、僕は生涯忘れる事は無いだろう。 彼らの降格が現実のものとなりつつある段階から、僕は優勝争いそっちのけでその苛酷な降格争いを見守った。 最後はアタッキングサードでの細かいパス回しに終始し、自らが自らでボールが躍動し前方への“線”を描くスペースを食いつぶして自滅してしまったが、ひとつだけ言えるのは、彼らのサッカーはその最後の最後まで“能動的”であった…という事である。 自らで描こうとしていた…という事である。 そして敗れ去ろうとも、理想を貫いた…という事である。 『まだ終わりじゃないぞ!諦めるなっ』 柏戦、甲府の降格を決めるホイッスルが鳴るその瞬間まで、何度も何度も、声を枯らして絶叫し続けた大木さんの声が、今も僕の鼓膜の中で響いている。 ヴァンフォーレと大木武の冒険は、きっとここで終わるのだろう。 明日の試合を残してすでに自動降格は決定済みである。 J2においても財政的に恵まれているとはいえない甲府が、いつまたJ1に復帰できるのか…きっと誰も予想できないだろう。 が、明日の試合こそが甲府にとって一番大切な試合である…と僕は思っている。すべてを出し尽くして、全力で取りに行かなければならない試合であると思っている。 この冒険を支えてくれたサポーター達がいた。負けても負けても涙を流しながら声援を送り続けてくれた、そして敗れ去った者達を、頭上で手を叩き最後の瞬間まで温かく見守り続けていてくれたサポーター達がいた。その心に報いるための戦いこそが、一番尊く、そして大切な戦い…であると僕は思っている。その心を繋ぐ戦いこそが、この素晴らしい冒険のラストに欠かせないシーンであると僕は思っている。 明日僕はJ1優勝争いを捨てて、彼らの“一番大切な試合”をライブで見届けようと思っている。勝利よりも価値あるもの…の存在を、しっかりとこの目に焼き付けたいと思っている。 ★サッカーブログランキングに参加しています…応援のクリック心から感謝いたします★ ⇒⇒⇒人気blogランキングへ 『わらの首輪と名前の無い犬』掲載いたしました。こちらもよろしくお願いします。 【キリタニ100法】ニッポンの未来を築く100の立法
posted by 桐谷 |08:39 |
ヴァンフォーレ甲府 |
コメント(17) |
トラックバック(0)
トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kiritanishin/tb_ping/71
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
コメントについてのお願い
読者それぞれの感想やご意見については、お互いに対する敬意を持って議論していただけますようお願い致します。
また感情的・挑発的なコメントや表現については、あらしや中傷を助長するようですので、ここからは下記のルールに基き、削除して厳正に対応させていただきます。
また過去にそのようなコメントを残している方については、今後無条件で削除させていただきます。
ここでのコメントには、
1.実生活における常識的な礼節と言葉遣い(敬語を使えない文章は否)
2.本文の主旨を踏まえた感情的ではない意見や提案(一部の言葉尻を捉えた曲解や論理展開は否)
この2つを厳守の上でお願いいたします。
*一度退場を宣告された方の書き込みは、以後二度とお断り致します。
posted by 桐谷 | 2007-11-30 10:45
一番大切な戦い 【キリタニ】
良いサッカーの定義は人それぞれなので難しいですよね。
戦術とかではなく、11人だけでなく控えやスタッフ、サポまでが同じ方向を向いて出来ていれば良いサッカーなのかなあと思ったりします。
そういう意味でもヴァンフォーレのスタイルは他サポからも尊敬できるし、うらやましくもあります。
大木さんは代わられるようですが、このまま突き抜けられればヴァンフォーレは日本サッカーにおいて確固たる何かを築ける気がします。
posted by マリサポですが | 2007-11-30 11:46
一番大切な戦い 【キリタニ】
私も、ヴァンフォーレ甲府のスタイルは尊敬できます。再びJ1の舞台に戻ってくるという意思(熱意)を持ち続け、それを叶えて欲しいです。
継続性は、いつか花を結ぶと信じています。レッズがJ2降格からアジアチャンピオンまで上り詰めたように。魅力的なチームなので、再昇格を願っています。
posted by hiro | 2007-11-30 12:28
一番大切な戦い 【キリタニ】
桐谷さん
本当にありかがとうこざいます。
山梨県民として心からお礼申し上げます。
バーレーの活躍は勿論ですが、
存亡の危機にあったチームが
よくぞJ1にと2年前
初めて訪れた柏で勇気づけられる
思いがしました。
80万人の県人口、強力なスポンサーもないバンフォーレがまたいつJ1復帰を果たせるのかいささか心許ない気もするのですが、
オシムさんが「おもしろいサッカーをする」と評価してくださったことを力に近い将来J1で戦えるよう応援していきます。
posted by yama | 2007-11-30 19:10
一番大切な戦い 【キリタニ】
私も甲府のサポーターとして、とてもうれしく思います。
明日の試合は、大木監督も選手たちも悔いのないように戦ってもらいたいです。
できたら、続投をしてほしいです・・・
