2008年12月19日

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評

まず最初に、僕は西野朗氏に謝らねばならない。

もう12年も前のことになるがアトランタ五輪“マイアミの奇跡”と呼ばれる試合から、或いはその前のアジア最終予選の戦いから、僕はずっとこの西野氏の監督としての力量を見縊ってきた…。その最後の土壇場における彼自身の、勝ち負けに揺るがぬ攻撃サッカーへの“覚悟”、“胆力”のようなものを、どこかで見縊ってきた気がするのだ。

このマンチェスターU戦を見て、そして今年のACLでの戦いぶりを見せつけられて、これまでのそんな印象を改めねばならないことがよくわかった。彼がいま、日本人最高の監督であることが理解できた。どれだけの揺るがぬ信念の元に、いま彼が迷いなくガンバのサッカーと格闘しているのかをガツンと思い知らされた気がした。

素晴らしいチャレンジであったと思う。
たとえ運に恵まれず、3-5ではなく0-6で敗れていたとしても…である。

怯まずDFラインを押し上げる事。絶えず前からのプレッシャーを与え続ける事。チャンスには躊躇わず前へ出る事。一対一を恐れないこと。アタッキングサードにおいてダイレクトの速いパス回しで勝負を仕掛け続ける事…。

言葉にすれば余りにも容易いが、これは本当の勇気なくしてできないこと。自信を持たずしてやりきれないこと。そして勝ち負けの次元を超えた“攻撃への信念”なくして貫けぬサッカーであったと思う。遠藤保仁をひとつ下げて、プレッシャーのないところから、縦に速い勝負のパスを繰り出させる。播戸竜二、山崎雅人の動きの質とスピードに手を焼いたマンUのDFラインは、3失点した後半よりも、寧ろリードした前半30分までの時間帯の方に、より大きな不安とストレスを感じていたことだろう。

この点に関して、マンチェスターU側の攻撃と守備の選手におけるガンバ大阪への印象は大きく異なるものなのではないだろうか。クリスチアーノ・ロナウドやテベスから見れば、ガンバDFはさほど恐れるに足りぬイージーな相手に思われたかも知れない。しかし、DFの選手たちから見れば充分に怖い相手であった筈だ。セットプレーからの失点は、ある意味致し方の無いものに思われるが、せめて前半を0-0で終えることができていたならば、また違う世界をのぞき見ることができたのかも知れない。


これが“本気”のマンチェスターUだったかどうか?

負けて即帰国できるレギュレーションではなく、もちろん勝ちに来た試合であったことは確かだと思うが、優勝を争うプレミアと同じだけの、或いはCLを戦うそれと同じだけのテンションで彼らが戦ってくれたのかどうか?と問われれば、僕はやはりそうではなかった。そこまでの“本気”は見えなかった…と、残念ながら思っている。もし彼らがそのレベルの“本気度”でこの試合に臨んでいたならば、あれほど遠藤保仁に自由を与える事はなかったと思うし、中盤のボール回しに余裕を与えてくれる事はなかったのではないだろうか。だからといってこのガンバの素晴らしい挑戦を讃える気持ちに変わりは無いが、Jと世界との“隔たり”については、なお冷静な認識を持ち続けるべきであると僕自身は思っている。

ではどうやったら彼らの“本気”を引き出す事ができるのだろうか?

きっとそれは選手たちの問題ではない。UEFAに対するFIFAの問題。UEFAに対する、その他の世界の今後の大きな課題。そしてFIFA主催CWCの宿命的な禍根なのだと僕は思っている。僕はこの大会の未来を楽観していない。どこかで抜本的に改革されねばならないものと考える。Jリーグにとって、そしてその他の世界にとって、決して失いたくない世界への扉であるからこそ、またつまらぬ利権に振り回される事なく、真の実質を追求する大会となってゆくことを望みたい。そうあるべきだと思っている。

最後にこの日のメキシコ人主審のジャッジを讃えたい。
PKがらみの難しいジャッジがいくつかあり、その全てが妥当であったかどうかはわからないが、これほどゲームに手垢をつけず、スムーズで気持ちのよい流れを作ったのは、両チームのスタイルばかりでなく、このレフェリーの貢献するところが非常に大きかったように思う。

たった15分の出場時間で、ガチンコの“本気”を見せてくれたルーニーのプロ意識とともに、この日の主審ベニト・アルチュンディアさんの素晴らしいジャッジに深く感謝したい。

