2009年07月21日

今年一番感動的なゲーム

『なんだ、あれが僕たちの探していた青い鳥だったんだ。ずいぶん遠くまで探しにいったけど、本当はいつもここにいたんだ』

と言ったのは、はたしてチルチルだったか、ミチルだったか…。

幼い頃の記憶で、もう覚えてはいないが、生きていればそんな瞬間に何度か出会うものである。自分にとってほんとうにたいせつなもの…とは、いったいなんなのか?それを理解する…その有難みを噛み締めながら生きる…ということは、カンタンなようで実際はなかなか難しいものである。

多くの場合、それは失ってはじめて気づくものだ。

取り返しのつかない状況に至って、はじめてそれに気づかされる。僕にとって、ほんとうの幸せ…というものは、いつもたいていそんなものだったような気がする。だから、すでにいい年となってしまった今、それをふたたび見失ってしまわないように、ある意味必死で目を凝らしながら生きている。そして常日頃若い子たちにもそんなふうに声をかけたいと思っている。それは誰かから与えてもらうものではなく、また必死こいて探しまわるものでもなくて、きっと自分自身で見つけるものなんだと思うよ…と。

僕はある意味で、サッカーの勝ち負けなんて、まったくいい加減なものであると思っている。

必ずしも勝利するチームが良いサッカーをしている訳ではないし、敗れ去るチームがいつもつまらないサッカーをしている訳ではない。どんなに素晴らしいチームであっても、ある確率で必ず負けるものであると思うし、どんなにヒドいチームであっても、ある確率で勝てるものである。常に勝者がより優れたサッカーをしていた…とは、絶対に言えない。それがサッカーの現実なのだと思っている。

14連敗を喫していたとはいえ、僕は常に大分トリニータが負けるべくして負けていたとは思はない。しかし、シーズン開幕当初から、昨年と比べ“我慢”の足りないサッカーになっていたと思うし、それにより、局面、局面における敵との争いにおいて、何か集中の足りない“粗雑”さ、“いい加減さ”のようなものを感じていた。

昨年の大分には、勝ち点1へのひたむきさがあった。勝ち点1の価値を、他のどのチームよりも重く受け止め、深く理解しているかのようなひたむきさが感じられた。

それが今年の彼らには感じられなかった。

負けがこめば負けがこむほど、勝ち点3への無謀な欲求に苛まれて、彼らの地道な、ひたむきなサッカーが瓦解してゆくのを感じた。そしてそれを、僕は必ずしも彼ら選手たちの所為ばかりであるとは思わない。クラブやサポーターも含めた、僕らそれを見るもの、応援するもの、期待するものにも、どこかで昨年の栄光に胡坐をかいて、分不相応な要求やプレッシャーを彼らに突きつけてしまっていた部分もあったのかも知れない。互いに“理解”に欠ける部分があったのかも知れないと、いま思っている。

7月18日の大分トリニータvs浦和レッズ戦は、僕にとって今年一番感動的なゲームだった。

それは単に彼らが、15試合ぶりに勝利したから…という訳ではない。
彼らが彼ら自身のひたむきな戦いぶりを取り戻して、勝ち点1に執念を燃やして戦ってくれたからである。そうやって再び、苦しい時期を支えてくれたファンやサポーターとの絆を、ぎりぎりのところで繋ぎとめてくれた気がするからである。エジミウソンの完全にぶっ壊れた決死の野武士のような誇り高き奮闘。これまでも決して折れたり怯むことのなかった森重真人の球際の気迫。さらに清武弘嗣のいままさに開花しそうな眩いばかりの才能と、深谷友基の冷静と執念。

ずっと僕はこんな大分の試合が見たかったし、昨年の彼らは、いつもこんなふうに戦っていたのだ。あまり前を見て物事を考えすぎても意味はない。アカルイミライのために為し得る最善のこととは、きっといつ何時であろうと、今この瞬間にベストを尽くすことなのだと僕は思う。ミライとはきっとそうやって創ってゆくものなのだと思う。

サッカーにとって、一番大切なもの、価値あるものがなんであるのかを、改めて僕はこの一戦で彼らに教えてもらった気がする。そして、彼ら自身に、もう二度とそれを見失って欲しくはないと願う。それは選手のみならず、ファンやサポーター、クラブも含めて…のことである。勝ちや負けがサッカーのすべてではなく、本質でもないのだ。ほんとうに価値あるものとは、いつも目に映らないか、映りにくいものである。そしてそれを誰かに与えてもらうのではなく、自分自身で見つけることにこそ、ほんとうの価値は宿るものなのだと僕は思う。

