2008年05月22日

審判問題の本質と佐藤隆治氏の成長

審判問題についてずっと書こうと思ってきた。
いかにしてそのレフェリングスキルを向上させてゆけば良いのか…そしてその為には何が必要なのか…と。

僕は審判の資格は持っていないし、サッカーのルール自体実戦で学び会得した以外にルールブックなどを読んで学習した訳ではない。要するに、それで困らないぐらいにシンプルな規則性も、サッカーというスポーツのひとつの素晴らしさだと思うし、またそれだからこその“難しさ”というものも裁く側にはあるのだろうと思う。少なくとも…

『どうでしょう…触ったように見えますがねぇ…ハンドじゃないですかねぇ』
とか
『ファール!今ユニフォーム引っ張りましたよ。明らかにファールだ。絶対ファールだ。日本のPKだっ!』

なんて視座で裁くことなど審判にはできない。どんな時でも曖昧な情報から瞬時に白黒つけなければならないし、また自らの願望やその場の空気によってジャッジを下すこともあってはならないのである。

テクノロジー全盛のこの世の中にあって、現状の彼らはあえてその使用を、合理的効率的な活用を許されず、“誤る”こと…をある意味前提として、それを強要されている…とも言える。“誤審”を非とする主義主張を僕らが断固貫くのであれば、やはりルール改正とテクノロジーの活用にまで話を突き詰めなければ論理矛盾である…とさえ僕は思う。

確かに常日頃見るセリエAやプレミアリーグのレフェリーたちより、日本の、Jリーグの、彼らの力量や威厳、その裁く規準への物足りなさ、違和感…は否めないが、現状それが紛れも無い“現実”である事を認め、そこから論理的に積み上げていかなければ、この問題は改善されてゆくものではないと僕は思う。
そしてその為には、いったい現実的にどんな手立てがあって、何が有効なのか…を深く議論し、ひとつひとつ実行に結び付けてゆくことが不可欠なのだろう。
その点で、JFA・Jリーグの取り組みは非常に緩慢で、また“甘い”と僕は思う。

海外で実戦的な研修を積むこともカンタンではないだろうし、レフェリングスキル自体は一朝一夕で向上するものではないはずだ。

が、そのゲーム中の夥しいミスと失態を良い題材・教訓として、そこからひとつひとつ学んでゆくことは可能なはずだ。そしてその為には、誤魔化し無くそれを公衆の前に認め、そのプレッシャーの中で“誤審”や“失態”について反省する機会を、Jリーグも当たり前のように審判に与えていかなければならないと思う。その為にはゲーム後の記者会見を義務付けたり、またあってはならない過怠による誤審に対しては容赦なく罰則を科す。またそれと同時に、優れた審判の待遇については、一流選手のそれと違わぬほど高めていってやらなければならないと僕は思う。今のままではリスクとリターンが釣合っていない。均衡あるその体制が整えられて初めて、正当なプレッシャーとそれに打ち勝とうとする強い意志が育まれてゆくのではないだろうか?

少なくともJリーグやJFAが自らの立場に拘泥して、その“誤審”を加護したり、無かったことのように振舞ったりする事は、その“在るべき姿”、審判の能力向上への意志に逆行する姿勢であると僕は思う。“日本の審判のレベルは高い”などと強弁し、世論形成を図る前に、その当たり前の取り組みに誠実に注力し、現状を是正してゆくべきなのではないだろうか?

先日のJ1第13節ヴェルディVS清水戦でこんなことがあった。
明らかにオフサイドの位置にいたフッキに、レアンドロからのリターンパスが出てゴール。副審は旗をあげたが、主審はそのままゴールを認めた。清水の選手たちは一斉に主審に詰寄り、その身体を小突く者まであったが、判定は覆らなかった。アウェイながらも清水側のゴール裏は騒然となった。僕も明らかな誤審だと思った。

が、再生ビデオを見ると、フッキへパスしたのは清水の選手だったのだ。レアンドロのそれより一瞬早くボールに触れ、それがフッキの足元に転がったのである。

審判と同じように、選手も、そして僕ら自身も、ニンゲンである限り当たり前のように見誤る。

そんなニンゲンの現実や限界というものに対して、僕ら自身の自省も含めて、もっと寛容に“理解”し、そして共に高めあおうとするしなやかな“心の構え”というものが、サッカーに関わるすべてのニンゲンにとって必要なのではないだろうか。改めてそう思った。

結局、彼は一枚のイエローカードも出さずにその場を収めたが、その揺るがぬ信念と、“見えざる者”に対する理解…その“心の構え”が生んだとても美しいシーンであったと僕は思う。