posted by tomo | 2007-11-30 19:21
一番大切な戦い 【キリタニ】
桐谷さん、いつもブログを読ませていただいています。
文章、内容ともに素晴らしく、いつも共感しています。
私も大木監督の甲府のサッカーが大好きでした。
見ていて楽しい、と感じるのは、ヒデや名良橋、ベッチーニョがいた頃のベルマーレ平塚以来です。
けれども、大木監督は今季限りだそうですね。
残念です。
来年もどこかのチームで指揮をとって欲しいです。
posted by katera | 2007-11-30 20:11
一番大切な戦い 【キリタニ】
桐谷様
今シーズンの甲府を見届けて下さり、サポーターとしてお礼申し上げます。
皮肉な事に、オシムを(一時的にであれ)失った代表チームと同じ喪失感を、再び地元でも感じる事となってしまいました。この冬は忘れ難い冬となりそうです。(今でも大木監督が戻ってくれる事を祈っています。)
降格が決まってからも、甲府では監督を非難する声は聴こえません。地元で観戦するサポーターは、目の肥えた人よりも(普通のおじさんやおばさんや...)普通の方々が多いですし、どちらかというと気性の荒い県民性です。
しかしそれだけに、通年外国人レギュラーが0という状態で、懸命に走り、自分のスタイルを信じ戦い続けたチーム、その「不器用なまでの信念」に、心惹かれ、心通じていったのだと思います。
記録には多くは残りませんでしたが、記憶に、心に残る素晴らしいチームでした。
明日は、大木監督の甲府の(ホームでの)終わりのときであると同時に、確かに未来へとその「心を繋ぐ戦い」、「一番大切な戦い」となるはずですね!。
小瀬までどうぞ気をつけてお出かけ下さい。
posted by アニー | 2007-11-30 22:41
一番大切な戦い 【キリタニ】
山梨県民、甲府サポです。
ヴァンフォーレの降格、とても残念です。
そして、せめて大木監督の続投によるJ1復帰を願っていましたが、今日、大木監督の退任が発表されてショックを受けています。フロントには大木サッカーの成長を長い目でみてほしかった。残念無念、言葉もなくがっくりしていたところ、桐谷さんの文章を拝見して励まされました。
明日はいつも以上に声を枯らして応援します。
大木監督率いるヴァンフォーレの選手たちの挑戦に感謝の気持ちを込めて・・・。夢をありがとう!
posted by raku | 2007-11-30 23:14
一番大切な戦い 大木武と甲府の冒険
桐谷さん
私は、甲府サポーターでもなく、また、甲府のサッカーをきちんと見た事がない人間なので、この場で偉そうに発言できる資格などないのかも知れませんが、不相応かとおもいつつ、コメントさせて頂きます。
今回のエントリーは本当に秀逸です。
読んでいて、感動しました。
聞いた事もない大木さんの声が耳に届いたような錯覚すら覚えました。
桐谷さんのサッカーに対する愛が見えた気がします。
一番大切な戦いを見た桐谷さんの思いをまた、ここで見れたらなとそう思いました。
応援頑張って下さい。
posted by kenken | 2007-12-01 00:19
yamaさんへ
最後の最後までブーイングは出なかったようですね。最終戦、選手達は前半の頭から全力でプレーしたと思います。そしてやっぱり…ゴールが遠かったですね。
この2年間、甲府のサッカーとともに、甲府のサポーターの皆さんには本当に心温まるシーンを何度も見せていただきました。本当にありがとうございました。
天皇杯、ぜひ大木さんの花道を飾ってあげたいですね。一緒に見守らせていただきます。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 22:22
tomoさんへ
大木さんの退任は本当に残念ですが、新しい甲府の冒険を、今後楽しみに見守ってゆきたいと思います。
天皇杯、最高の思い出を残したいですね。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 22:28
kateraさんへ
>見ていて楽しい、と感じるのは、ヒデや名良橋、ベッチーニョがいた頃のベルマーレ平塚以来です。
随分懐かしいメンバーですね。ベッチーニョあまり知名度は高くないかもしれませんが、本当に上手い選手でしたね。
大木さんは少し休憩を挟むのかもしれませんが、きっとまたJの舞台に戻るでしょうね。彼の新しいスタートも楽しみに待ちたいと思います。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 22:34
アニーさんへ
>通年外国人レギュラーが0という状態で、懸命に走り、自分のスタイルを信じ戦い続けたチーム、その「不器用なまでの信念」に、心惹かれ、心通じていったのだと思います。
もしFWに、バレーとは言わないまでも水準の助っ人が1人用意できていれば、この結果と内容もかなり違ったものになったかも知れませんね。
僕はそこに甲府のサポーターの皆さんの現実に対する深い“理解”という知性と“情”を見た気がしました。
>記録には多くは残りませんでしたが、記憶に、心に残る素晴らしいチームでした。
オシムの代表と共に、この甲府と大木さんのサッカーを、僕も心の深いところにしっかりと刻み付けさせていただきました。寂しいですが、楽しいサッカーを見せていただいた事に、心から感謝しています。