彼らにとってのJ1残留は、依然厳しい道のりであると僕は思っている。

可能性にしたら1割に満たないトライではないかと思っている。そして、だからこそ彼らが彼らであり続ける限り、大分トリニータが大分トリニータらしい戦いぶりで、ひたむきにその可能性に挑戦し続ける限り、僕は彼らの七転八倒する姿を、刀折れ矢尽きそれでもなお立ち向かおうとする姿を、今後も週末の一番の楽しみとして見守り続けていこうと思っている。こんなにも泥臭いサッカーに、これほどまでに引き込まれたのは、人生においてはじめての経験である。

あの日、あのスタジアムに、TV画面の中に、僕は確かに青い鳥の姿を見出した気がした。

やはり彼らは降格してしまうのかも知れない…。あるいはそれ以上の危機といま戦っているのかも知れない。あらゆるものがそうであるように、いずれは消えてなくなってしまうものなのかも知れない。そして、だからこそ、こんなにも感動的な何かが、今すぐそこにあるこの瞬間の喜びを、僕らは噛み締めなければいけないのだと思う。なによりも大切にしなければならないのだと思う。



posted by キリタニ |11:16 | Jリーグ | コメント(3) | トラックバック(0)
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posted by キリタニ | 2009-07-21 11:43

今年一番感動的なゲーム 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

今日は。1点の先に3点があるんですね。3点を望みすぎてたゆえに、1点がとれなかったのかもしれません。でも、今から1点を積み上げてゆくのでは、足りないのでしょうね。0点がなければなんとかなるかもしれません。また、3点もあると思うので。

posted by のぼ | 2009-07-21 20:40

Re:今年一番感動的なゲーム 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

こんにちは。
艱難辛苦の果てに…って感じですかね?
まだまだこれから勝ち点(もはや①ずつではなく③ずつが必要ですね)を積み重ねて行かなければならないんでしょうけど、取りあえず一つのトンネルは抜けましたかね♪
不謹慎ですが九州の田舎の鉄道には、トンネル抜けたと思ったらすぐまたもっと長いトンネルが…なんて路線があったりします(^^;)
トリニータの試合をいつも見てるワケでは無いんで偉そうに言うのもナンですが…昨シーズンまでの彼等は管理人さんのおっしゃるように「見えない何か」を追っていたのかもしれません。
それが見てる側には「ひたむきさ」と映り、感動や勇気(あまりこういう言葉を使うのは好きではないですが…)を与えてくれたのかと思います。
そして彼等は遂に「目に見えるモノ」…リーグ④位と何よりもナビスコカップ「優勝」を手に入れました。
これは私のつまらん憶測ですが、望外の成果を得た彼等(チーム、サポーター、フロントも含めて)はどこかで疑心暗鬼になってしまったのではないでしょうか?
そしてその背景には何年も続けて「あと一歩」で逃したJ1昇格、というJ2時代のトラウマの様なモノがあったのかもしれません。
特にナビスコカップに関しては準決勝進出すら初めてのコトでした。
「こんな簡単に優勝しちゃっていいのだろうか?」…優勝後にそう振り返ったコトもあったかもしれません。
ただ私は、今シーズンのトリニータは単に「浮き足立ってた」とは思いません(この際、コンディションやらケガ人の話は無しで)。
彼等は既にJ1残留が目標のチームでは無かったと思います。
事実、シャムスカ監督就任以降、中位をキープしてきましたよね?
つまり昨シーズンの躍進を裏付けるだけの土壌は既に育まれていたのではないでしょうか。
そして「継続路線」を選んだ(予算なども含めて選ばざるを得なかったのかもしれませんが)にもかかわらずどこか自信の無い、ぎこちないサッカーを展開してしまっていたのではないかと…
そして神様はその自信の無さに対して「結果」で罰を与えようとしていたのではないかと…

とんだ迷探偵で失礼しました(^^;)
冷静に考えれば…地方の小さいクラブでもやれる!でも地方の小さいクラブでは限界がある!
ある意味で今のJリーグの縮図を②年で体現してくれたのがトリニータなのかもしれませんね。
鹿島は一日にして成らずってトコですかね☆
奇跡を起こすしか…奇跡が起きても無理かもしれないですが、やはりトリニータには是非とも九州のJ1の灯を消さない為にも期待したいです。
一方で来年のJ2で不甲斐ないアビスパと「もう一歩」なサガン鳥栖に喝を入れる様な存在(もちろんJ1復帰も)になってもらいたいなぁ…なんてイヤラシイ考えもあったりします(>_<)

最後に…前節でサンフレッチェがレッズに対して「試合で勝って勝負に負ける(逆かな?)」を見事に…悔しさ通り越して見事なまでに体現してくれたのもあってか、トリニータの勝利に溜飲が下がる思いがしました(笑)
信念を持って続けるコトの大切さ、これはサンフレッチェと昨シーズンまでのトリニータにも通ずると勝手に思ってます。
いつも以上に中身の無い長文で失礼しました☆

posted by 三本の矢 | 2009-07-22 10:33

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