彼にもこれまで少なくない“微妙”な判定があったことを僕も知っている。そしてこれからもきっとたくさんの誤審をおかしてもゆくのだろう…とも思う。けれどもそれを踏まえてなお、彼にはさらに大切な何か…を、それに気付くためのキッカケを、この試合の1シーンを通して教えてもらった気がするのだ。

佐藤隆治さんの今後の活躍とさらなる成長に僕は期待をしている。
柏木陽介や香川真司に日本の未来を託すように、僕は佐藤隆治さんのその成長の軌跡に、同じように日本の未来を託して、今後も応援し見守ってゆきたいと思っている。


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posted by 桐谷 |11:22 | Jリーグ改革案 | コメント(11) | トラックバック(0)
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posted by 桐谷 | 2008-05-22 11:53

審判問題の本質と佐藤隆治氏の成長 【キリタニ】

初になります。いつも楽しみに閲覧させて頂いております。

私個人が感じるこの問題の本質は尊敬されるような人格形成とかそういうことが重要かと思ってます。その中には審判技術も含まれますがそういった育成のシステムは必要と感じてます。

誤審はあること。それがサッカーであり、だから伝説になる様なドラマも生まれる。それでいいと思います。やってほしくないのは試合の壊す様な、感情的なカード乱発。

あと日本が世界と戦う上で、倒れただけでの笛はやめて頂きたい。欧州レベルと比べて倒れるのが多いのが、その影響もあるかと思ってます。当然、選手を壊すの様な行為には厳しくですが。




posted by JJJ | 2008-05-22 23:40

【キリタニさんへ】

御久しぶりです。・・・といっても数回しか書き込んだ事はありませんでしたが。

今回の審判問題の触れ方、とてもフェアで清々しいですね。

審判も改善する必要ってのは当然アリアリですが、審判は審判で改善に努めてるんですよね。確かに。

私は選手は選手で改善しなきゃいけないところは一杯あるんだから、余計な事に熱くならずに、前向きにプレーして欲しいなとよく思います。
誤審っぽいのがあるとよく、【生活賭けてプレーしてるんだから、ちゃんと見て欲しい】見たいなコメントを拝見するのですが、それは審判も同じ。生活賭けてますよ。と選手達に言いたいです。

お互いが努力しているのだから、もっとお互いを労って・・・という綺麗ごとは無理でも、審判は石と思うことに専念してもらいたいです。

お互いが、余計な事にとらわれず、自分の磨くべきところに気を向けていれば、おのずと改善されていくように思えます。

審判が選手に暴言を吐く・・・疑惑が浮上するぐらい、審判も自信なく、ナーバスに笛を吹いている昨今だからこそ、まずは選手に我慢してもらいたい。真剣にやっているからこそ言いたくなるってのはわかりますが、その上で我慢してもらいたいです。それが絶対近道です。

posted by ちゃんこ | 2008-05-22 23:41

【キリタニさんへ】

また、お邪魔します。

>“誤審”を非とする主義主張を僕らが断固貫くのであれば、やはりルール改正とテクノロジーの活用にまで話を突き詰めなければ論理矛盾
>である…とさえ僕は思う。

まさにキリタニさんが書かれているとおりなのですよね。
前回の時に、私はこう書きました。
「サッカーが「鬱憤」「苛立ち」「割り切れなさ」のようなものがたまってしまう
ゲームであるのは、判定にどうしても曖昧さが残ってしまう、という一面が
あるのも遠因の一つだと考えているのですが‥」
これを究極的に解決するには、ビデオ判定やゴールラインを割ったかどうかを
テクノロジー的に判別するシステムの導入に委ねるしかないと思います。
しかしそうすることによって、失われるものもまた大きいと思います。

アメリカン・フットボールとは違う、サッカーのサッカーたる由縁の一つには、
システマチックではない、どこか”アナログ”な感じというものがあるに
違いないと考えているのですが、そこには人間の目で審判を下すという要素が
大きいように思えます。

なので、キリタニさんが書かれているようなことの実行をJリーグには、ぜひともお願いしたい
ところです。
少なくとも、カードについての理由説明は試合後にやるべきなのではないでしょうか。
決定的な場面に関しては、ゲームを止めてでも場内アナウンスはあってもよいかも
しれない、とも思います。退場やPK、キリタニさんが取り上げられた佐藤審判の
判定のような場合です。