★サッカーブログランキング…応援のクリック、いつも本当にありがとうございます★
⇒⇒⇒人気blogランキングへ

*今後ブログタイトルの下に日替わりの一言コラムを毎日更新させていだく予定でおります。

posted by 桐谷 |11:49 | ACL&CWC | コメント(10) | トラックバック(0)
このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをはてなブックマークに登録 newsing it! このエントリを Buzzurl に追加

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kiritanishin/tb_ping/194
この記事に対するコメント一覧
(事務局では、サービス全体の雰囲気醸成の為、全コメントをフィルター/目視チェックし、削除等しております。見逃し等も有りますので、ご不快な思いをされた場合は、事務局宛 support@plus-blog.sportsnavi.com にご意見頂けると幸いです。)
コメントについて

コメント投稿者ID :

当コメント欄は認証システムを導入しております。

ここでのルールは1つだけです。
他者に対する“思いやりと敬意”を忘れない…という事です。それが遵守されないコメントについては表示せず削除します。

長文である必要はありませんし、挨拶や賛辞を強制するものでも決してありません。サッカーの知識などなくても構いませんし、本文との脈絡も問いません。

皆さんでご自由に言葉を交し合ってください。僕自身はここでの議論を辞退いたします。

皆様のご協力に感謝いたします。


posted by 桐谷 | 2008-12-19 12:06

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

キリタニさん。

個人的には評価するのは難しい試合だったと思います。
それは打ち合いだったことが難しくさせているのではなく、マンチェスターUの選手たちの動き。
プレミアでは見られないプレスの緩さに動きの鈍さ。
気の緩さと言い換えてもいいでしょう。

唯一ルーニーだけは違いましたが。笑

同じように打ち合いとなった去年の代表戦での対スイス戦と比べても、
今回の試合とは内容が明らかに違いました。


しかし、ガンバの選手、監督を含めたスタッフは素晴らしかったと思います。
彼等の偉大なる90分間の挑戦は見ていて感じるものがありました。

また、この試合がJの公式戦ではなかったことも幸いしたかもしれません。
もしJの公式戦であったならば、5-1となった段階でガンバの選手たちの気持は切れていたでしょう。

しかし相手はマンチェスターU。恐らく大量失点も覚悟していたでしょうし、
何よりクラブレベルで世界と戦える貴重なチャンス。
最初から彼等の頭に「諦め」はなかった。
それが5点目を取られたあとの2点につながったと思います。


試合が終わって残ったのは未だ遠い世界との距離。
ですが、確実に道はつながってる。

それが一番大事なんだ、と改めて思いましたね。

posted by 示威 | 2008-12-19 13:00

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

ガンバの持ち上げられ方を見ているとこのトーナメントの趣旨がわからなくなりますね。
勝つことが目的でないなら昨日の戦い方も理解できますが、個人的には「諦め」がなかったという次元の話jではないと思うんですけど。
はじめから勝つ気などなくユナイテッドとやれることに意義を見出していたとしか思えない。

posted by くま | 2008-12-19 15:58

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

>どうやったら彼らの“本気”を引き出す事ができるのだろうか?

非欧州で大会を作って、それを盛り上げまくって欧州側から天岩戸を開けさせるしかないと思います。代表のW杯に英国が参加した経緯の焼き直しですね。

まずは環太平洋圏で盛り上がり、ある程度軌道に乗ったら西アジア圏やアフリカも組み込む。続いて欧州のセカンドクラス(北欧、東欧、トルコあたり)も巻き込んで、最後に本丸である西欧も飲み込む、とw

距離や経済力からして集中開催にならざるを得ず、それも国家代表のW杯並みに1ヶ月以上の期間をかけて開催することになるので、Jのシーズン制の議論もそれとリンクさせるというか、そこを睨んで日本に有利なように物事を進めていってくれたら嬉しいんですけどねー。

posted by kuku | 2008-12-19 20:17

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

>たった15分の出場時間で、ガチンコの“本気”を見せてくれたルーニーのプロ意識とともに、この日の主審ベニト・アルチュンディアさんの素晴らしいジャッジに深く感謝したい。