サポーターの方々も本当にご苦労様でした。
また来年頑張りましょう。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 22:46
rakuさんへ
夢のような2年間でしたね。
本当に大切なものは、失ってから気づくものなのかもしれません。
けれどもサッカーは続きますし、より苛酷な戦いの中で、もう一度地に足をつけて這い上がってくる逞しい甲府のサッカーを期待したいと思います。そしてまたいつか甲府に復帰する大木さんの姿を楽しみに待ちたいと思います。
天皇杯頑張りましょう。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 22:52
kenkenさんへ
いつもコメントありがとうございます。
機会があれば今度ぜひ天皇杯の甲府のサッカーを見て欲しいと思います。どこまでもボールに意志を込めて動かしてゆくサッカーなんです。フッキやジュニーニョは居ませんから華やかなゴールシーンはなかなか見られませんし、PAまでが本当に遠く感じられますが、きっと胸を打つものがあると思いますよ。
posted by 桐谷 | 2007-12-02 23:07
一番大切な戦い 大木武と甲府の冒険
桐谷さん
昨年の最終節では、2年間でしたがJ1で夢のような時間が持つことができたことへの感謝の気持ちで大木監督を送りました。そして2008年のJ2も第6節まで終わり、改めてこのエントリーを読みました。安間新監督のもとで今のところ思うような結果が出ていませんが、大木前監督の残してくれた財産を、私は感じざるを得ません。それは、J1にいた昨年を上回る観客動員数です。私も含めて、甲府のサッカーに魅了された多くの人々が、J2になっても変わらずに、いやもっと熱意を持って甲府のサッカーに声援を送るようになったのです。もう1つは、J2の試合の雰囲気が大きく変わったことです。J2を構成する多くの地方都市のチームにとって甲府の活躍が大きな刺激になり、選手達の動きに鋭さを与えているように思います。以前のJ2で感じられたある意味で牧歌的な雰囲気はなくなって、真剣勝負としての迫力が感じられます。これも大木サッカーの財産だと言えると思いますが、いかがでしょうか。
大木サッカーを基礎に新たな方向性を探る道のりはJ2に舞台を移しても決して容易ではないことは、ここまでの1ヶ月で痛感させられました。しかし、そう遠くない将来にJ1でまた甲府の魅力的なサッカーを見られる日が来る事を信じています。
また甲府のサッカーをとりあげて下さる事を楽しみにしています。
posted by sunny smile | 2008-04-12 17:19
sunny smileさんへ
久しぶりにここで甲府サポーターの方のコメントに触れられてとても嬉しく思います^^
実は僕、ずっとあなた達の戦いを見守っているんですよ。開幕からのJ2の試合、1つ逃さず悔しい思いを噛み締めながらもずっと見続けてきました。
そして福岡戦の後半20分ぐらいからだったでしょうか?クローズのその先が少し透けて見えた気がしたのは…。あそこで彼らが見せた変わり身に、僕はこのチームの進化への胎動を垣間見た気がしました。
その試合後、引き分けに終わった選手達を拍手で迎えるあなたたちの変わらぬ姿を見て、胸にこみ上げるものを感じ、そして先週のセレッソとの試合を見て、こらえ切れずに号泣してしまいました^^;
このチームの試合って、なんでいつもこんなに感動的なんだろうか…って、そして小瀬のサポーター達ってなんでこういつも温かいのだろうか…って試合の度に感じるんです。今でも昨年の小瀬での大木武さんとあなた達のお別れのシーンは、ビデオのハードディスクに録画したまま消せずにおります^^
>大木前監督の残してくれた財産を、私は感じざるを得ません。それは、J1にいた昨年を上回る観客動員数です。私も含めて、甲府のサッカーに魅了された多くの人々が、J2になっても変わらずに、いやもっと熱意を持って甲府のサッカーに声援を送るようになったのです。
本当にすごい事ですね。僕も信じられない思いでこの情報を拝見していました。いつも満杯の小瀬のゴール裏を見ながら、甲府というチームや選手達は本当に幸せだなぁ…と感じずにはいられません。そして僕もまた今年も一度はそこに集わせていただきたいと思っています。
あなたのおっしゃる通り、J2も本当に厳しくそして華やかなリーグとなりましたね。実力的にも数年前に比べれば比較にならぬほど成長してきたように思います。甲府の戦力でそのJ2を戦い、そして勝ち抜くことは決して簡単ではない…その厳しさを僕も痛切に感じております。
けれども、“そこにサッカーがある喜び”を、誰よりも深くそして強く感じられているのは、僕はあなた方のような気がするのです。論理も糞もありませんが、小瀬の風景を見ながら、僕はいつもそんな風に思ってしまうのです。
あの青すぎる空の下で、“そこにサッカーがある喜び”をこれからも全身で感じ、そして味わってください。
今後も僕は、その喜びを少しだけ分けていただければ…と思っています。
明日も見ますよ、湘南戦!
チームの躍進とともに、吉田豊くんの成長を楽しみに見守っております。
コメント本当にありがとうございました!
posted by 桐谷 | 2008-04-13 00:42