とにかく、うやむやは止めてほしいですね。そうでないと正当な判定でさえ
「鬱憤」「苛立ち」「割り切れなさ」の対象になってしまいます。

それでは失礼します。

posted by くまお | 2008-05-22 23:42

審判問題の本質と佐藤隆治氏の成長 【キリタニ】

桐谷さんへ
仰るとおりですね。そして、“審判のレベルUPはそのままJリーグ全体のレベルUPに直結する!!!”という意識を忘れてはならないでしょう。きちんとした審判が出来なければ個々の選手や試合全体の評価・分析が出来ませんからね。きちんとした評価・分析出来る試合が多くなれば間違いなくJリーグのレベルは上がる筈です。
最近、あまりに腹立たしい審判が目立っているので、私なりに解決策を考えてみました。
1.審判の評価だけを目的とした第三者による組織を立ち上げること。
2.その評価をきちんと公表すること。
そして、審判の評価にこそあらゆるテクノロジーを活用すべきで、これは容易に出来るのではないかと私は思っています。(ルールの改正等は特に必要ないでしょうから)。多くの大手電気機器メーカーがスポンサーに連なっている技術大国日本を、世界に印象付ける良い宣伝にもなるはずです。
いずれにしても次期会長には、“審判の評価”を重要課題として是非取り上げてもらいたいです。これからは選手やクラブだけでなく、審判も個々の技術で競争するべき時代です。そして、Jリーグが良い手本となれば、日本全体のスポーツのレベルUPにもつながるでしょう。

posted by ぴょん | 2008-05-23 02:01

JJJさんへ

ゲームコントロールを過剰にカードに頼ってしまうのも、笛を吹きすぎて選手達の意図的な転倒を助長させてしまうのもすべてが悪循環に陥ってしまっているように思います。
卵が先かニワトリが先か…の論争に堕してしまうまえに、まずお互いがもっともっとコミュニケーションを取り合い、判定に対するコンセンサスを深め合って、そして理解しようと努め、敬意を持ち合う…そういった人間としての当たり前の“心の構え”を再構築しなければならないのではないか…。

僕はそう思っています。とにかくこのままダラダラ行ってしまうのは、すべての人々にとって不幸な事だと思うんですよね。

初コメント、ありがとうございました。

posted by 桐谷 | 2008-05-24 00:02

ちゃんこさんへ

>御久しぶりです。・・・といっても数回しか書き込んだ事はありませんでしたが。

お久しぶりでした^^あなたのことはよく覚えていますよ。

>お互いが努力しているのだから、もっとお互いを労って・・・という綺麗ごとは無理でも、審判は石と思うことに専念してもらいたいです。

『審判は石』という解釈は非常に的を射ていますね。本当に僕もそう思います。お互いを労わりあって…というのは、抽象的表現のようでいて、僕はこの問題の“本質”であると思っています。

深く理解していただき、また共感もしていただいたようでとても嬉しく思います。今回のエントリーはもしかしたらまったく“伝わらない”話だったのかもな…とも思っていたのですが、あなたのコメントに触れられて『書いてよかった』と思うことができました。

またお付き合いいただければ嬉しく思います。
真摯なコメントありがとうございました。

posted by 桐谷 | 2008-05-24 00:10

くまおさんへ

>前回の時に、私はこう書きました。
「サッカーが「鬱憤」「苛立ち」「割り切れなさ」のようなものがたまってしまうゲームであるのは、判定にどうしても曖昧さが残ってしまう、という一面があるのも遠因の一つだと考えているのですが‥」

よく覚えていますよ^^
それを読んだとき、きっとあなたも同じような問題意識を抱えて審判や判定について考えているのだろうな…と感じました。

ハッキリ言って僕はテクノロジー賛成派でも反対派でもないんです。その時々の世論や要求が、自然にそれを選択してゆくのが当たり前なのだと思っています。そしてやはりゆくゆくは、アメリカンフットボールのように高テクノロジー化・エンターテイメント化してゆくものと考えています。
こんなことについても語り合えればいろんな意見が出て楽しいかも知れませんね。

あなたの提案する場内アナウンスなどは僕も期待したいですね。あとスタジアムで検証ビデオを流す事も躊躇わずやって欲しいと思いますし、ゴールをICチップで判定するような事はもうすぐ始まるでしょうね。
個人的には選手のユニフォームにもICチップをつけて、ルール云々の前に、審判の微妙なオフサイド判定などのゲーム後の検証に役立てて欲しい。それによって線審も含めたレフェリーの評価が明確になるはずです。
そしてさらにそのデータをもっともっと深く活用して、ニッポンサッカーの戦術的進化をもっともっと加速させていって欲しいと思います。

少し話は脱線してしまいましたが、ここ何編かは暗い話題が多かったにも関わらず熱心にお付き合いいただきありがとうございました。本当はもっとノーテンキにCLファイナルなどについてああだこうだ書きたかったんですが、今回もまた日本サッカーについて時間を費やしてしまいました。