スタジアムにいた小生から友人達への携帯メ-ル『実に面白い~!』、返ってきたテレビ観戦の友人達の怒りのメ-ル、異口同音に『実に羨ましい!帰ったら奢れ!!』これが全てでした。サッカ-の楽しさを引き出したジャッジメントと、万全ではないにしても、ファン目線を忘れないプロ意識集団に感謝。技術的、戦略的な話はそっちのけの酒宴でしたわ(笑)。

posted by 蹴球爺 | 2008-12-20 09:48

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

『サッカーを愛する皆様、ご機嫌いかがでしょうか?』

小学生になったばかりの僕にとって、週に1度のあの時間はまさに魔法の時間でした。
純粋に楽しく、嬉しく、面白く、サッカーへの素敵な入口でした。

僕もこの試合をスタジアムで観る幸運に恵まれました。
戦術、技術、勝負への拘りなど、シビアに見れば沢山の課題もあるでしょう。

でも、純粋に楽しかったし、嬉しかったし、面白かった。
僕にとっては、まさにドラム・マジョレットで始まるあの魔法の時間の再現でした。

サッカーはやっぱり素敵だなと想わせてくれた両チームに感謝です。^^

posted by プーアール | 2008-12-20 12:42

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

桐谷さん、同意します。

私が試合後に強く思ったのは「もったいないなー!」でした。
ガンバは美しい攻撃を幾つも見せてくれました、それは十分賞賛に値します。
でも、マンUとの本当の距離を計ることは出来なかったような気がします。もちろんそれは去年の浦和も同じです。
オシムさんは「ガンバは他のチームから選手を借りてきてはどうだろう、マンUと真剣勝負できる機会はそうあるものではないから。」と言っていました。全くの同感です。いや、ルールを無視して選手を集めろをいう意味ではありません。
向こうが世界選抜のようなチームなのに、ガンバにしろ浦和にしろ鹿島にしろちょっとだけ他より強いONE OF THEMのチームであることに問題があると思っているのです。この状況が続く限り何度CWCを戦っても同じ繰り返しをするのではないでしょうか。
私はJリーグにおける勝者と敗者、光と影をもっと濃くしなければならないと感じています。日本サッカーを構成しているピラミッドの頂点を尖らせなければいけないと思っています。強いチームはより強くなって行くシステム(資本主義では普通イヤでもそうなるんですけど)をデザインしていく必要があると思います。
Jリーグ秋春制シーズン移行実現にかかると試算されている何百億の金の何分の一でもJリーグ優勝チームに上げたらどうでしょう。ロナウドやルーニーはムリでも一級の選手を獲得しようという気になるのではないでしょうか。そしてその選手を見にスタジアムに来る人が増え、メディアも関心をしめし。チームが潤い更に強くなっていく。日本代表なんて問題にならない程に。
他のチームはそのチームを少しでも苦しめるためにムキになって挑んで行く。そして若い選手はそのチームのスタッフに認めてもらいたいと普段以上のファイトをする。Jリーグ全体が活性化して行く。

今は絵空事ですが、実現不可能とは思いません。
ようはやる気があるかではないでしょうか。

posted by CHUE | 2008-12-20 12:46

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評 【キリタニ】

コメント投稿者ID :

はじめてコメント差し上げます。

 TVで観戦し終わって、前にどこかで読んだ
”人を前に歩ませるのは「希望」ではなく「意志」、人の歩みを止めるのは「絶望」ではなく「諦め」”という金言をあらためて噛みしめました。

 それにしても、

 サッカーをTVで観戦して手のひらが赤くなるまで拍手したなんて何年ぶりでしょう?
 たぶん、'97年のジョホールバル以来だったかも知れません。
 

 

posted by 黄昏急行 | 2008-12-20 23:37

【CWC】マンチェスターU VS ガンバ大阪 戦評

コメント投稿者ID :

桐谷さんこんにちは。

不景気とは言え、師走は気ぜわしいものです。
意味も無くばたばたやっております。

今年のサッカーシーンを締めくくるCWCも
視聴率は良く無いかもしれません、
また、日テレのクウォリティーが低いのでは?
等様々な文句もありますが、
本年の蹴り納め、見納めとして
盛り上がったのでは無いかと思います。

天皇杯、高校サッカーの初蹴りで幕を
明ける2009シーズンも十分に楽しみたいと思って
おります。

残念ながら、広島も鳥栖も負けてしまい、
(マリノスに先制したときの岸野監督の顔が良かったな~)
元旦のJ2下克上の可能性は消えましたが、
新シーズンへ向けて、課題、期待が
膨らむ内容でした。