くまおさんもユーロは見るでしょう?
その時は欧州サッカーについてノーテンキに語り合いましょうネ^^

posted by 桐谷 | 2008-05-24 00:33

ぴょんさんへ

>1.審判の評価だけを目的とした第三者による組織を立ち上げること。
2.その評価をきちんと公表すること。
そして、審判の評価にこそあらゆるテクノロジーを活用すべきで、これは容易に出来るのではないかと私は思っています

1.の部分は本当に大切だと思います。そして協会と共に、サポーターの側からもそういう動きが出てきてもいいのではないかと思います。サポーターが選ぶ年間最優秀審判を独自に表彰してあげる…とか^^彼らは敵ではなくこの国のサッカーの仲間であり、同志な訳ですから、今よりももっとコミュニケーションをとってより良い関係を築いてゆきたいですね。

おっしゃる通りJFA・Jリーグは、この問題にも自ら積極的に取り組んでゆくべきだと思います。今の姿勢は僕から見れば全然物足りないですから…。

コメントありがとうございました^^

posted by 桐谷 | 2008-05-24 00:39

審判問題の本質と佐藤隆治氏の成長【キリタニさんへ】

>優れた審判の待遇については、一流選手のそれと違わぬほど高めていってやらなければならないと僕は思う。

その通りですね。JFAのホームページでは、「JFAは、スペシャルレフェリー(SR)制度を導入し、豊富な経験と高い技術を有する審判員に対し、審判活動に専念できる環境を提供しています。SRは、審判活動最優先の生活環境を自らが整え、その生活を選択する強い意志を有し、十分な審判経験があり、高い技能を継続的に発揮できる審判員で、審判委員会がJ1担当者(1級審判員)の中から選出。SRは審判活動によって主たる収入を得ることになります。現在、SRは、岡田正義、柏原丈二、吉田寿光、西村雄一、家本政明、扇谷健司、東城穣、松尾一、村上伸次の9人。」「1級審判員は、JFAが主催・後援するサッカー競技の試合の主審を務めることができます。 Jリーグの公式試合を務める主審・副審は、1級審判員の資格をもっていなければなりません。」と記載が有ります。

ここから分かるのは、J1の試合といえどもプロの審判がレフェリングするとは限らないという事です。この現状は、ものすごく危険な状態であると僕は考えます。
トトというギャンブルで数億円以上の金が動く試合をアマチュア審判がレフェリングしているのですから。やはり、J1&J2の試合は副審を含めて全て審判は、プロにすべきでしょう。

又、違う面からも一定以上の能力を有する審判の絶対数を増やす必要があります。先週までの過密スケジュールで選手の動き等々の事は、話題や議論の種になりますが、レフェリングの基本はいかにボールの近くで的確なジャッジを下すかなので当然審判のジャッジレベルにも影響を過密スケジュールは、及ぼします。

是非、新JFA会長には、この審判の収入と絶対数を増やす件についても改革を行って欲しいものです。

最後に、いつも我がアントラーズへの声援ありがとうございます。おかげ様で、ACL決勝トーナメントにクラブ史上初めて進出が出来ました。準々決勝は、アデレード・ユナイテッド(オーストラリア)戦です。決勝で浦和レッズとの対戦を楽しみにしています。

posted by ロベルト・ジーコ・ロッシ | 2008-05-24 17:32

ロベルト・ジーコ・ロッシさんへ

>J1の試合といえどもプロの審判がレフェリングするとは限らないという事です。この現状は、ものすごく危険な状態であると僕は考えます。
トトというギャンブルで数億円以上の金が動く試合をアマチュア審判がレフェリングしているのですから。やはり、J1&J2の試合は副審を含めて全て審判は、プロにすべきでしょう。

これはひとつの意見ですね。Jリーグとしても取り組むべき課題だと思います。SRがすでに9人もいらっしゃるというのは僕も知らなかったですね。彼らの収入がどれだけのものなのか知りませんが、選手同様、レフェリーもその実働期間はサッカーの場合決して長くないものですから、それなりの待遇…というものも考えていって欲しいと考えます。

ちなみにセリエAは1試合の審判のギャラは日本円にして80万円ほどだ…と聞いたことがあります。一年に30試合裁けばそれだけで2400万円。きっと試合毎のギャラの他にも契約金その他あるのでしょうから、待遇的にもそれなりの魅力ある職業と言えるのではないでしょうか。

ACLの組み合わせ、比較的ラクなブロックとの見方もあるようですが、アデレードはJやアジアの相手と比較できるサッカーではありませんので、それなりに難しさはありそうですね^^;僕としてはJ同士のファイナルを期待してきましたので、鹿島には勝ってもらわなければなりません。
浦和に不運な敗北を喫してから、少し歯車が狂い始めてしまいましたね。このブレイクを良いキッカケにして、強い鹿島の復活を期待しています。

posted by 桐谷 | 2008-05-28 18:03

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