CWCですが、僕はやはりパチューカを賞賛したいと思います。
ガンバについても、マンU戦のガンバより、
3位決定戦のガンバを僕はたたえる方です。
『攻撃的とは何か?』
マンU相手に3点をとった。
パチューカ相手に1点をとった。
果たして3位決定戦攻撃的だったのはどちらなのか?
決勝戦、キトは守備的だったから
1対0で敗れたのか?
そんな課題を自分に突きつけながら、
108の煩悩とともに新年を迎えたいと思います。

最後にマンUに破れたキトのGKと、
C・ロナウドとニコニコしながらユニ交換をする安田と、
パチューカ戦後に疲れてユニ交換すら出来なかった
と言った安田。

多くのチームがマンUにはなれ無いなら、
僕はキトのGKのようでありたいし、
僕のチームはキトやパチュウカのようでありたい。
と思いました。

posted by 星人 | 2008-12-22 09:39

皆さんへ

コメント投稿者ID :

>非欧州で大会を作って、それを盛り上げまくって欧州側から天岩戸を開けさせるしかないと思います。代表のW杯に英国が参加した経緯の焼き直しですね。

kukuさんのこのアイディアは僕も常々考えているところなのです。CWCは今のままではUEFAに対して真のモチベーションを与え得ることはできない。
しかし実質として、UEFA/CLを上回るものを構築することは不可能…。それについては、昨年もCWCの改革案を自分なりに語ってみましたし、またこの後に再度文章にしてみようかと思っています。

>私はJリーグにおける勝者と敗者、光と影をもっと濃くしなければならないと感じています。日本サッカーを構成しているピラミッドの頂点を尖らせなければいけないと思っています。強いチームはより強くなって行くシステム(資本主義では普通イヤでもそうなるんですけど)をデザインしていく必要があると思います。

一地方クラブ(失礼^^;)のサポーターであるCHUEさんからこういう意見が発せられることに僕はある意味感動すら覚えます。これについてはまったく同感。世界から隔絶されたリーグであれば、永遠にドングリの背比べを続けることにも理があるでしょうが、この道が確実に世界へと通じる道であれば、この国の総力、アジアの総力、世界の総力を結集して、本気でその頂点を目指すクラブがこのJにも現れるべきである…僕もそう思っています。
ひいてはそれがこの国のサッカーの実力やレベル、そして人気を嵩上げしてくれるものと信じています。
そのための仕組みとしてCHUEさんがここに挙げてくださった

>Jリーグ秋春制シーズン移行実現にかかると試算されている何百億の金の何分の一でもJリーグ優勝チームに上げたらどうでしょう。

の意見はまさに真を突いたものであると僕も考えます。これについても自分の意見をまとめてみたいと思っています。そのときはまたお付き合いください。

現地組の方(寒かったでしょう^^;)もTV観戦の方にも、このゲームは充分楽しんでいただけたものと思います。僕も手に汗握りながら、現在の日本代表の試合のどれよりも楽しめた気がします。来年もこの場所にJクラブが辿り着ける事を願っています。

たくさんのコメントありがとうございました。

posted by 桐谷 | 2008-12-22 12:28

コメントする

「他サービスID/メールアドレス」で投稿する場合は、そのID/メールアドレスは表示されず、当サービス専用の固定のコメント投稿者ID「英数+連番」に変換され表示します。

※コメント投稿手順
(1)上記リストから希望のIDを選択する。
  例: Yahoo! JAPAN IDでコメント投稿
(2)Yahoo! JAPAN上の本人確認画面でIDとパスワードを入力する。
(3)スポーツナビ+blog側のコメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」

※コメント投稿手順
(1)上記リストからログイン/メールアドレスのどちらかを選択する。
  例: ログインしてコメント投稿
(2)plus-blogのアカウントとパスワード/メールアドレスを入力する。
(3)コメント入力画面が表示される。
(4)コメント本文を記入し、投稿ボタンをクリックする。
(5)コメント投稿者IDとコメントが表示される。

詳しくは以下2ページをご覧下さい
【仕様変更】PCからのコメント投稿について
ブログ利用マニュアル「コメント投稿方法」